日曜日, 7月 7, 2024
ホームつくば「なぜ?を知ることは科学への扉」 元研究者が特別授業 茗渓学園高校

「なぜ?を知ることは科学への扉」 元研究者が特別授業 茗渓学園高校

火薬研究の第一人者で産業技術総合研究所の元研究者、松永猛裕さんが開発した教材「花火の原理がわかる手持ち花火Ⅰ色火剤(いろびざい)」(2023年6月22日付)を用いた特別授業が3日、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)である茗溪学園高校で行われた。

茗溪学園高校1年生の化学の特別授業の講師を務めた松永さんは「(熱した金属によって異なる色が出る)炎色反応は皆が知っているのに、なぜ炎色が出るかを説明できる人はいません。研究する人がいないからです。でも『なぜ』を知ることは科学への扉になる。花火でわかる化学の面白さを伝えたい」と語った。

同教材は、手持ち花火と分光シートがセットになっており、分光シートをスマートフォンのカメラに貼り付けて撮影することで、花火がどのような光を発しているかを分解して観察できる。つくばで生まれた優れた商品やサービスを市が認定する23年度のつくばクオリティ認定品にも選ばれている。教材は松永さんが社長を務める産総研発ベンチャー「グリーン・パイロラント」が開発、販売している。

ピロティで特別授業を行う松永さん

茗溪学園高校で実施された1年生の化学の特別授業は、教室でなく、吹き抜けの1階ピロティで行われた。後半は芝生広場に移動してグループごとに実験し、分光シートを貼ったスマートフォンでさまざまな花火のスペクトルを観察した。実験終了後、松永さんに光の性質などについて質問する生徒たちもいた。

特別授業を受ける生徒たち

特別授業を受けた1年のキム・スジンさんは「教材が素晴らしく、楽しく体験することが出来た。自分の目で見る経験が出来てとても良かった。星が好きなので、星のスペクトルなども学んでいきたい」と感想を述べた。

松永さんは「生徒たちの反応も素晴らしく、興味をもってもらえてとても良かった」と述べた。(榎田智司)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

1コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

1 Comment
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img
spot_img

最近のコメント

最新記事

大会初、女子部員がシートノック 土浦二、1回戦で敗れる【高校野球茨城’24】

第106回全国高校野球茨城大会初日の6日、開会式直後のノーブルスタジアム水戸で1回戦第1試合が行われた。土浦二高が下妻二高と対戦したが、投打で圧倒され6回コールド0-10で敗れた。試合前には土浦二高女子部員の小林こと(2年)がノッカーとしてベンチ入りし、茨城大会で初となるシートノックを務めた。  1 2 3 4 5 6 土浦二 0 0 0 0 0 0  0下妻二 0 3 0 3 3 1× 10(6回コールド) 試合は、土浦二高エースの鈴木晴人が先発したが、2回2死から四球を挟み4連打で3失点。4回にも3連打で3点追加され6点をリードされた。5回からは橋本真直、佐藤剛志が登板したが、押し出しを含み4つの四球でさらに3点を追加された。 打線は1年生で4番の竹内新世が2安打を放ち、一人気を吐くが、下妻二高先発の佐藤天馬に抑えられた。 土浦二高の相良真博監督は「9回までやりたかったが、5回で終わらなかったのは5回途中から再びマウンドに上がった鈴木のお陰」と鈴木の健闘をたたえた。 今大会、3年生部員は鈴木を含め3人のみ。エースで主将の鈴木晴人は「アウトコース中心でたまにインコースを使った。甘い球はいかなかったし自分の出せる力を出し、やれることはやった。相手の実力が上だった。自分はチームで一番頑張ったし自信を持ってやってきた。力を出し切ったので悔いはない」と話した。 「終わってから実感」 一方、茨城大会で女子部員として初めてシートノックを務めた小林は「緊張はなかったが終わってから実感が湧いた。9回までやりたかったが打たれて負けたのだから仕方ない。けが人も多かったができることはやれた。来年は9回まで戦えるのが目標」と語った。 小林は土浦二中に入り中学から野球を始めた。高校で辞めるつもりだったが相良監督から誘われ、野球を続ける決心をした。硬式球の難しさを感じながら野球を楽しんでいるという。地元の高校が参加しているPCリーグの試合に選手として出場している。(高橋浩一)

夏の高校野球茨城大会開幕 95校88チームが行進

第106回全国高校野球茨城大会が6日、水戸市のノーブルホームスタジアム水戸で開幕し、95校88チームの選手らが行進した。甲子園への切符を賭けた熱戦が27日まで繰り広げられる。 開会式は午前9時、大洗高校マーチングバンド部ブルーホークスの演奏が響き渡る中、水戸女子高校の生徒がプラカードを掲げ、昨年優勝の土浦日大を先頭に元気良く足並みそろえて入場した。スタンドからは大きな拍手が響き渡った。 県高校野球連盟の深谷靖会長は「チーム全員で困難を乗り越え、仲間と共に過ごす時間や互いに励まし合いながら成長する過程も大切。高校野球を通じて得られる経験は勝敗を通じて大きな財産になる。日々の練習の成果を存分に発揮して高校野球の魅力を発信してほしい。感謝の気持ちを忘れず全力でプレーしてほしい」と述べた。 選手宣誓は古河二高の池田魁主将が「高校野球のFマークに込められたファイト、フレンドシップ、フェアプレーの精神の下、私たちはこの晴れ舞台で最高のパフォーマンスをするために努力してきました。互いに支え合いながら友情を深め、多くの方たちに支えられて野球に打ち込めたことに感謝の気持ちでいっぱいです。私たち高校球児は野球が出来ることに感謝し、支えてくれる方々の思いを胸に精一杯、全力で白球を追い続けることを誓います」と力強く宣言した。 昨年の優勝校、土浦日大の中本佳吾主将は「いよいよ夏が来た。昨年の記録を塗り替えて、チームが一つになり茨城を制覇したい」、準優勝の霞ケ浦高校、市川晟太主将は「昨年悔しい負け方をしたので、その悔しさを胸にチーム一丸で、チーム力を発揮して甲子園で校歌を歌いたい」とそれぞれ意気込みを語った。 開会式の司会は鉾田一高3年の麻生さくらさんと水戸商業3年の長嶋美和さんが務めた。2人とも「最初はどうなるかと緊張したけど、2人力を合わせて頑張り、自分なりに上手く出来たし、いい経験になった」と話した。 プラカードを掲げた水戸女子高3年で生徒会長の菊池葉月さんは「昨年開会式をスタンドから見て興味が湧いた。観客が多く練習の時より緊張したけど練習通り出来て良かった。いい思い出が出来たしやり切った」と話した。 (高橋浩一)

胃カメラを飲むコツ《続・平熱日記》161

【コラム・斉藤裕之】1年に1度、私とっての鬼門。それは胃カメラを飲む日。今年もその日がやってきた。小さいころから大方の立ちはだかる壁は乗り越えてきたつもりだが、胃カメラだけは苦手だ。 しかし、実は今年、ちょっとだけポジティブな気持ちで内視鏡検査室の前に座る私がいる。というのも、昨年の検査の際に「コツ」をつかんだような気がしたのだ。あの忌まわしいチューブを飲み込むコツを。だが、それはただの思い過ごしということも考えられる。だから、今年はそれを確かめるべくやってきたのだ。 私の周りでも胃カメラが苦手な人がいて、マウスピースをくわえた瞬間から無の境地に入っていくようにするとか、頭の中で好きな歌を流して気をそらすとか。それから、胃カメラは平気だけどバリウム飲むのが苦手な人とか。NASAの訓練みたいにぐるぐる回るのがちょっととか。 「さいとうさ~ん」。呼ばれた私は喉に麻酔の薬をためてその時を待つ。しかし、やっぱり不思議と理由のない自信がある。それにしても胃カメラ係?の看護師さんは妙に優しい。口調ももちろんだが、いざ検査の時に背中をさすってくれるあの母親の様な手。ジェンダーとかなんとか置いといて、この係はできれば女性にやってほしいと個人的に思う。 いい絵を描くコツはない さて、ついにまな板の上に乗った。マウスピースをくわえる。「はい、じゃあこれから始めますよ~」って、今回の先生はなんだかソフトな印象。いよいよチューブが入ってきて、「はいここちょっと苦しいですよ~」。ここだ!と思ったら「オエッ」、涙がツー。この後は鼻の穴全開でゆっくりと呼吸を繰り返す。「は~い、では抜いていきま~す。お疲れさまでしたー」 ということで、予想通り、これまでと比べて飛躍的に苦しさを感じることなく検査を終えることができた。少しまだ涙ぐんだ目で画像を見ながら、先生の説明を聞く私の心はちょっと晴れやか。 絵を描くのにコツがあるのか聞かれることがある。例えば角度を少し意識するだけで、手を置く場所を変えるだけで、順番を変えるだけで、うまくいくことは日常的に誰しも経験があって、これをコツと呼んだりするんだろうが…。鉛筆をうまく削るコツはあるかもしれないが、いい絵を描くコツはない。同じく、胃カメラを飲むコツをつかんだところで健康になるわけではないのだが。何はともあれ、「問題ありませんね」という先生の一言で新たな1年がスタートした気分。 「10年たちましたね」と看護師さん。「来年の胃カメラは麻酔なしでいいですか」と聞かれて、「はい!」と元気よく答えた私。胃カメラを飲むコツ? それは謙虚に胃カメラさんに感謝すること、かもね。(画家)

金魚を見て老境を知る《看取り医者は見た!》22

【コラム・平野国美】10年ほど前、治子さんと初めてお会いしたときは、夫の介護の最中でした。足腰の痛みに耐えながら、最期まで夫君に尽くされました。そして今度は、患者さんとして再会しました。見た目はあのころとほとんど変わらないのですが、足を少し引きずって歩かれていました。 「今度は私がお世話になります。申し訳ございません」。性格が真面目なので、人の世話はするが、世話されるのは申し訳ないと思うようです。遠方に住む家族が介護サービスを受けるよう説得しましたが「人様のお世話になるなんて…」と言われ、困っていました。 最近は体の衰えもあり、時々、転倒するようです。転んだ痛み以上に、精神的な苦痛を感じるようです。そして、最近は頭も少しぼんやりとしてきたようです。10年ほど前、御主人の介護をしていたころは、しっかりとされており、診察のいい間に紅茶をいれてもらったものでした。 今日もそのころと同じように「紅茶を入れますね」と、台所に向かったのですが、10分ほどしても戻ってきません。台所をのぞいてみると、ぼんやりと立ち尽くしています。「治子さん」と声をかけると、「せんせい、私、一体何をしに台所にきたのかしら」と言うのです。慰めながら椅子に座らせると「なんでこんなになってしまったのかな?」と、1時間も2時間も泣き続けるのです。 自分の老いを理解する知性 私は帰るわけにもいかず、治子さんと向かい合っていると、その肩越しに金魚の水槽を見つけました。水槽の中の1匹の金魚が腹を水面に向けたまま浮いています。微動だにしないので、死んでいるのかと思ったのですが、突然、動き出して、姿勢を立て直そうとしました。 「生きているのか」と眺めていると、また、船が転覆したように、腹を水面に出して浮いてしまうのです。何だろうと、スマホに「金魚、逆さま」と入力して調べると、「転覆病」「原因は魚の浮袋の機能不全」「便秘による腸の膨満または加齢によるもの」など、いろいろ出てきました。 どうやら、人間でいう「体調不良」「寝たきり」に近いものと思われます。いつの間にか、治子さんも、水槽の中を心配そうに見ています。「転覆病っていうんですって」と、今知ったばかりのことを聞かせると、「そうですか。私だけじゃないんですね、苦しんでいるのは」とうなずかれました。 老境(ろうきょう)と言う言葉があります。人生の晩年に差し掛かった老人の境遇や心境といった意味です。しかしこの言葉には、もっと深い意味があると思うのです。 老境に入るとは、その方のこれまでの生き方や心境を表現していると思います。確かに、治子さんは認知症の影が見え始めています。しかし、転覆する金魚の姿を見て、自分の老いを理解する奥深さ、知性がある気がするのです。その後、2人で小1時間ほど老境の話をしました。(訪問診療医師)