男子プロバスケットボールB2リーグのプレーオフ準決勝、茨城ロボッツはホームのアダストリアみとアリーナ(水戸市緑町)で仙台89ersと対戦。15日の第1戦は73-56、16日の第2戦は81-78で連勝し、悲願のB1昇格が確定した。プレーオフ決勝は5月22日から太田市運動公園市民体育館で、群馬クレインサンダースとB2王座を懸けて戦う。
「待ってろB1」このスローガンをついに現実のものにした。仙台と互いに死力を尽くして戦った準決勝第2戦は、わずか3点の差で、茨城が勝利をもぎ取ることができた。
第4クオーター残り3分24秒の段階で茨城のリードは7点。ここからここから仙台は3点シュート2本とフリースローで追い上げ、ついに追い付く。残り1分9秒。たまらず茨城はタイムアウトを取り、グレスマンヘッドコーチが選手を鼓舞する。
タイムアウト明けの最初のプレー、チェハーレス・タブスコットのジャンプシュートはリングにはじれるが、マーク・トラソリーニがリバウンドで押し込み、さらにその際の相手ファウルでバスケットカウントを獲得、これも決めて3点のリードを奪った。
残り50秒、仙台も後がない。渡辺のインサイドアタックは平尾充庸が止めるもののファウルを取られ、フリースローを与えてしまう。シュートモーションに入る渡辺に対し、スタジアム中の観客が足を踏み鳴らしてプレッシャーをかける。これが功を奏したか、渡辺は2スローとも失敗。
最後残り6秒、起死回生を狙う渡辺は3点シュートを放つが、大きくはじかれる。リバウンドを取ったのは平尾。前線の小林大祐にパスを送ると、ここでブザー。小林はボールを高く投げ上げ、ベンチから選手たちがコートへ飛び出してくる、誰もが待ちに待った勝利の瞬間だ。
試合後コートにしゃがみ込み、挨拶では涙を見せた平尾は「今季主将としていろんな人の思いを背負いながら戦い、一つの目標を達成したことで、張り詰めたものが報われた。最後の方は覚えていないほど、こみ上げてくるものがあった」との心境を、会見で語った。
2018年5月には破竹の17連勝を遂げながら、福島ファイヤーボンズとのリーグ最終戦に敗れ、プレーオフを逃した「いわきの悲劇」(18年5月7日付)。この試合で平尾は一人で34得点を挙げてチームをけん引したが、4点差で勝利に届かず、試合後に涙をあふれさせた。
その姿はブースターも覚えている。「みんなで流した3年前の悔し涙を、今日は歓喜の涙に変えてもらった。それもホームの水戸で叶えてもらい、本当にうれしい。最後の場面はドキドキしたが、選手が折れずにこらえてくれた」と話すのは、試合後に「ありがとう」のプラカードを掲げた栗田光子さんらのグループ。5年来のロボッツファンで、3年前のいわきにも足を運んでいる。
チームは一つの偉業を成し遂げたが、これで終わったわけではない。山谷拓志社長は「目標はあと2つある。ファイナルに勝ちB2優勝を手にB1へ乗り込むこと、そしてB1で優勝し日本一になること。今はまだそのステージに立った段階でしかない。何年かかるか分からないが、必ず頂点を目指す」と次の目標を見据える。(池田充雄)