水曜日, 12月 17, 2025
ホームつくば費用負担 年2.3億円 無償譲渡受ける方針を議会に説明 洞峰公園問題でつくば市

費用負担 年2.3億円 無償譲渡受ける方針を議会に説明 洞峰公園問題でつくば市

市議会「情報そろってない」

つくば市二の宮にある県営の都市公園、洞峰公園(約20ヘクタール)について、五十嵐立青つくば市長は14日、県から無償譲渡を受け市が管理する方向で県と協議を進める方針を市議会に改めて説明した。近日中に県に正式に伝えるという。

無償譲渡を受ける場合、新たに市が負担する費用は、維持管理費が年間約1億5000万円、体育館や温水プールなどの大規模修繕費が2027年度までに年平均7800万円、年間で合計約2億2800万円かかることが想定されるとし、28年度以降の大規模修繕にいくらかかるかは施設状況の調査が必要になるとした。

3月議会開会日の14日、本会議終了後に全員協議会を開き、説明した。議会から出た意見も含めて県に正式に伝える。今後のスケジュールがどうなるかは明らかにしなかった。

一方議会からは、28年度以降の大規模修繕費がいくらかかるのかなどの質問が出たほか、「まだ情報がそろってない」など慎重な意見が相次いだ。

五十嵐市長は全協後の記者会見で「議員から明確に無償譲渡に反対するという声はなかったが、議会として承認いただいたという話ではない。議会との対話は継続して行っていきたい」とした。

年間2億円を超える新たな費用負担が生じることについては「費用はありとあらゆるものにかかる。費用をどう考えるかを含めて議会や市民と対話する機会があれば価値がある」などと述べ、明言を避けた。

無償譲渡を受けることは市民の総意か否かについても記者から質問が出て、五十嵐市長は「多くの住民が洞峰公園の環境を守ってほしいと思っているということがアンケートや説明会から読み取れるが、さまざまな市民がいて、既存の公園の修繕が必要だという声もある。何か一つやれば、他にこういうことをやるべきだという考えの方がいる。私としては無償譲渡は望ましいことだと考えた」などと述べた。

一方、県は、無償譲渡を受けるか否かについて1月31日までに市から正式な回答が無かったとして、2月1日から、洞峰公園内の野球場にグランピング施設を建設する建築基準法の手続きのための事前協議の準備に入っている。今回、市から回答を受け取れば事前協議手続きを止めるか否かについて、県公園緑地課は「市の回答を確認してからでないと判断できない」(1月31日付2月1日付)などとしている。(鈴木宏子)

   ◇   ◇   ◇

14日の市議会全員協議会のやりとりは以下の通り。敬称略

飯岡宏之市議(自民党政清クラブ)市民にはどのような方法で説明するのか。市全体でアンケートを行うのか。早急に市民に説明すべき。

五十嵐立青市長 これまでもさまざまな形で対話してきた。全協で話を伺ってその方向性を県に伝える。譲渡を受けることを伝えて県の返事を待ってその上で検討していく。協議会を設置し、どのような管理運営が望ましいか皆さんと議論するプロセスを踏みたい。

飯岡 維持管理費が年1億5000万円、温水プールやアリーナがある施設の大規模修繕費は総額8億6000万円(2017-27年度)、23年度から27年度までにあと3億5600万円かかる。建物は築43年、体育館やプールはまだ耐震補強されていない。27年度からさらにどれくらいの修繕費がかかるのか。

建設部長 その部分は県に確認が済んでいないのでお答えできない。

飯岡 県に聞いて分かり次第、議会に報告してほしい。利用料金値上げは議会と市民に問わなければならないということでよいか。

市長 無条件に値上げするとは考えてない。

山中真弓市議(共産)県から無償譲渡される場合、パークPFI事業者との契約はどうなるのか。

部長 県と事業者との契約なので市としては承知していない。

山中 県の方で契約を破棄した上で無償譲渡を受けるのか。

部長 無償譲渡となったら県と事業者との契約は無くなると認識している。

山中 建物の修繕費が今後かかると予想されている。建物の管理と公園の維持管理を分けて考えることは選択肢の中にないか。

部長 建物の小規模修繕は、指定管理を仮定した場合、指定管理費の中でお願いする。大きな修繕は市で対応すると考えている。

山中 体育館やプールの大規模修繕など、今後、市の予算の大きな負担になることが考えられる。大規模修繕は県にお願いし軽微なものは市がやるなど、県と協議する可能性はあるか。

部長 道路が県から市に移管されることがある。その場合、目に見える修繕が想定されるものは事前に修繕してもらう。そういった形が望ましい。

山中 分かる範囲の修繕は県にお願いすることが可能だが、想定されてない大規模修繕は市がやるのか。

部長 今後、県との協議の中に入ってくる。

小森谷さやか市議(市民ネット)この間の知事のやり取りはあまりにも強引だ。報道等でも無償譲渡と移管という言葉が混在して使われている。無償譲渡と移管の説明をお願いしたい。

部長 無償譲渡は所有権まで市の所有になる。移管は所有は県、管理は市になる。

小森谷 今回、管理も所有も市になるということか。

部長 その通り。

小森谷 全協で議会の意見を聞いてから県に返事をするということだが、全協は何かを決定する場ではない。全協で各議員が質問や意見を言う中でどうやって意見をまとめるのか。決め方がわからない。議会に議案として出るのか。

市長 現時点で議決をいただくものは想定してない。無償譲渡を受けるのに議会の議決は必要ない。今後、維持管理費など予算をいただくものは議会の議決を受ける。県は県議会の議決が必要になるのではないか。

小森谷 全協で皆の意見を聞いて、どのように県に持っていくかが見えない。

市長 無償譲渡を受ける方向性を考えていることを県に正式に伝えたい。本日、皆さんからどんな意見があったのかも県にお伝えしていく。市としてこのような形で進めたいと(県に)お話したい。

皆川幸枝市議(市民ネット)今後のスケジュールは見えてないのか。1年(ぐらいかかるの)か。スケジュール感はどう考えているか。

市長 期限を区切ることは難しい。県議会の議決が必要かどうかは県の中で精査すること。詳細は県が方針を出していただくことだと考えている。

皆川 市民への説明だが、周辺部の住民からは「いつも中心部ばかり」「何でも中心部にばかりお金をかける」という指摘がある。維持管理費は結構かかる、大規模修繕はこれから調査するということだが、各地域で説明会を行い、しっかり説明して理解を得るよう進めてほしい。

川久保皆実市議(チェンジチャレンジ)市が仮に無償譲渡を受ける場合、協議会を設置して進めていくということだが、大きなコンセプトしとして洞峰公園をどうしていきたいのか。県の整備方針にインクルーシブ遊具の設置があり、ニーズはある。白紙に戻すとインクルーシブ遊具をゼロから検討するのか。

市長 大きな方針だが、洞峰公園は完成された環境にあり、多くの人にとって重要な場所。市が管理することになれば新たな費用がかかるが、洞峰公園への市民の思いやアイデアが可視化されたと思っている。環境を守りながら、一方でどうすれば費用負担を最小限に抑えていけるか、新しく事業をやる余地があるのかなど協議会などを通して協議したい。インクルーシブ遊具は白紙になるが、市としてインクルーシブ遊具を増やす方向で進めている。

川村直子(市民ネット)大規模修繕費の算出根拠だが、部長の説明では、道路の維持管理で県から市に移管されるときは目に見えて分かる部分は修繕を済ませてから移管を受けるということだった。2023年度から27年度に県の方で想定される大規模修繕費は3億5600万円と明確に示してある。この辺は県の方で修繕してから譲渡を受けると考えられるがいかがか。

部長 できればそういった形が望ましいが、今後の県との協議の中での話になる。

川村 市から県にまだ伝えてないということか。

部長 これからになる。

塚本洋二市議(自民党政清クラブ)(配布された)資料によると県との協議は2021年からということだが、2021年10月以前に県から問い合わせはあったのか。最初いつぐらいから問い合わせがあったのか。県と市との協議の内容を示してほしい。

部長 2021年10月に県の事業者選定会議に出席した。オブザーバーとして参加依頼があった。夏頃、事業者の公募がされている中で、市建築指導課に問い合わせがあった。2020年10月、サウンディング調査を行う話を聞いている。グランピングなどの中身はその頃は無かった。事業者公募の際、何社かから建築関係で質問がきて、グランピングは建設できないと市建築指導課が回答した。

塚本 2020年12月にサウンディング調査の話があって、当時、市の方では内容を把握してなかったということだが、これまでの県との協議の流れと内容を示していだだくようお願いしたい。

小野泰宏市議(公明)きょう説明をいただいたが、議員の方も内容を精査しないと、意見はアウトラインぐらいにしかならないと思う。こういう機会をもっとしていただくか、会派で意見をまとめる等、こういう機会をもっとつくっていただかないと双方向にはならない。双方向でやらないと、議決の時に、納得した形で我々は判断しないといけない。きょうは第1弾の説明という感じしか受けない。そういう機会をもっと増やしていただけるようお願いしたい。

橋本佳子市議(共産)市が移管を受ける場合、協議会を設置するのはひじょうに大事。このままいけば皆が望まない方向で洞峰公園が運営されてしまうという中で、県の方から「それなら無償譲渡するから市の方でやってね」的な提案だと感じている。今、無償譲渡という形で協議を進めているということでいいのか。無償譲渡なら無条件でOKといえるかというと、情報がまだ何もそろっていない。例えばパークPFI事業者との契約が本当に破棄されて、きれいにして市に渡されるのかなど、あくまでもこちらがそうだろうと言うだけで、県の確認がとれていない。住民への説明も「お金がかかるのにどうしてあそこの公園に」という声もある。(無償譲渡が)決まりましたよということではなく(協議を)進めているということでよいのか。

市長 県としても譲渡となれば正式なプロセスが必要になる。市としては譲渡を受ける方向で協議していくということを正式に県に伝えるプロセスになる。併せて議員からさまざまな意見をいただいていることを県に伝える。(きょう)議会で承認されたということではないので、今後も随時、県との情報を共有していきたい。協議会の設置もしながら、どういうことができるか考えていくことが今後のプロセス。県には正式に譲渡を受ける方向で考えてます、ということをお伝えしていきたい。

あさのえくこ市議(市民ネット)建築基準法48条の特例、グランピングの建設について知事が、特例許可を受ける手続きに入ると、一種のどう喝発言をされている。今日、無償譲渡を受けますという判断にはならない状況にある中で、特例手続きはいつ消えるのか。

市長 譲渡を受ける方向性を県に正式にお伝えしたい。常識的に考えれば、そこで一旦止まるのではないかと考えている。

鈴木富士雄市議(自民党政清クラブ)議会で議決するのは維持管理費の時になるということだが、その前に経過をもっとよく説明してもらいたい。今日は(無償譲渡を受ける方針で)検討していくという話だが、協議していくことは結構あると思うので、議会に丁寧に何回も説明していただきたい。

市長 おっしゃる通りの方向性でやりたい。対話をきちんと積み重ねていくことは重要。進ちょくについてご相談させていただきながら、契約関係はどうするとか、適時適切に議会に報告し協議したい。市民ともプロセスを踏んでいきたい。

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自然と等身大で向き合う遊び仕事(4)《デザインを考える》27

【コラム・三橋俊雄】今回取り上げる「遊び仕事」は、京都府宮津市由良地区に伝わる「にごりすくい」と「手長エビ漁」についてです。 にごりすくい 由良川は、大雨で濁ると水中の酸素が不足し、魚たちはふらついて川のよどみに集まります。そこを「タモ」と呼ばれる大きな網で上流から下流へすくい、ぐるりと岸へ寄せて捕える漁法があります。アユもコイもウナギも一度に捕れるため、「これほど面白い漁はない」と評されたものです。 昭和30〜40年頃までは広く行われていましたが、現在では大雨時の危険性から禁止されている地域もあります。タモは、杉の枝を巧みに曲げ、直径数ミリのしなやかな枝先を両側から重ね合わせて糸で縛り、輪を作ったものです(図1)。柄の長さは約4メートル。網の部分には絹糸が用いられ、女性たちが編み上げ、毎年柿渋に浸して干すことで補強していたとのこと。 手長エビ漁 網を使った漁法では、サナギや身欠きニシンを餌に糸でつり下げ、手長エビをおびき出します。エビが姿を現したところを、直径20センチほどの細長い小さな網で捕えます。エビは驚くと後方へ逃げようとするため、その習性を利用し、背後からそっと網を差し入れて捕えます。 一方、「モンドリ」を用いた漁は、由良川で6月から12月にかけて行われます。モンドリにサナギを入れて円錐形のふたをし、10カ所ほどに沈めて紐(ひも)の一端を川辺の石に結び固定します(図2)。2日ほどたったら、Y字型の枝先にひっかけて仕掛けを引き上げます。一つのモンドリに7〜8尾、合わせて80尾ほど捕れることもあります。 捕れた手長エビは高級食材ですが、売るのではなく、天ぷらにして家族や友人に振る舞われます。私も学生たちとともに、何度もその味を楽しませていただきました。 地域の伝統的生活文化を継承 これこそが「遊び仕事」の世界です。自然に分け入り、プリミティブな道具を用いて相手と同じ土俵で獲物を追う。これまでの体験で培ったスキルを駆使し、身体感覚を総動員して得られた成果は、自らの喜びとなるだけでなく、仲間内での誇りや自慢にもつながります。さらに、その成果をお裾分けすることによって、また新たな喜びが生まれていきます。 すなわち、「遊び仕事」とは、①人間行動の本質である「遊び」を通じて、自らが自然との関係を結ぶ第一歩であり、②自然と人間が等身大で向き合える貴重な共生の場でもあります。さらに、③「遊び仕事」を通じて身近な自然や生活文化の豊かさを再認識することができ、地域の伝統的生活文化の継承・保全、そして地域の活性化にもつながります。 翻って、今日の私たちは情報化やバーチャル社会のただ中にあります。だからこそ、「遊び仕事」の経験は、④自然との「生身の」付き合い方を体験できる、大切な学びの場ともなるのはないでしょうか。(ソーシャルデザイナー)

「支える人が守られる環境を」児童相談所元職員 飯島章太さん講演会 21日 土浦

「誰かを支えたいと願う人こそ、大切にされる職場であってほしい」—。千葉県の児童相談所・一時保護所で勤務していた元職員の飯島章太さん(32)はこう訴える。 飯島さんは、過酷な労働環境で体調を崩し退職を余儀なくされたとして、千葉県に未払い賃金や慰謝料の支払いを求めて提訴している。21日、土浦市川口の古書店「生存書房」で、飯島さんの講演会「労働としてのケアを考える~千葉児童相談所裁判が問うこと」(茨城不安定労働組合主催)が開かれる。「心身が守られない職場環境のしわ寄せが、本来守られるべき子どもたちに及んでいる」と語る。 精神疾患の長期療養 3倍 飯島さんが、千葉県 市川児童相談所の一時保護所で児童指導員として勤務を始めたのは2019年4月。虐待などで家庭に居られなくなった子どもを保護し、生活支援や自立に向けたサポートを行う役割だった。現場では、定員の倍となる約40人が入所し、多い日は一人で20人の子どもを見なければならなかった。 職員不足の中、休憩はほとんど取れなかった。午前8時半から午後5時15分までの日勤では、学習支援、食事や掃除のサポート、レクリエーションなどに対応した。精神的に不安定な子どもも多く、けんかや事故など不意のトラブルにも注意を払わなければならない。不慣れな職場で十分な研修もないまま、先輩の仕事を「見よう見まね」で覚えていった。残業も頻繁で、行動観察記録や学習プリントの確認などの事務作業を終える頃には、午後8時を過ぎることも多かった。 月に4~6回の宿直勤務は、2人の職員で40人を担当した。約21時間勤務の上、残業もあった。子どもたちの就寝後は、翌日の会議や行事の準備、子ども一人ずつの記録作成に追われた。緊急一時保護の受け入れや体調不良の子どもへの対応で、仮眠時間は廊下に布団を敷いて待機し、「横になれても眠れたことはほとんどなかった」と振り返る。 こうした勤務の中で飯島さんはうつ病を発症。休職と復職を繰り返し、2021年11月に退職することになる。翌22年7月、千葉県を相手取り総額1200万円の損害賠償を求め千葉地裁に訴訟を起こした。 「自分の経験を個人的な問題で終わらせたくなかった」と飯島さんは話す。千葉県では2020年度、児童相談所の専門職員の精神疾患による長期療養取得率は、他の県職員の3倍以上にのぼり、その約半数が20代だった。体調を崩したのは、決して飯島さん個人の問題ではなかった。 子どもを管理する葛藤 勤務する中で飯島さんが最もつらかったのは、「子どもを支えたい」という思いで選んだ職場で、いつしか子どもを「管理する側」に回ってしまったことだった。飯島さんは、大学2年から6年以上、子どもの電話相談ボランティアを続けていた。修士論文のテーマにもしたこの経験を生かし、「子どもの側に立ち、丁寧に話を聞き、支えになれる仕事」として選んだのが児童相談所だった。 しかし実際の現場では、思い描いた仕事はできなかった。子どもたちは多数の細かいルールに縛られていたからだ。ティッシュ1枚を使うにも職員の許可が必要とされ、起床時間まで布団から出てはならず、食事は完食が原則で、残すには許可と謝罪が必要とされた。根拠があいまいな規則に従わないと、強く叱責される子どももいた。集団生活を送る上で規律は必要とはいえ、「刑務所みたい」とつぶやく子どもを目の当たりにし、「家庭で傷ついた子どもを、さらに傷つけてしまっているのではないか」と葛藤した。しかし激務の中で、抱いた違和感はまひしていったという。 「本当は一人ひとりの話を丁寧に聞き、その子の背景を理解しながら支援につなげたかった。学生時代にしていた電話相談の延長線のような仕事がしたかったんだと思う」と飯島さん。学生時代に積み重ねてきた経験が無価値になっていくことに追い詰められていく。ふと我に返った時、自分を信じられなくなる恐怖に襲われた。そして、心身は限界を迎えた。 応援してくれる人は必ずいる 訴訟では12人の弁護士が弁護団「じそう弁護団ちば」を結成し飯島さんを支えている。千葉地裁は、飯島さんが、人員不足や多忙により十分な研修がないまま現場に配属されたこと、休憩や仮眠時間にも作業があったことなどが「安全配慮義務違反」にあたると認め、県に50万円の支払いを命じた。県は即日控訴し、東京高裁での控訴審は10月9日に結審。現在、和解協議が進められている。 飯島さんは「紆余曲折の中でも、今こうして生きてこられたのは、多くの人の支えがあったから」と語る。一方で、「児童相談所に対して世間からは厳しい声も多い。職場では、社会に味方がいるのかと不安になる職員もいた。でも裁判を通じて、応援してくれる人は必ずいると実感できた」と振り返る。 今回の講演会に向けて「今も不安を抱えながら現場で働く職員はたくさんいる中で、120%の力で働く職員に『頑張って』とは言えないが、こういう仕事を選び、子どもたちのために働く人がいることを多くの人に知ってほしい。社会の中で、児童相談所が抱える問題に関心が広がり、職場環境が改善されることで職員が安心して働けるようになれば、それが何より子どものためにつながる」と語る。(柴田大輔) ◆飯島章太さんの講演会「労働としてのケアを考える~千葉児童相談所裁判が問うこと」は21日(日)午後2時から、土浦市川口2-2-12、古書店「生存書房」で開催。参加費無料。参加申し込みは専用サイト、またはメールibarakifuantei@gmail.com(茨城不安定労働組合)、電話050-1808-8525(生存書房)へ。

外国人排斥の風潮に強い危機感 市民団体「牛久入管を考える会」が報告会

法務省の東日本入国管理センター(牛久市久野町)に収容されている外国人の処遇改善に取り組む市民団体「牛久入管収容所問題を考える会」(つくば市、田中喜美子代表)の年間活動報告会が14日、つくば市役所コミュニティ棟で開かれ、昨今の外国人排斥の風潮に強い危機感が示された。 牛久にある同入管センターは、在留資格のない外国人や難民申請中の外国人を収容している。考える会は、収容されている外国人との面会活動などを通して処遇改善などを要望している。 記念講演をしたノンフィクションライターの安田浩一さんは、SNS上でまん延する外国人への偏見を助長する様々なデマについて「デタラメが差別につながり、差別と偏見のその先にあるのは殺戮(さつりく)」だと、102年前の関東大震災での朝鮮人虐殺を例に挙げ強く非難した。 その上で、モスク建設やインターナショナルスクール開設反対運動、移民反対デモが各地で行われる一方、製造業や農業の現場などで多くの外国人労働力に依存している現状に触れ「私たちは好むと好まざると外国人と関わっている」と述べた。 考える会の田中代表は、選挙運動を通じて複数の政党や候補者が公然と外国人排斥を掲げ、政府が「違法外国人ゼロキャンペーン」を展開していることについて「国策として外国人排斥が始まった」と厳しく批判した。 活動報告会には市民や外国人ら約80人が参加した。 東日本入管センターの2025年の被収容者数は現在、毎月約40人から60人前後で推移しているなどの報告があった。2024年6月、入管施設に収容しない代わりに、監理人の管理下で一定の制約を受けながら社会生活を送り退去強制手続きを進める「監理措置制度」が始まって以降は大きく減っている。一方、今年6月以降は被収容者が強制送還される事例が増えているという。 登壇した「監理措置」の中国籍の男性は、入管施設内での生活について「入管職員とコミュニケーションを取ればいじめられなかった。ただ、自由は無かった」と振り返る一方で、「監理措置制度」の下で、入管施設の外で一定の制約を受けながら社会生活を送る現在の状況を「入管の中には塀がある。(入管の)外にも塀がある」と述べた。(崎山勝功)