つくば市の五十嵐立青市長が今年8月、市議会全員協議会に示した地元本社優先の入札制度見直し案をめぐって、市議会で攻防が続いている。9月議会で「さらなる改革」を求める決議が議員提案され18対9の賛成多数で可決。これを受け11月13日、議会全協が開かれ、県内市町村の状況が説明された。どう決着するのか、行方が注目される。
8月に示された見直し案は①市の入札参加要件を市内に本店がある業者を基本とする②最低制限価格=メモ=の適用を現在の5000万円未満から1億円未満の建設工事に引き上げる―などが大きな柱。昨年11月の市長選で初当選した五十嵐市長の「地元本社優先」の公約に沿った内容だ。
併せて同市で、最低制限価格とぴったり同じ金額で入札する業者が急増していることが示された。同価格と同一金額で入札した業者が複数あったことから、くじ引きで落札業者が決まった入札案件は、2014年度が全体の5.4%(44件)だったのに対し、15年度は12.7%(96件)に増え、16年度は前年度の2倍の24%(170件)に増えていたことも分かった。
これについて市は、工事の材料価格や積算の仕方など公表されているものが多く、積算ソフトも出回っているため積算がやりやすくなっているためではないかなどとする。これに対し、市内のある業者は「共通の見積りソフトを使えば同じような数字が出るが、価格が公表されてない材料もある。金額が大きな工事になればなるほど、ぴたり当てるのは難しい」と疑問を投げ掛ける。
9月議会では、くじ引き落札の増加を懸念し「さらなる改革」を求める決議が出された。最低制限価格に一定幅の無作為の数字を掛けて金額をだれにも分からなくする「ランダム係数」の導入を求める内容だ。提案者の塚本洋二市議は「最低制限価格の適用を1億円未満に引き上げれば、箱モノ以外のほとんどの工事が対象となり、最低制限価格と同じ金額をぴたり入れる業者がさらに増える懸念がある。見直すべきものは見直して、公平公正、健全性を高めていく必要がある」と話す。(鈴木宏子)
【メモ】最低制限価格は、不当に安い金額での入札を防止し工事の品質を確保するため事前に設定する落札の最低価格。最低制限価格を下回った業者は失格となる。つくば市は現在、5000万円以上1億円未満の建設工事は低入札価格調査制度を適用し、最低制限価格を下回った入札でも審査で適正な工事が実施されると判断されれば落札としている。