つくば市内の公立中学校に4月から、校内フリースクールが設置されている。不登校児童生徒を対象に、NPOなどが学校外で運営することの多いフリースクールを、市が学校内に開設したもので、校舎の中に生徒が自分のペースで学んだり友達と過ごしたりできる居場所ができた。
同市の不登校児童生徒数は、2014年度の約200人から20年度の399人、21年度には592人(小学生243人、中学生349人)と年々増加し、対応は待ったなしの状況。今年度、県から学校に2人の教員が加配されたことで開設に至り、校内フリースクールのより良い在り方を研究するパイロット校と位置づけられている。
市内の別の中学校では4月から別室登校がスタートしている。こちらは県からの加配がないため、NPOからスタッフ1人の派遣を受け、教員などと連携しながら支援を実施している。
自己決定に基づく学習支援
校内フリースクール「SSL教室」は、Special Support & Learning(スペシャル・サポート・アンド・ラーニング)の頭文字から名付けられた。開放感があり、教員が生徒をいつでも温かく迎えている。
支援目標は「社会的な自立を目指す」。校内にあっても教室復帰を目的とせず、生徒本人の社会的な自立を目指して個々に寄り添う支援が行われている。例えば、登下校の時間や学習する内容は生徒自身が決める。どの教科を勉強するかは自由で、読書もOKだ。放課後の部活動に参加するという計画を立て、SSL教室で過ごす生徒もいるという。

専用の昇降口にはSSL教室に通う生徒向けのシューズボックスが置かれている。在籍する学校の昇降口を利用することもでき、どちらを使うかは生徒の判断に任されている。
教室内には学習用の机と椅子のほかに、リラックスできるソファーが置かれ、靴を脱いでくつろげるスペースがある。広いテーブルがあって生徒たちが会話を楽しめる。1人で勉強したいなど、生徒たちの過ごし方に応じてパーティションで仕切るなどの工夫がされている。
「多様な学びを受け入れる教室」
SSL教室は、本人または保護者の希望をもとに受け入れている。利用状況は5月初旬までの1カ月間で10人だったが、7月末には14人と入室希望者が増えている。長期欠席だった生徒が登校してくるようになったという。
教室は、主に3人の教員が担当している。いつも教室にいる担任と、担任とともに教科を指導する専属の担当教員、そして他教員や保護者との連絡、調整など運営を担う教員3人だ。その他に教科担当の教員らが計画的に授業を行う。
担任教員は「時間割で区切られた学びが苦手な子どもは学校に行くことで苦しむようになる。学校の枠を超えて多様な学びを受け入れるSSL教室が、生徒にとって居心地の良い居場所であってほしい」と話す一方で、「教室に集まる生徒たちはみな前向き」と目を細めた。
校長は「SSL教室に通う生徒を目の当たりにしたり、職員会議での担当教員からの報告を通して、生徒たちを理解して見守る雰囲気が学校全体に広がってきた」と語った。
市教育局学び推進課の岡田太郎課長は「校内フリースクールは児童生徒が自分で家から通学できるという利点がある。パイロット校の経験値を生かして市内の公立学校に開設したいが、人員配置のために市の予算を確保するという課題がある」と話した。(橋立多美)
【お断り】「不登校生徒が特定されないように」との市学び推進課の意向から学校名は伏せ、撮影は生徒のいない夏休みに行った。