つくば市研究学園のイーアスつくば前、研究学園交差点から国土地理院に向かう通り(取手つくば線)を走ると、輸入車販売店が多いことに驚く。国内で売られている輸入車は、ほぼこの一画で買うことができる。輸入高級車の代名詞ともいうべき、ベンツ(独)、ポルシェ(独)の店をこの区域に出している関彰商事の関正樹社長に、同社の経営戦略などを聞いた。
つくば学園都市をターゲットに
茨城全体をカバーするポルシェ店は、元々、ひたちなか市にあったが、2015年、研究学園駅に近い現在の場所に移した。「水戸市に近いところよりも、わが社が本社機能を置くつくば市の方がよい。それに、つくばの方が(高級車を求める)高所得層が多く住んでいると考えたからだ。もうひとつ、常磐高速を使い来店する首都圏のお客様にもつくばの方が便利になると判断した」という。
関さんによると、関彰が扱うポルシェの年間販売実績は140台ほど。一方のベンツは、つくば店で年間240台ぐらい販売している。平均的な販売価格は1000万円を超えるというから、つくばエリアには裕福な人が多い。
ベンツ店は1989年のオープン時から、ショールームが「つくば本社」(二の宮)の1階、整備工場が土浦市に置かれ、ユーザーにとっては不便だった。「研究学園駅近くによい土地を見つけ、2013年、ショールームと整備工場を今の場所に移転、統合した」。ベンツの新車を扱う店は、つくば市のほか、古河市、いわき市(福島県)、鴻巣市(埼玉県)にも置いている。
研究学園駅近くに5販売店配置
関彰が扱う輸入車はポルシェとベンツだけではない。プジョー(仏)の店も、2021年、土浦市から研究学園駅近くに移転、オープンした。国産車も扱っており、同駅近くにホンダの店を出している( 「セキショウホンダ」19店の1つ)。ポルシェ店に隣接するベンツのサーティファイドカーセンター(保証付き中古車店)を加えると、この区画に自動車販売店を5つも展開していることになる。
関彰の自動車販売額は年間約300億円に上る。グループの年商は約1600億円というから、モビリティ部門は2割ぐらい。シェアが大きいのは街のスタンドなどで販売するガソリンを中心としたエネルギー部門で、全売上高の半分の約800億円。3番目は事務機器などを扱う法人営業部門の約150億円。
いずれ、東京にも本社を設置?
「車にしてもガソリンにしても、要するに、150年前の『発明』や『発見』で食べている会社」と、笑う。そして「それはそれでやっていくが、次の世代は(これらの)モノを売るだけでは会社が成り立たなくなる。成り立っていく仕組みをつくっていかねばならない」と、現状に満足することを戒める。
具体的には、モビリティ部門、エネルギー部門、法人営業部門など、縦割りの仕事の進め方を改め、各部門の「自立」を維持しながら、部門間の「交流」を活発にしたいという。個人顧客や取引先企業のニーズなどの情報が共有されれば、既存の事業を拡大できるだけでなく、新たな事業分野を開拓できると考えているようだ。
インタビューの中で驚いたのは、「今後、東京にも本社を置く可能性はゼロではない」という発言。来年2023年に創業115年を迎える関彰は、今世紀はじめ、本社機能を下館市(現筑西市)からつくば市に移し、2016年には、下館本社、つくば本社の「2本社体制」に移行した(登記上の本社は筑西市)。事業の構成や仕事の仕方だけでなく、本社についても次のステップが頭にある?
【せき・まさき】1963年、下館市生まれ。1988年、成蹊大経済学部卒。1988~92年、セコム勤務。1992年、関彰商事に入り、取締役、常務、専務、副社長を経て、2006年から社長。現在、茨城県経営者協議会副会長、筑波大経営改革室メンバー、学校法人・茗渓学園理事、下館商工会議所副会頭など。つくば市在住。
【インタビュー後記】研究学園駅から車で5分以内のところに、ジープ(米)、ルノー(仏)、アウディ(独)、VW(独)、BMW(独)、ボルボ(瑞)、キャデラック・シボレー(米)などのディーラーも店を構えており、この区画は「輸入車の街」と言ってよい。「独製セダンから国産SUVに乗り換え若ぶっている」(FBでの自己紹介)私にとっても、面白いゾーンだ。(経済ジャーナリスト・坂本栄)