7年前、JA水郷つくばの核となったJA土浦(当時)の組合長へのインタビューを旧常陽新聞の「キーパーソン」に掲載した。その主見出しは「県南3農協(つくばの2JAとJA土浦)、広域合併へ」。ところが、つくば側1JAが協議の途中で抜け、この話はご破算に。その後、JA土浦は、JA茨城かすみ(阿見町、美浦村)、JA龍ケ崎(牛久市、龍ケ崎市、利根町)との合併に舵(かじ)を切り、2019年JA水郷つくばが誕生。それから3年半。合併JAの現状とつくばのJAとの合併再協議の可能性について、池田正組合長に聞いた。
経営の「質」は県内JAで1番
JA(農業協同組合)の経営は、信用(金融)、共済(保険)、購買(農家への肥料や農機などの販売)、販売(地域の消費者への農産品直接販売)の4本柱で成り立っている。JA水郷つくばの昨年度の事業収益は91億円、事業総利益は32億円だった。利益ベースではJA土浦の2倍になったという。
茨城県内には17の農協があるが、JA水郷つくばの経営規模(組合員数や保有資産)は、県北をほぼカバーするJA常陸に次いで2番目。「常陸さんは、うちに比べて担当エリアが広く、職員数も多い。ただ、経営の質で見れば、うちが県内1ではないか」と話す。
当面は事業連携、合併はその先
7年前、JA県中央から「(当時20あった)県内JAを6つに集約せよ」という大号令が出ていたが、現在はどうなっているのか? 経営の質だけでなく規模でも県内1になるために、そろそろ、つくば市のJAとの合併を再考する時期ではないか?
「確かに当時は(合併の)数字目標を設け、強制的に集約しようとする考えがあった。しかし今は、上から押さえつけて合併させることはない」「(当時は)規模を大きくして経営を安定させることが、組合員と地域に貢献すると考えていた。しかし、経営安定は合併だけでない」「今は、近隣農協との事業連携などで経営強化を図っている」
そして、連携の例を3つ挙げてくれた。①JAつくば市が旧桜村に持っている「ライス・センター(もみ殻を取り除き玄米にする施設)」の共同利用(JA水郷つくばからすれば借用)、②JA水郷つくばが運営する「イーアスつくば」内の農産品直売所(JAつくば市とJA谷田部の農家も出品)、③JA新ひたち野(石岡市の一部、小美玉市)とのレンコン改良事業。
でも、「合併から3年半がたち、うちも余裕が出てきた。いろいろな事業連携の先に、将来を展望して、(他のJAから話があれば)合併のタイミングを考えたい」とも言っており、一度ボツになった合併話が再浮上することもありそうだ。
合併JAのネーミングで苦労
合併によって6市町村をカバーすることになった「JA水郷つくば」のネーミングが以前から気になっていた。「つくば」が入っているのは、つくばのJAと合併することを織り込んでいるからでは?
「合併組合名は、霞ケ浦と筑波山から成る『水郷筑波国定公園』を参考にした。ただ水郷というと利根川と霞ケ浦の間の水域を指し、潮来市なども入ってしまう。そこで、位置情報が必要だと、県南ならどこからでも見える筑波(山)を平仮名で使った。『水郷筑波』では重過ぎるからだ」「(つくば市のJAとの)将来の合併を意識した名前ではない」(笑)
【いけだ・ただし】1956年、土浦市大町生まれ。1979年、東京農大卒、JA土浦に入る。JA茨城かすみ、JA龍ケ崎との合併(2019年2月)前の2017年6月、JA土浦組合長に就任。合併協議を主導し、JA水郷つくばの初代組合長に。土浦市下高津在住。
【インタビュー後記】農協合併は安倍政権が進めた農業大改革の一環。農業保護策を改め、農協の経営力を強化して、国際競争力を付けさせる政策だ。最近ではあまり話題にならないが、貿易の枠組みが複雑化している現在、経営強化の必要性は変わらない。「6つに集約」でもいいのではないか。(経済ジャーナリスト・坂本栄)
【参考】旧常陽新聞の佐野治組合長インタビュー(PDF)