つくば市の観光地、筑波山で今夏、ナラ枯れの被害が筑波山梅林周辺にまで広がっていることが分かった。筑波山系では2022年に初めて朝日トンネル付近で確認され、昨年は、南麓の体験施設「筑波ふれあいの里」(同市臼井)で被害が確認された(23年9月8日付)。今年は、西側中腹の梅林(同市筑波)を通る林道「四季の道」周辺にまで被害がさらに広がり、市は枯死した13本を伐採し薬剤によるくん蒸処理をした。
同市森林保全室の後藤佑太主任は「今年はナラ枯れの広がりが筑波山全体、およびその周辺に広がっており、とても大きい。今後の対策は県が考えているように、残したい良い木を選んだ上でワクチンを打つなど予防することが中心となる」と話す。
筑波山東側の土浦市でもナラ枯れが問題になっている。6月議会で一般質問があり、同市産業経済部の塚本隆行部長は「公共施設、公園などの倒木や枝落ちによる人的被害があるおそれのある場所では伐採、破砕処理を進めている。個人所有のものについては(森林の間伐や枝打ち、下草刈りなど森林整備費用の7割を市が補助する)小規模森林整備事業補助金を広く周知していく」などと答弁した。
9-10月、全県で被害量調査
筑波山では昨年から、南側の山麓や周辺の民有地の雑木林で、ナラ枯れの被害を受け、葉が赤茶けた樹木が目立つようになった。
今年8月下旬から9月初旬にかけて、記者が筑波山と周辺の宝篋山、土浦市の小野、本郷、永井の山など確認したところ、昨年ナラ枯れの被害が確認された南麓は、昨年とは別の箇所の雑木林に発生するなど被害が拡大していることが確認できた。ただし被害本数、面積等は不明だ。
県はナラ枯れについて被害量の実態調査を、県全域で9月から10月にかけて行う予定だ。
県のこれまでの調査によると、県内ではつくば市で2020年に被害が確認されたのが最初で、その後県全域で確認され、2024年8月現在、44市町村のうち34市町村で被害が確認されている。
ナレ枯れはナラ類、シイ、カシなどの広葉樹が枯れてしまう樹木の病気で、森林病害虫のカシナガクイムシが引き起こす。
森林総合研究所の調査によると、ナラ枯れの被害に遭っている樹木は、かつて燃料として使われていたが、利用されなくなって太くなったものが多く、放置すれば3割ぐらいが枯死し、コナラ林であった場所が被害後にコナラ林に戻るのは難しいとされる。夏に異常な高温が続くこともナラ枯れを助長しているといわれる。(榎田智司)