【コラム・先﨑千尋】茨城県議会は6月23日の本会議で、日本原子力発電東海第2原発の再稼働の賛否を問う県民投票条例案を反対53、賛成5の反対多数で否決した。約8万7000人の県民が署名して求めた県民投票は、最大会派のいばらき自民や県民フォーラム、公明などの反対で実現しないことになった。
本会議に先立つ同月18日に、県議会防災環境産業委員会は総務企画委員会と連合審査会を開き、同条例制定の直接請求代表者や学識経験者、国、地元自治体首長らの意見を聴取し、討論後に反対多数で否決していた。
条例案は、東海第2原発の再稼働の是非について、県内の有権者が賛否の投票をするというもので、大井川和彦知事も多くの県議も再稼働について明言してこなかった。このため、県民の意思を確認する手段の一つとして、有志が「いばらき原発県民投票の会」をつくり、憲法で保障された条例制定の直接請求を県議会に求めていた。
知事は、請求に基づく条例案を県議会に提案する際には、自らの意見を添えて提案することが求められているが、意見書は「慎重に検討していく必要がある」と賛否を明確に示さなかった。
「基本的知識が抜けた議論」
連合審査会では、参考人の意見表明に対して各委員から質疑や意見が出された。その主なものを列挙する。
・安全性の検証、実効性ある避難計画の策定、県民への十分な情報提供(3条件)がそろわない限り、県民に意見を聞く時期でない(自民、公明)。
・条例が次の任期の議会の判断を縛ることになる(自民)。
・県民の意見は多様。二者択一で県民の意見を求めるのは妥当ではない。投票率が低い場合、その結果の解釈をめぐって混乱する恐れがある(公明、県民フォーラム)。
・民間企業の行く末を県議会が決定することへの矛盾、賠償など法律上の懸念もある(自民)。
これらの意見に対して、私の見解はここでは示さない。この日の審査会で驚いたことは、反対した会派の代表の意見表明が参考人の意見とは関係なく、予め用意された文を読み上げただけだったことだ。これだけ重要な県民からの問題提起をたった1日しか審議しないこと、審査の中身を意見表明に反映させていないことから、前もって否決することを決めて委員会に臨み、形式的な審査だけ行ったと思えてならない。
「県民投票の会」共同代表の徳田太郎さんは、審査会後の取材で「基本的知識が抜けた議論で、これで採決するのかというほどレベルが低い」と話しているが、その通りだ。
県民投票条例案が県議会で否決されたあとの今月5日、水戸市でその経過を検証するシンポジウムが開かれ、常磐大学の吉田勉教授が「賛成派、反対派の議論が薄かった。継続審査にすべきだった。県議会に超党派の勉強会を作ってもらいたい」と提言した。
同会では今後、署名集めのノウハウや県議会審議を通じて明らかになった課題をまとめた報告書を作成、公表する、としている。(元瓜連町長)