日曜日, 11月 8, 2026
ホームコラムふるさと納税の顛末記③《文京町便り》12

ふるさと納税の顛末記③《文京町便り》12

【コラム・原田博夫】2008年5月にスタートしたふるさと納税制度の問題点は、返礼品騒動以外にも多々ある。たとえば、この制度を通じて寄附を受け入れる自治体と、住民が積極的に他の自治体へ寄附を行うために住民税額が当該自治体から流出する自治体間で、構造的な食い違い・アンバランスが生じている。

まず、2021年度のふるさと納税受入額の多い団体は、全国的には、1位・紋別市153億円、2位・都城市146億円、3位・根室市146億円、4位・白糠町125億円、5位・泉佐野市113億円で、受入件数では、1位・紋別市111万件、2位・泉佐野市89万件、3位・白糠町83万件、4位・根室市77万件、5位・都城市70万件である。

その結果、2022年度の市町村民税控除額の多い団体は、1位・横浜市230億円、2位・名古屋市143億円、3位・大阪市124億円、4位・川崎市103億円、5位・世田谷区84億円で、控除適用者では、1位・横浜市34万人、2位・大阪市21万人、3位・名古屋市19.6万人、4位・川崎市16万人、5位・札幌市12万人である。

茨城県内ではどうか。2021年度の受入額の多い団体は、1位・境町49億円、2位・守谷市35億円、3位・日立市26億円、4位・つくばみらい市17億円、5位・取手市9億円で、受入件数では、1位・境町29万件、2位・守谷市15.9万件、3位・土浦市5.6万件、4位・取手市4.7万件、5位・稲敷市4.2万件である。

その結果、2022年度市町村民税控除額の多い団体は、1位・つくば市10.6億円、2位・水戸市6.2億円、3位・守谷市3.3億円、4位・日立市2.7億円、5位・土浦市2.5億円で、控除適用者では、1位・つくば市2.1万人、2位・水戸市1.4万人、3位・日立市0.7万人、4位・守谷市0.7万人、5位・土浦市0.6万人である。

ふるさと納税がネット通販化

本コラム10(2022年11月27日掲載)で紹介したように、この制度が提案された当時は、地方出身で高所得のサラリーマンが多数居住している大都市部で、この制度を利用する人が多いのではないか、と想定された。その意味では、大都市部の地方自治体から、ふるさと納税の形で寄附額・住民税額が流出するのは想定通りだった。

しかし、受入側の上位団体の顔ぶれを見ると、受入額および件数が多い団体では、明らかに、魅力的な返礼品を取りそろえているケースが多い。その意味では、地元産品の発掘などの営業努力が、こうした結果に反映している側面もある。

一方で、住民税控除の状況(ふるさと納税の利用者が多数居住している自治体)を概観すると、どうも、その地方自治体あるいはそこの居住者が富裕かどうかよりも、むしろ、その地域の住民のウェブ利用の頻度の高さなどが、反映しているようである。

つまり、高所得の中高年齢層というよりは(彼らはしばしばウェブには疎い)、所得水準はそれほど高くなくてもデジタルフリーの壮年層あるいは子育て世代が隙間時間にスマホで検索・アクセスして、魅力的な返礼品をサーチしている様子がうかがえる。現行のふるさと納税がネット通販化している、との批判のゆえんである。(専修大学名誉教授)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho





spot_img

最近のコメント

最新記事

少し変わった「キツツキ」《鳥撮り三昧》19

【コラム・海老原信一】見た目はそうでないけれど、れっきとしたキツツキの仲間。その名はアリスイ。爬虫(はちゅう)類に似た雰囲気があり、図鑑でキツツキの仲間だと知ったときは驚いた。林などをすみかにする他のキツツキ類と違い、ヨシ原のような湿地が好みらしい。初めて観察できたときは、「なにこれ?」と驚いた。 その後、何度か観察する機会があり、湿地の灌(かん)木などにいるアリの巣に、長く伸びる舌を差し込み、舌の粘膜にアリをからめとって食べる様子を観察できた。動物のアリクイのように、この仕草からアリスイの名がついたのだろう。ここに鳥見の楽しさがある。隠れているなら見つけてやるぞ…と。 もちろん、ガサゴソと彼らの近くへ踏み込むことはしない。望遠鏡を使い、丹念に居そうな場所を探す。他の隠れるのがうまい鳥を探すとき同様、静かに、丹念に。冬鳥たちの観察が楽しくなるシーズンに、これから入る。 隠れ上手なタシギ 保護色となると、冬枯れの緑の消えたハス田でタシギを見かける。危険を避ける場所を探し、レンコンの葉や茎が重なり合ったところに隠れている。うまくカモフラージュされているのだ。「うまく隠れるものだなあ」と思ったりするが、「頭隠して尻隠さず」の言葉があるように、隠れ上手のタシギも「尻隠さず」のことがある。 タシギにしたら隠れた気分なのだろう、こちらから体は丸見えなのに、目だけが隠れている。それを見て、うれしくなっている自分がいる。鳥見は楽しいと思える日々が、気力と体力と相談しながら、もう少し続くようにと願うこのごろ。(写真家)

シミュレーションゴルフ施設 つくば市梅園にオープン 24時間 完全個室型

市内初、ガソリンスタンドに隣接 室内に設置されたスクリーン上に国内外の有名ゴルフコースを映し出し、スクリーンに向かってショットを打つことで、弾道や飛距離を再現するシミュレーションゴルフ施設「DOOR TO GOLF(ドアトゥゴルフ)アドバンスセルフつくば梅園店」(岡野広大店長)が6日、つくば市梅園のガソリンスタンド隣りにオープンした。つくば市内で初のシミュレーションゴルフ施設となる。 世界のトッププロも使用するゴルフシミュレーターを導入し、スイングやボールの弾道などを高精度なAIで分析する。ヘッド軌道、インパクトデータ、ボール初速、打ち出し角などを瞬時に可視化し、感覚だけに頼らない効率的な練習をサポートする。完全個室のため、周囲の目を気にせず自分のペースで練習に集中でき、初心者から上級者まで、それぞれのレベルや目的に応じて利用できる。 セキショウグループの一員で、ガソリンスタンドなどを展開するアドバンス・カーライフサービス(つくば市、関太士社長)が、ガソリンスタンド「Dr.Drive(ドクター・ドライブ)アドバンスセルフつくば梅園店」に隣接して開設した。グループ初のシミュレーションゴルフ施設となる。 年中無休で24時間営業する。施設は個室型で完全貸し切り。個室の面積は約43平方メートル(13坪)、3人まで一緒に利用できる。利用は会員制で、インターネットで空き状況を確認し予約、鍵アプリを利用し入室する。 施設のオープンを記念して6日、導入式が催され。エネオス関東第一の南秀樹副支店長が第1号を試打。打球は正面大型スクリーンに映し出され、ボールの速度、弾道などの数字が瞬時に表示された。自身のフォームなども側面のディスプレイに映し出されていた。 アドバンス・カーライフサービスの坂林康二副社長は「ゴルフの盛んな茨城県に合わせこの施設を考えた。元の施設は整備工場だった。セルフ給油所隣接ということもあり、ここも(最新の設備やシステムを導入し無人化するなど)人をあまり使わずに出来る施設を考えた。まずは会員数を伸ばしていきたい。状況を見て2号店と、今後も増やしていく可能性がある」と話した。(榎田智司) ◆「DOOR TO GOLF アドバンスセルフつくば梅園店」はつくば市梅園2-25-12、電話029-855-2236。料金プランは▽ライト会員(月4回枠) 1万1000円▽スタンダード会員(月8回枠)1万7600円▽アドバンス会員(月12回枠)2万4200円▽ナイト⑷会員(月4回枠/利用時間 午前0時10分~7:00)6600円▽ナイト⑻会員(月8回枠/利用時間 午前0時10分〜7時)1万1000円 。入会金は通常1万1000円。料金はいずれも消費税込。家族(または同伴者)は3人まで無料で利用できる。

オタクと研究者 認知症になるのはどっち?《看取り医者は見た!》57

【コラム・平野国美】「著名な研究者と部屋にこもるオタク、どちらが認知症になりやすいと思いますか?」。講演などでこう問いかけると、大半の方は「人付き合いをせず閉じこもるオタクのほうが危ない」と答えます。世間では、頭脳労働や社会的地位こそがボケ防止の切り札であり、孤独は万病の元だと信じられているからです。 認知予備能の崖落ち しかし、老年医学や地域医療の現場で多くの人生の黄昏(たそがれ)を見つめていると、こういった常識はしばしば裏切られます。特に理工系の大学教授や研究機関のトップを務めたような碩学(せきがく)が、定年退職を迎えた途端、まるで断崖絶壁から転落するかのように、急速な認知症を発症・進行させてしまう事例は少なくありません。 医学的には「認知予備能(コグニティブ・リザーブ)の崖落ち」と呼ばれる現象です。彼らは高い知性によって、脳内に蓄積する病変を長年カバーし続けています。しかし、その知性は「研究室」という手厚い外部環境に依存していました。巨額の実験装置、論文執筆を促す締め切り、身の回りの手続きなどを整えてくれる秘書や学生など、その「足場」が退職とともに失われたとき、長年覆い隠されていた脳の機能低下が隠しきれず、一気に決壊してしまうのです。 内発的情熱のドパミン 一方、世間から「孤立のリスク」と心配されるシニアのオタクたちはどうでしょうか? 彼らの姿を見ていると、その驚くべき自立性に目を見張ります。 オタクの探求は、初めからすべて自己完結しています。自室の机の上、パソコンの画面、ネット上のコミュニティ…。退職したからといって、奪われる設備も権威もありません。むしろ、「これで誰にも邪魔されず、一生分の模型作りに没頭できる」「あの資料を心ゆくまで読み解ける」と、定年を人生の黄金期として迎え入れます。 彼らは、誰かに頼まれて動いているわけではありません。内発的な情熱からドーパミンを自前で分泌させ、指先を動かし、情報を分類・アーカイブし、至福の時間を過ごします。世間的な意味での「お付き合い」は希薄でも、関心で結ばれたネットの仲間と知的な交信を保ち、退屈という最大の毒を軽々と無力化してしまうのです。 偏愛と探求の場を持つ 高齢者施設に足を運ぶと、かつて社会を動かした大人たちが、折り紙や童謡、風船バレーといった幼稚園の遊戯のようなレクリエーションを強いられ、書き上げた書道に赤ペンで「花丸」をつけられ、自尊心を削られている光景に出会います。大人のプライドを無視した一律のケアが、どれほど人を無気力に追い込むことか。 知性の高さそのものが脳を守るのではありません。自分の手元に、誰にも奪われない「偏愛と探求の場」を自前で持っているかどうか。定年後の認知機能を支えるのは、かつての肩書ではなく、一人で面白がれるオタク的な「したたかさ」なのだと感じています。オタク、恐るべし!(訪問診療医師)

市南部にも1000メガワット つくば市、新たなデータセンター集積地誘致

つくば市北部の大穂地区に国内最大級となる1000メガワット(100万キロワット)のデータセンター建設計画が進み、周辺住民から不安の声が出ている中、つくば市は2日、市南部の高須賀、上郷地区約74ヘクタールに、新たなデータセンター集積拠点を誘致するため、民間事業者の募集手続きを開始した。市南部に誘致するデータセンターは受電容量が最大1000メガワットで、大穂と同規模になる。 圏央道つくば西スマートインターチェンジ(IC)周辺の、同市高須賀、上郷に誘致する。開発にあたっては、事業者(企業グループ)が一括して、用地買収、土地造成、建設、管理運営などを実施する。付属施設として排熱を利用する施設や蓄電池を設置・保管する施設などデータセンターと関係のある施設などは立地を認める。 計画地は現在、田んぼ、畑、山林、宅地などで、面積の半分が農業の振興を図るべき農業振興地域の農用地区域となっている。地権者は計251人。産業用地とすることについて意向を確認したところ、96.8パーセントの243人から同意を得ているという。未同意の残り8人は所有者不明や未相続など。一方、2025年1月からこれまで4回地権者説明会を実施しているが、データセンター集積地とすることを地権者に説明したのは10月31日が初めてという。 今後のスケジュールは、12月中に事業者から参加申込を受け付け、市が事業提案書やプレゼンテーション、ヒヤリングなどで審査を実施、来年3月までに事業者を選定する。その後、用地買収価格などについて市及び地権者団体と協議し、市と協定書を締結する。2027年度以降、用地買収を開始し、28年度に農業振興地域の除外申請や開発許可などの手続きを実施、29年度に造成工事に着手し、30年度に建設工事に着工、32年度に1棟目のデータセンターが操業を開始する想定だ。 同地区は2024年12月、地域経済をけん引することを目的とする地域未来投資促進法に基づく重点促進区域となり、開発の際に農業振興地域の除外などの手続きが簡素化されたり、税制優遇などを受けることができる地域となった(25年1月10日付、25年1月26日)。さらに今年9月、つくば市が、脱炭素電源を核とするデータセンター集積型のGX戦略地域に認定されたことを受けて、市が事業者に伴走しながら環境配慮・地域共生型のデータセンターを目指すとしている。 具体的な環境配慮として、自主的な環境影響評価の実施、サーバーや機器の冷却は液冷却や液浸冷却など高効率な技術を導入、排熱の活用、環境データの測定など。地域共生として住民説明会の開催、地域振興施設の整備、市内の大学や研究機関との連携、想定される市税、用地買収価格などを審査し、事業者を選定する際の加点にするなどとしている。 市立地推進課によると、昨年6月から9社を対象にサウンディング調査を実施、併せて50社以上にヒヤリングを実施してきた。当初、製造工場や物流施設の誘致も検討したが、資材高騰などの中、データセンター以外を一括開発により誘致するのは厳しいと判断したという。データセンターに関しては、すでにかなり多くの企業から問い合わせなどがあるとしている。 大規模データセンターの立地に対しては、莫大な電力使用や排熱、水利用、騒音、振動などの環境影響について専門家が課題を指摘、大穂地区では大きな不安の声が出ており、住民団体「データセンターから市民を守る会」が結成されている。(鈴木宏子)