火曜日, 12月 30, 2025
ホームつくば筑波大・東京芸大発 若手の感性合流 開幕した「絵画の筑波賞」展

筑波大・東京芸大発 若手の感性合流 開幕した「絵画の筑波賞」展

それぞれつくば市と取手市にキャンパスを置く筑波大学、東京芸術大学の在学生や卒業生ら若手作家の作品を展示する「絵画の筑波賞」展が15日、つくば市二の宮のスタジオ’Sで開幕した。会期は29日まで。「絵画の筑波賞」は主につくば市内の民間企業が中心となり、若手作家の創作活動を支援する目的で2020年に創設され、今年で3回目となる。

19点展示 大賞に森さんの作品

筑波大(洋画研究室、日本画研究室)と東京芸大(油画研究室、日本画研究室)、両大学の各研究室から、35歳以下の作家による19点が推薦され出品された。立島惠さんら5人の審査員が選考した。

大賞受賞の「葉の音」和紙、岩絵具(2022年 53×65.2cm)

その結果、大賞に森友紀恵さん(東京芸大修了)の「葉の音」、準大賞に岡野智史さん(筑波大修了)の「Hungry Predator(飢えた捕食者)」、優秀賞に古山結さん(東京芸大修了)の「I want to know more(もっと知りたい)」と矢野佑貴さん(東京芸大修了)の「大温室」が選出された。その他、奨励賞に4作品、主催者特別賞に2作品が選ばれた。(上位入賞者はいずれも大学院修了者、欧文タイトルにはNEWSつくばが日本語訳を付けた)

「Hungry Predators」岩絵具、麻紙、パネル(2022年 65.2×53cm)

大賞の「葉の音」は、鳥が柳の葉の間を飛ぶ様子を繊細な日本画のタッチで表現。準大賞の「Hungry Predators」はリアルな筆致と迫力ある構図で肉食恐竜と花を描く。優秀賞の「I want to know more」は水干絵具の特色を生かし、色合い美しく丁寧に描かれた作品。同じく優秀賞の「大温室」はコロナ禍以降よく通うようになったというつくばの植物園の温室の様子をいきいきと表現する。

初日に訪れた筑波大学大学院芸術専攻の山梨由理さんは、「同じ大学にいても領域が違うと会わない人も多く、こんな機会がないと他の人の作品を見ることがない。特にコロナ禍で遠くの美術館に足を運ぶことも少なくなったので、同世代の人がどんな作品を作っているか近くで見られる場がありうれしい」と話した。

スタジオ’S担当コーディネーターの浅野恵さんは「若手の新進気鋭の作家さんの作品を見られる貴重な展覧会。筑波大と東京芸大でタッグを組んでの展示も多くはなく、おもしろい取り組みなのでぜひ見に来ていただけたら」と来場を呼びかけた。

同賞は若手の優れた作品に賞を授与し、買い上げて支援するとともに、展示機会を提供することで作品の発信もサポートしようというもの。筑波銀行や関友商事が主催し、主につくば市内の民間企業のほか、個人からの協賛金によって運営されている。

つくば展の後、6月8日から14日まで池袋展(東京・西武池袋本店6階アート・ギャラリー)を開く。各作家の応募作品19点のほか、受賞者には新作の追加出品も行う予定。(田中めぐみ)

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認知症の理解《メディカル知恵袋》13

【コラム・廣木昌彦】認知症は誰もが発症する可能性のある大変身近な脳の病気です。「考える」「認識する」「記憶する」などの脳の機能が、病気やけがなどで悪化して、日常のさまざまなことに助けが必要な状態をいいます。認知症の最大のリスクは加齢で、超高齢化が進んでいる日本では、2025年には認知症の患者は最大で730万人で、65歳以上の高齢者の5人に1人に達すると厚生労働省の調査で推計されています。症状が進むと家族や社会の問題へとつながるため、一人ひとりが認知症を自分自身の問題として正しく理解しておくことが大切です。 加齢と認知症:物忘れの違い うつ病などの精神科の疾患や多くの高齢者に見られる加齢による物忘れは認知症ではありません。加齢による物忘れと認知症による物忘れは以下のように違います(表1)。 認知症の原因 認知症の原因となる疾患は、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)、レビー小体病(レビー小体型認知症)、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害の3つが大半を占めます(図1)。アルツハイマー病とレビー小体病は脳の神経細胞が緩徐(かんじょ)に変性し脱落していく病態です。アルツハイマー病は認知症の最も頻度の高い原因で、脳にアミロイドβという特殊なたんぱく質がたまり、それが神経細胞を破壊して、認知症の症状を出現させる病気です。 レビー小体病は脳の神経細胞にレビー小体という異常なタンパク質がたまることで、認知機能が低下する病気です。レビー小体型認知症は運動機能が低下するパーキンソン病と病態が共通することが分かっています。脳梗塞や脳出血に関連した認知症は血管性認知症と言われ、血管の閉塞(脳梗塞)や破綻(脳出血)により脳組織が破壊されることにより生じます。脳のさまざまな場所に起こり得る病態ですので、脳の機能障害もさまざまで、「まだら認知症」といわれています。 認知症の診断 認知症の診断は、日常生活や職場の様子などの問診が重要なため、診察時にはご家族に同席していただきます。認知機能低下の評価として、質問に答えていく形式の検査を行います。さらに血液検査と頭部CTまたはMRI検査を行うことで、根本的治療が可能であるビタミンB欠乏症、甲状腺機能低下症、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫などが診断され、血管性認知症は通常、頭部MRIで診断されます。 これらの疾患が該当しない場合は、頭部CTまたはMRIで脳の萎縮(やせ)や脳梗塞、脳出血などについてさらに詳しく評価し、その結果アルツハイマー型認知症またはレビー小体型認知症が疑われる場合は、最終診断のために脳血流スペクト検査に進みます(図2)。この検査は脳の機能を画像化および定量化するものです。レビー小体型認知症の診断のためには、必要に応じて「MIBG心筋シンチ検査」「DATスペクト検査」という検査を追加します。 認知症の治療 現在のところ認知症を治癒させるものはありません。アルツハイマー型およびレビー小体型認知症に対しては進行を止めることは困難ですが、薬物治療で進行を遅らせることは可能です。現在日本では、アルツハイマー型およびレビー小体型認知症に対して、進行の抑制を目的としたいくつかの内服薬と貼付薬および注射薬が保険適応となっています。また近年、アルツハイマー型認知症に対し、「レケンビ」「ケンサラ」という2つの点滴製剤が保険収載されました。 どちらの薬剤も進行を遅らせる効能ですが、アルツハイマー病の原因とされる脳内にたまったアミロイドβを除去する作用があり、大変注目されています。この治療を実施するためには、施設と医師の要件が定められており、茨城県でもいくつかの限られた病院のみ治療実施が可能です。 さらに薬価が高く、患者さんの自己負担費用が、年間10数万円から100万円程度となることが問題ですが、「レケンビ」は今後薬価が引き下がる予定であり、自己負担が軽減されることが見込まれています。血管性認知症も根本的な治療はありませんが、進行予防は可能です。高血圧や糖尿病などの血管危険因子のコントロールや抗血栓薬の内服などで脳梗塞や脳出血の再発を予防することが重要です。 認知症疾患医療センター 認知症は経過とともに、せん妄、抑うつ、興奮、焦燥などの精神症状(心理行動症状)が伴い、介護者または家族に大きな負担となります。しかし、このような症状は適切な内服薬で安定させることが十分可能ですので、担当医師に適切にその状態を伝えることが重要です。 そして認知症の患者さんは、自動車の運転、徘徊(はいかい)や行方不明、虐待、詐欺などの被害、自宅のゴミ屋敷化など、さまざまな問題があり、これらの対策として介護保険サービスが活用されています。介護保険サービスは、主治医、社会福祉士、ケアマネジャー、保健師を含め包括的に支援に取り組む地域包括支援センターで相談することができます。また、認知症の医療相談や診察に応じる認知症疾患医療センターが各地域に設置されています。 当院はこのような介護と医療のシステムを十分利用し、患者さんを取り巻く問題を解決してまいります。(筑波メディカルセンター病院 脳神経内科 専門部長)

山本五十六元帥と土浦 いくつかの符合(2)《文京町便り》47

【コラム・原田博夫】前回コラム(11月23日掲載)では、慶應義塾塾長・小泉信三(1888~1966年)の一人息子・信吉(海軍主計中尉、1942年10月22日の戦没後大尉進級)に関連して、信三博士の交友・人脈のうち、旧制土浦中学(現土浦一高)卒の武井大助氏(1887~1972年、海軍主計中将などを歴任)との交誼(こうぎ)に焦点を当てた。今回は、信吉中尉への各般の弔問・弔意の中から、土浦に関連がある2人に目を向けてみたい。 1人は、信吉氏が乗船していて轟沈(ごうちん)した戦艦・八海山丸の艦長・中島喜代宣大佐(戦没後少将)である。北品川の小泉邸へ弔問に数回訪れた武井氏が小泉博士に語ったところによれば、中島艦長は武井氏と中学時代の同級生(土浦中学第3回生、1904年3月卒)だったとのこと。 小泉信三「海軍主計大尉 小泉信吉」(私家版1946年刊、文藝春秋版1966年刊、文春文庫版1975年刊)によれば、八海山丸艦長の夫人・中島まつ子は、夫とともに戦死した信吉・海軍主計中尉の報に接し、1943年1月、次男の宣二(海軍少尉)とともに小泉邸を弔問に訪れ、夫君の出発日朝の様子などを語っている。 数日後、信三博士自身も上落合の中島邸を訪れている。帰宅後に受け取った海軍省人事局長からの速達便には、子息・信吉の海軍主計大尉進級が官記されていた。 この交流には、中島大佐と土浦中学で同窓だった武井氏が介在していたことが推測できる。中島大佐と土浦中学同窓だった武井海軍主計中将は、東京高商(現一橋大学)在学時、福田徳三博士宅で開かれていたアダム・スミス輪読会で信三博士と懇意となり、これが二人をつなぐことになった。 対米開戦直前、霞月楼に礼状 2人目は山本五十六元帥(1884~1943年、戦没後授与)である。山本元帥は1924年、霞ケ浦航空隊(いわゆる予科練)副長として赴任し、航空部門を中心とした海軍力の強化を図った。酒はダメだが酒宴は嫌いでなかったようで、しばしば、土浦市内の料亭「霞月楼」を訪れていた。 当時の若い海軍兵たちの酒宴はかなり乱暴だったようで、霞月楼に今でも保管されている山本元帥の礼状(真珠湾攻撃直前の1941年12月5日付、連合艦隊旗艦長門から)には、無礼講(ぶれいこう)へのお詫びとともに、自分にとっては「最後の御奉公」と記されている。この間の事情は、故堀越恒二(霞月楼元社長)著「記念誌:霞月楼100年」(非売品)に記されている。 山本元帥は信三博士とも交誼があり、元帥からの手紙(1942年11月尽日付、開封は12月21日)には、謹呈された信三博士著「師・友・書籍 第二輯」への礼のあとに、令息(信吉主計中尉)戦死への悔やみが述べられ、自分も「最後の御奉公」に取り組んでいる旨が記されている。元帥も、和歌では武井主計中将(1965年、歌会始の召人)を先達としていたようで、そのことも「海軍主計大尉 小泉信吉」で言及されている。 信三博士は、山本元帥が知友・武井氏と趣向が同じ点でも、元帥に親近感を抱いていたようである。1943年5月21日、慶應義塾教職員俱楽部で山本連合艦隊司令長官戦死のラジオ放送を聞いた時には(実際の死没は4月18日)、満腔(まんこう)の敬意をもって、塾生に知らせるよう指示した。ちなみに、第一艦隊司令長官は、1941年8月、山本海軍大将から、武井大助氏や中島喜代宣氏と同級の高須四郎海軍大将(1884~1944年)に替わっている。これも符合の一つである。 私の(母方)祖父から伝承された「手本とすべき先輩たち」の話に導かれ、小泉信三「海軍主計大尉 小泉信吉」は、私にとっては無視できない符合がいくつか重なった。それらを個人的な記憶として風化させるべきではないと考え、2回にわたり記した次第。(専修大学名誉教授)

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