東京高裁で第1回口頭弁論
2015年9月の鬼怒川水害で、常総市の住民が甚大な被害に遭ったのは国交省の河川管理に落ち度があったためだなどとして、同市の住民20人と法人1社が国を相手取って約2億2000万円の損害賠償を求めた国家賠償訴訟の控訴審 第1回口頭弁論が9日、東京高裁で開かれた(9月7日付)。越水し決壊した同市上三坂地区の堤防をめぐって住民側は、堤防の改修工事が後回しにされていたのは国が誤った安全評価に基づいたためで優先順位に問題があったなどと主張した。
一審で水戸地裁は、国の河川管理の落ち度を一部認め、国に対し、原告住民32人のうち9人に約3900万円の損害賠償を支払うよう命じる判決を出した。原告住民と被告の国の双方が控訴していた。
控訴審で住民側は、一審で主張が退けられた同市上三坂地区の越水・決壊した堤防について「鬼怒川下流域で一番堤防の高さが低く、最も危険な場所だった」とし、国が堤防の安全性判断基準としている「スライドダウン評価」に誤りがあったなどとした。
これに対し国は「安全度などのバランスを見て(河川の整備は下流からとする)『下流原則』に基づき改修を行った」として、水害発生当時、被害のあった上三坂地区より下流域にあたる同市中妻地区や羽生町の改修工事を進めており、被害は、上三坂地区に改修が及ぶ前に「経験したことのない記録的な降水量」の豪雨にあったことで起きたもので、「国に法的責任はない」と主張した。

原告団共同代表の片岡一美さん(71)は「スライドダウン評価は(机上の)空論の世界での条件で、危険だ。国が、現実に危険なところにきちんと対処すれば、今後も防げる水害があるはず。(一審は)間違っている条件で判決を出した」と批判した。さらに「上三坂地区の下流にあたる地域から堤防を改修していた」とする国の主張に対しては、国が例に挙げた中妻地区や羽生町などよりさらに下流にある小貫地区で、2015年と19年に鬼怒川の氾濫による被害を受けている場所があるとして「下流原則」は実際には行われていないとした。
第2回口頭弁論は11月11日午後1時30分から東京高裁で開かれる。(柴田大輔)