つくば市が昨年12月に実施した不登校児童生徒の学習支援施設運営事業者の選定をめぐって迷走した問題を受けて、今後の市の不登校支援のあり方について検討する「市不登校に関する児童生徒支援検討会議」の第1回会合が17日、市役所で開かれ、検討がスタートした。
市が、2020年10月から22年3月末までNPO法人リヴォルヴ学校教育研究所(同市二の宮、本山裕子理事長)と協働で実施した「むすびつくば」の事業について検証するほか、今後の市の全体的な支援方針を策定する。
検討会議のメンバーは、森田充・市教育長と市教育委員4人の計5人。不登校の保護者など当事者は入っていない。来年1月までに計14回程度の会合を開く。今年9月ごろ、新たな予算を必要とする施策を決め、来年1月ごろまでに全体的な支援方針をまとめる。
むすびつくばの検証については、利用者の小中学生と保護者にアンケートをとったり、運営者のリヴォルヴに自己評価を作成してもらうなどする。リヴォルヴによる運営は、来年3月までの1年間延長されただけであることから、23年度以降どうするかについても検討会議で協議する。
今後の市の支援方針については、先進自治体を調査したり、市内の民間フリースクールの利用状況を調査したり、市内の不登校児童生徒と保護者にアンケート調査などを実施した上で、フリースクールのあり方や支援策などについて検討する。
検討を始めるにあたって、現在の課題については▽専門職であるスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの人数が十分か注視する必要がある▽発達障害の早期発見や診断が遅れると個人の特性に応じた支援や対応が遅れる▽民間フリースクールは有料であるため公設の支援施設の利用者と負担に差が生じている▽不登校の児童生徒数が増えているのに対して公設支援施設の定員は2割程度しかない▽児童生徒数が増加している市南部に公設支援施設がない▽学校での別室登校による支援は専属の教員がいないーなどを挙げている。
その上で検討にあたってはまず、不登校をできるだけ生じさせないようにするため、楽しく魅力ある学校づくりや、学校で気軽に相談できる環境を整える必要があるとした。さらに、不登校になった児童生徒には多様な学習機会や居場所を確保することが必要だとしている。
市の不登校支援をめぐっては、昨年12月、市が実施した不登校学習支援施設「むすびつくば」の運営事業者の選定で、以前から「むすびつくば」を運営していたリヴォルヴが2位となり、新規のトライグループ(本社・大阪市、平田友里恵社長)が1位となった。選定結果に対し、むすびつくばの保護者会がリヴォルヴによる運営継続を五十嵐立青市長らに陳情。五十嵐市長は「現在の利用者や保護者に多大な不安を与えてしまった」などと謝罪し、2022年度は、リヴォルブが「むすびつくば」の運営を産業振興センター(同市吾妻)で継続し、1位になったトライは場所を移して新たに研究学園駅前のトライ研究学園駅前校で支援事業を開始するという異例の決着を図った。
一方、むすびつくばの一部の保護者などから、市内の不登校児童生徒すべてを公平に支援するよう求める要望が出ていたことなどから、市は、22年度に支援のあり方について検討する場を設けるとしていた。
4月から校内フリースクールや別室登校モデル校
現在の市の不登校支援は、公設の支援施設が、市が直営する市教育相談センター内のつくしの広場(同市沼田、利用者11人)、リヴォルヴが運営する「むすびつくば」(吾妻、33人)、トライが運営する「ここにこ広場」(研究学園、18人)の3カ所。ほかに民間のフリースクールが10カ所あり53人が利用している。
小中学校内での支援は、今年4月から新たに、谷田部中に専属教員を2人配置し校内フリースクールをスタートし10人が利用している。茎崎中では別室登校のモデル校としてNPO法人Leaning for ALL(ラーニング・フォー・オール、東京都新宿区、李炯植代表)からスタッフ1人の派遣を受け教員などと連携しながら支援を実施し3人が利用している。ほかに各校で空き教室などで別室登校を実施しており76人が利用しているという。(鈴木宏子)