水曜日, 9月 17, 2025
ホームつくばつくばの市街地に咲く「絶滅危惧種」 私はどうすればいい?

つくばの市街地に咲く「絶滅危惧種」 私はどうすればいい?

4月、NEWSつくばに読者から「絶滅危惧種の『キンラン』がつくば市街地に自生している」というメールが届いた。

その場所は、つくば駅に近いセンター地区の市街地。後日、メールの差出人に案内されると、ある企業の私有地に、黄色く小さな花をつける1本のキンランがあった。一見、どこにでもあるような普通の植物。周囲の雑草と見分けがつかず、探すのに時間がかかった。

「絶滅危惧種」がなぜ市街地に生えているのだろう? 希少な植物に出合ったとき、私たちは一体どうすればいいのだろう? 湧き上がるいくつかの疑問を胸に、専門家に話を聞いた。

キンランとは?

そもそもキンランとはどのような植物なのか。

キンランは、日本に約300種あるとされるラン科の植物の一つ。多年草で、ブナ科やマツ科の樹木の根もと近くに生育し、30センチから70センチほどの高さになる。これらの樹木の根に寄生する菌類が作る養分を、キンランは取り込み生きている。こうした菌類との共生関係を必要とし、単体では生きられないのも大きな特徴だ。

かつて雑木林に群生するキンランを見ることは珍しくなかった。しかし近年、個体数が減少し将来的な絶滅が危惧されることから、環境省は「絶滅危惧II類」に、茨城県も独自に「準絶滅危惧」に指定している。

なぜ「絶滅危惧種」に?

では、なぜキンランは個体数が減ってしまったのか。

県自然博物館(坂東市)で学芸員を務める伊藤彩乃さんは、減少の理由の一つとして、かつて人の暮らしに欠かせなかった雑木林の手入れが行き届かなくなったことを指摘する。 

「かつてキンランは、私たちにとって身近な植物でした。雑木林にはコナラやクヌギといった、キンランの生育に必要なブナ科の樹木が多くありました。それらの樹木を、まきや炭として利用するために定期的な伐採や下草の刈り取りを行っていました。しかし、生活の変化によって放置される林が増え、下草が密集し伸びると、背丈の低いキンランに光が届かなくなり、光合成ができず生育できなくなったと考えられます」

手入れが行き届かなくなった雑木林

つくば市で環境保全活動をする「つくば環境フォーラム」の田中ひとみさんも同様の指摘をした上で、「キンラン以外にも絶滅の危機に瀕する動植物が、人との関わりが停止した雑木林を含めた『里山』に多く存在している」と話す。

「里山」とは、農林業など人の生活を通じてつくられた、農地や集落を含めた広い生活圏のことを指す。かつて日本各地で見られた環境だ。「里山」の減少がキンランだけでなく、キキョウやオミナエシなどいくつもの植物を絶滅の危機に追いやっている。環境省は植物以外にもメダカ、タガメ、クロシジミなどの動物も、里山減少による絶滅危惧種として挙げている。

環境保全の意味

「絶滅しそうな里山の動植物を保全するには、人による再生が必要」だと、田中さんは話す。

ではなぜ私たちは里山を保全し、動植物の減少を防ぐ必要があるのだろうか。田中さんはこう説明する。

「実感しづらいかもしれませんが、人が自然の恵み(生態サービス)によって、その命を繋いでいるからです。自然界は、多様な生物のバランスによって今まで持続してきました。絶滅危惧種が急増しているのは、そのバランスが崩れてきている証拠ではないでしょうか。自然界のバランスが崩れると、生物種のひとつである人類にもいずれ生存の危機がくるかもしれません」

生活する人間と、その環境に適応する多様な動植物の関係が長い年月をかけ育まれた。人の暮らしも、そのバランスの上に成り立ってきたのだ。

再び増えつつある個体数。都市部に適応する生命力

今回キンランが見つかったのは、つくば市の中心市街地という「自然」と離れた場所だった。そこにキンランが咲く意味を、どう捉えればいいのか。質問に対し、県自然博物館の伊藤さんはこう話す。

茨城県自然博物館学芸員、伊藤彩乃さん

「私たちにとっての『(自然の)豊かさ』とは、原生林など人の手が加わっていない場所を想像するかもしれません。しかし、生き物の視点から見た時に、意外と都市の中にも、彼らにとって『豊か』な場所はあるのです」

「キンランが生きるために必要な条件は、ブナ科やマツ科の樹木、そこに寄生する菌類、適度に人手が加わり、光が届く場所。意外かもしれませんが、都市部にも、こうした植物にとって『良い』条件が整う場所が少なくないのかもしれません」

「街路樹や公園など、植栽された林が市街地には多いと思います。昔ながらの雑木林ではなく、街をつくった時に新たに木を植えたところです。そこにブナ科やマツ科の樹木を選んで植えることがあります。そうした場所に生えるキンランを、最近見るようになりました」

つくばの中心市街地で今回見つかったキンランを振り返ると、近くに松の木があったし、周囲の雑草は適度に刈られていた。伊藤さんがこう続ける。

「はっきりとした理由はわかりませんが、元々あった雑木林から飛んできた種子が発芽した可能性もありますし、植えられた樹木の根についてきた可能性もあります。キンランは、菌類との共生関係が必要です。持ち込まれた樹木と共生する菌類が活発であれば、キンランが発芽する条件は整います」

「人が作った環境に適応するキンランの姿を見ると、生き物としてのしたたかさを感じます」

見つけた人はどうすればいいのか?

希少動植物の中でも特に保護が必要とされる「国内希少野生動植物種」は、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」に基づき、個体の捕獲や譲渡が原則禁止され、違反すると罰則が適用される。しかし、キンランは法的な保護の対象には含まれていないものの、県は「茨城県希少野生動植物保護指針」で県民に対し、「自主的かつ積極的に取組みを進めること」を求めている。

では具体的にキンランに遭遇したとき、私たちはどうすればいいのか?

今回つくば市でキンランが確認されたのは、吾妻1丁目、NTT東日本茨城支店つくばビルの敷地内だった。NEWSつくばの問い合わせに同社は、こう回答している。

「キンランが生育している場所の状況から、囲い込み等の保護は行わず(囲い込みを行うことにより、かえってイタズラ等にあう可能性もあるため)、自然体で見守っていきたい。除草作業等時はキンランの花弁が落ちていたことを確認したうえで、球根を傷つけないよう配慮しつつ、来年以降も対応をとっていきたい」

茨城には、キンランの他に、キンランの一品種である「ツクバキンラン」もある。珍しさも手伝い、思わず自宅に持ち帰りたくなるかもしれない。それに対して伊藤さんはこう話す。

県自然博物館の敷地内に自生する「ツクバキンラン」

「(キンランの)数が減ってしまった要因に、花がきれいなために採集されてしまったということもあります。キンランは、樹木と菌類との共生関係が必要なので、持ち帰って鉢に植えても育つことはできません。それだけでは生きることができないのです。樹木や菌を含めた周囲の環境が整ってこその生き物です。なので、むやみに採ることはせずに、林のなかで咲いている姿を楽しみましょう。周りの環境と共に見守ってほしいと思います」。(柴田大輔)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

14 コメント

コメントをメールに通知
次のコメントを通知:
guest
最近NEWSつくばのコメント欄が荒れていると指摘を受けます。NEWSつくばはプライバシーポリシーで基準を明示した上で、誹謗中傷によって個人の名誉を侵害したり、営業を妨害したり、差別を助長する投稿を削除して参りました。
今回、削除機能をより強化するため、誹謗中傷等を繰り返した投稿者に対しては、NEWSつくばにコメントを投稿できないようにします。さらにコメント欄が荒れるのを防ぐため、1つの記事に投稿できる回数を1人3回までに制限します。ご協力をお願いします。

NEWSつくばは誹謗中傷等を防ぐためコメント投稿を1記事当たり3回までに制限して参りましたが、2月1日から新たに「認定コメンテーター」制度を創設し、登録者を募集します。認定コメンテーターには氏名と顔写真を表示してコメントしていただき、投稿の回数制限は設けません。希望者は氏名、住所を記載し、顔写真を添付の上、info@newstsukuba.jp宛て登録をお願いします。

14 Comments
フィードバック
すべてのコメントを見る
スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

民有林に防除対策費を補助 ナラ枯れ被害拡大防止へ つくば市

ナラ枯れなどによる森林被害の拡大を防ごうと、つくば市は今年度新たに、市内に森林を所有する民間地権者を対象に、防除対策費用の2分の1を補助する制度を創設した。 筑波山周辺の森林や公園など市有地のナラ枯れ被害に対してこれまで同市は、防除対策に取り組んできた。一方、筑波山周辺など市内の民有地の森林でも被害が出ており民有地で対策を施さないと被害拡大を防ぐことができないことから新たに補助を実施する。 同市鳥獣対策・森林保全室によると、現時点での申請者はゼロで、市が相談を受けている地権者が一人。市はホームページや市報などで広報してきたが、補助制度や防除方法を知らない地権者もいると見られる。 ナラ枯れは、カシノナガキクイムシ(通称カシナガ)という体長5ミリほどの昆虫の被害を受けたコナラやクヌギなどが、昆虫の体に付着した病原菌、ナラ菌の繁殖により水分が枝葉に行き渡らなくなり、紅葉前の7~8月頃に急速に葉の色が赤褐色に変色し枯死する被害。幹が太く樹齢を重ねた樹木が被害を受けやすいとされ、枯死した樹木は早期に対策をとらないと、翌年以降、被害が拡大するとされる。2020年9月に県内で初めて、つくば市内で被害が確認され、以後、拡大し、県林業課によると現在、県内44市町村中36市町村で被害が確認されている。 筑波山系では2022年に朝日トンネル付近で確認されたのが最初。翌23年には筑波山や周辺の森林でナラ枯れが目立つようになる中、つくば市では23年、南麓の同市臼井、市有地の筑波ふれあいの里で、ナラ枯れが確認された32本を伐採し、薬剤によるくん蒸処理を実施した。翌24年には観光拠点の筑波山梅林奥の市有地の林道、四季の道周辺に被害が広がり、市は13本を伐採しいずれもくん蒸処理した。 一方、今年は筑波山の林道沿いの市有地に関しては新たな被害は確認されていないという。昨年、四季の道沿いで、被害を受けやすいとされる幹が太く樹齢を重ねた樹木をあらかじめ伐採などしたことなどが被害の拡大を防いだとみられている。 つくば市で補助対象となるのは①幹にあらかじめ殺菌剤を注入し行き渡らせておく殺菌剤を樹幹に注入する方法(補助額は1回当たり上限5万円。カシナガに入り込まれ木くずが出た時点で注入しても効果は期待できない)②成虫が飛来する5月ごろから約半年間、樹木の幹に粘着剤やビニールシートを巻き付けカシナガが入り込むのを防ぐ方法(同5万円、粘着剤にとらえられたカシナガを生きたまま放置すると仲間を呼び寄せることがあるので、粘着剤と殺虫剤を併用する方法もある)③被害を受けた樹木を伐採し薬剤で燻蒸処理または焼却処理する方法(同15万円)。今年度予算は165万円で、市は1件につき平均20万円程度、8~10件の申請を想定している。 市鳥獣対策・森林保全室の石塚正巳室長は「市として、ふれあいの里や四季の道など市の施設で、伐倒しくん蒸処理するなどの対策をしてきたが(被害が)全て無くなったわけではない。個人の土地については広報するのみで、(市が)直接的な対策をしていないので根絶はなかなか難しい」という。 一方土浦市は2024年、ナラ枯れ被害に遭った朝日トンネル付近のコナラ16本を伐採した。費用は、運搬、処分、交通封鎖の人件費を含み計583万だった。同市はナラ枯れに対応できる補助金として小規模森林整備補助金があり事業費の70%を補助できるとしている。 ナラ枯れの被害については、全国で毎年調査が実施されている。県林政課によると23年度に被害が確認された市町村は33市町村、24年度は34市町村、25年度は36市町村と市町村数は徐々に増えている。県全体の被害面積はつくば市内で初めて確認された2020年が200平方メートル、21年も200平方メートルだったが、22年に3000平方メートルと15倍に広がり、23年はさらに前年の2.3倍の6700平方メートルに拡大した。24年度の被害面積は6100平方メートルと前年度の91%だが、同課は、森林の奥の広葉樹まで調査が及んでいないなどから、被害は前年と同程度とみている。(榎田智司)

つくつくつくばの七不思議の旅《映画探偵団》92

【コラム・冠木新市】2009年、「つくばの映画・演劇を作ろう」をテ一マにNPO主催の講演会で30人を前に語った。当時、映像のロケ地に誘致する運動は盛んだったが、地元の文化・歴史・伝説を活用して、自ら作る動きは少なかった。 つくばにも面白い素材がいくつかあった。その一つが、茨城県出身の童謡詩人・野口雨情が1930(昭和5)年に作詞した「筑波小唄」「筑波節」で、元は一つの歌をなぜか二つに分けた新民謡だ(映画探偵団22)。 2010年、その理由を「雨情からのメッセージ」と題して講演、朗読劇、踊り、演奏で表現した。新築の筑波銀行ホ一ルに300人ほど集まった。好評だったこともあり、つくばの7地域の話を「つくつくつくばの七不思議」として再創造しようと考えた。 2012年春、北条を竜巻が襲い町を破壊したころ、水戸で「筑波小唄」「筑波節」の幻のSPレコードが見つかった。いろいろな方の協力を得てCDに復刻、また、つくば市の観光物産課の応援で踊りの講習会を5期まで開催した。 同年秋、詩劇「北条芸者ロマン~筑波節を歌う女~」を上演。北条街づくり振興会との縁を深めた。このとき、植田利浩さんが作曲した曲を「筑波恋古道」と名付けた。 2015~16年、「つくつくつくばの七不思議/サイコドン」をACCSケ一ブルテレビで放映。「筑波恋古道」の作詞もでき、歌い手を募集するが、応募はなかった。踊りのイベントでは、植田さんの歌うデモテ一プを使用した。2023年の「金色姫伝説旅行記」のときに、声楽家・大川晴加さんが新たに吹き込んだ。 「はじまりのうた BEGIN AGAIN」 「北条芸者ロマン」に取り組んでいたころ「はじまりのうた BEGIN  AGAIN」(2013)という映画が製作された。オ一プニングはバーのステ一ジ。無名の女性シンガ一が歌い、1人の中年男性が身を乗り出して聞く。そして「その日の朝」とクレジットが出て回想となる。 男は、音楽プロデューサーで5年間失敗続き、妻と別居中。娘に煙たがられ、自分が創立したレコード会社からもクビを宣言され、地下鉄で自殺を考えバーに来る。男は、無名シンガ一の背景にピアノやベースが加わる幻想を見る。 次に女性の回想がはじまり、楽曲を提供した恋人歌手との関係がこじれ争いとなる中、バーでプロデューサーの男と出会ったことが描かれる。 2人は作品を企画する。会社からデモテ一プを要求されるが、録音費用のない男は、デモよりもアルバムを作ろうと考える。路地裏やビルの屋上などで録音する。演奏者には後払いで、才気あふれる無名の若者を集める。さらに女性歌手の誘いで、男の娘をギターに採用。完成したアルバムは高評価を受ける。 エンドクレジットが流れる中、女性がレコード会社と契約したくないとの訴えに男はあっさり了承し、最後にはネットを使い1ドルで売ることにする。アルバムは大ヒットするが、男は元の会社から再びクビになる。そうした時代を先取りした作品だった。 「筑波山 恋うたつづり」 2025年8月27日、「筑波小唄」「筑波節」「筑波山唄」「筑波恋古道」を収録した「筑波山 恋うたつづり」が恩田鳳昇監修で日本コロムビアから発売された。企画から15年かかった。つくつくつくばの七不思議の旅は「はじまりのうた」をヒントにまだまだ続きそうである。サイコドン ハ トコヤンサノセ。(脚本家) ※つくつくつくばの七不思議セミナー(お話と懇談会)のお知らせ:2025年9月27日(土)午後1時~、カピオ小会議室、参加費無料。

洞峰公園などが「自然共生サイト」に NPOとつくば市が共同申請

市内7カ所目 民間の取り組みなどによって生物多様性の保全が図られている区域や活動を認定する環境省の「自然共生サイト」に、つくば市の洞峰公園とその近接公園が16日認定された。同日つくば市が発表した。認定区域は洞峰公園(同市二の宮、17.4ヘクタール)と、近接する二の宮公園(同市二の宮、2.7ヘクタール)、まつぼっくり公園(同市千現、0.6ヘクタール)の3公園で、面積は計20.7ヘクタール。 市環境保全課によると、洞峰公園などで動植物調査や希少種の保護などを実施しているNPOつくばいきものSDGs(木下潔代表)から昨年秋ごろ、つくば市に提案があり、今年4月、同NPOとつくば市が共同で申請した。 市内では奥村組技術研究所内のビオトープ(同市大砂)も同日、自然共生サイトに認定された。市内の自然共生サイトは計7カ所となり、認定数としては全国の市町村で4番目に多くなった。認定サイトのほとんどは国際データベースのOECM(保護地域以外で生物多様性保全に資する区域)にも登録される予定。 認定制度は2023年度から始まり、25年4月に認定の仕組みを法制化した地域生物多様性増進法が施行された。法律に基づく認定は今回が初めて。同法に基づいて民間が作成・実施する増進活動実施計画と、市町村が取りまとめ役となって地域の多様な主体と連携して行う連携増進活動実施計画が認定され、二つの計画の活動実施区域が自然共生サイトとなる。 ゾーニングし緑地管理 市によると、洞峰公園とその近隣公園サイトの活動計画は、800メートルの距離を置く3つの公園の状況について①隣接する複数の研究所の樹林地、草地と共に100ヘクタールを超える緑地を形成し、絶滅危惧種を含むつくばの里地里山、沼・湿地に特徴的な動植物が生息生育している②通勤、通学など日常生活の傍ら、多様な生き物の活動に触れることができる—などが特徴だとしている。 活動計画の目標については①日常生活の中で生物多様性を実感できる市街地ならではの環境を次世代につなぐことを目指す②自然観察会などの環境教育活動を通じて身近な公園の生物多様性の価値に対する認知を高め、市民参加による調査モニタリング活動や保全活動を推進する―の二つを掲げている。 主な活動内容は、植生の特性に応じて園内をゾーニングし緑地管理するというもので①希少動植物生息生育エリアでは保全対象動植物に適した手刈りの草刈り、落ち葉かき、播種、樹木剪定を行い、対象植物の生態系を侵害する動植物は防除する②通常管理エリアは機械刈りや樹木剪定など一般的な公園緑地の管理手法を行う➂希少種エリアと通常管理エリアの間の緩衝的役割を担う緩衝ゾーンは主として背丈が高めの高刈りにより草地管理を行う—としている。 モニタリング計画として①植物、鳥類、昆虫、菌類を対象に年1~2回、有識者の指導の下、市民参加型調査・モニタリングを行う②希少植物種については開花期に生育状況を同NPOが中心となって調査する—とし、実施体制として①市と同NPOは専門家の意見を交えて保全計画を立案し実行する②つくば市は対象サイトの運営管理を統括し、希少動植物の生息生育エリア以外の緑地管理、沼管理を行う➂同NPOは希少動植物の生息生育エリアを管理し、調査・モニタリング活動、環境教育、市民参加型生物多様性保全活動を計画・実施する—となっている。計画期間は今年9月から2030年8月までの5年間。 一方、洞峰公園をめぐっては、2024年2月に県から市に無償譲渡された経緯などを受けて、今年4月、同公園の管理・運営方法などを市に提言する「洞峰公園管理・運営協議会」(委員長・藤田直子筑波大芸術系環境デザイン領域教授)が4月にスタートしたばかり。一般市民が参加してこれからの維持管理について話し合う分科会は1回目が7月に2日間開かれたのみで、本格的な議論はこれからになる。 洞峰公園を管理する市公園・施設課は、今回認定された活動計画は、県が管理していた時を含め、すでに取り組まれてきた活動を継続するものだなどとしている。(鈴木宏子)

歴代入賞作品約100点を一堂に 土浦で「世界児童画展セレクション」 

児童画展の一大イベント「世界児童画展」の歴代入賞作品約100点を一堂に展示した企画展「世界児童画展 超半世紀セレクション こどもの絵から見る世界」が16日、土浦駅前の土浦市民ギャラリー(同市大和町)で始まった。 世界児童画展は1970年に開催された大阪万博を機に公益財団法人美育文化協会が始め、世界の約40の国や地域から毎年約8万点もの作品が集まる。土浦市民ギャラリーでは2017年の開館以来毎年「世界児童画展 茨城県展」を開催してきた。今年は2回目の大阪万博が開催されている記念の年であることから、第1回から55年分の歴代受賞作品を同協会から借り受け展示する。 展示作品は3歳から15歳の子供たちが描いた計106点で、日本の最高賞である内閣総理大臣賞受賞作品が14点、海外の最高賞である外務大臣賞が25点、ほかに特別賞受賞作品など。国内の作品が63点、海外は43点となっている。 第20回内閣総理大臣賞を受賞した日本の小学6年生(当時)小森翠さんの「うにをむく人」は、赤いブラウスに緑のエプロンを付けた女性がうにをむく姿を正面から大きく描いている。大胆な筆づかいながら、ひとつひとつのウニの形は異なっているなど、細かく観察した描写になっている。 第22回同賞を受賞した日本の小学6年生(当時)水野聡英さんの「高層ビル街に現れたヒョウ」は版画で、赤と黒と白の3色しか使ってない。画用紙の左側にタワーの脚部だけが大きく描かれ、高層ビルの上に乗ったヒョウとの対比と彫刻刀の荒い削りあとにインパクトがある。 第19回外務大臣賞を受賞したオーストリアの13歳(当時)マルクス・ヴァイセンンベルガーさんの「おしゃべりな女」は、人の肌も洋服も背景も緑と黄色だけを使って描かれており、緑の濃淡で表情や服の柄、背景を生き生きと描いている点が印象的だ。 会場では、描かれている情景や使われている色をもとに「家族」「物語・ファンタジー」「生活・文化」など7つのテーマに分けて紹介している。「家族」は3点で、子どもたちの家族を描いた作品を展示している。「物語・ファンタジー」は20点で、子どもたちが考えた物語や空想の世界が思い思いに描かれている。「生活・文化」は23点で、地域や国ごとの子どもたちを取り巻く生活や文化を絵から読み解くことができる。「生き物」は13点で、虫や猫、牛など子どものそばにいる生き物が生き生きと描かれている。「乗り物」は7点で、各国の身近な乗り物が描写されている。 ほかに「構図・空間」がテーマの作品は19点展示され、子どもならではのユニークな構図の作品が描かれている。「色彩」は21点で、シンプルだったりカラフルだったりと色使いに注目したい絵がそろっている。 同市民ギャラリー主任の若田部哲さんは「賞を取った絵を展示しているが、賞は優劣や巧拙(こうせつ)を問うものではなく、あくまでも子どもならではの感性に対する驚きや喜びから選んでいる」とし「子どもたちの素直な表現のすばらしさを見ていただきたい。昨今、未来への閉塞感があるが、子どもたちの絵から伝わる今の喜びや未来への希望や夢という明るい感情を感じてほしい」と来場を呼び掛ける。(伊藤悦子) ◆同展は9月16日(火)から10月19日(日)まで、土浦市大和町1-1、アルカス土浦(市立図書館)1階、土浦市民ギャラリーで開催。入場無料。開館時間は午前10時~午後6時。月曜など休館。問い合わせは電話029-846-2950(同ギャラリー)へ。