【相澤冬樹】ナノサイエンス分野の研究で優れた業績を挙げた国内研究者を顕彰する江崎玲於奈賞の審査会が23日、つくば市内で行われ、第17回受賞者(副賞1000万円)に原子の核スピン応用技術の平山祥郎東北大学大学院教授(65)を選出した。
第31回つくば賞(副賞500万円)には「チバニアン」研究の茨城大学大学院の岡田誠教授(55)、国立極地研究所の菅沼悠介准教授(43)、産総研地質調査総合センターの羽田裕貴研究員(28)の3氏を選んだ。
「江崎先生も気づかなかった着眼点」
同賞は茨城県科学技術振興財団(江崎玲於奈理事長)がノーベル賞受賞の白川英樹、野依良治、小林誠各氏らを審査委員に選出する。今回の発表はオンライン開催となった。
平山教授は、東北大学先端スピントロニクス研究開発センター長。原子の核スピンが分極し、余剰抵抗が生じることは1999年ドイツの研究者により報告されたが、電気特性が弱く注目を集めなかった。これに着目した平山教授は2003年以降、独自の半導体ナノ技術を駆使して核スピンの分極を電子的に制御し、その影響を高感度に抵抗検出する技術を確立した。技術はMRI(核磁気共鳴画像法)のイメージングにも用いられるが、平山教授の研究は核スピンの分極の組み合わせを量子コンピューターなどのエレクトロニクス分野に応用するなどの技術開発で特に業績をあげた。
審査会では「江崎先生をもってしても気づかなかった着眼点であり、その先見の明に賞を与えたい」とした。
地磁気逆転、古海洋変動復元研究が評価
つくば賞受賞の3人は、今年1月のIUGS(国際地質科学連合)理事会で承認され、わが国初の地質時代名称となった「チバニアン」に関する研究が評価された。千葉県市原市の地層「千葉セクション」は中期更新世(7.4万年前~12.9万年前)における地磁気逆転と海洋環境変動を記録することを、極めて高い時間解像度で明らかにした。
第30回つくば奨励賞は、実用化研究部門で物質・材料研究機構の内藤昌信グループリーダー(47)、若手研究者部門で同機構の佐々木泰祐主幹研究員(40)が選ばれた。
同財団によれば、新型コロナウイルス感染防止のため、例年行ってきた各賞の授賞と受賞記念講演会は開催を見合わせる。受賞者への賞の贈呈は個別に行う予定。