人口増加が続くつくば市で、市民団体が県立高校の新設を求めている問題で、大井川和彦知事が「つくば市立の高校をつくってはどうか」と昨年12月の県総合教育会議で発言したのに対し、つくば市の五十嵐立青市長が「県立高校をつくるのは県の当然の仕事」と6日の市長定例会見で反論するなど、県と市が押し付け合う形になっている。
昨年12月8日の県総合教育会議の議事録によると、大井川知事は「つくばにおける高校の問題は我々としても非常に注意を払って検討している」と述べた上で「(つくば市の)通学圏の周辺をみると、今後生徒数が減っていく中で、定員割れがどんどん増えてくる状況が予想される。通学圏にある高校を生かすことも検討しなければならないので、単純につくば市の中心部に新設校ということにはならない」などと述べた。
一方「通学圏の中でクラスを増やすなど、対応できるように県としても努力する」とし、高校新設について「我々からもつくば市に、市立の高校をつくってはどうかということも逆に提案させていただいている。その際には県として、教員の配置等含めて全面的に協力したいということも記者会見の場で申し上げている」と話した。
大井川知事はさらに「今後きちっとつくば市側に我々の意図をお伝えし、状況を理解いただいて、最善の選択肢ということを、我々としても努力しているということを、ご理解いただけるよう努力していきたい」などと述べた。
同教育会議で県教育委員の市原健一前つくば市長が「(市の)中心部ではお子さんがどんどん増えて、今後やはり高校に入りやすい環境をつくってほしいという意見もどんどん強くなっている」「ここは県と市が協力し合いながら、私はつくば市立の高校を設置していただくのが一番いいのかなということを、以前から感じている。その中で実態調査をお願いしたい。実態調査をきちんとやって、市と連携をとって、用地の提供であるとか、人事でも協力するというような姿勢を見せていただきたい」と県に投げ掛けたのに、大井川知事が答えた。
市は六つの小中学校つくる
これに対し五十嵐市長は6日の会見で記者の質問に答え、「県立高校をつくるのは県の当然の仕事。これだけ人口が増加しているつくば市において、県として県立高校を責任をもってつくっていただきたい。市としては目先だけでも六つの小中学校をつくっていく。県で県立高校の一つをつくっていただくことができないということはないと思っている。県の責任で進めていただきたい」と述べた。
記者からは「県と市のはざまで父母が谷間に落ちてしまう。突っ張り合いでは問題は解決しないのでは」などの質問が出たが、五十嵐市長は「市立高校ニーズが出てくるのは、本来、県立高校がきちんとつくられていれば必要ない話。県がつくる意思があれば、市立高校の議論すら始まらない。私どもとしては基礎自治体の責任である小中学校、義務教育の学校をきちんとつくっている。県には当然の責任として県立高校をつくってほしい」と強調した。
さらに「県立高校をつくるのは県の仕事。本来果たすべき責任を果たさないで何かを提案するのではなく、責任を果たしてから次のステップになる。それをしないで、つくらないから市で、という発想になって、しょうがないねという発想になっていたら、自治体間の関係や県としての使命はどこにいってしまうのだろうと考えている。市は市としての責任を果たす。県は県立高校をつくるという県の責任を果たしてほしい。県が県立高校をつくれば解決する、県にできない理由はまったくない。県としての優先順位を高めていただければ回避できる問題」だと繰り返した。
県方針は既存県立高の定員増
つくば市の県立高校問題をめぐっては、市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」(片岡英明代表)が、つくば市では2021年、中学3年生の6人に1人しか市内の県立高校に入学できなかったこと、つくばエリア(つくば、つくばみらい、守谷、常総市など)の中学卒業生が2030年には21年より1000人増えることなどから、県に対し、つくば市やつくばエクスプレス(TX)沿線に全日制県立高校の新設や既存校の定員増などを求めてきた。
これに対し県教育庁は、つくばエリアの中学卒業者は2030年までに約700人増加するが、周辺のエリアでは約1400人減少すること、つくば市の生徒が多く通学している土浦、牛久、下妻の3市に限れば、つくばエリアの中学卒業者数は2030年までに現在より約700人増加するのに対し、3市は約500人減少し、つくばエリアの増加が約200人上回る状況となるーなどとして、つくば市内の既存の県立高校の魅力を高め志願者を確保する、通学可能な範囲で進学先が確保できるよう適切な時期に既存の県立高校の定員を増やしていくなどとしている。(鈴木宏子)
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