つくば市天久保でコワーキングスペース「Tsukuba Place Lab」を運営する、株式会社しびっくぱわー(同市天久保)はこのほど、札幌でゲストハウスを運営する合同会社ToGo(札幌市)と、社員を一定期間交換する「交換留職」=メモ=に挑戦している。経営や組織づくりについて互いに学び合い、環境を変えることで社員の意識をリフレッシュすることが狙い。しびっくぱわー代表の堀下恭平さん(27)は「社員だけでなく、組織全体にもよい緊張感をもたらしている」と効果を実感する。
筑波大学在学中の2014年に起業した堀下さんは今年3月、ToGo代表の粕谷勇人さん(26)らと知り合い、経営や社員教育について意見を交わす中で「それぞれ社員を交換したら面白いよね」と意気投合した。
粕谷さんはゲストハウスの業務全般に携わるが「今後の事業拡大を考え、この機に現場をスタッフに任せたいと思い」自分が交換メンバーとして出向くことに。10月25日から1カ月間の予定で、同Labのスタッフとして業務に当たっている。
驚いたのは「ミーティングの違い」と粕谷さん。スタッフ個人が自己実現できているかどうかに焦点を当てる内容に刺激を受け、取り入れたいと考える。
一方、筑波大4年で現在しびっくぱわーのインターン社員、嶋田優奈さん(22)は10月25日から1週間、札幌市のゲストハウス「Wagayado 晴-HaLe-」に行き、掃除や受付に携わった。
「コワーキングスペースと業種は違うが、人のつながりを求めてくる人が多いのは同じ。自分がやったことがゲストに喜んでもらえて、Labでの経験が自分の中にあることを確認できた」と振り返る。数値目標を立てるミーティングの手法もLabで生かしたいと意欲を語る。
現在、Labで働く粕谷さんは札幌から戻った嶋田さんと、それぞれ吸収したことを共有し、お互いの場のクオリティ向上にどう生かすかに知恵を絞る。「残りの日々、ゲストハウスで培ってきたノウハウを生かして、掃除の効率化などLabのオペレーション改善に取り組みたい」と粕谷さんは話す。
堀下さんは「例えば室内のゴミひとつとっても、粕谷さんはゴミ箱までの動線を含めて考えるなど気づく能力がずば抜けており、それがLabのスタッフにもよい緊張感となっている」と効果を実感する。
交換留職について「他の企業からも一緒にやりたいという依頼を受けており、これは地域で(ビジネスの)場を持つ人たちとなら業種を問わずにできると思う。今後、互いに信頼し合える人たちと一緒に取り組み、それにともなって仕事を作り合うことも見込んでいきたい」と堀下さんは展望を語る。
2人の人件費はそれぞれ受け入れ先が負担。粕谷さんはつくば滞在中はしびっくぱわーの社宅に、札幌に実家がある嶋田さんは、自宅から受け入れ先に通った。
同Labは「人と人とを繋ぎ、やりたいことを実現していくための場をつくりたい」と、堀下さんが昨年12月にクラウドファンディングで資金を募り、ボランティアによるDIYで築約40年のビルの2階の一室約63㎡を改修しオープンした。現在、午前7時~午後11時に営業、社会人や学生らが仕事や勉強、打ち合わせなどに利用している。利用料金は学生1日300円、一般500円など。(大志万容子)
【メモ】交換留職=学校間の交換留学のように、自社の社員と他社の社員を一定期間入れ替え、交換先企業で実際に業務を経験させる人事研修制度のこと。個人と組織の成長を促し、企業間交流を深める新しい試みとして注目を集めている。