【コラム・若田部哲】毎年夏休み、つくば市内の各研究所で開催される様々な科学イベント。その中でも人気施設の一つに、防災科学技術研究所があります。
同研究所は、地震、津波、噴火、暴風、豪雪、地滑り、そして水害などの被害を抑えるべく、様々な実験施設により産学官民連携した研究を行い、社会に役立つ情報プロダクツを創出する機関。国内数カ所に拠点があり、そのうち、つくば本所には世界最大級の「大型降雨実験施設」などが設置されています。
そして、この大型降雨実験施設の人気体験イベントが「豪雨体験」。日本観測史上最大の降雨量、1時間換算300ミリという猛烈な雨を体験することができるというものです。
今回は、同研究所広報の入沢弘子さんに、この実験施設についてお話を伺いました。研究所入口の駐車場に車を止め、木々が豊かに茂る広大な敷地内をご案内頂くこと数分。木立の切れ間から目に飛び込んできたその施設は、とにかく巨大! 建屋の大きさは奥行49メートル×幅76メートル×高さ21メートルと、7階建てマンションが数棟並んだほどの大きさ。さすが世界最大級!
それだけでも驚きですが、なんとこの建物、動くのだそう! 施設は様々な実験が可能なよう、A~Eの一直線上に並んだ5ブロックがレールでつなげられており、その上を巨大な建屋が移動するとのこと。これにより、それぞれの区画で、実物の家屋など制作に長い日数を要する実験模型を準備し、様々な実験を行うことができるのだそうです。
様々な実験に使われる降雨実験施設
実験にあたり、いで立ちはカッパに傘、長靴と、完全フル装備。どんな雨も大丈夫…なハズ。いざ実験が開始されると、床面から16メートル上に設置された544個のノズルから、自然な降雨を再現した雨が降り始めます。雨は段々と激しさを増していき、叩きつけるような雨に。そして1時間に300ミリという降水量に達すると、長靴は水で満ち、激しい雨で視界は不明瞭、音は雨音しか聞こえません。これが実験でなかったら、恐怖にすくんでその場から動けなくなってしまうでしょう。
降雨のために地下に設けられた貯水槽の容量は2500立方メートル、小学校のプールおよそ4個分はあろうかという量。1日に実験で使用できる水量は、2000立方メートルにもなるそうです。この施設は自治体の啓発動画の作成や、建設業界との協働による水害に強い建物の開発、ドローンや自動車の技術向上など、様々な実験に使用され、年間90パーセントという高い稼働率を誇っているとのこと。
ここ数年来、毎年のように繰り返される「数10年に一度」の自然災害。中でも深刻なものの一つが、集中豪雨による水害です。ただし、この災害が地震や火山の噴火と違うところは、予報からある程度事前の対策が可能な点。
子供の夏休みの自由研究にとどまらず、いざという時の準備のため、ぜひ皆様に体験いただきたい、非常に貴重な機会です。ぜひ足を運び頂き、ご家庭の防災力向上にお役立てください。(土浦市職員)
<注> 本コラムは「周長」日本一の湖、霞ケ浦と筑波山周辺の様々な魅力を伝えるものです。
<防災科研 一般公開2023>
▽日時:8月5日(土)午前10時~午後4時
▽場所:国立開発研究法人 防災科学技術研究所 茨城県つくば市天王台3-1
▽入場料:無料
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