火曜日, 7月 1, 2025
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つくば市の2大懸案 県が提示した解決策《吾妻カガミ》150

【コラム・坂本栄】つくば市の2つの問題に茨城県が解決案を示しています。市内の公立高不足問題では「県立高に頼らずに市立高をつくったら」と。県営洞峰公園問題では「県の改修案に反対なら公園を無償で譲る。市の考え方で維持管理したら」と。いずれも本コラムが提案したアイデアです。施策立案の参考になったのでしょうか?

市立高をつくるなら県も手伝う

公立高不足問題では、118「つくば学園都市は公立高過疎地」(2021年10月18日掲載)で、「…『市設・県営』はどうでしょう。ハード(校舎)は市が造り、ソフト(授業)は県が動かすという折衷案です。おカネの面では県立or市立よりも両者の負担が軽く、教育効果は県立と同じになります」と提案しました。

6町村が合併して生まれ、中央をTXが通る研究学園都市には、新興市特有の凸凹がいくつか生じています。県立高配置はその一つです。場所が周辺地域に偏り、TX沿線には、高レベルの県立高はあるものの、平均的な学生が通える県立高がありません。そこで、親たちは沿線地域に新しい県立高がほしいと県に求め、市も県に働きかけています。

ところが、県は少子化・人口減という全体の傾向を踏まえ、高校新設には消極的です。つくば市=人口増加市の学生は、▽周辺の人口減少市の高校に通ってもらう(広域圏での過不足調整)▽既存高の学級増で対応する(現施設内でのやりくり)―この2つが県の基本対処方針の柱です。

県に見えている景色(歴史ある旧市の人口減)とつくば市に現出している景色(新興市の人口増)が違う。これが県と市の対立の原因です。しかし、「県立高をつくるのは県の仕事」という市の主張に、上の2本柱だけでは説得力がないと思ったのか、県は「こちらも手伝うから市立高をつくったら」と言い出しました。本コラム案と考え方は同じです。

県と市の公立高論争については、記事「…押し付け合い? 知事『市立を』、つくば市長『県の仕事』」(1月6日掲載)をご覧ください。

市営公園にして維持管理したら

県営洞峰公園問題では、134「…洞峰公園、つくば市が買い取ったら?」(22年6月6日掲載)で、「公園管理費を減らしたい県の立場を考え(魅力度アップの方は勘弁してもらい)、同時に市民の疑問や反対に応えるためにも、洞峰公園を買い取って市営にするのも一案です」と提案しました。

「県の立場」とは、①洞峰公園の運営を民間に任せ(グランピング施設はその目玉)、その収益で維持管理費を捻出したい、②キャンプやBBQ施設を園内に設け、アウトドア活動を振興し、県の魅力度をアップさせたい―ということです。一方、「市民の疑問や反対」とは、③自然公園なのに、キャンプ者の騒音や酒、BBQの煙や臭いは迷惑―ということです。

コラム134の提案は、①と③をセットで解決するには、公園を市に譲ってもらい、公園の現状を維持することで、「市民の疑問や反対」に応えたら、という趣旨でした。この時点では、譲渡額=簿価+アルファと思っていましたから、「買い取ったら?」になりました。ところが、県は市との協議が面倒くさくなったのか、無償で譲ると言い出しました。こちらも本コラムが示したアイデアの対市超配慮案です。

県の提案に対する市の対応は、記事「…市管理も選択肢…市長」(22年12月8日掲載)、同「『無償譲渡を前向きに調整』…市長」(2月1日掲載)をご覧ください。つくば市は県が示した洞峰公園市営化案を受け入れざるを得ないでしょう。(経済ジャーナリスト)

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200種のハス 開花始まる 土浦 霞ケ浦総合公園

霞ケ浦湖岸の土浦市大岩田、霞ケ浦総合公園の花蓮(はなはす)園で、白やピンク、淡い黄色などたくさんの品種のハスが開き始めた。約200品種のハスが栽培されている。見頃は7月中旬ごろという。 花蓮園の広さは約1000平方メートル。コンクリートで仕切られた池が80区画、たる容器が240個設置されている。 6月中旬から咲き始めた。花は早朝に開き、昼前には閉じてしまう。一つの花の開花期間も約4日と短い。開き始めたハスを見ようと、28日も朝早くからカメラを手にした人や家族連れが訪れていた。 花蓮園が開園したのは2001年。近くのオランダ風車で霞ケ浦の水をろ過し、花蓮の栽培に利用している。土浦市内で育種された品種など、花蓮園でしか見られないハスもある。 日立市から訪れた60代の女性は「ハスが咲いている時期に初めて来た。冬に来たときは何もなくて、本当にここに花が咲くのかなと思っていた。小さくてかわいいハスや立派なハスも咲いていて本当にきれい」と話していた。 隣接のネイチャーセンターのスタッフは「ハスの花が咲き始めている。満開になるのは7月中旬。お昼には花が閉じてしまうので、午前中にぜひ見にいらしてください」と来場を呼び掛けている。(伊藤悦子)