【コラム・浅井和幸】支援の場では、日本語があまり得意でない外国の方に対応することもあります。私は日本語しか話せないので、日本語ができれば対応しますと伝えますが、困っている人が日本語を話せるとは限らないので、できるところまで対応することになります。
英語をちゃんと勉強していたら、こんなことにはならなかったのかなぁ―なんて愚痴を言っても前に進みません。簡単な日本語と翻訳アプリ、それから身振り手振りで対応します。時には知り合いの通訳を交え、必要な情報を聞き取っていきます。
英語さえできたらと考えていましたが、英語以外の言語の対応を迫られることもあります。翻訳アプリ・通訳者様々です。翻訳アプリも、簡潔に文章を組み立てて音声入力するコツがあるようで、まだ勉強中です。
そうは言っても、日本人の相談を受けることが圧倒的に多いのは確かです。ですが、悩みを聞いている間に主語が変わったり、「てにをは」が間違ったりということが起こります。
もちろん、全て正確な日本語を使って、何一つ間違わずに会話を進めることはできません。それを差し引いても、日本語の使い方が独特な人もいます。主語が変わっていくというのは、抑うつの時にも出ることがあります。特定の人との人間関係がうまくいかなくなったら、全ての人が自分とうまく人間関係が作れないと考えてしまいます。
抑うつの状況でなくても、物事の捉え方が大ざっぱであったり、日本語の表現がうまくなかったりするため、「みんなが自分を悪く言っている」と、「みんな」が口癖の人は多いでしょう。「自分にはいつも嫌なことばっかり起こる」という表現もそうですね。
右・左・真ん中の選択肢
Aさんの前には、右・左・真ん中の3つの選択肢があります。Aさんは、右は絶対にうまくいかないから進みたくないと考えているとします。ですが、私は、とりあえず今は決めつけずに、3つの選択肢があり、それぞれにはメリットとデメリットがあるはずなので、決めつけずに考えていきましょうと説明します。
このとき、私は3つの選択肢が可能性としてあることを提示しているのに、Aさんは絶対に右に行かなければいけないと浅井が言っていると捉え、話が前に進まないことが実際に起こります。この場合、図で説明するとわかってもらえるのですが、言葉だけだとどうしてもニュアンスが伝わらず、相談につながらないこともあります。
Aさんが言っていることを総合的に考えると、右に進むことのメリットが大きく、左と真ん中の道のデメリットが全く想像できない状況で、右以外の道に進めば素晴らしい場所に行けるとさえ考えるようになります。ここで検討せずに進んでしまうと、こんなはずではなかったとなりやすいのです。
人は失敗から学ぶことも大切ですが、その失敗から「やっぱり私には悪いことしか起きない」という感想につながることが残念なことです。次に進むときには、現状の把握がとても大切な要素です。現状の把握と言語での正確な表現方法は密接に関わっていると感じる、今日この頃です。(精神保健福祉士)