つくば市竹園地区を中心に活動する「みちくさ~竹園学園“教室や学校に行きづらい子ども”の親の会」が、学校生活に不安を抱える親の悩み相談に乗っている。結成されて1年。父親たちも悩みを分かち合う「オヤジの会」を立ち上げ、交流の輪を広げようと活動している。
薄桃色の花が満開を迎えた庭に炭火焼きの煙が立ち上る。川村正二さん(45)が小銭と引き換えに手渡したフランクフルトに、子どもたちは大きく口を開けてかぶりついた。
1日、同地区に住む川村さんと妻の真理子さん(38)が自宅近くで営むフリースクール「テラ子屋つくば」の1周年イベント。川村さんはこの日、「オヤジの会」のメンバーの父親とともに、フランクフルトをふるまった。
川村さん夫妻は昨年4月、「テラ子屋」を立ち上げた。市内の別のフリースクールと掛け持ちで小3~小6の子ども約10人が通っている。設立のきっかけは2年前の夏から次男(8)が不登校になったことだった。
ブラジリアン柔術の道場を営む川村さん自身は不登校を経験しておらず、最初は戸惑った。真理子さんは中学1年から不登校。高校を中退して大検を経て大学を卒業し、社会に出た。経験者だけに、不登校には理解があるつもりだった。
しかし、わが子が小1で不登校になると、すんなり受け入れられない。こんな小さいのに、勉強しなくていいのだろうか。将来どうなってしまうのかー。
学校での勉強が難しいなら、体験を通じて成長を促そう。一緒に料理をしたり、買い物に連れて行ったり。でも、興味が湧かないとそっぽを向かれる。「空回りする日々が続いた」と振り返る。
ドッジボールや鬼ごっこ、カードゲーム…「テラ子屋」で異学年の子どもと笑い合い、時にはケンカして共に時間を過ごす。次男は以前、聞き取れないぐらいの小声でしか話せなかったが、最近は人前でも大きな声で会話できるようになり、少しずつ成長を実感している。
夫とともに会場を訪れた中村規乃さん(47)の高校1年の息子も中1から不登校だった。最初のころは、相談相手が見つからずに苦しんだ。その経験から、仲間と「親の会」を立ち上げ、毎月1回、おしゃべり会を開催している。公式LINEの登録者は60~70人。20~30人と対面で相談に乗る。竹園地区だけでなく、市内全域から相談に訪れる。
不登校への考えが、夫婦で一致しないケースもある。中村さんも、将来を不安視する夫に違和感を抱いた。子どもへの寄り添いを大切にしたいのに、夫は未来を見据えた早い変化を期待する。考えの溝が埋まらず、平行線が続いた時期があった。
自分には母親同士で不登校の悩みを共有する場がある。でも、夫にはない。
「男同士で話せる場をつくってみたら?」
真理子さんや、近所に住む石田佳織さんと語らって、夫たちに「オヤジの会」の旗揚げを促した。初対面で打ち解けるのは難しかろうと、昨夏、集まって手作りピザを焼いたのが初会合。以後も5、6人の父親が集い、バーベキューや飲み会を催して語り合う。
学校に通わずに、どうやって子どもの成長を促し、進路を決めるのか。子どもと同様、父親も即答できない問いを抱えている。
参加者は皆40代。昔の漫画やテレビ番組といった「あるあるネタ」やつくばの街の変貌ぶりをさかなに、グラスを傾ける。
にぎやかな歓談も、話題が子どもの近況に及ぶと、少し、しんみりする。
ぽつりぽつりと、だれかの口から出た悩みや葛藤。「それ、分かります」。すぐに誰かが言葉を拾い、皆でうなずく。それぞれの家族が背負ってきた紆余曲折はなんとなく分かる。だから、子どもの進路が決まったら、よその子でも我が子のように祝える。
中村さんは「不登校に限らず、学校や子どもとの向き合い方に不安を感じる親は多いと思う。まずは連絡してほしい」と参加を呼び掛けている。(鹿野幹男)
◆「親の会」には、http://lin.ee/254RL1tのQRコードからアクセスできる。