水曜日, 6月 10, 2026
ホームつくば「反対は一部」と民間一括売却 パブコメ受け最終方針 つくば市旧総合運動公園用地

「反対は一部」と民間一括売却 パブコメ受け最終方針 つくば市旧総合運動公園用地

つくば市が昨年示した旧総合運動公園用地(同市大穂、46ヘクタール)を民間に一括売却する案について、五十嵐立青市長は11日、パブリックコメント(パブコメ)などの結果を受けて最終決定した方針を、市議会高エネ研南側未利用地調査特別委員会(浜中勝美委員長)に説明した。「一部で反対もあったが、民間による敷地全体の一体的整備の考えは維持する」とし、民間一括売却に向け、今年春か夏にも開発事業者を公募し、2022年度内に売却するとした。

市の説明によると、昨年12月に3回開催した市民説明会には延べ76人が参加し、11、12月に実施したパブコメには77人から意見や提案があった。その内訳は、市の一括民間売却案に①明確に賛成が2人②反対ではなく具体的施設提案が57人③明確に反対が6人④反対し具体的施設提案が7人⑤方向性(賛否)が明確でないが5人だったとした。

その上で、②具体的施設提案の57人は、方針案に反対ではないとし、③明確に反対と④反対し具体的施設を提案を合わせると17%なのに対し、①明確に賛成と②具体的施設提案を合わせると77%になったとした。

その上で、市民から一部反対はあったが、過剰な公共投資をすべきでない、防災拠点など一部公共利用を図る、国や県から利用を求める声がない、取得費の負担や(現状のままでは)税収が見込めないなど財政的憂慮がある、市場性が高まり好機が到来していることなどから、民間に一括売却すると結論付けた。

さらに事業者公募の条件として、売却価格は利子を含む取得原価(68億5000万円)を基準とする、事業者が計画を守るよう10年間の買戻し特約を付けるなど、新たに条件を付けていくことを明らかにした。

一方、11日の特別委では、市民説明会での賛否の人数を明らかにしてないこと、パブコメで具体的施設を提案した57人を「方針案に反対ではない」とくくって、反対意見出ない人が77%だったと結論付けたことに対し、異論が出た。五十嵐市長は閉会後、記者団の質問に対し「(パブコメの結果を)意図的に曲げたり、誘導する意図はない」とした。(鈴木宏子)

11日開かれた市議会調査特別委員会

賛否の分析めぐり異議

【11日の特別委員会の主なやり取りは以下の通り】

飯岡宏之市議(自民党政清クラブ) 私が数えたところ市民説明会では76人のうち(民間一括売却案に)賛成は3人だったと思う。パブコメは明確な賛成は77人中2人しかいない。(市の方針と市民の意見が)乖離(かいり)しているのではないか。

五十嵐市長 市民説明会ではさまざまな意見があった。それを受け止めて方針を作成している。市民説明会で賛成が3人というのは飯岡議員の解釈だ。

橋本佳子市議(共産) パブコメ結果で、具体的施設を提案した57人は「(一括売却の)方針案に反対ではない」となっている。賛成でも反対でもどちらでもないのに、反対ではないと書くべきでない。

市課長 (57人は)一括売却に言及しているのではなく、こういった施設があったらいいなと具体的提案をしている。

山中真弓市議(共産) パブコメのどの意見を「方針案に反対ではなく具体的施設を提案した方」としたのか、具体的に明らかにすべき。

市長 さまざまな意見があった。(売却先の)事業者に取り入れてもらうためにこのように(市民からの提案施設という表に)した。

山中市議 議会は一括売却を提案してない。市民意見を取り入れるのであれば一括売却を白紙にすべき。

橋本市議 (何をつくるかという)基本のキが議論されないまま、売るのが前提なのは民主的やり方ではない。市の財産だという意識で長期的に考えるべき。

小森谷さやか市議(市民ネット) 議会が一括売却を提案したわけではないが、(一括売却を)妨げるというのでもない。一括売却すれば市民から提案が上がった施設ができないかというとそういうものではない。(市が)今持っている土地の中で検討していけばいい。(民間に一括売却した場合の)固定資産税の見込みはどうか。

市課長 (市に入ってくる固定資産税は)山林なら年5600万円程度、造成し雑種地にすれば6100万円、施設が立地すれば宅地になるので6100万円程度になる。建物の固定資産税は3億5000万円程度になり、計4億3000万円程度の固定資産税が毎年入ってくると見込んでいる。法人市民税と住民税を合わせて少なくも5億円程度になると見込んでいる。

小森谷市議 URがずっと持っていて50年間買い手が付かなかった土地。今が(売却の)千載一遇のチャンス。住民投票では8割が反対した。あの時の議論を思い出していただきたい。大きな箱モノをつくることに不安をもった。身近なスポーツ施設の改修や教育施設にお金をかけてほしいというのが住民の意見だった。8割の人が反対した理由をもう一度思い出していただきたい。

橋本市議 私たちも住民投票で反対をしたが、今回は、公のものを民間に売ってしまうということに対し、慎重に考えるべきだと言っている。市民の財産を、千載一遇のチャンスだからと一括売却してしまって本当にそれでいいのか。

川久保皆実市議(つくばチェンジチャレンジ) 防災多目的広場と災害用水源が有事のとき本当に使えるのか確認したい。広場と水源は民間が整備し、維持管理は市ということだが、使用貸借契約を結ぶのか。

市課長 今のところ協定。今後必要であれば契約締結も考えたい。

川久保市議 災害協定には一般に損害賠償がなくきちんと履行されるか疑問だが、損害賠償の規程があるところもある。

市課長 今後研究したい。

川久保市議 転売防止だが、会社法上の関連会社(に限定する)とするなどのルール付けをしているところもある。

市課長 そこまで考えてなかったので検討したい。

山本美和市議(公明) (特別委に出されたパブコメ意見を閉会後に回収するという当初の市の方針に対し)どんな意見が市民からあったのか分からない。市民から提案があった施設を表にしているが、どういう意見を反映させたのか、それはなぜなのか書いた資料を付けるべき。

市長 (市民提案施設の表は)市民の意思を形にして残し、事業者に見ていただいて(カフェやテニスコートなどの従たる施設として)この先、事業者に検討材料にしてもらおうと(表のような)まとめ方をした。載せないと何のために説明会やパブコメをやったのかということになる。

飯岡市議 高エネ研南側未利用地(旧総合運動公園用地)は(筑波研究学園都市の一角として)UR(当時は日本住宅公団)が土地収用法を背景に、一団地の官公庁施設用地として土地を全面買収した。土地収用法9条は事業の承継、10条は手続きの承継について書いてあり、公共の利益に沿うよう管理しなければならないと書かれている。

飯野哲雄副市長 (元の所有者の)URとの取り決めの文書の中に(公共利用の)定めは無い。

市課長 2014年3月31日にURと市土地開発公社が締結した文書に、公的利活用に限定する条文はない。

副市長 (用地は)URから取得している。土地収用法で取得したわけではない。

中村重雄市議(創生クラブ) 用途地域変更にどのくらいかかるのか。

市部長 来年度から、1年ほどかかる。

中村市議 先に用途地域を決めて(事業者を)絞るのか。

市部長 (今回の)方針に沿って用途を決め、地区計画も合わせて決める。

高野文男市議(創生クラブ) 準工業地域にするということだが、どんな企業が入ってくるか読めない。

市部長 準工業地域は住宅や商業施設も建てられるので、地区計画の中で住宅や大規模商業施設を除外する。

橋本市議 買戻し特約はどのようにするのか。建物が立地してしまったら、そのまま市が買い戻すのか。

市課長 債務不履行があった場合に市が買い戻すことができるようにする特約で、10年間は転売できないようにする。建物が立地する前に事業計画変更があったり、転売があったりのリスクを防ぐための担保になる。

鈴木富士雄市議(自民党政清クラブ) 一括売却という方針だが、市民からは公共施設の提案がある。市民意見を売却条件にどう入れるのか。

市課長 市民からの提案施設は事業者に(従たる施設をつくる)参考資料にしてもらう。

鈴木市議 市民意見が入らなければ市民の意見を聞かないことになるが、すり合わせはどうするのか。

市長 市民意見は様々。(市民から出た)施設を全部入れると、300億円の総合運動公園をつくるのと同じ、財政破綻と同じになる。必要なものは必要な土地を見つけてつくっていく。(市民提案施設は事業者への)参考として載せている。

鈴木市議 市民説明会では、市は何をしたいのか説明がない、という意見があった。これについてはどうか。

市長 (今回の)方針で説明していること(=民間一括売却)が私が実現したいこと。

橋本市議 市民説明会(の分析)も追加して掲載してほしい。

市長 市民説明会については「敷地一括売却方針案の是非、公共利用の可能性、周辺環境への配慮、防災拠点の考え方、公募の条件など様々な論点で活発に意見交換を行うことができた」と書いている。現時点で修正の必要はない。

橋本市議 パブコメの意見結果総括表で、具体的施設を提案した57人を「方針案に反対ではなく」と書いてある箇所だが、「方針案に反対ではなく」の部分を省いて方針を修正すべきだ。

市長 そもそもパブコメは賛成、反対ではなく、全般について意見を求めるもの。1人1人の賛成、反対ではない。

橋本市議 賛成、反対を聞いてないというなら、「方針案に反対ではなく」と書くのではなく、事実をそのまま載せるべき。

塩田尚市議(山中八策の会) 用地を購入する時、市が債務保証をし、議会が議決をした。売却の時は議会の議決は必要か。

市課長 市開発公社から民間への売却になるので議会の議決は必要ない。

【訂正12日午後5時】本文3段落目「③明確に反対と④反対し具体的施設を提案を合わせると11%」は17%の誤りです。訂正します。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

31 コメント

31 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

市長「事業者は共生ガイドライン当然守る」【つくばに日本最大級のデータセンター】

つくば市、五十嵐立青市長の定例記者会見が9日開かれた。同市大穂地区で建設が始まったデータセンターからの莫大な排熱など専門家が環境影響に懸念を示している問題について(5月19日付、同20日付)五十嵐市長は「日本データセンター協会が5月に地域共生ガイドライン(※メモ)をつくった。共生ガイドラインは事業者としても当然守っていきたいということ。今、環境を無視したり、地域住民を無視して事業を進めることは基本的に起こりえない」との見方を示した。 大穂地区のデータセンターは、グッドマンジャパン(東京都千代田区)の特定目的会社が同市開発公社から約46ヘクタールの用地を取得し建設を進めている。将来的に国内最大級の100万キロワットのデータセンターを建設する見通し。これに対し専門家は、100万キロワットのデータセンターが完成すれば、現在のつくば市全体の排熱量の2倍が同市大穂の予定地から排出され、夏の猛暑時などは周辺住民の健康影響が懸念されるなどと指摘している。 9日の定例会見で五十嵐市長は、100万キロワットのデータセンターから排出される排熱量が、現在の市全体の排熱量の2倍になると専門家が試算していることについて「電力量から想定すれば排熱量はこれぐらいになると当然計算できる」とする一方、「最新の施設を導入すると事業者から聞いており、周辺に悪影響にならないようモニタリングを継続していくことも事業者から聞いているので、きちんと進めていってもらえると思っている」とした。 一方、具体的な設備の冷却方法や周辺環境への排熱量について事業者からヒヤリングしているのかとの記者の質問に対し五十嵐市長は「正確な数字は実際に稼働してみないと分からない。現時点でこれというものは示されていない」と答えるにとどまった。 その上で五十嵐市長は「市とさまざまな形で協議してくためにも、(事業者と)協定締結などをする方向で進めている。市が言わなくても、企業価値の面で、事業者が環境投資をした方が企業としての相対的な価値が高まると日本だけでなく世界中でなっていると思う」などと話した。 一方、大穂地区の住民団体が住民説明会の開催を要望し現在、署名活動をしていることについては「データセンターの地域共生ガイドランの中で、コミュニケーションをとるということはひじょうに重要だとしている。地域にきちんとていねいに説明してほしいということは、われわれとしても(住民団体の)署名の話を伺う前から継続してしている」とし、市として前向きに対応する姿勢を見せた(6月8日付)。 住民団体「『ガイドライン守ってくれるはず』は無責任」 五十嵐市長の見解に対し、事業者による住民説明会の開催を求め現在、署名活動を展開している地元大穂地区の住民団体「データセンターから市民を守る会」(6月8日付)の柳町弘幸会長は「データセンター開発は、つくば市が土地を売却し、用途地域を変更し、開発許可を出したことで実現した。いわば、つくば市自身がこの計画の起点となっている。その行政のトップである市長が、法的拘束力のないガイドラインを根拠に『事業者が守ってくれるはず』と述べることは極めて無責任。本来であれば、市が事業者に対して住民説明や環境配慮を求め、その履行状況を確認する立場にある」と話す。 さらに「現時点で地域住民との共生が実現しておらず、住民から不安や懸念の声が上がり続けているにもかかわらず、市はグッドマンジャパンに対して説明会の開催や追加的な環境調査を求める行政指導を行ってこなかった。その結果として住民との信頼関係が構築されず、不信感だけが拡大している。開発許可権者として適切な指導を行わなかった行政の責任は重く、その行政を統括する市長には監督責任があると思う」とし、さらに「市長は排熱が巨大になることは認めたが、その影響は調べていない。これは大きな問題」だなどと指摘している。(鈴木宏子) ※メモ【データセンター地域共生ガイドライン】データセンターの事業者団体、NPO日本データセンター協会(東京都千代田区、理事長・田中邦裕さくらインターネット社長)が今年5月に策定したガイドライン。地域とのコミュニケーション、データセンターが周辺の気温に与える影響、騒音、景観や地価など、地域との共生のためにデータセンター事業者が遵守すべき事項などについて記している。つくば市大穂でデータセンターの建設を進めるグッドマンジャパンも、同協会の正会員になっている。一部のデータセンターで環境や防災上の懸念をめぐり近隣住民との関係が悪化するなど問題が顕在化し始めていることなどをめぐり、総務省と経産省の有識者会議が「データセンターの整備にあたっては、地域との共生は大前提で、事業者は近隣住民にていねいな説明の機会を設けるなど適切な対応を進めていくことが重要」との方針が示されたことを受けて策定された。

がん治療を始めてから5カ月《ハチドリ暮らし》62

【コラム・山口京子】がん治療のため抗がん剤を半年使いますと言われてから、5カ月がたちました。3泊4日の抗がん剤点滴入院と、退院して10日間の静養という、2週間を単位とした抗がん剤治療を繰り返し、10回目の治療を終えて退院。直近の腫瘍マーカーのCEAは5.2。医師からは、この状況でMRIなどの検査で腫瘍が小さくなっていれば、手術を検討しましょうとのこと。 長いような、あっという間であったような…。やっぱり冷静ではない自分がいました。そもそもがんの状態は? 体に入れた薬剤はなんだったのか。薬名は? 効果や副作用は? 初診の見立てで、肛門縁より3センチの場所に出来ており、2センチ程度の大きさで腸管の半分くらいを塞(ふさ)いでいるとのこと。その後の検査で、がんは腸管の外にはみ出ていて、肝臓に3つのがん、両肺には小さながんが10ケ以上、リンパへの転移。診断はステージⅣの末期がん。 治療後のことはイメージできない 受けた治療は、「アバスチン+FOLFOX」といい、アバスチン(一般名ベバシズマブ)とエルプラット(成分名オキサリプラチン)、5-FU(成分名フルオロウラシル)という抗がん剤と、レボホリナートという5-FUの作用を強める薬剤との組み合わせでした。アバスチンは血管新生阻害剤という分子標的治療薬。エルプラットはアルキル系白金製剤で細胞分裂を阻害するもので、蓄積毒性があります。5-FUは代謝拮抗薬で、やはりがん細胞の増殖を防ぐものです。 治療は、がんを小さくする、広がりを抑える、がんによる症状を軽くするという効果が見られる一方、正常な細胞への副作用も見過ごせません。効果も副作用も個人差が大きいと言われました。自分が治療を受けてどうなるのかは、実際に治療をしてから事後的にわかるものです。事前に分からないということは、賭けの要素が大きいのでしょう。 やってみての効果は、マーカー値の低下、がんの縮小。肛門の違和感が消え、血便もなくなりました。現れたのは、脱毛、手足の指の変色やしびれ、足裏の違和感、嗅覚と味覚の異常、口内の渇き、疲労や食欲不振、気持ちの悪さ、倦怠感…、そうした身の置きどころのなさ。そして、血液検査の数字に現れるシグナル。抗がん剤により骨髄の機能が抑えられることで、血液の中の白血球や赤血球、血小板などの減少。肝臓や腎臓の機能低下。ただし、そうした症状は軽い方だったと思います。 治療が終わる後のことはイメージできていませんでしたが、手術ができるなら、次の展開に進めるのでしょうか。(消費生活アドバイザー)

高規格救急車を導入 筑波大附属病院 都市開発が寄贈

筑波大学附属病院(つくば市天久保、平松祐司病院長)は新たに高規格救急車を導入した。8日、同病院救急外来前で、導入披露式が催された。不動産開発会社、都市開発(つくば市吾妻、塚田純夫社長)が寄贈した。 高規格救急車は。車内で救急救命処理を行うための広い空間と専用資機材を備えている。近年、大きな病気やけがなど急性期治療後の患者を大学病院から地域の医療機関に搬送するケースが増えていることなどから導入した。 さらに、重症の小児症例などで、大学病院の急性期診療チームが地域の医療機関に赴き、安全に大学病院に広域搬送したり、災害時には災害派遣医療チーム(DMAT)が医療支援活動にも取り組むという。 導入された車両は、トヨタ・ハイエースをベースとした8人乗りで、車幅が広く、電動ストレッチャーの導入により一人でも楽に患者を搬送することが出来るという。感染対策としては、運転席との間にガラス戸を設け、車内で隔離出来る仕組みになっている。車体の上部には筑波大病院のマークが表示され、ヘリコプターから確認出来る。価格は約3000万円。 8日の導入披露式には永田恭介学長、平松病院長、寄贈した都市開発の塚田社長らが出席した。 永田学長は「都市開発さんには日頃から大学の教育研究事業活動や社会活動にも協力いただいている。地域医療は公的な支援だけでなく地域や社会からの支援を受け初めてその活動を最大にすることができる。開学50周年にも合わせた新救急車の寄贈ということに大変感謝している」と話した。 塚田社長は「自分は地元出身で、筑波大学病院にもお世話になったことがある。地域医療は、地域にとって大変重要なことであり、なんとかしたいという思いがあった。これからも地域のために貢献していきたい」と語った。

「終わりなき難事業」に挑む霞ケ浦浄水場《日本一の湖のほとりにある街の話》37

【コラム・若田部哲】土浦市大岩田に位置する霞ケ浦浄水場は、土浦市、つくば市、阿見町のほか、県南水道企業団(龍ケ崎市)を通じて計4市町に水を供給する、県南の水道事業の要所です。現在は1日あたり約12万立方メートルの水を供給しており、これは500ミリリットルのペットボトル換算で約2億4000万本分にもなる、途方もない水量です。取材に先立ち、浄水場の外周を歩いて一周してみたところ、所要時間は実に25分。建ち並ぶ工場のような建屋群に、巨大なコンクリート構造物と、そこから突き出た巨大配管は、「工場」というより、ダムにも通じる「土木」のスケールと言った方が適切かもしれません。今回は、同所職員に、この浄水場の意義についてお話を伺いました。取材を進めるうちに見えてきたのは、単なる「大きな施設」ではなく、「霞ケ浦の水を、39万人が365日、途切れることなく安心して飲める水に変え続ける」という、極めて困難なミッションです。 「沈殿処理」「砂ろ過処理」 まず、水源である霞ケ浦は、浄水という観点では決して扱いやすい湖ではありません。職員によれば、少しでも良い水を求め、取水は約10キロ離れた美浦村木原付近で行っているといいます。それでも、霞ケ浦の水は、利根川などの河川水と比べて濁度やCOD(有機物による水質汚濁の指標)が高く、高濃度のかび臭原因物質を含むことがあります。除去が不十分な場合、水道水からカビや墨汁のような臭いを感じる原因になるとのことでした。つまり霞ケ浦浄水場は、単に「湖の水をきれいにする」ものではありません。条件としては決して良好とは言えず、しかも1年を通じて水質が変化する湖水を、複雑な工程を経て、常に安全でおいしい水道水に変え続ける「終わりなき難事業」なのです。意外だったのは、かび臭が主に冬から春にかけて発生するという点でした。夏場のアオコの印象が強かったのですが、むしろ低水温期に藻類由来の高濃度かび臭が発生するそうです。一方、台風時でも河川と比べれば濁度上昇は穏やかであるなど、「湖ならでは」の特徴もあるとのことでした。浄水処理では、「沈殿処理」「砂ろ過処理」など、多段階の工程が行われており、どの工程も欠かすことはできません。霞ケ浦の水が取水されてから、浄水場内の巨大設備群を通り抜け、ポンプで送り出されるまでには、およそ半日を要するそうです。私たちは普段、何気なくコップの水を飲んでいます。しかし実際には、その水は巨大な装置群を経て、まるで工業製品のように緻(ち)密に作られているのです。 全国初の「オゾン促進酸化処理」 そして2024年、この浄水場に全国初となる「オゾン促進酸化処理(AOP)」施設が導入されました。高濃度カビ臭が発生した際、従来の粒状活性炭処理では頻繁な活性炭再生作業が必要でしたが、この新技術により長年の課題だった、冬から春にかけて発生する高濃度かび臭への対応安定性がより一層増したそうです。もっとも、ここに至るまでには長い試行錯誤がありました。霞ケ浦浄水場では、2000年から03年にかけてオゾン処理の実証実験を行ったものの、原水に含まれる臭化物イオンとオゾンが反応し、水質基準対象である臭素酸が発生してしまうため、当時は導入を断念した経緯がありました。その後、2009年から民間企業と共同研究を重ね、「少ないオゾン量で臭素酸発生を抑えつつ、臭気原因物質を効率的に分解する」オゾン促進酸化処理の有効性を確認。20年から施設整備を進め、24年にようやく供用開始に至りました。今回のAOP導入は、単なる新技術導入ではなく、長年にわたり霞ケ浦という難しい水源と向き合い続けてきた、その積み重ねの到達点なのだと感じます。 「水を粗末に扱うな」 「水罰(みずばち)が当たる」。現代ではほとんど使われなくなった言葉ですが、水が貴重な天の恵みであった時代、水を粗末に扱わないよう戒めるために使われた言葉だといいます。飲料水ができるまでの過程を知ると、現代においても、水をおろそかには扱えない。そんな、背筋が伸びる取材となりました。(土浦市職員) <注> 本コラムは周長日本一の湖、霞ヶ浦と筑波山周辺の様々な魅力を伝えるものです。 ◆これまで紹介した場所はこちら