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大腸がんの手術治療《メディカル知恵袋》7

【コラム・松村英樹】皆さん、大腸がん検診を受診されていますか? 検診は2日分の便を採取し、便に混じった血液を検出する検査です。がんやポリープなどの大腸疾患があると、大腸内に出血することがあり、その血液を検出します。1日分でも便潜血(せんけつ)検査陽性となったら、精密検査(大腸内視鏡検査)を受ける必要があります。今回は、罹患(りかん)者の多い大腸がんの手術治療についてお話しさせていただきます。

大腸と大腸がんの患者数

大腸とは1.5〜2メートルほどの臓器で、結腸と直腸に分けられます。結腸は、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に分けられます。直腸は、直腸S状部、上部直腸、下部直腸に分けられます。

大腸がんと診断された患者さんの数は、男女合わせた総数で第1位となっています。食生活の欧米化や運動量の減少などが関係していると考えられています。

大腸がんの広がり方

a 浸潤】大腸がんは腸の一番内側の粘膜で発生した後、だんだん大きくなり、最後に腸の壁を突き破って周囲の臓器に広がります。浸潤(しんじゅん)の度合いを深達度と言います。

【b リンパ行性転移】リンパ管は血管のように体中に張り巡らされています。途中にリンパ節という節目があり、リンパ管に侵入したがん細胞はここで増殖します。これをリンパ行性転移といいます。

【c 血行性転移】がん細胞が細い静脈に侵入し、大腸から離れた臓器に流れ着いて、そこで増殖することを血行性転移といいます。大腸からの血流はまず肝臓に集まることから、大腸がんで最も血行性転移の頻度が高いのが肝臓です。次に頻度が高いのは肺転移です。

【d 腹膜播種】腹腔内にがん細胞が散らばった状態を播種(はしゅ)と言います。進行すると、がん性腹膜炎となります。

広がり具合のステージ

がんの広がり具合(進行度)をステージ(病期)で表します。ステージは深達度、リンパ節転移、遠隔転移によって決まります。手術を行った後、組織を顕微鏡で調べた結果で病理分類ステージが決定します。これによって術後に補助化学療法を施行するか決まります。

手術治療では取り残しがないように、がんが広がっている可能性のある腸管とリンパ節を切除します。結腸がんは、がんから10センチ離れた部位で腸管を切ります。腸管を切除した後、腸管を吻合(ふんごう)します。(図1)

直腸がんは、肛門側はがんから2〜3センチ離れた部位で腸管を切除します。腸管を切除したあと、結腸と直腸を吻合します。通常器械(自動吻合器)を使って吻合します。(図2)

がんが肛門近くにある場合、肛門を含めてがんを切除する必要があり、その場合は人工肛門になります。看護師による人工肛門の管理・教育や患者会など、ケアシステムに対する様々な取り組みが行われています。

腹腔鏡による手術

炭酸ガスで腹部を膨らませ、お腹の中を見る内視鏡(腹腔鏡=ふくくうきょう)で観察しながら数カ所の小さな創から鉗子(かんし)を入れて手術を行う方法です。創が小さく体の負担が少ないため、急速に普及してきました。しかしながら、従来の開腹手術とは異なる技術であるため、医師はトレーニングが必要となります。当院では内視鏡外科技術認定医が在籍しており、安全に腹腔鏡手術を行っています。(図3)

術後の補助化学療法

手術でがんをすべて切除したと判断しても、一定の頻度で再発が起こります。再発を抑える目的で手術後に追加で行う抗がん剤治療を補助化学療法といいます。リンパ節転移があった場合、またはリンパ節転移がなくても再発の可能性が高いがんに行います。

毎年、大腸がん検診を

大腸がん検診は毎年の受診が推奨されています。残念ながら全国の受診率は男女ともに50%を下回っています。大腸がんは比較的治りやすいがんです。怖がらずに大腸がん検診を受け、精密検査となった場合は必ず大腸内視鏡検査を受けていただくことをお薦めします。(筑波メディカルセンター病院 消化器外科 診療科長)

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戦争と差別に反対 若者たちがスタンディングデモ つくば駅前

選挙結果に危機感 2月8日投開票の衆院選で与党が大勝した結果を受け、戦争や差別への懸念を訴える若者たちが21日、「戦争と差別 もうたくさん!」などと書かれたポスターを手に、つくば駅前のつくばセンター広場で街頭に立った。外国にルーツを持つ若者を中心に80人余りが、それぞれが抱く経験や思いを語りながら、「声を上げ続けることの大切さ」を訴えた。 大学院生が呼び掛け スタンディングデモを呼び掛けたのは、つくば市在住の大学院生、ハナさん(25)。日本とナイジェリアにルーツを持ち、つくばで生まれ育った。2週間前の衆院選で、与党の自民党が大勝した結果について、「自分にとっては衝撃的だった。食べ物は高く、賃金は低い。毎日生活が苦しい状況で、軍事費を上げようとする。日本が戦争に向かっているように感じた」と語る。 ハナさんは、近年強まっていると感じる排外主義や差別に対する危機感も、デモ開催の理由の一つだという。ハナさん自身も、生活の中で差別を感じた経験がある。物件を探していた際、「アフリカ系のハーフだから難しい」と断られたことがあり、不動産業界でも外国人風の人を断る家主が増えていると説明されたことがある。 選挙戦の中では、つくば駅前で外国人排斥を訴える候補者を見ることもあった。「多様な人が暮らすつくばで、外国人を追い出せという声があるのは悲しい。ネット上でも差別的な言葉をよく見るようになった。それが訂正されないまま広がっているのが怖い」とし、「外国人や性的マイノリティ、女性など弱い立場の人が切り捨てられ、スケープゴートにされ、対立があおられていると感じる」と話す。 中高生らも参加 デモには多様な背景を持つ学生が参加した。中国で生活し、現地で反日デモを目撃した経験を持つ中学2年の参加者は「今の日本の状況には複雑な気持ちがある」と話す。「日本人だけど、中国語が話せるというだけで嫌なことをされたり、言われたりしたことがある。それはおかしいと思う」。一方で、多様な言語や文化に触れる経験は自分の世界を広げたとも語り、「いろんな人を受け入れる社会になってほしい」と訴えた。 市内在住の高校3年ジボフスキー・ニキータさんは、「外国人への嫌悪と闘いたいと思って参加した」と話した。同じく高校3年のマッコイ・キリアンさんは「私の家族も差別を経験してきた。差別のない平和な世界をつくっていきたい」とし、高校2年の荒木茉莉花さんは「戦争や差別のない世界にしたい。一つの国のことを語るにも、その国の中にもいろいろな立場の人がいることをしっかり考えなくてはいけない」と、国や立場によって単純に善悪を決めつけない視点の大切さを強調した。 「市民運動の力示したい」 ハナさんは、2年前から仲間たちと声を掛け合い、パレスチナ連帯を訴えるスタンディングを毎月開催してきた。そこで感じてきたのが今回のデモのテーマの一つでもある「市民運動の力」だとし、「選挙結果を見ると、みんなが差別に賛成しているように見えるかもしれない。でも、実際には反対している人は多い。パレスチナに関してもそう。その声を見える形にしたかった」と話す。また、外国にルーツを持つ人が政治について発言すると批判されることがあるとしながら、「日本に住んでいる人なら誰でも、差別は嫌だと言う権利がある」と強調し、「裏金問題や統一協会との関係など、批判されるべきものが批判されないまま、憲法改正が押し進められようとしている。私たちは、そんなこと望んでいない。差別は嫌だ、戦争は嫌だという当たり前のことを、当たり前に言える社会にしたい」と訴えた。 会場には、通行人も自由に思いを書き込めるように付箋と大型の模造紙が用意された。スピーチも誰でもできるようにし、「みんなの声を可視化する場にしたい」という思いが込められた。 来場した牛久市の細谷一明さん(62)は「23歳と17歳の子どもがいるが、彼らを戦争に行かせたくない。雰囲気に流されないよう、声を上げることが大切」と語った。(柴田大輔)