金曜日, 10月 30, 2026
ホームコラムふるさと納税の顛末記③《文京町便り》12

ふるさと納税の顛末記③《文京町便り》12

【コラム・原田博夫】2008年5月にスタートしたふるさと納税制度の問題点は、返礼品騒動以外にも多々ある。たとえば、この制度を通じて寄附を受け入れる自治体と、住民が積極的に他の自治体へ寄附を行うために住民税額が当該自治体から流出する自治体間で、構造的な食い違い・アンバランスが生じている。

まず、2021年度のふるさと納税受入額の多い団体は、全国的には、1位・紋別市153億円、2位・都城市146億円、3位・根室市146億円、4位・白糠町125億円、5位・泉佐野市113億円で、受入件数では、1位・紋別市111万件、2位・泉佐野市89万件、3位・白糠町83万件、4位・根室市77万件、5位・都城市70万件である。

その結果、2022年度の市町村民税控除額の多い団体は、1位・横浜市230億円、2位・名古屋市143億円、3位・大阪市124億円、4位・川崎市103億円、5位・世田谷区84億円で、控除適用者では、1位・横浜市34万人、2位・大阪市21万人、3位・名古屋市19.6万人、4位・川崎市16万人、5位・札幌市12万人である。

茨城県内ではどうか。2021年度の受入額の多い団体は、1位・境町49億円、2位・守谷市35億円、3位・日立市26億円、4位・つくばみらい市17億円、5位・取手市9億円で、受入件数では、1位・境町29万件、2位・守谷市15.9万件、3位・土浦市5.6万件、4位・取手市4.7万件、5位・稲敷市4.2万件である。

その結果、2022年度市町村民税控除額の多い団体は、1位・つくば市10.6億円、2位・水戸市6.2億円、3位・守谷市3.3億円、4位・日立市2.7億円、5位・土浦市2.5億円で、控除適用者では、1位・つくば市2.1万人、2位・水戸市1.4万人、3位・日立市0.7万人、4位・守谷市0.7万人、5位・土浦市0.6万人である。

ふるさと納税がネット通販化

本コラム10(2022年11月27日掲載)で紹介したように、この制度が提案された当時は、地方出身で高所得のサラリーマンが多数居住している大都市部で、この制度を利用する人が多いのではないか、と想定された。その意味では、大都市部の地方自治体から、ふるさと納税の形で寄附額・住民税額が流出するのは想定通りだった。

しかし、受入側の上位団体の顔ぶれを見ると、受入額および件数が多い団体では、明らかに、魅力的な返礼品を取りそろえているケースが多い。その意味では、地元産品の発掘などの営業努力が、こうした結果に反映している側面もある。

一方で、住民税控除の状況(ふるさと納税の利用者が多数居住している自治体)を概観すると、どうも、その地方自治体あるいはそこの居住者が富裕かどうかよりも、むしろ、その地域の住民のウェブ利用の頻度の高さなどが、反映しているようである。

つまり、高所得の中高年齢層というよりは(彼らはしばしばウェブには疎い)、所得水準はそれほど高くなくてもデジタルフリーの壮年層あるいは子育て世代が隙間時間にスマホで検索・アクセスして、魅力的な返礼品をサーチしている様子がうかがえる。現行のふるさと納税がネット通販化している、との批判のゆえんである。(専修大学名誉教授)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho





spot_img

最新記事

11~12月にオープンハウス型説明会 事業者が市に回答【つくばに国内最大級のデータセンター】

つくば市大穂の元公有地に、外資系不動産開発会社グッドマンジャパンが国内最大級となる1000メガワットのデータセンター建設を計画しているのに対し、周辺住民団体が市民向け住民説明会の開催を求めている問題で、同社は、11月から12月にオープンハウス型説明会の形式で、情報・相談ブースを開設すると市に回答した。詳細は市と協議の上決定するという。ほかに、つくば市民を対象に、同社が開発した千葉県印西市の工業団地内に立地する稼働中のデータセンターなどを間近で見学できる見学会を12月に開催するなどとしている。 グッドマングループアジア統括責任者のポール・マクギャリー同社取締役が23日付で、五十嵐立青市長に回答した。 オープンハウス型説明会(情報・相談ブースの開設)は、開催期間中、市民それぞれが自由な時間に来場し、展示してあるパネルや会場に置いてある資料を見て回る形式。会場にいるスタッフに直接質問できるが、集会型の住民説明会とは異なって個別のやりとりになるため、市民全体の意見共有や総意の把握がしづらいとされる。 同社はオープンハウス型とした理由について、つくば市が策定した「データセンターの建設及び運営に関する地域共生ガイドライン」(10月23日付)で、敷地境界から100メートルより外側に住む住民への説明については「オープンハウス型説明会を1週間以上開催」するとしたこと挙げ、「22日に市から公表されたガイドラインに沿ってオープンハウス型説明会の形式で実施」するとしている。市のガイドラインで「説明会を開催する」とされている敷地境界から概ね100メートル以内の住民と土地所有者に対する説明については、「これまでも個別説明、約1万2000部のちらし配布、戸別訪問、8月の住民説明会(8月21日付)、専用のウェブサイト等を通じて情報をお伝えして」きたなどとしている。 住民説明会の開催をめぐっては、住民団体「データセンターから市民を守る会」(柳町弘幸代表)が、周辺住民約470人の署名を添えて市議会9月定例会議に、グッドマンジャパンに出席を求めた上で、市による市民向け公開説明会の開催を要望する請願を出していた(8月31日付)。一方、市議会は請願について、請願の趣旨は理解できるが採択できないという意味の趣旨採択とし、代わってグッドマンジャパンに、周辺住民に限らず市民や市議会議員等が広く参加できる説明会の開催などを要請する決議を採択した(9月29日付、10月6日付)。 市議会の決議を受けて、五十嵐市長は22日付で同社に説明会の開催と情報提供を求める要請文を出し、23日付でグッドマンジャパンからオープンハウス型説明会開催などの回答があったと発表した。(鈴木宏子)

免震装置、40年の変化を検証 奥村組がつくばで実験

10年ごとに実験 日本初の実用免震ビル 40年前に建てられたビルを人工的に揺らし、免振装置の経年変化を調べる自由振動実験が28日、つくば市大砂の奥村組技術研究所で実施された。ビルは鉄筋コンクリート造4階建ての技術研究所管理棟で、日本初の実用免震ビルとして1986年に建てられた。竣工以来、約10年ごとに実験を続けており、今回が5回目。過去の測定結果と比較し、免震装置の性能が設計時予測範囲内の変化にとどまっていることを確認した。 実験では、建物を支える直径50センチの天然ゴム系積層ゴム25基の性能を検証した。エネルギーを吸収するための鋼棒製ダンパー12基を取り外し、総重量約2500トンの建物を積層ゴムだけで支える状態にした上で、油圧ジャッキ2基、200トンの圧力を使って建物を水平方向に10センチ押し込んだ。ジャッキの力を解放して建物を自由振動させ、揺れの周期や振幅などを測定、分析した。力が解放された瞬間、「ドン」という大きな音と共に足元から強い衝撃が伝わったが、それ以降、急速に揺れが小さくなった。 実用免震建物の歴史は約40年と比較的浅く、長期間使用した装置の性能変化を実際の建物で検証したデータは限られている。同社技術研究所の上寛樹所長は、「積層ゴムの性能が、経年によって40年以上にわたりどう変化するかは、実際の建物ではまだ十分に実証されていない。40年分のデータの傾向を分析することで、設計時の予測値が正しいかどうかを検証できる」と話す。 免震構造は、地面と建物の間に積層ゴムなどの装置を設け、地震の揺れが建物に伝わるのを抑える仕組みだ。積層ゴムは、薄いゴムと鋼板を交互に何十層も重ねたもので、建物の重さを支えながら、地震の際にはゴムが水平方向に変形することで、地面の揺れが建物に伝わりにくくする。ただし、石製ゴムだけでは揺れがなかなか収まらないため、エネルギーを吸収するダンパーを併用する。同管理棟では、鋼の棒が変形することで揺れを吸収する鋼棒ダンパーを使っている。 同社によると、過去の実験では、積層ゴムの硬さは設置から20年で約10%、30年で約11%増加。今回の40年目の実験では約12%となり、設計時の予測範囲内で推移していることを確認した。設計上は、120年後に最大30%硬くなっても安全性を確保できるようにしているという。 奥村社長は「30年目までの結果から大体の方向性は予想できていたが、40年目の実験で改めて確認できた。免震技術に対する社会の信頼性も高められたのではないか」と話した。今後も50年目、60年目と実験を続け、得られたデータを学会発表などを通じて業界全体で共有し、免震技術の信頼性向上に役立てるとともに、地震の多い日本で免震建物の普及を目指す考えだ。(柴田大輔)

筑波山の風景画家 御手洗さんしのび 回顧展と金色姫舞踏劇

11月1日~3日 自然生クラブが開催 筑波山を愛し、筑波山麓で筑波山の絵を描き続け、今年7月に亡くなった画家、御手洗(みたらい)竹松さんの回顧展「山に恋して~筑波山の風景画家」が11月1日から3日まで、筑波山麓の田井ミュージアムで開催される。併せて11月1日には同所で、御手洗さんが制作した「金色姫(こんじきひめ)」の紙芝居をベースにした舞踏劇「金色姫伝説 幻想」などが上演される。 知的障害者たちと共同生活をしながら筑波山麓で有機農業や表現活動に取り組むNPO法人「自然生(じねんじょ)クラブ」(柳瀬敬代表)が、長年交流のあった御手洗さんの功績を改めて多くの人に見てもらおうと、「筑波山麓秋祭り2026」の開催に合わせて企画した。 御手洗さんは1943年山口県生まれ。神奈川や東京暮らしを経て、79年につくば市片田に移住し画廊を開設した。88年には筑波山麓の神郡に移住、養鶏を営みながら筑波山の四季を描き続けた。2003年には日本郵便の年賀はがきに御手洗さんが描いた筑波山の絵が採用された。 回顧展で展示する作品は油絵33点。ほとんどが筑波山を描いたものだ。森や草原の中に小川が流れオレンジ色に染まった雲の下にそびえ立つ筑波山、里山の満開の桜の向こうにそびえる筑波山など、大きいものでは縦約90センチ、横約1.3メートルなど、大小さまざまな作品が並べられる。 御手洗さんの紙芝居のテーマとなった「金色姫」は、地元の蚕影(こかげ)山神社に伝わる伝説で、天竺(インド)の王女である金色姫が、継母の迫害を逃れて、桑の木で作られたうつぼ舟(丸木舟)で常陸国(茨城県)の豊浦に流れ着き、漁師に助けられたが亡くなり、なきがらがカイコとなって日本の養蚕が始まったという物語。 竹松さんは、筑波山麓の景色を次の世代に残していきたいという思いから連作の紙芝居をつくったという。自然生クラブでは2006年に上演。今回、アレンジを加えて、物語の朗読や笛や太鼓の演奏と共に再演する。自然クラブ代表の柳瀬敬さん(68)は「御手洗さんとは40年くらい前、学園地区に住んでいたころからの知り合いで、ほぼ同時期に筑波山麓に移り住んだ。山麓で農業を始めたのも、御手洗さんの影響があった」と振り返る。「御手洗さんの描く筑波山は、写実的に描くのではなく、心の風景を描いたもので、自分が見たいと思ったものを描いている。今回は御手洗さんの素晴らしい筑波山の絵を多くの人に見てもらいたいと企画した」と話す。 御手洗さんの長男の太郎さん(46)は「こんなに短い期間に企画をまとめていただいて、大変ありがたい。父は筑波山が好きで、筑波山が近くに見える場所にアトリエを構えた。生活のために養鶏業を営んだが、ここでたくさんの絵を描いてきた」と思いを語る。(榎田智司) ◆自然生クラブ 秋の芸術祭2026 御手洗竹松の回顧展「山に恋して~筑波山の風景画家」は11月1日~3日、 つくば市神郡54、田井ミュージアム(アトリエ)で開催。開館時間は午前10時~午後3時。入場無料。▽追悼公演「金色姫伝説 幻想」は1日午後1時30分開演。入場料1000円、学生や障害者など500円。定員40人、予約者優先。詳しくは自然生クラブのホームページ、または電話029-866-2192(同)へ。

西友跡地にイオンそよら ひたち野うしく駅前 11月18日オープン

昨年10月に閉店した、ひたち野うしく駅東口前の「西友ひたち野うしく店」跡地にイオンの商業施設「そよらひたち野うしく」が11月18日オープンする。西友の施設を居抜きで活用する。他社跡地の既存建築を活用するのは「そよら」として初めて。 出店するイオンリテール(千葉市、古澤康之社長)は「出店を決める際には立地条件、交通利便性、周辺人口動態や地域特性などを総合的に判断して決定する」とし、「西友ひたち野うしく店跡地がたまたま居抜きに該当した。JR常磐線の駅前に立地し、子育て世帯が流入する発展著しいエリアであることから出店を決めた。結果的には投資金額も抑えられている利点もあった」とする。 「そよら」は、イオンリテールが新しく展開する都市型ショッピングセンターで、今月25日オープンしたばかりの「そよらつくば学園の森」(9月30日付)に続いて県内で2番目の出店となる。 常磐線利用客や牛久市周辺などの子育て世代を主なターゲットとする。ファミリー層が気軽に集い、思い思いの時間が過ごせる場とするため、約550席の大型フードコードを設け、さらにスポーツ観戦ができるディスプレイを設置する。2階には子供のための屋内型運動施設「のびっこ」を設置する。 立地は、ひたち野うしく駅改札口からペデストリアンデッキで店舗2階につながる。店舗は2階建て、敷地面積は約3万4700平方メートル、売場面積約1万1900平方メートル。 1階では、時短ニーズや健康志向に配慮した食品、地域で親しまれている商品のほか、食品売場内に日用消耗品や肌着、ベビーフードなど利用頻度の高い商品を販売する。 2階のヘルス&ビューティケア売場では、トレンドコスメや高機能ヘアケア商品、香りアイテムのボディ・ルームフレグランス、機能性衣類のリカバリーウェアなどを幅広くそろえる。ボビーや雑貨を扱うエンターテイメント売場では「祝う」「集める」「学ぶ」などのシーンをテーマ毎にゾーニングし、それぞれのテーマに沿った商品を販売する。 専門店はサイゼリヤ、バーガーキング,ミスタードーナツなど飲食店を始め、29店舗が入る。 商圏は牛久市、阿見町、龍ケ崎市など。車で10分以内のところに約10万人が住んでおり、駅の利用客も含め、年間150万人の利用客を見込む。 同社執行役員の簑原邦明SC本部長は「コロナ禍が過ぎて人々はリアルを求めており、データを見ても顧客数は増えている。既存施設の価値をもっと上げていきたい」と話し、今後も茨城南部に店舗を増やす可能性を示した。(榎田智司)