地元青年会が中心になり、つくば市田中で7日、4年ぶりに開かれる「どんど焼き」が、今年は防災と組み合わせた形で開催される。地域住民が大勢集まる行事を防災意識向上に結び付けたいと、防災士の民間資格を持つ田中青年会会長で会社員の松崎貴志さん(43)が呼び掛けた。
田中地区では例年、どんど焼きに地域住民が200人くらい集まる。当日は青年会が豚汁、もつ煮込み、餅などを200人分用意して無料でふるまう。今年は地元の田中子ども育成会に協力してもらい、アルファ米の防災炊き出しセット200食を用意し、ご飯を炊いて食べてもらう。「年配の人の中にはレトルト食品を食べたことがない人がおり、防災食は慣れていないと非常時に食べられないことがあるため、普段から食べておこうということ」と松崎さんは狙いを話す。
田中地区は桜川に隣接する。2019年の台風19号で川の水が増水し道路や水田が浸水、集落まで迫った教訓から、松崎さんは昨年2月にも地域の子供会と防災キャンプを実施した(23年1月5日付)。
防災キャンプは子供中心の企画で、高齢者まで巻き込むことが出来なかったため、松崎さんは新たな取り組みが必要だと考えていた。コロナ禍で実施できなかった「どんと焼き」が今年再開され地域住民が大勢集まることから、防災と関連付けて開催できないかと考えた。
昨年4月に企画を青年会のメンバーに話すと「なぜそんなことをやらなければいけないのか。予算はどうするのか」という疑問の声も出たが、イベントの手順を考えるなど工夫をして、賛同を得た。
子ども食堂通じ「フェースフリー」に出合う
松崎さんは全国の子ども食堂を支援している認定NPO「全国こども食堂支援センター・むすびえ」(湯浅誠理事長)のスタッフの一員でもある。むすびえを通して昨年、愛媛県宇和島市で開かれた子ども食堂の炊き出し体験イベント「ぱくパーク」に出掛け、「フェーズフリー」という言葉に出会った。
イベントは、子ども食堂を非常時にも安心して食事がとれる防災拠点にしようという取り組みの一環で、フェーズフリー協会(東京都文京区)が主催するフェーズフリーアワード2023の金賞を受賞している。
フェーズフリーとは、いつも行っていることを非常時にも役立つようにデザインしようという考え方で、日常時と非常時という2つのフェーズをフリーにするという意味。松崎さんは宇和島でイベントを手伝い、地元つくばでも出来ないかと考えた。毎年地域で行っている行事を、もしもの時に役立つようにしたいと、どんど焼きの際に防災訓練を兼ねた炊き出しセットを提供しようと思い立ったという。
松崎さんは「日常から防災意識をしっかり持っていれば、非常時に役に立つ。『いつも』が『もしも』に役に立つというフェーズフリーの意味を浸透させるきっかけにしたい。地区としては年に1、2回、防災訓練を開催できれば」と話す。(榎田智司)