筑波山山頂付近で薄紫色のカタクリの花が咲き始めている。今年は3月に積雪があったため例年より10日程度遅い開花となっている。つくば観光コンベンション協会によると、例年は4月10日前後が見頃になるが、今年は10日程度遅くなり4月15日から20日ごろになりそうだという。
筑波山はカタクリの群生地で、山頂付近の御幸ケ原や、男体山山頂周辺を周回する自然研究路、ケーブルカー沿いなどに約3万株のカタクリ草が自然のまま群生している。さらに北側の斜面の筑波高原キャンプ場(桜川市真壁町)周辺にもカタクリの群落が広がる。
カタクリは、ユリ科カタクリ属の多年生植物で、美しい薄紫色と2枚の葉の間から一輪の花を凛(りん)と咲かせる姿から、多くの愛好家がいる。
カタクリは、早春に花を咲かせる植物「スプリング・エフェメラル」の一種。直訳すると「春のはかない命」の意味となり、「春の妖精」とも呼ばれる。早春に落葉樹林の林床で美しい花を咲かせ、林床に光が届く初夏までに鱗茎(りんけい、地下茎の一種)に養分を蓄え、夏には地上部を枯らせて休眠する多年生植物を指す。カタクリがその花を咲かせるまでには、7〜8年を要する。
標高800メートルに位置する御幸ケ原の約2ヘクタールの「カタクリの里」では、3月末から可憐な花が咲き始めている。筑波山ケーブルカー筑波山頂駅から、山頂連絡路を女体山山頂の方向へ約100メートルほど進んだところに位置する斜面だ。普段は人が立ち入ることができないが、カタクリの花が咲く時期だけ期間限定で開放される。
カタクリの里付近では3月末、咲き始めたばかりのはかなげな花に、訪れた人が足を止める姿も見られた。

カタクリの生育には、その生活史から春に林床に十分、光が当たる必要がある。下草刈りなどの手入れが必要だが、山頂付近は自然の保護や生物多様性の確保などを目的とした環境法である自然公園法に基づいて特別保護地区に指定されているため、作業にも県の許可が必要だ。手入れはコンベンション協会が中心となり行っている。
同協会の本間亮太さん(37)は「カタクリの群生地には、ニリンソウも生えている。4月中旬にはカタクリとニリンソウ、可憐な花々の薄紫と白の色のコントラストを楽しむことができる」とし「これからゴールデンウイークにかけては、筑波山に多くのお客さんが訪れる季節。花や新緑を味わい、リフレッシュできる良い機会になると思う」と話す。新型コロナ感染予防のため、「こまめな手洗い、マスク着用、咳エチケット、ソーシャルディスタンスの保持など予防対策をした上で、お楽しみください」と呼び掛けている。(門脇七緒)
◆「春の筑波山、始動です。」と銘打つ春のキャンペーンが5月15日(日)まで開催中。例年、春は「筑波山頂カタクリの花まつり」を4月中旬まで開催しているが、今年はコロナ禍でも安心して楽しめるよう、期間を例年より長く設定し、周遊を促すことで、筑波山全体をフィールドとし分散して観光できるように工夫している。問い合わせ電話029-869-8333(つくば観光コンベンション協会)