水曜日, 4月 22, 2026
ホーム土浦「独立系書店」土浦に開業 書店文化を次世代に

「独立系書店」土浦に開業 書店文化を次世代に

活字離れやネット購買の浸透などから全国的に書店が減少する中、専門性の高い選書やイベントの企画を通じて店主の個性を打ち出す個人経営による「独立系書店」がつくば・土浦地域にも広がっている。昨年8月、土浦市にオープンした古書店「生存書房」もその一つ。障害者福祉の仕事に就きながら、科学史を専門とする大学非常勤講師で同書店店主の藤田康元さん(57)は「みんなで助け合い、今の困難な時代を生き延びるため」と書店への思いに力を込める。

社会問題、社会思想が2000冊

土浦駅から徒歩5分。霞ケ浦を望む築50年以上の民家の1階に「生存書房」の看板が立てかけられる。2021年に物件を見つけ、2年かけてDIYで手を入れてきた室内には、真新しい手製の木製棚に国内外の社会問題や社会思想に関する書籍が約2000冊並んでいる。

藤田さん自身がDIYで室内をリフォームし書棚も手がけた

お薦めを聞くと藤田さんが取り出してくれたのが、「図説17都県 放射能測定マップ 読み解き集」というA4判232ページの書籍。2011年の東日本大震災後に起きた原発事故による各地の放射能汚染状況を、草の根でつながる有志が6年かけて調査し、そのデータを分析・解説したものだ。自費出版ながら全国紙が取り上げるなどして注目を集め、発行部数は2万部を超えた。

震災後、放射能測定所を開設

藤田さんは震災後につくば市の自宅で友人らと資金を集めて「つくば市民放射能測定所」を開設し、依頼を受けた食品や土壌の調査を繰り返した。その知見を生かして同書籍の作成に調査・執筆陣として参加した。より正確な情報を多くの市民と共有することで、危機的状況を共に生き延びるという使命感からだった。

神奈川県出身の藤田さんが仕事の都合でつくば市に転居したのは、2003年。研究所や大学に勤務しながら、自分で書店を持ちたい思いを抱いていく。そのきっかけの一つが2011年の震災だったという。当時の心境をこう振り返る。

「震災後、地震や津波、放射能に関する本が多数出版された。中には復刊、増刷された重要な古典もあった。でもネットで販売される関連書籍を見ると品切れだったり、プレミアがついて高額で取引されたりして手に入りにくくなっていた。お金がある人だけが情報を手にできる状況に、それっておかしいんじゃないかと思った」

同時期に関わった、20代前半の女性との出会いにも心が動かされた。労働運動に携わるある知人と、困窮する人たちの生活相談にあたっていたときのことだ。県内在住のその女性は、ある事情から生活保護を受給し生活を立て直そうとしていた。その渦中で震災に遭った。

「3.11の後、つくばにも放射性プルームが飛んできた。ある層の人たちの中には、海外に逃げた人もいた。でも、生活に困窮していた彼女は、原発事故があったのは知っていたけど、それがどういう意味を持つかは全く知らなかった。弱い立場にいる人ほど情報を得られず、何かが起きた時に被害に遭いやすく、リスクを負う可能性が高い。さらに被害に遭っても、立場の弱さ故になかなか目立たず、忘れられやすい。情報強者と弱者がいる。そこにも格差があると実感した」

その後、コロナ禍でも同様の場面を目にしたことも書店開設への後押しになった。

「震災やコロナ禍に限らず、危機的な状況の中で多くの人が、今、何が起きているのか情報を求める。世の中で必要とされる専門的な知識や学問は、みんなで今を生き抜くためにシェアしなければいけないと思った。だからこそ、それぞれの街に、適切な値段で必要な書籍を手にできるところがあるべき。それが自分の関心領域であれば、何が良い本か分かっているわけですから、僕にもそれができると思った。『生存書房』は新刊も扱う古本屋ではあるが、同時に図書室としての意味も持たせたかった」

必要な知識を共有する場に

生存書房は、土浦駅の東西出口、どちらからも徒歩5分ほどの場所にある。この立地にもこだわりがある。「現代は車社会だが、車を運転できる人ばかりじゃない。駅から近ければ県内外からバスと電車で来てもらえる。徒歩や自転車でも、誰もが来やすい場所にしたかった。周囲には有料駐車場もあるので、もちろん車でもきていただける」

今後はテーマを決めての読書会や、著者を招いてのイベントも企画していくと言い、市民運動の情報が集まる場にもしていきたいと話す。「古い街並みが残り歴史と文化が根付く街であることも土浦を選んだ理由。霞ケ浦が見える『ウォーターフロント』であることもポイント。僕は水辺が好きなんです」と笑みを浮かべる。

藤田さんは現在、県外の大学で授業をもちながら、週に数日、夜間介助に就いている。書店を開けるのは主に週末だ。お店の様子は日々、SNSで活発に発信している。その中で、各地で同様の書店を営む人同士の繋がりも生まれているという。

出版科学研究所によると、1998年の約2万2000軒だった全国の書店は、2020年には約1万1000件と約22年間で半減したとされる。書店のない自治体も増加し続け、「書店」という文化は消失の危機に直面している。

「必要な知識を共有する場にしたい」と始めた「生存書房」。自分ならではの暮らしを築きながら、藤田さんは、書店が担うべき文化を守っていきたいという。(柴田大輔)

◆生存書房は土浦市川口2-2-12。問い合わせは電話(050-1808-8525)またはメールへ。営業日等はホームページへ。

➡独立系書店の過去記事はこちら

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

3 コメント

3 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最新記事

対策必要な下水管 延長600メートル つくば市 八潮市の陥没事故受け特別調査

埼玉県八潮市で昨年1月に発生した道路陥没事故を受けた下水道管路の全国特別重点調査で、つくば市は21日、対策が必要な下水道管路は市内に延長約600メートルあると発表した。いずれも筑波研究学園都市の建設が始まった1970年代につくられた雨水管という。同時期に生活排水を流す汚水管も埋設されたが、今回の国交省調査の対象外という。 対策が必要な雨水管600メートルのうち、原則1年以内に速やかな対策が必要な緊急度Ⅰの管路は延長約100メートル、応急対策を行った上で5年以内を目途に対策が必要な緊急度Ⅱの管路は延長約500メートルだった。 特別調査は、八潮市の陥没事故を受け、国交省が全国に調査を要請した。調査対象は内径2メートル以上の大口径で、1994年度以前に布設され30年以上を経過した下水管。傷み、腐食、破損、たるみなどの程度や個所数などを調査した。市内では延長約23キロの雨水管が調査対象となった。昨年7~12月、調査員が雨水管内に入って管内の状況を目視で調査、今年1~2月に調査結果を診断した。一方汚水管については内径2メートル以上のものはなく、今回の調査対象にはならなかった。 調査の結果、対策が必要だと分かった延長約600メートルの雨水管の管路に軽微なひび割れなどが認められたが、土砂の堆積など道路陥没につながるような緊急性の高い異常は確認されなかった。市下水道工務課は、今回調査対象となった雨水管は、汚水管のように硫化水素が発生し腐食しやすい環境にないため、道路陥没のリスクは比較的低いとしている。 今後の対応として市は、1年以内に対策が必要な延長約100メートルについては、空洞化調査などの詳細調査をし、来年2月までに対策を実施するとしている。5年以内に対策が必要な延長約500メートルについては2031年2月までに対策を実施する。修繕完了までに一定期間を要することから、路面巡視などを適宜実施し、陥没の予兆となる道路異常の早期発見や事故防止に努めるとしている。 一方、内径が2メートル未満のため今回の調査対象にならなかった汚水管については、市の第1期(2019~23年度)ストックマネジメント計画で、延長3100メートルについて修繕対応が必要とされ、23年度までに1900メートルの修繕を実施してきた。現在実施中の第2期計画では、第1期で積み残した1200メートルと新たに判明した分を合わせた5700メートルについて対策を実施するとし、初年度の24年度末時点で220メートルについて修繕を実施したという。 県が管理する流域下水道の管路については、つくば市内などに布設されている霞ケ浦常南流域下水道の管路は、対策が必要な箇所は無かった。土浦市などに布設されている霞ケ浦湖北流域下水道については、原則1年以内の速やかな対策が必要とされる緊急度Ⅰの箇所が延長6メートル、応急措置を行った上で5年以内を目途に対策が必要な緊急度Ⅱの箇所は延長71メートルあった。

学校給食の牛乳に異味 土浦市 6校の12人が体調不良

土浦市教育委員会は21日、市内の小中学校の学校給食で出された牛乳を20日に飲んだ児童、生徒から「いつもと牛乳の風味が違う」など異味の申し出があったと発表した。そのうち6校の児童生徒12人から腹痛など体調不調の訴えがあった。 牛乳は、いばらく乳業(水戸市)が製造したもので、茨城県学校給食会から同市が購入し、市内24の小中学校に計約1万500食分を提供している。 発表によると、市内の全24校で「味がすっぱい」「薄い」「酸味がある」「薬のような臭いがする」など異味の申し出があった。24校は、土浦小、下高津小、東小、大岩田小、真鍋小、都和小、荒川沖小、中村小、土浦二小、上大津東小、神立小、右籾小、都和南小、乙戸小、菅谷小、一中、二中、三中、四中、五中、六中、都和中、新治学園義務教育学校、土浦一藁附属中。 そのうち体調不良の訴えがあった6校の12人は、土浦小が3人、下高津小2人、上大津東小2人、都和南小3人、五中1人、新治学園1人。 20日、各学校が市学校給食センターに報告。土浦保健所や県教育庁保健体育課に連絡した上で、いばらく乳業に対し、原因の調査を依頼している。 市教委は21日から当面の間、給食での牛乳の提供を停止し、児童、生徒には水筒を持参してもらって対応している。 市教委は「関係する児童、生徒、保護者の皆様には大変ご心配をお掛けしましたことをお詫びします」などとしている。

運命の人《短いおはなし》50

【ノベル・伊東葎花】 わたしは、前世の記憶を持って生まれた。前世のわたしは、老舗料亭のひとり娘。裕福な家庭に育ったけど、家に縛られ自由はなかった。そしてわたしは恋をした。相手は売れない画家だった。将来を誓い合ったけど、結ばれなかった。身分違いの恋だ。周囲からの猛反対に遭って別れた。 わたしたちは、誓い合った。 「生まれ変わったら、絶対いっしょになろうね」 きっと何度生まれ変わっても、わたしは彼を見つける。だって彼は、運命の人だから。 あれから数十年。わたしは生まれ変わった。今のわたしは、料亭の娘じゃない。親の束縛もない。とても自由なの。彼との出会いを夢見て過ごした。一目見ればわかるはず。だって運命の人だもの。 穏やかな春の日、何かに導かれるように、夕暮れの公園に来た。通りかかったひとりの男が、わたしをじっと見ている。運命を感じた。ああ、この人だと思った。姿は変わっているけれど彼に間違いないと、わたしは感じた。 「わたしがわかる?」 呼びかけてみた。彼が少しずつ近づいてくる。 「ああ、ずっと探していたんだ」 彼は、わたしをぎゅっと抱きしめた。ああ…、やっぱりそうだ。運命の人だ。「僕の家に来る? すぐそこなんだ」 彼が耳元でささやいた。もちろんわたしはうなずいた。 「ほら、見えるだろう。あの赤い屋根の小さな家だよ」 彼が指差す家は、わたしの理想の家だった。いつかあなたが絵に描いた家。赤い屋根のかわいい家で、ふたりで暮らそうと言ったこと、憶えていたのね。うれしい。わたしは目を閉じて、彼に寄り添った。 「これから一緒に暮らそう。きっと君も気に入るよ」 庭には、かわいいお花がたくさん咲いている。ふたりの楽園ね。 彼はドアを開けると、「お~い、帰ったよ」と誰かに声をかけた。家族がいるの? わたし、気に入られるかしら。「おかえり」と顔をのぞかせたのは、若い女だった。 女は、わたしを見るなり目を潤ませた。 「なんてかわいいの」 「公園で見つけたんだ。ピンときた。君が絵に描いていた子にそっくりじゃないか」 「ええ、そうよ。なぜだかずっと夢に出てきたの。きっと運命よ。やっと会えたのね」そう言って、女がわたしを抱きしめた。 ああ、そうか…。彼女のぬくもりに触れたとき、わたしにははっきり分かった。運命の人はこの人だ。 彼が男に生まれ変わるとは限らない。わたしが人間に生まれなかったのと同じだ。 わたしは、いとおしい人の胸に抱かれて目を閉じた。そして「ニャ~」と甘えてみせた。  (作家)

地域のゴミ拾い《デザインを考える》31

【コラム・三橋俊雄】1月に地域の「こども会議」を開催しました。「こども会議」とは、地域の子どもたちが集まり、自分たちの生活や地域について意見を出し合う場です。子ども自身が地域の一員として考え、発言し、提案していくことを目的としています。 参加者は、小学4年生から高校生までの子ども12名と大人7名の計19名でした。テーマは、前回の会議で子どもたちから提案されていた「地域のゴミ拾い」です。 交流センターに集合した子どもたちは、「こども会議」の象徴であるグリーンのビブスを身につけ、北風の吹く中、トングとゴミ袋を手に2つのコースに分かれて歩き始めました。 初めは道路を見ても、ゴミのポイ捨てはほとんどないように見えました。しかし子どもたちは草地ややぶの奥まで入り込み、ペットボトルや空き缶、プラスチック片、手袋、さらには捨てられた電化製品のファンヒーターまで拾い集めました。 わずか40分という短い時間にもかかわらず、地域にはこれほど多くのゴミが潜んでいたことが分かり、子どもたちも私たち大人も驚きと新たな発見がありました。 活動後は、集めたゴミを使って、みんなで「ゴミ・アート」を制作しました(上の写真)。 環境教育につなげる試み ゴミ拾いを体験した子どもたちからは、「思ったよりゴミが多くてびっくりした」「いっぱい拾えて気持ちよかった」「どんどんきれいになってうれしい」「飲みかけのペットボトルがあった」「草の中に小さいゴミがあって驚いた」「風に飛ばされてむずかしかった」など、さまざまな感想が寄せられました。 今回の子どもたちによる「ゴミ拾い」は、単なる清掃活動ではありません。自分の住む地域を「自分ごと」として捉えるための、大切な第一歩でした。また、ゴミを拾うという行為は、環境を守るための最も身近な市民参加のかたちでもあります。どこにどんなゴミが多いのか、なぜそこにゴミが集まるのかを観察することで、子どもたちが社会を知り、社会に目を向けるきっかけにもなりました。 さらに、拾ったゴミを使った「ゴミ・アート」は、ゴミの存在を可視化し、環境教育につなげる試みでもありました。一見価値がないと思われていたゴミが、子どもたちの手によって新しい形や意味をもつ作品へと生まれ変わっていきます。その過程は、体験から得た気づきや、ものの見方を変える力、発想を広げる力を育てる機会にもなったのではないかと思います。 こども会議によるこのような取り組みは、子どもたちが未来の地域を担う市民として育っていくための小さなきっかけにもなります。自分たちの行動が地域を変えることにつながるという体験は、子どもたちの自信となり、次の行動への原動力にもなるはずです。(ソーシャルデザイナー)