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福島第1の汚染水、海洋放出へ-問題点は 《邑から日本を見る》86

【コラム・先﨑千尋】政府は今月13日、東京電力福島第1原発で増え続ける放射性物質を含んだ処理水を海洋に放出する方針を決め、18日にいわき市で「廃炉・汚染水・処理水対策福島協議会」を開き、地元市町村長、漁連、農協など関係者にその方針を伝えた。県内の首長や団体代表から意見を直接聞いたのは初めて。

それに対して、「放出には反対。政府の方針は関係者の理解を得ておらず、国、東電への信頼性に疑問がある」(野崎哲県漁連会長)という声をはじめ、「方針を決めた後で説明するということは、結論ありきではないか。海洋放出は、漁民だけでなく県民全体にも影響を及ぼす。正確な、透明性のある情報を出してほしい。海洋放出による損害は、風評ではなく実害だ」など、政府の方針に批判的な意見が多く出された。

しかし、政府や東電の答弁は「今回の意見は今後の検討に反映させたい」などというもので、具体策には触れなかった。今回の経過を取材したが、そのなかで私にはいくつか疑問が湧いた。

東電は2015年に県漁連に「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と文書で約束している。今回の政府の決定では、このことには触れていない。地元との約束を守らず、「丁寧な説明をする」と言われても、誰が信用するのだろうか。「国が決めたのだからそれに従って放出する」と、東電は主役のはずなのに脇役に回って、他人事のようだ。

第一番に、被害を受ける漁業関係者らが反対しても、国と東電はそれを無視して海洋放出する。沖縄・辺野古への新基地建設と同じ構図ではないか。

もう一つは、風評被害(実害)に対する賠償問題だ。東電は16日に公表した賠償方針で「期間や地域、業種を限定せずに賠償する」と明記した。商品やサービスの取引量の減少、価格の下落などに基づき、損害額を算定する。しかし、その基準はまだ決まっていない。風評と損害の因果関係を厳しく審査され、被害があっても救済されないこともあり得る。

事故賠償と同じことの繰り返し?

東京電力福島第1原発の事故に伴う賠償を求める方法は、東電への直接請求と、国の原子力賠償紛争解決センター(ADR)への提訴、訴訟の3つがある。

このうちADRへの申立件数は、2020年末現在で約2万2000件。このうち約6000件は和解に至っていない。私と交流のある飯舘村の菅野哲さんらは、ADRが示した和解案を東電が拒否したため、訴訟に持ち込んだ。この10年の経過を見ていると、賠償するかどうか、またその金額は、東電が決めること、としか思えない。

今度の汚染処理水の海洋放出がなされれば、原発本体の事故の際の賠償と同じことが繰り返されるのではないか。

朝日新聞は19日の紙面で「処理水を放出しても、雨や地下水の流入で増える汚染水が処分量を上回るので、(処理水をためる)タンクの増設は避けられない」と報じている。そうだとすれば、「廃炉作業のスペースを確保するために処理水を放出する」という政府の方針とは食い違うことになる。国、東電はどうするのだろうか。(元瓜連町長)

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