【相澤冬樹】遮光/透明状態をスイッチで自由に切り替えられる「調光ガラス」の実用化に向けた実証実験が8日、つくば市内で始まった。省電力性・発色性に優れたエレクトロクロミック(EC)材料を開発した物質・材料研究機構(NIMS)が、同市の支援を受け行うもので、長期使用に対する動作安定性などを検証する。
実験が始まったのは、つくばスタートアップパーク(つくば市吾妻)コワーキングスペース東側の窓。青色と紫色のEC調光ガラス(1枚10×10センチ角)を1000枚以上、木枠に入れて既存の窓の内側に設置した。窓の脇にはスイッチデバイスも置かれ、来年3 月までの実証実験期間を通じて、施設利用者らに操作してもらい、要望に沿って切り替えの操作性などを改良する予定という。
調光ガラスは、カーテンやブラインドを必要としない次世代窓として注目されている。現在、ボーイング787などで使用されているが、消費電力や発色性の面で課題があり、オフィスや商業施設などへの普及には至っていない。
NIMSでは、機能性材料研究拠点電子機能高分子グループ(樋口昌芳グループリーダー)を中心に材料研究が行われてきた。開発したEC材料「メタロ超分子ポリマー」は低消費電力で駆動し、発色性にも優れる。含まれる金属種を変えることで、青、緑、紫、黒など様々な色に変えることができるという。
実用化に向けては、建物に設置した状態での耐久性や切り替えの操作性などを検証する必要があった。実証実験中のEC調光ガラス窓をショーケースとみなし、市内外の製造企業に積極的に技術を紹介することで、将来の実用化に向けたサプライチェーンの構築を目指す。
樋口リーダーによれば、これだけの規模で実装された調光ガラス窓は前例がないそうだ。「通常の窓だと、夜になると明るい室内が外からのぞかれるようになるが調光ガラスはスイッチひとつで視線をシャットアウトできる。直射日光を受けて温度変化がどうなるかなど利用者に体感してもらいたい」と語っている。