23年産米の寄付を緊急募集
全国的なコメ不足と値上がりの中、フードバンクや子ども食堂など経済的に困窮する家庭を支援する団体が支援継続に不安を抱えている。
スーパーでは、コメの購入制限を呼び掛ける札が品薄の商品棚に並ぶなど、全国的なコメ不足が叫ばれた8月下旬、ひとり親世帯や子どもがいる非課税世帯などへの食糧支援活動「フードパントリー」や、子ども食堂向けのフードバンクを行う子育て支援団体「つくば子ども支援ネット」(山内ゆかり代表)が、コメの「緊急募集」を呼び掛けた。同団体事務局長の鬼木尚子さんは、コメ不足により支援活動が滞ることへの強い危機感がある、と話す。
SOS増えている
つくば子ども支援ネットでは2020年の発足以来、年に数回、寄付された食料を無料配布するフードパントリーを開いてきた。直近では7月28日、支援を求める100世帯にコメ5キロと野菜2キロを含む食料と、子ども向けの文具・雑貨のセットを配布した。
例年なら新米の出てくるこの時期に、前年度米の寄付が農家から集まるが、今年は思うように集まらなかった。「7月の支援で在庫の玄米をほぼ出し切ってしまい、残りが十数キロにまで減ってしまった」と鬼木さんは苦境を話す。「コメ不足の今年は農家の手元にも在庫が不足しているよう」だという。
一方で、日々の暮らしに困る人からの、支援を求める「SOS」は、例年に比べて増えている。鬼木さんらはその都度、コメを5キロ渡すなど、最低限の食料支援を続けていると話す。
「支援を続ける中で在庫が減り続けている。先日『おコメが無くて困っている』とある子ども食堂から問い合わせがあった。本来であれば60キロくらい差し上げるはずが在庫不足で断らざるを得なかった」と言い、「団体のメーン活動であるフードバンクとしての機能が果たせなかった。このままではフードパントリーも続けられなくなるかもしれない」と、活動継続に危機感を抱く。

子ども食堂「備蓄が少なくなった」
つくば市内で子ども食堂「つくば『こどもの家』食堂」を運営するNPO法人マナーズ代表の宅間佳代子さんは「まだなんとか(米の在庫が)あるが、このままでは足りなくなる」と不安を話す。
宅間さんらは、隔週水曜日に市内で子ども食堂を開き、一度に30キロ超のコメを使用する。「子どもたちがお腹をいっぱいにして帰って欲しいという」という思いから「一般的なお弁当に比べてご飯をたっぷり入れている」として1食に対して幼児で110グラム、それより年上の子どもには220グラムのコメを提供している。「支援して一番喜ばれるのがおコメ。子ども食堂では、少量だが持ち帰り用のコメも配っている」と言い、「いつも寄付をくれる方からの寄付がなくなるなどして備蓄が少なくなった」。利用者の家族からは、「おコメがない」「新米が出てきても値上がりするのでは」という不安の声が届いているという。
外国人から寄付も
「見た目だけではその人がどんな生活をしているかわからない。人目を気にして支援を求められない人、(生活保護などの)制度を受けるまでいかないからこそ苦しんでいる人もいる」と、つくば子ども支援ネットの鬼木さんは言う。
これまで同会に支援を求めてきた人のほぼ全員が、小学生や赤ちゃんの子を持つシングルマザーだった。「物価の高騰から光熱費を払えないという声もある。おコメだけでなく、他のものも本当にないのだと思うが、やはりおコメが手に入らないことに不安を感じる人は多い」と話す。
同会が「お米急募」の呼び掛けをSNSなどを通じて出した8月21日以降、主に個人から合計170キロほどの米が集まった。中には留学生など外国人からの寄付のあったと言い、「みんな困っているはずなのに、皆さんの温かい気持ちがすごくありがたい」と鬼木さんは話す。
「支援が必要な人を支えるのが私たちの仕事。おコメをお届けするというのを続けたい。ぜひ、少しでも多くの支援をお願いできれば」と呼び掛ける。(柴田大輔)