【川端舞】新型コロナウイルスの感染拡大により世の中全体が混乱している今、障害者支援にはどのような影響が出ているのか。介助者のサポートを受けながら一人暮らしをしている障害者の中には、介助者の派遣が止まってしまったら、食事をすることも、医療機関に電話で体調の相談をすることもできない人も多い。
変わってしまった日常
地域で生活している障害者を支援する「つくば自立生活センターほにゃら」(つくば市天久保)代表の川島映利奈さんは、自身も脊髄性筋萎縮症という障害を持っていて、24時間、介助者のサポートを受けながらつくば市内のアパートで生活している。
今までは、センターの活動で週に4日、私用で1~2日外出していたが、感染拡大が身近に迫ってきた4月初めからは、週に1~2回、買い物など本当に必要な数時間の外出しかしていない。食事やトイレ、痰の吸引など、日常生活すべてに介助が必要な川島さんは、自分が新型コロナに感染するよりも介助者にうつしてしまうことの方が怖いと話す。部屋のドアノブを一日一回は消毒したり、介助者に手洗いやマスク着用を徹底してもらったりなど、できる限りの感染予防をしている。
最悪を想定、一人一人の対応を検討
「ほにゃら」は、地域で生活している障害者に介助者派遣もしている。「障害者のことは障害者が一番よく知っている」という理念のもと、介助者の採用面接や研修、シフト作りに川島さんも関わっている。
通常、週に1度、利用者や介助者の近況報告・問題共有をするための会議を開いている。そこでは個別具体的な話もされるため、ビデオ通話では難しい。現在週に1度だけ、十分な感染対策をしながら、川島さんも同センター事務所に行っている。
同センターでは最悪の事態を想定した対応策を考えている。利用者一人が感染した場合、その利用者のところに入っていた介助者は濃厚接触者となり、他の利用者の介助にも入れなくなる。濃厚接触者を少なくするために、どの介助者がどの利用者の介助に入るか固定する方法も考えたが、複数の利用者の介助に入っている介助者も多いため、現実的ではなかった。
現状は、利用者と介助者の両方に、手洗いや検温の徹底、利用者の部屋の換気などをお願いするとともに、事務所内の仕事もなるべくそれぞれの家でできるように工夫している。そして、利用者が感染した場合に備えて、使い捨ての防御服や雨合羽、フェイスガードなどを少しずつ備え、どうやって介助するべきかというシミュレーションを利用者一人一人について考えているそうだ。
つくば自立生活センターほにゃらも加盟している全国自立生活センター協議会(東京都八王子市)でも、新型コロナウイルス対策についてのホームページを立ち上げ、感染した障害者を介助する際の注意点などを掲載している。
障害者にとって、介助派遣事業所が感染予防だけでなく、もし利用者が感染した場合の介助方法も事前に考えてくれていることは、何より心強く、不安な中でできる限りの感染予防をやりながら、自分らしい生活を続けていこうと思える力になるだろう。