土曜日, 2月 7, 2026
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子ども版 意思決定支援ツール作成目指す 筑波大 名川講師ら

障害者や子どもなど、自分の気持ちをうまく表現することが難しい人に対し、本人の思いを引き出し、意思決定を支援するときに使われるツールがある。イラストが描かれたカードを使って会話を深める「トーキングマット」だ。子ども版トーキングマットを作りたいと、筑波大学人間系の名川勝講師が代表理事を務める「日本意思決定支援ネットワーク(SDM-Japan)」(新潟県)が、クラウドファンディングに挑戦している。

思いを引き出す

トーキングマットは1998年にスコットランドで開発され、現在、ヨーロッパやオセアニアを中心に広まっている。知的障害や学習障害、認知症など、コミュニケーションや記憶保持が難しい人に対し、本人が生活の中で何を大切にしたいと思っているかを、周囲の支援者が理解したい時などに使われる。

例えば、好きな活動について話したいときには、「映画鑑賞」「スポーツ」等のイラストが描かれたカードを本人に渡し、その活動が好きか嫌いかを分類しながら、マットの上に置いてもらう。その後、その活動のどのようなところが好きかなどを聞きながら、会話を深めていく。カードを見て話すことで、会話のテーマが明確になり、具体的な情報を引き出せたり、本人が抱えている問題を発見できたりする。

昨年のクラウドファンディングで作成された日本語版トーキングマット

これまで英語版しかなかったため、同ネットワークでは、昨年3月にクラウドファンディングをおこない、カードや説明書を翻訳した日本語版トーキングマットを約100セット作成した。また、支援者がトーキングマットを使うための基礎研修も4回開催し、約40人が研修を修了した。現在、日本でも福祉や教育現場で障害のある子どもや成人に対して使われ始めている。

筑波大学大学院博士後期課程1年で、同ネットワークのメンバーでもある延原稚枝さんは「昨年のクラウドファンディングで、日本でもトーキングマットについて多くの人に知ってもらうことができた」と話す。

子どもにも意思決定支援を

昨年作成した日本語版は全年齢が対象で、子どもにも使うことができる。しかし、英語版には子どもとの会話を深めることに特化したトーキングマットも作成されており、今回、子ども版の作成を目指す。子どもの生活や教育に、より焦点を当てたもので、同じテーマでも発達段階に応じてイラストが異なるなど、子どもがリラックスして話せるように工夫されている。

「意思決定支援は知的障害など障害者のための支援だと思われがちだが、障害のない子どもでも、自分で何かを決めようとすると、十分に意見を聞いてもらえないことも多い。子どもにとっても意思決定支援は重要」と延原さん。

ヨーロッパでは「子どもの権利条約」で謳われている子どもの意見表明権を大切にしていて、子どもが自分の考えを表現しやすい方法としてトーキングマットが使われているという。学校で自分の進路を考える場面や、入院中に治療を安心して受けられているかを確かめる場面、罪を犯した少年に今後の人生について考えてもらう場面などで活用されている。

「現在、日本では障害福祉や特別支援教育の分野で使われることが多いが、子ども版を作ることで、児童福祉や少年司法分野でも、子ども自身がどのように生活していきたいかを考える機会が増えれば」と、延原さんは話す。(川端舞)

◆支援募集期間は4月19日まで。クラウドファンディングはこちら

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ふるさとのない時代《くずかごの唄》154

【コラム・奥井登美子】お正月には誰も故郷に帰りたくなる。私が育ったのは荻窪のみどり幼稚園。緑の名の通り、生垣に囲まれた家と野原の、のんびりした緑色の住宅街だった。 しかし今の東京の町はどこも高いビルばかりで、緑がない。故郷という言葉とはかけ離れた風景になってしまっている。私の故郷と呼べるような所は、もうどこにもなくなってしまったのだ。 幼い時、父の故郷、新富町へもよく連れて行ってもらった。父は歌舞伎座が新富座であった頃の、鉄砲洲小学校出身。「菅原伝授手習鑑」などに寺子屋の子役として駆り出されて、よく出演させられたそうだ。台詞(せりふ)も筋もよく覚えていて、よく私に語って聞かせてくれた。 隅田川のほとりに町があって、父は「〇〇ちゃんの店でノリを買おう」などと、昔の友達の家に寄っておしゃべりするのを楽しみにしていた。父の故郷はいま、日本ではない、高いビルばかりのどこか架空の空間になってしまっている。 タケちゃんの文が朝日に載った 1月27日の朝日新聞「折々のことば 鷲田清一」に、加藤尚武の文が載っていた。「個人の間の平等は、ある程度まで…自然の平等に支えられているが…国力の差は、ネズミとゾウの違いよりも大きい」 加藤尚武は私の弟のタケちゃん。京都大学の哲学教授を務めた後、鳥取に環境大学を創り、環境問題を、哲学のまな板の上に載せた人。「環境問題のすすめ」という著書もある。生活者として、医療と環境を意識して生活している。 加藤家の男たちはみな食べるのが好きで、父も、兄も、タケちゃんも、好きなものを自分で作って食べるのが趣味だ。 私はせめてせめて、お正月くらいは、おしゃべりの好きな弟のタケちゃん、母の昔の味の料理を作ってくれる妹、姪たちに会って、亡くなった父、母、兄の個性を偲(しの)びながら、今の子供たちと比べて、大笑いするしかないのだろうか。(随筆家、薬剤師)