木曜日, 1月 22, 2026
ホーム暮らし「みんなを元気に」 宝来館跡地で8回目の野外映画祭 常総水害から7年

「みんなを元気に」 宝来館跡地で8回目の野外映画祭 常総水害から7年

「待ってました!」。映画の上映が始まると、会場から大きな声援が飛び交った。常総市で10日夕、野外上映会「一夜限りの復活映画祭 第8回 懐かシネマ」(懐かシネマ実行委員会、東郷治久会長)が開かれた。会場は、かつて旧水海道市の中心にあった映画館「宝来館」(常総市水海道宝町)跡地の駐車場。会場に立てられた大スクリーンで上映される映画「二宮金次郎」(五十嵐匠監督)を楽しもうと、約200人が市内外から訪れた。上映前には、ウクライナから避難し、今年6月から常総市内で暮らすシンガーのヴィテリアック・イリータさんのミニコンサートが開催された。

始まりは水害1年前

この日は、2015年の鬼怒川水害から7年。常総市では、関東・東北豪雨により鬼怒川堤防が決壊。市内の3分の1が浸水し災害関連死を含め15人が亡くなった。上映会場のある水海道駅前一帯も、膝まで水に浸かった。イベント開始に先立ち、映画祭発起人で実行委員の羽富都史彰さんが呼び掛け、1分間の黙とうが捧げられた。

「この映画祭は1回限りの予定で、水害の1年前に開催したのが始まりでした。しかし、翌年に水害があり、みんなを元気付けようと2回目の開催を決意したことが今につながりました」

そう話すのは、懐かシネマ実行委員会会長で、つくば市でホテルや料亭、専門学校などを経営するサンスイグループ代表の東郷治久さん(74)。上映会場にあった「宝来館」は、東郷さんの両親が1946年から1983年にかけ営んでいた映画館で、東郷さんの生家だった。

「父は映画館技師。入り口で切符を売る母親の背中に私はいました」と当時を振り返る。明治の芝居小屋を改装して作られた映画館には、延べ100万人以上が訪れたという。映画一筋だった父親からの「多角的な事業をしなさい」という教えが、その後の教訓になり、日本語学校、動物学校、ホテル事業などをつくば市を中心に展開してきた。「映画屋の息子である私にとって、故郷であるこの街が原点」と東郷さんは話す。

実行委員会会長の東郷治久さん。会場には、つくば市在住で、宝来館の絵も手がけた映画看板絵師・井桁豊さんの作品が展示されていた

タイムスリップできる

「懐かシネマ」は、「街に活気を」と2014年、常総市の千姫祭のときにスタートした。水害後の開催時にアンケートをとると「また来年もやってほしい」という声が圧倒的だった。「世の中、損得だけで動いているわけでない。故郷への恩返し」だと東郷さんは当時を振り返る。上映会を繰り返す度に「ここでデートした」「ここで亭主に手を握られた」「ここに来ると昔にタイムスリップ」など、宝来館での思い出を懐かしむ地域の声が寄せられた。

「ここに来ると、みんながタイムスリップできる。昔を思い出す場所。イベントがそのきっかけになっている」と東郷さんがイベント開催の喜びを語る。他の、もっとに広い会場での開催を求める声もあるというが「ここでやることに意味があるんですよね」。

一昨年はコロナ禍で開催を見送った。「毎年楽しみにしている市民がいます。今年はコロナが心配だったが、落ち着いてきたのでよかった」。今後については、「そう簡単にやめられません。私は宝来館の楽屋で育った。水海道に元気になってもらいたいという思いは常にあります。あと2回で10回。それまではなんとか頑張ります」と語った。(柴田大輔)

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