月曜日, 12月 15, 2025
ホームコラム《邑から日本を見る》65 いいね、「黒川杯」検察庁前麻雀大会

《邑から日本を見る》65 いいね、「黒川杯」検察庁前麻雀大会

【コラム・先﨑千尋】先月30日の夕方のテレビで、表題のニュースを見た。前東京高検検事長の黒川弘務氏が新聞記者と賭け麻雀をしていたことが「週刊文春」で報道され辞任したが、訓告処分を受けただけで辞職したことがことの発端。

ことのいきさつはこれまでに伝えられているので、簡単に。安倍首相が「余人をもって代えがたい」と惚れ込み、1月に法律をねじ曲げて同氏の定年延長を決めた。さらに、そのことを後付けで正当化しようとする検察庁法改正案が衆議院を通過する寸前に問題が発覚し、黒川氏は辞めざるを得なくなったということだ。

問題はそれにとどまらず、長い間新聞記者と賭け麻雀をしてきたのに、賭博罪にあたらないと懲戒処分を受けず、訓告にとどまったということだ。閣議ではこれらについてどのような議論があったのだろうか。

定年延長を認めていない検察庁法を、国家公務員法という別の法律を使って、時の政権の意向次第で変えてしまう。明らかに違法行為である。さらに、賭け麻雀は刑法の賭博罪にあたる。しかも黒川氏の場合は常習犯のようだ。過去に、自衛隊員が同じ行為をして懲戒処分にあっている。

人事院の懲戒処分指針では、「賭博をした職員は減給または戒告、常習的に賭博をした職員は停職」となっている。黒川氏は次期検事総長待ちで定年延長になった。それだけ高いポストにいたわけだ。潔白でいるべき人が、不要不急の外出を自粛すべきという緊急事態宣言下に、新聞記者の自宅マンションで賭け麻雀をしていた。

権力とメディアの「持ちつ持たれつ」の関係

法律はおろか憲法まで勝手に解釈を変えてしまう安倍首相だから、人事院の指針などくそ食らえなのだろうが、彼らに賭博罪を適用するかどうかは検察と裁判所が決めることだ。すでに、市民グループや弁護士から告発状が東京地検に出されているが、内閣は「テンピン」という黒川氏らのレートが賭博罪にはあたらないと判断している。

検察が起訴すれば、裁判所が改めて賭博罪の成否や量刑を判断するが、黒川氏が起訴されない、または無罪とされれば、刑法はザル法になる。賭け麻雀が合法化されるということだ。

第1回「黒川杯」の主催者らは、警察官によって検察庁前から日比谷公園に追い払われたが、そのねらいは、「黒川氏や記者らに対してきちんと捜査を行い、彼らのレートだと賭博罪で罪を問われるのか否かをはっきりさせろ」ということだと思われる。

今回のことでもう一つ問題にしたいのは、検察幹部とメディアのズブズブな関係があからさまにされたということだ。しかも、安倍政権の評価で対極にあると考えられていた朝日新聞と産経新聞の記者が仲間だということに驚いている。「朝日よ、お前もか」だ。

新聞などは書かない(書けないだろう)が、この「賭け麻雀事件」の根源は、日本特有の記者クラブ制度にあると考えている。記者クラブ制度は1890年に帝国議会が開かれた時からあるようだが、会員以外は記者会見場から締め出す排他性が指摘され、記者会見も慣れあいで進められる。同時に、この制度によって権力とメディアの緊張関係が失われ、「持ちつ持たれつ」の関係になる。この制度がなくならない限り、同じようなことが繰り返される。(元瓜連町長)

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

環境にやさしい素材で 子供たちがアート体験 つくば スタジオ’S

筑波大学で芸術などを専攻する学生に教わりながら、子供たちがさまざまなアート技法を体験するイベント「冬のキッズアート体験2025」が13日、つくば市二の宮のギャラリー「スタジオ’S」で開かれた。普段ごみとして捨てられてしまったり、リサイクル資源となる紙パックやトイレットぺーバーの芯、環境にやさしい再生紙を使った工作体験などが催された。 関彰商事(本社:筑西市・つくば市、関正樹社長)が筑波大学芸術系の協力で、9年前の2016年から毎年冬と夏に開催している。昨年からつくば市と県つくば美術館がこの企画を応援。同市とSDGsを推進する包括連携携協定が締結されていることから、環境にやさしい素材が使われるなどした。 紙パックを使った工作では、子供たちが、紙パックに布シートを貼り付けて、さらにクリスマスツリーのように飾り付けるバッグ作りに挑戦した。トイレットペーパーの芯では昆虫やコースターなどを作った。再生紙は、関彰商事の廃棄書類から作られた再生紙でクリスマスツリーに飾るオーナメントを作った。 ほかに、筆で文字を書いたりスタンプを使ったりする「オリジナル年賀状づくり」、小さな透明な容器に砂や石などを敷きミニガーデンをつくる「テラリウムづくり」など計七つのブースが設けられた。 午前、午後合わせて昨年より多い82人の小学生が参加。子供たちは二つの会場に設けられた各ブースを自由に行き来しながら、自分だけの作品を作っていた。 ちぎった和紙を台紙に貼り付けてオリジナルのクリスマスカードを作るブースでは、子供たちがちぎった和紙を接着剤で貼り付け、少しずつ形にしていく。工作時間は30分だが、10分ほどで仕上げる子もいた。 市内から参加した小学2年の女子児童は「参加したのは2回目。クリスマスツリーを作った。ていねいに教えてくれたので、思ったよりやさしかった。来年もまた来てみたい」と話していた。 テラリウムの指導にあたった同大生物資源学類2年の渡邊奏和さんは「自分は芸術専攻ではないが参加した。子供たちにどう伝わるかわからないこともあるが、子供が好きなので教えるのは楽しい」と感想を話した。(榎田智司)

サイエンス高校と筑波高校の魅力《竹林亭日乗》35

【コラム・片岡英明】文科省は11月、今年度補正予算に公立高校の魅力向上のために約3000億円の基金を設置すると発表した。この予算が成立すれば、学費無償化を含め、公立学校の魅力アップ策も導入されることが期待できる。こうした動きも念頭に置き、今回は県立のつくばサイエンス高校と筑波高校の学校づくりについて考えたい。 サイエンス高:探求重視の進学校 2022年まで4学級だったつくば工科高は、23年から科学技術科6学級で構成されるサイエンス高校となった。しかし、初年度の入学者は88人(つくば市内からは53人)、24年は77人(同53人)であった。そこで県は、「普通科を!」の声を受けとめ、学級編成を変更し、25年から6学級中3学級を普通科にした。すると、市内からの入学者は111人に激増し、全体の入学者も178人(つくば工科時代の22年は134人)に増えた。 24年→25年の中学別入学者数を見ると、並木中:1人→10人、谷田部中:5人→25人、谷田部東中:8人→21人、みどりの中:8人→12人など、地元の入学者が増え、県立高改革が軌道に乗り始めた。 その理由としては、ノーベル賞受賞の小林誠さんが名誉校長であること、4名の外国語指導助手(ALT)などスタッフや設備が充実していることが挙げられるが、私が注目しているのは教育課程である。どの教科を、いつ、どれだけ学ぶかは学校教育の要だからだ。 進学校には、2年生から文・理を分ける受験重視の土浦二高・牛久栄進高型と、1・2年は基本共通科目とし教養を重視する土浦一高・水戸一高型がある。サイエンス高は最初から文・理融合をモットーに教養重視型で、この大きな「構え」に設立当初のスタッフの深い理念が感じられる。 リニューアル開学3年目に学校見学させてもらったところ、学校も一新され、生徒が楽しく学んでいた。職員室前には、山形大工学部をはじめ10数人の大学合格者が掲示されていた。話を聞きながら、今後、京都市の堀川高校や千葉県の市川学園が参考になるのではないかと思った。 筑波高:地域と連携した多面校 小規模校の魅力アップは茨城県の重要な課題である。その点、地域との連携に踏み出した筑波高の学校づくりは注目に値する。改革2年目の進学コースの様子に関心を持ってお話を聞いたところ、少人数での学習だけでなく、進学コースのまとまりや意識も高まってきたという。今後が楽しみである。 先日、筑波高も参加している地元北条の「祭り」を見学した折、生徒の「学校が楽しい」との言葉を聞いた。小田城址で開かれたジャズフェスでのスタッフ活動や、老人ホーム訪問後、「次はあの老人をどうすれば笑顔にできるか」と工夫する取組みなど、フィールドを持つ学びの可能性を感じた。話を聞きながら、校内の川の清掃やヤギを飼うなど、幅広い学びのある武蔵高校・中学が参考になるかなと思った。 茨城の学校づくりのモデルに 筑波高は、保護者も卒業生という生徒が多く、地元とのつながりが深い。また、歴史あるサイエンス高は、地元中学の期待が大きい。地域の応援を受け、この2高が茨城の学校づくりのモデルになるよう期待している。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

小美玉市にある「ぺんてる」の主力工場《日本一の湖のほとりにある街の話》35

【コラム・若田部哲】土浦市教育委員会に配属されて十年余り。児童の絵画コンクールなどにも関わる中で、近年、絵に親しむ子供が減っているという現実を痛感しています。背景には、娯楽の多様化や、カリキュラム・習い事の忙しさといった子供側の事情に加え、正解のない芸術を教える難しさという、大人側の都合もあるのかもしれません。加えて、当世を席巻する「タイパ・コスパ」志向とこの分野の相性の悪さも、無関係ではないでしょう。 しかし、自らのさまざまな感情を、絵の具をはじめとする多様な媒体に託して表現するという営みは、ラスコーやアルタミラの壁画を持ち出すまでもなく、極めて普遍的で、人間の根源的な喜びに満ちています。そうした「表現」の衰退を、寂しく思いつつ眺めていました。 今回は、その「表現の力」を支える現場のひとつ、小美玉市のぺんてる小美玉工場を、同社研究開発本部長の名須川さんに案内していただきました。クレヨンでおなじみの「ぺんてる」。多様な文房具を通して日本の教育を支えてきた同社の国内最大の生産拠点が、1964年に稼働を開始したこの工場です。 現在まで続くベストセラー、サインペンの生産拠点として、東京ドーム1.5個分の敷地に設立された工場では、創業当初、100人で1日1万本を製造していたところ、現在ではわずか2人で1日6万本を生産しているとのこと。サインペンに加え、ボールペンやクレヨンなど主力製品の多くが、ここで作られています。 文房具でも画材でもなく「表現具」 最初に案内されたのは、ロングセラーであるサインペンの製造ライン。1980年代製の武骨な組立機はいまも現役で稼働し、流れるような動きで次々と製品を生み出していました。隣の最新式ボールペン「エナージェル」のラインには、自社開発の組立機が整然と並び、部品が驚くほどの速さで形になっていきます。こうした機械の多くを自社内で作っている点も、同社の大きな強みだといいます。 続いて向かったのは、クレヨンの製造現場。顔料と油が混じった独特の香りが満ち、美術を学んでいた学生の頃の記憶がふとよみがえりました。3台の大きな円盤状の装置が止まることなく回転し、そのたびに1本1本、クレヨンが生まれていきます。 ドロドロに溶けたクレヨンの原料が型に下から注ぎ込まれ、一周する間に冷えて固まり落ちてくる様に、思わず目はくぎ付けに。色を切り替える際には機械を徹底的に洗浄する必要があるため、同じ色を1〜2日かけて作り続けるのだといいます。さらに、色を製造する順番も厳密に決められており、約12日で12色が一巡する仕組みになっているとのこと。こうして、ベストセラーの「ぺんてるくれよん12色セット」の出来上がりです。 最新機器と歴史ある重厚な機械が並び立つ空間で、人の感情を伝えるための多彩な道具が今日も生まれ続けています。「これからも『表現の力』を信じて、文房具でも画材でもなく、『表現具』を作り続けていきます」。穏やかにそう語る名須川さんの表情に、これからも表現の灯が消えることはないという、確かな希望を感じた取材でした。(土浦市職員) <注> 本コラムは周長日本一の湖、霞ヶ浦と筑波山周辺の様々な魅力を伝えるものです。 ⇒これまで紹介した場所はこちら

サンタにふんし ごみ拾い TX万博記念公園駅周辺で障害者ら

クリスマスを前に、サンタクロースにふんした知的障害者らが12日、つくばエクスプレス(TX)万博記念公園駅周辺でごみ拾いをした。 同駅近くに立地する障害者の就労支援施設「さくら学園」(NPO明豊会運営、飯島喜代志代表)に通所する障害者ら約25人で、障害者を知ってもらい地域とのつながりをつくろうと、7年前の2018年12月から毎月1回、同駅周辺でごみ拾いを続けている。 この日はクリスマスシーズンにちなんで、赤い上着とズボンを着用、赤い帽子をかぶり、白いひげを付けて駅周辺を歩きながら清掃。TX高架下の生け垣、駅前のバス停、空き地、マンションの生け垣などに落ちていたビニール袋、ティシュペーパー、たばこの空き箱、紙コップ、空き缶などを拾い集めた。 守谷市から通所する高田建太さん(20)は「順調にきれいになった」と話し、つくば市内から通所する山下靖紘さん(34)は「楽しい」などと話していた。12日は強風注意報が出され、つくば市は最大風速7メートルと強風だったため、通常の半分のコースの約500メートルを、20分ほどかけて歩いた。 さくら学園広報の鈴木芽未さんは「障害者が外に出ることは大事。どんな人が通っているか地域に知ってもらい、地域との接点になれば」と話していた。 同施設にはつくば市内のほか周辺市町村から約30人の知的障害者や精神障害者、身体障害者らが通っている。ゴムのバリ取りなど会社から受注を受けた作業のほか、不要のパソコンを回収し希少金属をリサイクルする作業(2024年1月24日付)、機織り機を使った手織り、オリジナルトートバッグの製作(22年3月26日付)など、独自にさまざまな作業に取り組んでいる。(鈴木宏子)