冬の代表的な感染症インフルエンザが気になる季節。毎年10月下旬からインフルエンザワクチンの接種が開始されるが、供給が例年より遅れており、つくば市内の医療機関でワクチンの不足が生じている。
開業医らで組織するつくば市医師会は「市域全体の不足分は把握していない」とする一方で「医師の『接種を待ってもらうなど患者に迷惑をかけている』という話が多く聞かれる」という。
様々な慢性疾患を持つ人や高齢者は、インフルエンザにかかると重症化する恐れがある。小児では中耳炎や肺炎、熱性けいれんなどに加え、まれに脳炎や脳症などを合併することがあり、子育て中の母親の間で不安が広がっている。大穂地区在住の30代の母親は「通院している小児科と耳鼻科で、確保していたワクチンが2日で無くなったと言われた。接種が再開される時期は未定で予約もできない。今年は接種を諦める」と話す。
記者は市内の1病院と5 医院(内科、小児科、耳鼻科)に聞いてみた。いずれも予約の受け付けは行われておらず、病院は「例年なら患者さんに接する職員がワクチン接種するが、今年はそれもできない状態です」。内科の1医院だけが「12月になればワクチンが入るからこちらから電話します」との対応だった。
そもそもなぜワクチンが品薄状態なのか。ワクチンは例年、厚生労働省などが種類を決めているが、今年は使用する「株」が製造過程で変更となり、その結果、製造―供給が遅れるという状況を生んだ。
厚生労働省のホームページを見ると、今年度の供給予定量は約2528万本で12月1週から2000万本を供給。2010年以降、推計使用量は約2500万本前後で推移しており、需要に対しての供給は充分に見込めるとしている。
県つくば保健所は、現在のところ管轄内(つくば市、つくばみらい市)でのインフルエンザの発生はないという。「ノロウイルスなどの感染性胃腸炎が流行する季節でもあり、マスクや手洗い、うがいを心掛けて予防してほしい」とも。
インフルエンザの流行は年末から。厚労省によれば、ワクチンが効果を発揮するのは接種後約2週間から5カ月間。今はワクチンが確保されるのを待ち、遅くとも12月中旬までに接種できることに期待したい。(橋立多美)