【山口和紀】「聴覚障害とテクノロジー」をテーマにしたオンラインイベント「第2回みんなの学会」が21日、開催される。筑波大大学院生らがつくる「つくば院生ネットワーク」が主催する。「みんなの学会」は昨年2月に初めて開催された。
第2回の今回は、音声認識を利用したコミュニケーションツールを開発する筑波技術大の若月大輔准教授、聴覚障害者に対するパソコン操作の指導を視覚的に助けるツールSZKITなどを開発する鈴木拓弥准教授、竹園東小学校の難聴学級担任の奥沢忍さんの発表などが行われる。
筑波大や筑波技術大の大学院生や卒業生などがイベントの企画に関わった。同ネットワークの田中萌奈さん(筑波大大学院1年)は「通常、学会というのは学問分野ごとに分かれ、発表や議論をする場だが、『みんなの学会』は専門分野や所属に関係なく参加できる学びの場」だと話す。
第2回のテーマは「コミュニケーションを支えるテクノロジー」だ。特に難聴者やろう者とのコミュニケーションにテクノロジーがどのように応用されているのかが紹介される。
当日も使用される遠隔文字通訳システム「captiOnline(キャプションライン)」は、機械学習を利用した音声認識による文字通訳がウェブプラウザのみで簡単に使用できる仕組みだ。音声が即座に高い精度で文字化され、音声会議ソフトに簡単に表示できる。イベントの登壇者の一人、若月大輔准教授が開発したシステムだ。類似の仕組みは複数あるが「特別なアプリやソフトをインストールすることなく、誰でも簡単に文字通訳を遠隔で利用できることがcaptiOnlineの強み」だという。
「改善のアイデア共有できたら」
近年めざましく進歩している音声認識による文字通訳だが、認識精度の問題や機材の煩雑さなど課題も多い。スタッフの高田愛未さん(筑波大4年)は「音声認識のテクノロジーは確かにすごいが、一方でまだまだ不便な点も多くある。そうした不便さを参加者で感じとり、改善するためのアイデアなどを共有していけたらうれしい」と話す。
聴覚障害者も企画の運営に一緒に参加している。スタッフの一人、千葉県在住の寺尾耀一郎さんは、聴覚・視覚障害者が学ぶ筑波技術大学の卒業生だ。寺尾さんは「聴覚障害者を支える技術が、どのように使われているのかを知ることが大事。技術がそこにあるというだけではなくて、どうすれば使いこなせるのかを考える機会をつくりたい」と語る。
竹園東小学校で難聴学級の担任をしている奥沢忍さんは、聞こえにくい児童と聞こえる児童が同じように学級に参加するための試みについて発表する。「小学校に難聴学級が単独で設置されている例は珍しい。貴重な実践の話をしてもらえると思う」とスタッフの高田さんは話す。
「みんなの学会~コミュニケーションを支えるテクノロジー」は21日午後1時からオンラインで開催される。すべてに手話通訳および文字通訳が付く。学生だけでなく一般市民の参加も歓迎している。申し込みはみんなの学会参加申し込みフォーム。