土曜日, 2月 7, 2026
ホームつくば工事費増額、増資を検討 つくばまちなかデザイン

工事費増額、増資を検討 つくばまちなかデザイン

市議会に決算報告

つくば市議会中心市街地まちづくり調査特別委員会(ヘイズ・ジョン委員長)が6月議会開会日の9日開かれた。市が出資するまちづくり会社「つくばまちなかデザイン」の内山博文社長が、2022年3月期(21年4月-22年3月)決算と今後の見通しについて報告した。

つくばセンタービル1階東側と4階吾妻交流センターを改修して貸しオフィスなどにする改修事業費について、昨年12月時点では約4億7700万円としていたが、1階の改修の際、想定していない構造体等があったこと、設備改修に想定より費用を要したことなどから、家具や備品費などを圧縮しても事業費が約3000万円増え、約5億700万円になるとする見通しを示した。

今後さらに、4階の吾妻交流センターをオフィスにする改修工事などを予定していることなどから、増資を検討するとした。

「順調」

4月にオープンした貸しオフィス7区画については、現在3社が4区画に入居することが決まっているとした。残り3区画は3社と契約手続き中で、そのうち1社は6月中に入居、2社は7月をめどに入居する予定で満室になるとした。昨年12月の事業収支見通しでは空室率15%(稼働率85%)を想定していたが、100%稼働するという。

5月にオープンしたコワーキングスペース(共同仕事場)は、利用料を無料とした5月は129人302件の利用があったとした。有料利用がスタートする6月は、3日時点で月額個人会員28人、月額法人会員4社、ビジター会員6件から申し込みがあり、個人会員15人、法人会員1社と契約したという。当初想定目標は個人会員30人、法人13社であったことから、内山社長は「順調に申し込みが入っている」と強調した。

一方、設立1年目の2022年3月期決算は、つくばセンタービル1階東側の貸しオフィスなど「co-en(コーエン)」が開業前であったことから、売り上げ収益約1100万円に対し、人件費や家賃、水道光熱費などの経費(販売費及び一般管理費)が約4100万円かかり、営業損失約3000万円と赤字になった。

設立2年目の2023年3月期(22年4月-23年3月)のco-enは、約5300万円の売り上げを目指すとした。(鈴木宏子)

9日開かれたつくば市議会中心市街地まちづくり調査特別委員会の様子=同

◆9日の調査特別委員会での主なやり取りは以下の通り。

山中真弓市議(共産) 今年(22年4月-23年3月)の売り上げ目標が5300万円ということだが、内訳を教えてほしい。

内山社長 5300万円は売り上げであり、利益ではない。(5300万円の内訳は)シェアオフィス(貸しオフィス)が3000万円強、コワーキングスペースが2500万円弱。地下駐車場事業の売り上げは入ってない。カフェ&バーの収入は家賃が月14万円、プラス、歩合として売り上げの8%を見込める。月500万円の売り上げとするとプラス40万円が入り、予想をかなり上回る。

山中市議 昨年12月(に議会に出された資料)の「働く人を支援する場」の事業収支の資料では2022年3月期は営業利益が134万円の赤字となっている。今回の決算は3000万円の赤字となっている。どうして差が発生するのか。

内山社長 昨年12月の事業収支はセグメント(区分)ごとの収支。働く人を支援する場の事業収支を切り取って示した数字で、一般管理費は(事業収支に)落としてない。(一般管理費は)開業後(2022年4月以降の事業収支)に織り込んでいる。決算と性質が違う。

山中市議 四半期ごとに決算を議会に報告してほしい。

内山社長 半期に1回ぐらいは報告できる。収益改善には第2期(吾妻交流センターをオフィスにする改修工事)が行われないとプラスに転じない。ここ(1階)の部分だけでは厳しい。

川久保皆実市議(つくばチェンジチャレンジ) co-enが5月にオープンしたが子連れワーキングスペースができてなかった。今後の方針はどうか。

内山社長 協働実施を予定していたNPO法人と1、2月の、直前まで協議していた。NPO法人に経営上の問題が発生したので、NPO法人と協議し、いったん中断した。3月の判断なので代替の事業者の検討が進んでいない。これまでいろいろな事業者とコミュニケーションをとる中で委託費が払われないと実施できないということだったこともあり、代替の事業者が見つかってない。具体的な話ができない。

川久保市議 スケジュールはどうか。

内山社長 できるだけ早く、秋口ぐらいまでにはめどを立てたいと思っているが(子連れワーキングスペースのみの)事業収支はプラスマイナスゼロを見込んでいる。収支を大きく左右する部分ではないので、内容にこだわって検討したい。

川久保市議 コワーキングスペースの個室(ウェブ会議等をする部屋)だが、音が外に聞こえていた。防音の必要があるのではないか。

内山社長 音が反響するという意見をいただいており、吸音対策の方が急務かと思っている。

川久保市議 ウェブ会議での秘匿性の高い内容が外に漏れてしまうのではないか。

内山社長 具体的なご意見をいただきならが検討したい。

川久保市議 秘匿性がある会議はミーティング室を利用すればよいか。

内山社長 そちらの方もある。

川久保市議 授乳室のところに2段の段差がある。ベビーカーをどこに置けばいいのか。

内山社長 左手にベビーカー置き場がある。

ヘイズ委員長 (つくばまちなかデザインから出されている)報告に関する質問にだけにしてほしい。

川久保市議 情報発信だが、(つくばまちなかデザインが発信する)「つくまちノート」は2件しか更新がない。

内山社長 3月まではハードの整備にスタッフの労力を注力した。マンパワーに限りがある。

山中市議 コロナ禍で工事費が増え(1階の改修工事に)3億2000万円かかったということだが、決算書の有形固定資産は2億6000万円しか計上されてないのはどうしてか。

内山社長 工事完了は5月なので、すべてを有形固定資産として計上するのは今期(2023年3月期決算)になる。部分的に支払ったものが3月までに計上されている。シェアオフィスは安定収益につながる。増設することで3期目から8000万円を超える売り上げになる。増資を図ることで資金確保を図り安定経営につなげたい。

山中市議 出資者を新たに募るということか。

内山社長 (現在の)株主に事業報告が必要になるが。

鈴木富士雄市議(自民党政清クラブ) 決算書の「販売費及び一般管理費」だが、売り上げ収益1100万円に対し、役員報酬1170万円となっている。役員は非常勤が3人、常勤が2人。従業員給与は457万1000円となっている。スタート時は厳しい面があるが、年間売り上げ収益と役員報酬が同じということに疑義を感じる。

内山社長 株主やつくば市から、出向という形で、各社に人件費を負担いただいている。役員報酬は2人分、従業員報酬は実質的に1人。かなり抑えながら進めている。

飯岡宏之市議(自民党政清クラブ) 今回は(設立から)1期目なので、2期目に注目したい。去年12月ごろ(100万円しか出資してない株主の)LIGHTz(ライツ)のいい報告ができると聞いていたが。

内山社長 中長期の中で(増資の)話をすることを再開したい。

飯岡市議 連携事業者の(市内でコワーキングスペースを運営する)シビックパワーはどうか。

内山社長 限定的な委託先として考えており、コワーキングスペース全体(の運営)ではない。(コワーキングスペースの)ユーザーを引き継いでいただくなど協力いただいた。月1回程度のイベントを実施していただくことで150万円程度の委託を行いながら運営に協力していただく。

橋本佳子市議(共産) 次の段階(吾妻交流センターをオフィスにする改修計画)に進めることにゴーサインを出せるか慎重になってしまう。シェアオフィス(貸しオフィス)の需要が高いという根拠をもう少し説明してほしい。

内山社長 この段階で(貸しオフィスの)契約すべてが完了していることが何よりの実績。シェアオフィスは当初想定より値上げし、家賃を坪1万5000円に設定している。近辺より高い設定だがすべて埋まった。現場ではかなりの問い合わせがあり、第2期工事を実施することが会社にとって急務だと考える。

塩田尚市議(山中八策の会)増資を図るということだが、LIGHTzに増資してもらうということか。

内山社長 LIGHTzも一つ。もともと立ち上げの際、7~8社の出資を目指していた。様々な株主の開拓を含めて検討したい。

塩田市議 3セクなので(増資すると)つくば市が持っている議決権割合が下がるのではないか。

内山社長 その辺りは(つくば市と)協議を重ねた結果、増資も一つの手段だとご理解を得ていると思っている。人材等、様々な立場で協力いただける会社を募っていきたい。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

88 コメント

88 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

デフサッカー銀メダルの社員 伊東美和さんを特別表彰 関彰商事

創業118周年式典 関彰商事(本社筑西市・つくば市、関正樹社長)は6日、つくば国際会議場(つくば市竹園)のLeo Esakiメインホールで創業118周年記念式典を開催した。式典終了後には特別企画として座談会「セキショウの挑戦者たち」を実施、ラジオのトーク番組のスタイルで、各支社で活躍する社員による地域の魅力や取り組みなども紹介された。 式典では永年勤続社員および優良社員の表彰と、昨年退職した社員への記念品贈呈が行われた。特別表彰にはセキショウグループのアドバンス・カーライフサービスに勤務する伊東美和さんが選出された。これは昨年11月に開催された東京デフリンピック2025にて、デフサッカー女子日本代表チームのキャプテンを務め、チームとして初の銀メダル獲得に貢献したことなどが評価された。 社長式辞では、関社長が同社の目指す姿や組織のあり方について「私たちの使命はお客様の課題を解決し、その先にある理想の将来を実現し、よりよい明日を共に創ること」だと述べた。さらに「それはまず、お客様の悩みを把握するところから始まる。その悩みや課題も今は複雑化しており、一人の社員や一つの部門で解決しきれるものではない。オールセクションで解決していく。お客様の持つ理想の将来を共有し、その目指すところを築き上げていく、それをグループ全体、オールセキショウで進めていこう」などと話した。その上で「私たちの強みは仲間同士の信頼。全員の顔と名前が分かり、同じ地域で仕事をしてきた。これが118年間磨き上げてきた強み。この強みを生かせるよう、2000人以上の社員がそれぞれ、その人の持つ力を100%引き出せるような働きやすい環境を作っていくことが社長としての役割だ」とした。 ラジオ形式で座談会 座談会「セキショウの挑戦者たち」は、1月からLucky FM茨城放送で同社提供のラジオ番組「茨城の挑戦者たち」の放送が始まったことを記念して実施された。第1部では関社長のほか、同番組で司会を務める常陸太田市出身の作曲家マシコタツロウさんと元Lucky FM社長でフリーアナウンサーの阿部重典さんが登壇、「社員からの質問にお答えします」と題し、人生の転機になった出来事や仕事とプライベートのバランスなどについて忌憚(きたん)なく話し合った。 第2部では水戸、いわき、古河、須賀川、つくばで活躍する5人の社員が、それぞれの地域の魅力や人とのつながり、仕事上の挑戦などについて話した。「今後の可能性、将来性」というテーマでは、第3地域支店の郡司剛宏支店長が、水戸ホーリーホックや茨城ロボッツの躍進など、水戸がいまスポーツで盛り上がっていることを挙げ、「茨城を元気づけるとともに、関彰のブランド力と存在価値を高める契機としたい」と話した。いわき地域支店の古和口佳幸支店長は、昨年8月の小名浜道路開通について、常磐道を通じた物流やビジネスの活性化のほか、海岸エリアの復興などまちづくりにも寄与していることをPRした。(池田充雄)

香りたつ物語《ことばのおはなし》90

【コラム・山口絹記】休日の昼下がり、私が自室で本を読んでいると、娘が「これ作ってみたい」とレシピ本を持ってきた。レシピと言っても、昔から娘と一緒に読んでいたファンタジー小説の再現レシピで、作りたいのは物語の中に出てくる肉と山菜の鍋らしい。 なかなか渋い選択だと思う。娘はあまり肉が得意ではないし、材料に書かれているラム肉にいたっては食べたことがないはずだが、せっかくなのでそのことには触れないでおくことにした。何事も経験である。 今回の私はあくまでサポート役である。材料をそろえ、火加減を見るのが私の役目で、具材の切り方や鍋に入れる順番は娘に任せる。公式の再現レシピとはいえ鍋物だ。細かいところまで書いてある通りに進める必要もないだろう。娘はページと鍋を交互に見ながら、立ち止まっては、しばらく考えている。 ラム肉と山菜の匂い 面白いのは、娘と私の間で共有されているのが、実際の味の記憶ではなく、物語の中にあるイメージだけということだ。当然、2人ともこの鍋を食べたことはない。そもそもファンタジーなので物語と全く同じ材料が手に入るわけではないのだ。「こういう鍋だろう」という輪郭だけのイメージと、寒い土地の情景や、登場人物たちが鍋を囲む場面だけが、共通の前提としてある。 煮えていく鍋から湯気が立ち、少し土っぽい匂いが台所に広がった。ラム肉の香りは思っていたより控えめで、山菜の匂いに溶けていく。これが正解なのかどうかは分からないし、物語と同じ味である必要もない。ただ、文字で読んだことのある一場面が、現実の鍋として再現されていく。 妻と弟も加わって鍋を囲む。案の定、こどもたちにはラム肉はやや不評だった(妻と私はおいしいと思ったけど)。それでもきちんと完食できるのは自分の手で調理したからだろう。これは料理という行為の魔法だ。洗い物をしながら、物語と現実がほんの一瞬だけ同じ鍋を囲んでいたことを思い返していた。(言語研究者)

もん泊実現へ情報共有 14日「第2回長屋門サミット」 NPOつくば建築研究会

長屋門の維持と活用について各地の関係者と議論する「第2回長屋門サミット」が14日、つくば駅前の同市吾妻、つくばセンタービル内 コリドイオで催される。NPO法人つくば建築研究会(坊垣和明理事長)が「長屋門の情報共有と維持継承活用に向けて」をテーマに開催する。 同市には200を超える長屋門が現存する。同研究会はこれまで、市内と周辺地域に残されている江戸時代から明治、昭和初期に建てられた長屋門を、建築文化として維持活用する研究を重ね、市民シンポジウムで意見交換したり、実際に長屋門を訪ねる「みち歩き」イベントを開いてきた。 目標は、長屋門に民泊機能を加味した「もん泊」の実現。しかし家主の理解を得ることが前提である上、長屋門の風情を損なわず宿泊性能や水回り設備などをどのように追加させるか、それらに必要な費用のねん出をどうするかなどの課題があり、市内ではまだ実例がない。 同研究会事務局の若柳綾子理事によると「4年ほどの研究活動は地元を主体に進めてきた。さらに全国に視野を広げて他地域の事例を調べてみると、やはり同様の悩みを抱えるところが多い中で、我々以上にテーマを絞って研究している具体例があった。それらをネットワーク化したいと考え、昨年2月につくばで第1回サミットを開き、東北や近畿地方で行われている長屋門の保存、活用研究について情報交換を行った」。第1回は、宮城県栗原地域をはじめ、栃木県宇都宮市、愛知県渥美半島に点在する長屋門の特徴を生かし維持保存活動に取り組むグループを招き、近世以降、各地域で長屋門を整備してきた武家勢力、地域ごとの自然環境に対応した家屋としての機能などを紹介した。 一方、つくば地域の長屋門は、歴史的成り立ちや自然の豊かさなどから、全国の他地域の長屋門よりも残存数、状態が良好だ。若柳理事は「その反面、注目されることもなく長い年月が経ち、所有者には代を重ねるごとに維持負担が重くのしかかっている。事業としてのもん泊をそれらの課題解決に役立てたいと考えている」とした上で、「今回の第2回サミットで画期的な事例を紹介できることとなった」と話す。 第2回は新たに、和歌山県紀の川市で具体化した全国初の長屋門での宿泊事業者となる「門リトリートサロン/門泊」を営む有薗光代さんを招く。さらに昨年に引き続き宮城県栗原地域と、茨城県桜川市で進む歴史的伝統建築物に関連した街づくり事例紹介を行う。 「有薗さんは陸上自衛隊にいらした方で、災害派遣や国際協力などを通じてインフラ整備に従事した経験を持つ。2023年から紀の川市を拠点に歴史的建築物と地域資源の活用をテーマに発信しているが、このスピード感に驚かされる」と若柳理事。 「つくばでの活動は、長屋門に宿泊するという『もん泊』構想から始まったが、紀の川市でついに具体例が実現した。多くの課題をどのようにクリアしてきたのか助言をいただけるのが今回のエポックとなる」と説明する。 紀の川市の事例におけるつくばとの違いは、事業化を念頭に置いた活動の一手だと考えられる。つくばが何もしていないわけではないが、これまでの活動は長屋門の周知というテーマを掲げながらも、文化研究色の強い集まりであり、事業化=ビジネスとして扱う段階には至っていない。先進事例を積極的に取り入れられるかどうかが今後の成果を左右するだけに、第2回サミットに期待が寄せられている。 今回登壇するのは▽桜川市の「ディスカバーまかべ」吾妻周一会長が「真壁地区-30年に及ぶ街並み保存・活用等の紹介」について話すほか▽同研究会の坊垣和明理事長が「つくば地区-つくばの長屋門の紹介、みちあるき報告」▽和歌山県紀の川市、門リトリートサロンの有薗光代さんが「もん泊構想、関連イベントの紹介」▽宮城県栗原市、くりはらツーリズムネットワークの大場寿樹代表理事が「栗原地域における取組の現状、課題等の紹介」をテーマに話す。その後、会場参加者などを加えて意見交換などする。(鴨志田隆之) ◆第2回長屋門サミットは14日(土)午後1時から、つくば市吾妻1-10-1 つくばセンタービル内 市民活動拠点コリドイオ3F大会議室で開催。定員100人。参加費は無料。参加申し込みは11日まで、つくば建築研究会ホームページの申込フォームで受付中(先着順)。

ふるさとのない時代《くずかごの唄》154

【コラム・奥井登美子】お正月には誰も故郷に帰りたくなる。私が育ったのは荻窪のみどり幼稚園。緑の名の通り、生垣に囲まれた家と野原の、のんびりした緑色の住宅街だった。 しかし今の東京の町はどこも高いビルばかりで、緑がない。故郷という言葉とはかけ離れた風景になってしまっている。私の故郷と呼べるような所は、もうどこにもなくなってしまったのだ。 幼い時、父の故郷、新富町へもよく連れて行ってもらった。父は歌舞伎座が新富座であった頃の、鉄砲洲小学校出身。「菅原伝授手習鑑」などに寺子屋の子役として駆り出されて、よく出演させられたそうだ。台詞(せりふ)も筋もよく覚えていて、よく私に語って聞かせてくれた。 隅田川のほとりに町があって、父は「〇〇ちゃんの店でノリを買おう」などと、昔の友達の家に寄っておしゃべりするのを楽しみにしていた。父の故郷はいま、日本ではない、高いビルばかりのどこか架空の空間になってしまっている。 タケちゃんの文が朝日に載った 1月27日の朝日新聞「折々のことば 鷲田清一」に、加藤尚武の文が載っていた。「個人の間の平等は、ある程度まで…自然の平等に支えられているが…国力の差は、ネズミとゾウの違いよりも大きい」 加藤尚武は私の弟のタケちゃん。京都大学の哲学教授を務めた後、鳥取に環境大学を創り、環境問題を、哲学のまな板の上に載せた人。「環境問題のすすめ」という著書もある。生活者として、医療と環境を意識して生活している。 加藤家の男たちはみな食べるのが好きで、父も、兄も、タケちゃんも、好きなものを自分で作って食べるのが趣味だ。 私はせめてせめて、お正月くらいは、おしゃべりの好きな弟のタケちゃん、母の昔の味の料理を作ってくれる妹、姪たちに会って、亡くなった父、母、兄の個性を偲(しの)びながら、今の子供たちと比べて、大笑いするしかないのだろうか。(随筆家、薬剤師)