24-29日 アルカス土浦で「霞月楼所蔵品展」
土浦の老舗料亭「霞月楼」(土浦市中央、堀越恒夫代表)が所蔵する美術作品や歴史資料の写真パネル約30点を展示する「霞月楼所蔵品展」が9月24日から29日まで、土浦駅前の市民ギャラリー(アルカス土浦1階、同市大和町)で開催される。最終日の29日には昨年、いずれも土浦を題材にした本を出版した作家の高野史緒さんと社会学者の清水亮さんがトークセッション「ツェッペリン伯号と湖都・土浦を語る」に登壇し、異なる視点から土浦を解釈し歴史を解き明かす。2人が土浦で話をするのは初めて。
NEWSつくばと土浦ツェッペリン倶楽部がつくる霞月楼所蔵展実行委員会(坂本栄実行委員長)が主催する。
作家と学者が土浦にスポットライト
高野史緒さんは土浦市生まれ、土浦二高出身。SFやミステリーを得意とする江戸川乱歩賞受賞の人気作家だ。昨年2月、土浦を舞台としたSF小説『グラーフ・ツェッペリン あの夏の飛行船』(ハヤカワ文庫)を出版し、今年2月に早川書房が発行した『SFが読みたい!2024年版』国内編で第1位を獲得した(2月25日付)。SFファンが「聖地巡礼」で土浦を訪れるなど話題となっている。同作は土浦二高の高校生と、量子コンピュータの開発に関わる青年の男女2人が主人公で、作中には土浦市の霞月楼や亀城公園、旧土浦市役所、つくば市のノバホール、筑波大学などが登場する。高野さんは今年5月に新作『ビブリオフォリア・ラプソディ あるいは本と本の間の旅』(講談社)を発売した(5月21日付)。
清水亮さんは東京都出身の若手社会学者。現在、慶應義塾大学専任講師を務める。東京大学の学部生だった2013年から阿見町や土浦の地域史に興味を抱き、研究を始めた。昨年『「軍都」を生きる 霞ヶ浦の生活史1919-1968』(岩波書店)を出版(3月22日付)。霞月楼の資料や常陽新聞の記事などを史料に等身大の生活を描き出し、ドイツの飛行船ツェッペリン伯号の飛来の様子や、どのようにして阿見、土浦で基地が受け入れられてきたか、戦前、戦中、戦後を通した生活史をまとめた。今年6月には、戦争の記憶を拾い集めようとする若手研究者11人の研究をまとめた『戦争のかけらを集めて 遠ざかる兵士たちと私たちの歴史実践』(図書出版みぎわ)を企画、編集し、刊行している(8月3日付)。
SF小説と社会学、偶然にも異なる分野から同時期にスポットライトが当たった土浦。高野さん、清水さんのいずれの著作にも、ツェッペリン伯号が土浦に飛来した出来事が大きなテーマとして扱われている。ツェッペリン伯号の飛来はどのような意味があり、どのように受け止められたのか。土浦と当時の歴史的背景について2人がトークする。
老舗料亭の記憶伝える
トークに先立って、24日から市民ギャラリーで展示される「霞月楼」所蔵品の写真展は、大川一男、小川芋銭、竹久夢二、岡本一平など有名作家の美術品や、東郷平八郎、山本五十六、リンドバーグ、ツェッペリン伯号にまつわる歴史資料など。各時代の政治家や、文化人、軍人など著名人をもてなしてきた「霞月楼」が収集し継承してきた。
美術作品では土浦や茨城にゆかりある作家の作品を多く展示する。歴史資料は海軍航空隊の存在が土浦を内外に強く印象付けたことが分かるもので、大正から昭和初期の時代性を見ることができる。ツェッペリン伯号については写真パネルのほか大型模型なども展示する。
屋台村をコラボ開催
トークセッションが開催される29日にはコラボ企画としてアルカス土浦前の広場で屋台村も開かれ、もつ煮込みやスイーツ、ドリンクなどのほか、かつてツェッペリン伯号乗組員にふるまったカレーを現代風にアレンジした「土浦ツェッペリンカレー」を販売する。イオンモール土浦の未来屋書店土浦店も出店し、高野さんと清水さんの著書販売やサイン会を行う予定だ。(田中めぐみ)
◆高野史緒さんと清水亮さんのトークセッション「ツェッペリン伯号と湖都・土浦を語る」は、土浦市民ギャラリー(アルカス土浦1階、同市大和町)で、9月29日(日)午後1時から午後3時。入場無料。車で来場の際は駐車場が最大2時間無料。(図書館、または市民ギャラリー受付で確認印が必要)
◆「霞月楼所蔵品展」は土浦市民ギャラリーで、9月24日(火)から29日(日)午前10時から午後6時まで(初日は午後1時から開場)。入場無料。