金曜日, 6月 28, 2024
ホームコラム私と社会をつなぐもの《電動車いすから見た景色》55

私と社会をつなぐもの《電動車いすから見た景色》55

【コラム・川端舞】ずっと現金で買い物をしていた私が、最近、スマートフォンのQRコード決済を利用するようになった。理由は、先日友人と遊びに行ったときに、友人がQRコード決済をしているのを見て、「なんだか、かっこいい」と思ったから。我ながら単純だと思う。

周囲の人から影響を受けて、何かに興味を持ち始めることが私は多い。例えば、女性だと思っていた高校の同級生が今は男性として生活していることを知ると、LGBTQをはじめとする性的少数者について調べるようになった。

また、行きつけの店で顔なじみになった人が、環境や動物保護を目的に、動物性の食品を避けていることを知ると、自分もビーガン料理に挑戦してみた。実際にやってみると栄養バランスをとるのが難しく、まだ試行錯誤している最中なのだが、自分でいろいろ考える過程がまた面白い。

ただ、周囲の影響で、自分から行動を変えてみようと思うことと、他者から無理矢理、行動を変えるように強いられることは違う。私の大切にしたいものを無視して、私を変えようとする人の言葉を私は聞きたくない。反対に、どんなに自分に強い思いがあっても、相手を無理に変えることはしないように気をつけたい。もちろん、他の人を傷つける言動は慎むべきだが…。そのさじ加減が難しい。

普通学校で育ったから

様々な背景を持った人たちとの関わりが、私と社会をつないでくれる。いろんな人と関わるのが楽しいと私が思えるようになったのは、ずっと普通学校で育った子ども時代の影響が大きいように思う。

社会には、自分のような障害児以外にも多様な人がいることを、子どものころから肌感覚で分かっていたから、今も多様な人と関わることを居心地良く感じるのだろう。特に最近は、出会った人たちとおしゃべりしながら、それぞれの考え方を伝え合うのが楽しい。そして、そんな自分を前より少し好きになった。

もちろん人と関われば、傷つけあうこともある。それでも、子ども時代、たくさんの同級生たちとの出会いから、人と関わり続けようとする力と、わかり合えたときのうれしさを、私は学んだのだと思う。(障害当事者)

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