金曜日, 3月 20, 2026
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過去40年で台風は大幅に遅くなっていた 災害増加懸念も 気象研

茨城県を9月に通過する台風の速度を、過去40年間で比較すると、大幅に遅くなっていることが分かった。気象研究所(つくば市長峰)の山口宗彦主任研究官が、18日開催された日本気象学会2021年度春季大会で発表した。

地球温暖化が台風に与える影響に関する研究は、これまで主に強さや発生数、経路に着目していた。今回の研究は台風の移動速度に着目しただけでなく、その速度変化に温暖化がどれくらい影響しているかを解析することで将来予測につなげた。

研究を行った山口主任研究官=気象研究所の大型計算機室

温暖化で時速61キロから39キロに

気象庁の台風の観測データから9月に発生した台風を対象に、過去40年について、前半20年(1980ー99年)と後半20年(2000ー19年)に分けて移動速度を比較した。茨城県では前半が時速61.2キロだったのに対して後半は時速38.9キロと、約36%遅くなっていた。大阪では33%、沖縄では26%遅くなっていた。秋の到来をもたらす偏西風の南下が遅れることで、台風を移動させる風が弱まっていたことが要因の一つと考えられた。

温暖化が続くと?

台風の速度は温暖化だけでなく、「太平洋十年規模振動」と呼ばれる、太平洋の海面水温に生じる十年から数十年規模の変動の影響も受ける。

そこで山口主任研究官はスーパーコンピューターを使って、過去に実際に生じていた温暖化を再現した9月の台風速度のシミュレーション結果と、実際にはあった温暖化を無かったことにしたシミュレーション結果を比べ、温暖化とそれ以外の影響を切り分けて比較することで、過去40年間の移動速度の鈍化に与える温暖化の影響と太平洋十年規模振動の影響を推定した。

計算には、地球の海表面と大気を、規則正しく並んだ格子(約1000万個)で覆い、それぞれについて東西風、南北風、気温、湿度の変数を20分ずつ、40年分計算した。計算の繰り返し回数は1億回を超える。

シミュレーションの結果、過去40年における移動速度の鈍化は、地球温暖化と太平洋十年規模振動が約1対1の割合で寄与していたことが分かった。

また地球の平均気温がこのまま上昇を続け、産業革命以降4度上昇した状態が続いた場合、将来、地球温暖化の影響がさらに強まって9月の台風の速度が現在よりもさらに20%程度減少するだけでなく、10月の台風の速度も減少することが分かった。

地球温暖化は台風の速度の減少だけでなく、降水量の増加ももたらしている。このままの状態が続くと、県南地方でも「降水の強化×移動速度の鈍化」の相乗効果により災害リスクが高まると、山口主任研究官は懸念している。(如月啓)

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