【池田充雄】プロバスケットボールBリーグ2部の茨城ロボッツ(本拠地・水戸市)は、ロボットスーツを開発するつくば市のサイバーダイン(同市研究学園、山海嘉之社長)と連携し、同社が開発・提供するプログラム「MTX式Neuro HALプラス」を活用したトレーニングを取り入れている。トップチーム選手2人が参加したデモンストレーションの様子が14日、メディア向けに公開された。
サイバーダインが開発した身体動作補助ロボット「HAL」をスポーツに応用したプログラム。脳神経・筋系のパフォーマンス向上、筋肉の収縮・弛緩の最適なタイミングの把握、身体のバランス調整などに効果が期待できるという。
ロボッツではサイバーダインよりHAL腰タイプ2台の供与を受け、昨年11月から日常のトレーニングに導入した。1人あたり10分ほどの使用時間で、前屈、スクワット、サイドステップといった基本動作の最適化に活用している。
デモンストレーションでは鶴巻啓太、中村功平の2選手がHALを装着し、これらの動作を行ってみせ、使用感などについて報道陣の質問に答えた。
2人によると、初めて装着したときの感動が今でも忘れられないという。「装着してトレーニングをした後、装着前と同じ動作をしたところ、体がすごく軽く、動きやすくなっていた。垂直跳びでは装着後は記録が8センチも伸びており、これは一種のドーピングではと思うほどの効果を実感した」と鶴巻選手。「自分も、外した直後の体の軽さを実感した。垂直跳びでは鶴巻選手ほどではないが、ジャンプ力が4、5センチ上がっていた」と中村選手。
この体の軽さや動きやすさは、装着時にHALが体の動きを補助していた感覚が、HALを外した後も体の中に残っているイメージだという。「力を入れなくてもスムーズに動ける感じ」と中村選手、「少しのパワーで速く動けるようになる。試合に出る前にずっとつけておき、出るときに外したらすごいパフォーマンスができるのでは」と鶴巻選手。
こうした身体能力の向上は、「MTX式Neuro HALプラス」による脳神経系トレーニングの効果によるものだと、サイバーダイン取締役の安永好宏さんは話す。
「運動パフォーマンスは筋肉を鍛えるだけでは向上しない。一つの動作には体のさまざまな筋肉が連動して働いており、そのスイッチのオン・オフを脳がコントロールしている。例えば腕を伸ばす動きでは上腕三頭筋が働き、逆に縮める動きでは上腕二頭筋が働く。もし、腕を伸ばそうとするときに上腕二頭筋に余計な力が入っていたら、上腕三頭筋の働きにブレーキがかかり、最大の力を発揮できない」
使いたい筋肉を正確に使い、力を入れる必要のない筋肉を脱力し、筋出力の最適化をもたらすのが、「MTX式Neuro HALプラス」の最大の特徴といえる。だがそれだけではなく、運動中の体内の状態を可視化し、言葉に頼らないコーチングを可能にすることで、指導方法に革命をもたらす期待もあるという。