金曜日, 11月 22, 2024
ホームつくばボランティアで荒れ地を整備 河川敷が憩いの広場に【桜川と共に】10

ボランティアで荒れ地を整備 河川敷が憩いの広場に【桜川と共に】10

つくば市栗原、桜川に架かる桜橋上流の河川敷に芝生の広場がある。県有地で広さは約3ヘクタール。筑波山や宝篋山を見渡せ、桜川の自然を満喫できる憩いの場だ。週末には市内外からピクニックやキャンプに訪れた人々が思い思いにのどかな環境を楽しんでいる。

月1回 18年間草刈りやごみ拾い

憩いの広場は、住民団体「桜川ふるさと自然再生の会」(宮本健次会長、会員11人)が、毎月1回、ボランティアで草刈りやごみ拾いなどの整備を行っている。会員は地元住民や桜川漁協組合員など。元は農地だったが、竹林や雑木林となり、不法投棄のごみで荒れていた場所だった。

元会長の宮本正夫さん(故人)がその様子を見て心を痛め、子どもの頃のように桜川に親しめる場をよみがえらせたいと、2005年7月に同会を立ち上げた。

整備を始める2005年以前の河川敷の様子(桜川ふるさと自然再生の会提供)

当初は30人の会員で整備をスタートした。ごみの搬出や竹林の伐採を行い、07年には市の助成金を受け、重機を借りて整地を進めた。つくばブランドの芝生を張って、荒地は美しく生まれ変わり、以来18年間、月1回の整備を続けて広場の景観を維持している。21年からは県土木事務所から河川愛護団体の認定を受け、草刈り機の燃料や飲料水といった整備作業に必要な物品の現物支給を受けて活動するようになった。

河川敷から筑波山や宝篋山を見渡せる

原風景よみがえらせたい

会員の大里茂則さんは「子どもの頃は水辺の草を刈って家畜のえさにしたり、川から砂利を取ったりと川に行くことが多かった。県外に働きに出て、戻ってきたら全く様子が変わって川に入れなくなっていた」と話す。かつては川に行く用事があったので、川への道が自然と手入れされていた。しかし川に行く人が少なくなって、やぶになる所が多くなっていった。会員は皆、親しめる桜川の原風景をよみがえらせ、多くの人に親しんでほしいという思いから活動を続けているという。

「自分たちが草刈りをやらなければ、若い人はやらないんじゃないか」と話すのは前会長の楢戸和夫さんだ。現在、最高齢の会員は83歳。現会長の宮本健次さん(70)は「会員が減少し、高齢化している。30人いた会員が今は11人となった。ボランティアを募集している」と言う。

月1回の草刈り作業に集まった桜川ふるさと自然再生の会の会員=10月22日

週末、広場を訪れていたスリランカ出身で市内在住のテンナコーン・スメダさんは、ほぼ毎週末、同郷の仲間たちでこの場に集まって交流をしている。「とても良い所で気に入っている。今日はお昼から子どもたちも入れて20人くらいで集まろうと思っている。広いので子どもが遊ぶのにいい」。市内から来たソロキャンパーの男性は「お気に入りの場所で、時々来ている。あまり人に教えたくない所かも」。週末の広場には市内外のナンバーの車が停まり、テントを張ってコーヒーを入れたり、風景を眺めたりして静かに過ごす人々が見られた。

芝生の広場は30日から来年3月15日まで、桜川の川幅を広げる工事のため一般の利用ができなくなる。工事は、国の「防災・減災、国土強じん化のための5カ年加速化対策」事業を活用して実施される河川掘削工事で、工期は今年8月から来年3月まで。土浦市田土部とつくば市栗原の桜川で工事が行われている。川の流れをよくするため1万平方メートルにわたって掘削するもので、事業費は約6000万円。(田中めぐみ)

◆桜川ふるさと自然再生の会の次回草刈り作業日は11月18日(土)。参加申し込み、問い合わせは出電話029-857-6147(宮本健次会長)へ。

➡「桜川と共に」の過去記事はこちら

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

0 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img
spot_img

最近のコメント

最新記事

県営赤塚公園の秋《ご近所スケッチ》13

【コラム・川浪せつ子】今年のつくば市周辺の紅葉は例年より遅めのようです。つくば市で一番大きい洞峰公園のイチョウ並木も、今年は11月中頃でもまだ緑色。温暖化のせいでしょうか? ですが秋は日々深まりつつあり、至る所で紅葉が見受けられるようになりました。 つくば市役所のホームページによりますと、市内の公園は209カ所だそうです。面積の小さな、駐車場もないような近隣公園もあります。私のお薦めは県営の赤塚公園。駐車場は40台分。市営になった洞峰公園と遊歩道でつながっています。小さな池とかわいらしい水路もあります。 春の桜の季節は見事。とても静かで、近隣の方でないと気付きにくい穴場の公園です。絵のような東屋、ベンチも配置されていますので、ユックリできます。先日は、家族連れの外国の方々が、お子さん達を遊ばせながら、ランチタイム。また、大きな袋を持った女性が、木の枝や実を拾っていました。 近くには、映画館、日帰り温泉… お隣には茗溪学園や住宅。子供たちが遊びに来るからでしょうか、大きな時計も設置されています。先日は、全く水鳥は見えなかったのですが、鳥たちも集まっていることが多いです。自然をそのままに残しているような公園、小さいながら本当に素晴らしいです。 最近、研究学園駅周辺など、新しく移住してくる方が多いですが、どうぞ少し足を延ばしてみてください。赤塚公園の前には、映画館、日帰り温泉、ジム施設などもあります。ジムのボルダリング施設は、オリンピックに出場したスポーツクライミング選手、森秋彩(あい)選手が練習もした所です。(イラストレーター)

中止による減収2億3千万円 土浦花火大会 市が追加負担を決定

市長らの給与減額し道義的責任 土浦市は20日、第93回土浦全国花火競技大会の中止に伴って桟敷席などの収入が無くなり2億3000万円の減収があったとして、同額の補正予算を19日、専決処分で決定したと発表した。併せて、中止により多くの人に心配と迷惑をかけた道義的責任を明らかにするため市長と副市長の給料を減額するとした。 同花火大会は11月2日に開催する予定だったが台風21号の影響により中止。荒天の場合、3日または9日に延期する予定だったが、労働力不足により順延日の警備員を確保できず大会自体を中止とした(11月1日付、5日付、17日付)。 桟敷席の設営や撤去などすでに実施済みの委託業務や、中止に伴い新たに発生する経費を速やかに支払うため、議会の議決を経ないで決定する専決処分としたとしている。2億3000万円は、市が事務局を務める土浦全国花火競技大会実行委員会(会長・安藤真理子土浦市長)に追加補助する。市は当初予算ですでに同実行委に8500万円の補助金を計上しており、中止となった大会の事業費は計3億1500万円になる。全額を市が負担する。 給与の減額は市長が月額20%、副市長が10%を12月から来年2月までの3カ月間減額する。12月の期末手当も市長が20%減、副市長が10%減となる。3カ月間減額する条例についても19日、専決処分とした。 安藤市長は「中止による減収を補うため新たに補助金を増額する結果となってしまったことについて、市民の皆様に心よりお詫びします。開催を心待ちにしていた皆様、 煙火業者の皆様、全ての関係者の皆様に対し、多大なご心配とご迷惑をお掛けしたことについて会長として責任を強く感じています。 今後は花火大会への信頼回復に努め、大会の運営等、様々な課題を検証し、次回の大会につなげて参ります」とするコメントを発表した。

オリジナルレンコン料理専門店開業へ 土浦市産業祭で一部メニューお披露目

日本一の産地である土浦のレンコンを使用したレシピを開発し提供するオリジナルレンコン料理専門店を開業しようと、同市でインターネットテレビ「Vチャンネルいばらき」を運営する会社社長の菅谷博樹さん(55)と、つくば市下広岡で軽食店「ニッチDEキッチン」を運営する増田勇二郎さん(53)が準備を進めている。開業に先立って23、24日開催の第48回土浦市産業祭でオリジナルメニューの一部をお披露目し販売する。 店名は「土浦れんこん物語」。来年1月ごろ土浦駅西口近くの同市川口、ショッピングモール「モール505」の空き店舗に開業し、ランチを提供する予定だ。店を運営する合同会社「土浦れんこん物語」を近く設立する。 菅谷さんによると、土浦にスイーツ店を構えたことがある増田さんと今年9月頃、土浦の活性化について話した際、「レンコン専門店で土浦をもっとアピールしたい」と意気投合したのがきっかけ。 菅谷さんは「レンコンといえば土浦市だが、あまり県外に浸透していないと感じている」と言い、「レンコンを使ったオリジナルメニューを提供し、市内はもちろん全国、海外にも発信したい」と、食を通じた観光促進と地元産業の活性化を目指したいと語る。新店舗のコンセプトについて「農家+料理の職人がコラボレーションしてオリジナルの新しいレシピを作り出していくこと」だと話す。 提供するメニューには、土浦市とJA水郷つくば主催の「日本一のれんこんグランプリ」で2022年と23年に2年連続最優秀賞を受賞した「市川蓮根」(同市田村、市川誉庸代表)」が生産したレンコンを使用する。メニューの開発と監修は、筑波山温泉ホテル一望(つくば市筑波)の料理長を務めた逸見千壽子さんに依頼した。 提供するランチは700円から2000円程度とする予定で、ほかにキッチンカーでの販売も予定し、インターネット販売なども模索している。 コロッケとお焼きを販売 すでにいくつかのオリジナルメニューが完成しており、そのうち「れんこんコロッケボール」と「れんこんお焼き」を23日、24日、モール505で開かれる産業祭で、「ニッチDEキッチン」のキッチンカーで販売する。 れんこんコロッケボールは、レンコンのすりおろしとジャガイモを9対1の割合で配合し、真ん中にカットしたかみ応えのあるレンコンが入っている。食べやすいよう一口大のボール型にしカップに複数入れて販売、クシで刺して食べてもらう。「れんこんお焼き」は、逸見さんオリジナルのレンコン甘辛味噌が入ったお焼きだ。 菅谷さんは「レンコンを使ったオリジナルメニューを今後も開発、提供し、モール505の活性化にもつなげたい」と意気込みを語る。(伊藤悦子)

もったいない(2)《デザインを考える》14

【コラム・三橋俊雄】今回の「もったいない」は、「一物(いちぶつ)全体食」の話からいたしましょう。一物全体食とは、穀物なら玄米のように胚芽まで全部を食べる、野菜や果物なら皮ごと、魚なら骨や頭まで1匹丸ごと食べるという意味で、生物が生きているというのは、丸ごと全体で様々なバランスが取れているということであり、そのまま人体に摂取することで人の身体にも望ましいという考えです。 ウド(独活)の一物全体食 植物のウドも、穂先から茎、皮まで丸ごと食べられる「一物全体食」の食材です。捨てるところがほとんどありません。地中で育つウドの白い茎は酢の物に利用され、穂先の若芽は天ぷらに、硬い皮は細く切ってきんぴらの材料にします。さらに茎の根側の堅い部分は煮付けに用いられるなど、ウドは、それぞれの部位がその特質に合わせて料理に生かされているのです。 ウドという植物を余すところなく食材として使い尽くすこと、そして、前回のコラムでご紹介した「桐材」の多様な利用の仕方も、人間の創造的な知恵の産物であり、「一物全体活用」と言っていいと思います。 さらに、以下にご紹介するのは、一つの「材」ではなく、一つの固有な地域風土が有する「様々な資源」を総合的・循環的に捉えて活用する、三澤勝衛(1885~1937)の『風土産業(1941)』についてです。 塩尻峠横川部落の風土産業 三澤は、横川部落における気候風土の中から、凍(し)み豆腐づくり、養豚、養蚕に着目し、上図に示すような、その地域ならではの循環型資源活用のあり方を提唱しました。 それは、 (1)大豆を購入し、豆腐に加工し、寒い塩尻颪(しおじりおろし)が吹く晩に、凍み豆腐を製造する。 (2)一方、豆腐の搾り粕(かす)の「おから」は、飼っている豚の主要飼料となり、その豚は、肉・皮が利用され、それ以外にも、骨は骨粉にして肥料に、また、油脂も利用する。排泄物は養蚕用の桑や夏期野菜の肥料に使う。 (3)蚕は桑を食べて繭をつくり、その繭は製糸工場で生糸に紡がれる。 (4)繭を売った収入は、冬期の凍み豆腐づくりに向けて大豆購入の資金となる、というものです。 三澤が示したこの「風土産業」は、地域固有の気候風土の中で産み出された様々な資源を、一つの廃物も出さずに全て利用し尽くす循環型の産業であり、今日言われている「循環共生(エネルギーや食を地産地消しながら地域内で資源が循環する自立・分散型の社会づくり)」の先進的モデルと言えるでしょう。そして、広い意味での「もったいない」のデザインと言ってもいいでしょう。(ソーシャルデザイナー)