土曜日, 7月 4, 2026
ホームつくば【夏休み特報】㊤ お勉強モード全開のつくば 初日から研究機関へGo!

【夏休み特報】㊤ お勉強モード全開のつくば 初日から研究機関へGo!

さあ、夏休み。宿題の心配をするには早すぎるが、さすがつくばは頭脳都市。頭っから、お勉強モード全開だ。20日いきなり2つの研究機関が夏の一般公開を行えば、県科学技術振興財団のつくばサイエンスツアーでは「夏バス」運行が始まり、つくば市が事務局となる「つくばちびっ子博士」企画も39施設を結んでスタートする。【構成・相澤冬樹】

開発から25年、アザラシ型ロボット「パロ」特集

【産総研つくばセンター一般公開】20日午前9時30分から午後4時まで。今年の特集は、開発から25年を経て世界中で愛されるアザラシ型ロボット「パロ」が主役。病気やケガに苦しむ子供たちや一人暮らしのお年寄を癒して、今や世界中で5000体をこえるパロが活躍中とか。開発者の柴田崇徳さんによる特別講演(午後1時から、定員400人)と特別展示が開催される。

アザラシ型ロボット「パロ」に会える産総研サイエンススクエアつくば

科学技術を身近にするチャレンジコーナーでは、結晶のお勉強と実験、地質図ライブラリー特別公開など。科学工作コーナー、スタンプラリーもある。

▼産業技術総合研究所はTXつくば駅から無料シャトルバスを運行。電話:029-862-6214(広報サービス室)  https://www.aist.go.jp/tsukuba/ja/pr/2019/

全員に「適応」エコバッグプレゼント

【国立環境研究所「夏の大公開」】20日午前9時30分から午後4時まで。子供から大人まで、楽しみながら環境問題や環境研究について学べる機会。今回は特に気候変動への「適応」をテーマにしており、来場者全員に「適応」ロゴ入りのエコバッグプレゼント。

子供たちに人気のタッチプールが今年もお目見え=昨年の「夏の大公開」から(国立環境研提供)

サメやタコのタッチプール、安全機能が付いた未来の乗り物(G5)、簡単ヒアリDNA検出キットなど体験型イベントはじめ、研究者と話す環境サイエンスカフェ「プラスチック 何が問題?」、最先端実験施設潜入ツアーなど、合わせて60を超える展示、講演会、体験イベントが予定されている。(一部雨天の場合中止)

▼TXつくば駅と常磐線ひたち野うしく駅から無料シャトルバスを運行。電話:029-850-2453(広報室) http://www.nies.go.jp/event/kokai/2019/index.html

路線バスを乗り継いで6つの研究施設を回る

【つくばサイエンスツアーバス「夏バス」運行】路線バスを乗り継いで国土地理院、つくば実験植物園、つくばエキスポセンター、産業技術総合研究所(地質標本館、サイエンス・スクエア)、筑波宇宙センター、6つの研究施設を回る。大人500円、小学生250円、幼児無料(税込み運賃、保護者同伴)で、終日乗り降り自由の循環バスが運行される。

予約で同行スタッフのガイド付き見学もできるサイエンスツアー=特別展「美しい砂の世界」開催中の産総研地質標本館

ツアーバスじたいは土・日・祝日に通年実施されているが、20日から9月1日までは毎週月曜日を除く毎日開催となり11便を運行。7月26日(砂を学び、砂絵と恐竜ジオラマづくり)、8月6日(極低温・液体窒素実験)、8日(太陽・風・鉄~私たちのまわりの地球環境)、21日(草木染めで色の変化を楽しもう)の4日間は特別イベント(各回定員40人、要予約)がある。第1・3土曜日と平日の5日間限定で、スタッフガイドが同乗して解説を聞かせてくれる同行コースも設定されている。こちらもWEBからの予約が必要になる。

▼乗車場所はつくばバスターミナル8番乗り場、ターミナル隣接の関東鉄道つくば学園サービスセンターに券売所がある。電話:029-863-6868(県科学技術振興財団つくばサイエンスツアーオフィス) https://www.i-step.org/tour/tsukuba-science-tour-bus.html

パスポートに5カ所以上のスタンプを集めて

【つくばちびっ子博士2019】20日から8月31日まで、「ちびっ子博士パスポート」を持って、指定された39の見学施設の展示やイベントを見学・体験しながら、ちびっ子博士スタンプを集める企画。5カ所以上のスタンプを集めてパスポートを提出すれば、「つくばちびっ子博士」に認定され、記念品がもらえる。18カ所以上の見学スタンプと400字程度の感想を書いて提出すれば「最優秀つくばちびっ子博士」の認定証、夏休みの勲章だ。

見学施設は研究機関のほか、筑波学院大学や東京ガスつくば支社を会場にした学習イベント、小田城跡歴史広場などの文化施設も含まれる。国立公文書館つくば分館では22日から8月31日まで、企画展「平家物語 変わりゆく時代を学ぼう」を開催。パスポート・チラシの配布場所はつくば市役所1階総合案内所ほか各窓口センター、つくば総合インフォメーションセンターなど。

▼電話:029-883-1111(つくば市教育局教育指導課) https://www.city.tsukuba.lg.jp/kankobunka/event/1004810.html

各施設で多彩なイベント・プログラム

【科学捜査展 科学の力で真実を解き明かせ!】20日から9月1日まで、つくばエキスポセンター。科学技術を使って事件や事故の現場に残された見えない証拠を分析する科学捜査。実際の捜査で使われる鑑定技術を体験装置や映像、パネル展示で紹介。車とバイクの接触事故、放火の可能性ある火災事件など4つの捜査体験シミュレーションで犯人を推理する。
▼当日配布の整理券方式で1回12組。参加は無料だが、入館料が必要。電話:029-858-1100(つくばエキスポセンター)http://www.expocenter.or.jp/?post_type=event&p=41107

【森林総合研究所「夏の一般公開」】27日午前9時30分から午後4時まで。最新の研究成果を解説するパネル展示や、体験型イベント(サイエンス体験、見学ツアー、ウッドクラフト、クイズラリー、昆虫のコーナーなど)を実施する。森林浴のリラックス効果体験、大人限定の木を発酵したアルコールの香りを試すコーナーなど体験会。講演は「茨城にシカがやってきた」岡輝樹(野生動物研究領域長)ほか。
▼電話:029-829-8372(広報係)https://www.ffpri.affrc.go.jp/news/2019/20190727natsukoukai/index.html

 

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人のために頑張る、目に見えない力がチーム支えている 土浦日大・小菅勲監督【高校野球展望’26】㊦

高校野球強豪校の名監督インタビュー2人目は土浦日大。春の茨城大会を制し、春季関東大会では1勝を挙げ、続く準々決勝では強豪の関東一を相手に互角の戦い(3対4)を演じた。この夏、第1シードとして茨城の頂点を目指す小菅勲監督に、チームの現状、投手陣の陣容、そして甲子園という舞台へ向かう姿勢について、率直な思いをうかがった。 春からさらにワンランクアップ ―まず、今年のチームの仕上がり具合については、現時点でどのように評価されていますか。 小菅 非常に自信となった春でした。その春からもさらにワンランクアップしようということで、この6月を過ごしてきました。力強さは間違いなく増しています。夏は体力勝負ですので、かなりハードなトレーニング、特にフィジカル面の強化を重点的に行ってきました。選手もそれに一生懸命ついてきてくれましたので、必ずこの夏、その成果が出るだろうと期待しています。 何よりも、ピッチャー陣が安定してきたことが最大の強みです。打線は調子の波があるため読めない部分も多いのですが、投手が安定していることは勝利のベースとして非常に大きいです。 ―県内の高校野球ファンの間でも、プロ注目の小池陽斗投手をはじめとした土浦日大の今年の投手陣は盤石だと評判です。具体的な顔ぶれを教えてください。 小菅 右の本格派である小池と島悠希、そして左の板橋悠希。あとは、2年生左腕の園山祐平も台頭してくるでしょう。この陣容には信頼を置いています。 6月は課題に徹底的に向き合った ―春の大会を振り返って、課題や収穫はどんな点にありましたか? 小菅 まず優勝を目標に掲げて、それを達成できたことが最大の収穫です。やはり目標は言葉に出して掲げることに意味があります。選手たちが持てる力を存分に発揮できたということが、何よりの結果でした。 一方で課題は、走攻守全てにおいて細かいミスがまだ見られる点です。特に関東大会を経て、それを痛感しました。効率的な連打が出ない中でも、いかに得点力を上げていくか。6月はこの課題と徹底的に向き合ってきました。ランナーを動かす作戦や、右打ち、バントを確実に決めること。これらは野球の土台です。ただ打つだけではなく、どうやって得点力を高めるかという戦略を磨いてきました。 ―春の試合を拝見して、簡単にバントをしない印象を受けました。 小菅 それは私の中で、場面ありきというより、人ありきだからです。できる者に、できることをやらせる。それを重要視しているだけで、無理にセオリーに縛られる必要はないと考えています。 甲子園4強の代と、実力遜色ない ―チームの戦力層についてはいかがでしょうか。 小菅 チームの成熟度に関しては、3年前の甲子園4強入りした代と比べても、持っている実力そのものは遜色ないレベルにあると感じています。大舞台を経験した代と同様に、今のチームにも大会を通じて急激に成長していく素養は十分に備わっています。 ―選手の役割分担や、控えの存在について教えてください。 小菅 うちはベンチウォーマー(控え)ではなく「ベンチスターター」と呼んでいます。試合の中盤以降に出て、流れを変えたり、勝利を確実なものにしたりする存在です。6月はレギュラー争いも活発で、春よりも戦力層が確実に厚くなっています。彼らがケースバイケースで役割を果たすことで、夏を通じてさらなる成長を見せてくれると確信しています。 井上記録員を甲子園のベンチに ―チーム全体の士気や雰囲気はいかがでしょうか? 小菅 士気は非常に高まっています。「春の優勝は過去のもの。夏は夏で、このメンバーで初めて目指す優勝なんだ」と選手たちには言い聞かせています。第1シードだからといって守りに入るのではなく、チャレンジャー精神で意気揚々と臨む雰囲気です。 ―チームの強みや武器はどこにありますか? 小菅 練習の量と質への自信、そして何よりチームワークです。今年の3年生は特に仲が良い。試合後にベンチ入りメンバーとスタンド応援組が一緒になって喜び合う姿を見ても、今まで見たことがないほどです。 そして、記録員の井上という生徒の存在が大きいです。彼は昨年、悪性リンパ腫という大きな病気と闘い、1年間の療養生活を経て今年戻ってきました。4月にベンチ入りしてから、チームの中で「井上を甲子園のベンチに座らせてやろう」というスローガンが自然と生まれました。人のために頑張れる、そんな目に見えない力がチームを支えています。 キーマンは投の小池と打の吉田 ―注目すべき選手、あるいはキーマンを教えてください。 小菅 あえて言うなら、投の小池と打の吉田惺南です。特にエースの小池が先発であれ抑えであれ、相手打線をしっかり抑えることが勝ちへの最大のポイントです。4番を打つ吉田も当然警戒されますが、その前後を打つ打者がどうつなぐか。彼らが中心となって機能することが鍵です。 ―キャプテンとしての吉田選手はいかがですか? 小菅 声が出ますし、クレバーな部分もある。何よりチーム愛が強く、甲子園に出るのにふさわしいキャプテンです。過去の代と比較するのではなく、「自分たちで指標を決める」という姿勢を自ら持てる点は大変素晴らしい。 甲子園を見て入ってきた世代 ―「甲子園を見て入ってきた世代」と言われますが、彼らへの思いは? 小菅 周囲からはそう言われますが、青春時代のチャンスをつかみ取ろうとする思いは毎年同じです。ただ、春に成果を出してくれたことで、「甲子園に行くのにふさわしいメンバーだ」という確信はより強まりました。「甲子園に出場する」ことにこだわりすぎるのではなく、「仲間と最後までやりきる」こと、その延長線上に結果があると伝えています。 7回制は議論のすり替え ―DH(指名打者)制導入の影響についてどうお考えですか? 小菅 現場では大歓迎です。打線の切れ目がなくなり、守備に不安があっても打撃でアピールできるチャンスが生まれる。相手ピッチャーによって左右のDHを準備しておき、試合展開によっては走塁とバントのスペシャリストも必要になってくる。その分、選手の出場機会が増えるので、選手のやる気を引き出す好影響しかありません。 ―一方で7回制については? 小菅 個人的には反対です。野球の妙味が損なわれます。試合時間短縮の議論が「7回制」にすり替わっていると感じます。本来の問題は炎天下にあるはずなので、ナイター設備や開催時期の見直しなど、他に解決策はあるはずです。 応援に応え感動を与える ―最後に、応援してくださっている皆様へ一言お願いします。 小菅 最近は球場に足を運んでくださる方が増えていると感じます。高校野球は若者が青春を賭けて挑む舞台です。温かい目で見守っていただければ幸いです。また、OB会をはじめ関係者の皆様の支えには感謝しかありません。選手たちには「皆さんからの応援に応えること、感動を与えることが大事な要素だ」と伝えています。皆様と共に、この夏、甲子園を目指して努力を続けていきます。 【取材後記】小菅監督の言葉から強く感じられたのは、このチームが持つ「温かい結束力」だ。特に、闘病生活を経て復帰した記録員を「甲子園のベンチへ」という全員の共通目標が、技術以上の強い一体感を生んでいる。技術や戦術の緻密さだけでなく、こうした「人のために」という純粋な思いが、土浦日大の底力となっていると感じた。第一シードとして迎えるこの夏、彼らがどのようなドラマを見せてくれるのか、今から期待で胸が高まる。(伊達康) 終わり ※毎年、高校野球3強監督インタビューを掲載していますが、本年は諸般の事情により霞ケ浦高校 髙橋祐二監督のインタビューを見送らせていただきました。

「推し活」は認知症を予防するか?《看取り医者は見た!》53

【コラム・平野国美】訪問診療で訪れたお宅のドアを開けると、高齢の女性患者さんのベッド脇の壁に、若手俳優の等身大ポスターが貼られていることが増えてきました。部屋には、応援グッズやキャラクター商品が並び、まさに「推し活」の真っ最中なのです。 診察中も「先生、この間のテレビ見た?」と、まるで少女のように目を輝かせて語ってくださいました。その生き生きとした表情を見て、私は深く合掌したいような温かい気持ちになると同時に、医師としてある仮説を抱きました。「推し活」は生活に彩りを添えるどころか、認知症を予防するのではないか? 「ワクワク」で分泌するドーパミン ある方は、数カ月前までは真逆の状態にありました。ベッドの脇に腰掛け、テレビを見るでもなく、ぼんやりと一点を見つめ、声を掛けても視線がゆっくり動くだけ。医学の世界で「アパシー(意欲低下)」と呼ばれる独特の無気力な表情で、認知機能の低下が進みかねない危うい局面にいたのです。 しかし朝のワイドショーで、ある1人のアイドルを見かけてから彼女の生活は一変しました。 前回(6月6日付)、現役引退や環境の喪失によって社会での役割が途切れると、脳への刺激が失われ、認知症のリスクが加速するというお話をしました。そのとき、脳の内部で枯渇しているのが「ドーパミン」という神経伝達物質です。 ドーパミンは、私たちがワクワクしたりするときに分泌されます。興味深いことにこの物質は「目標を達成したとき」よりも、「これから楽しいことが始まるぞ!」という期待の段階で多く分泌されるのです。明日への小さな楽しみやときめきこそが、脳を若々しく保つ原動力になります。 「明日やらねばならないこと」がなくなると、脳内はドーパミン不足に陥り、アパシーを引き起こします。アパシーは単なる怠けではなく、脳のスイッチがオフになった危険なサインです。放っておけば、脳の神経細胞は刺激を失い、ドミノ倒しのように認知症を進行させます。 この脳内ドミノを食い止める最高の特効薬こそ、彼女たちが夢中になっている「推し活」なのです。これは若い世代だけのブームと思われがちですが、実は今、高齢女子の皆さんの間でも多く見られる現代的な現象です。 見返りを求めない純粋なトキメキ 推しができた瞬間、彼女の日常には「次の番組を見るためにリハビリを頑張ろう」「今度のコンサートには明るい色の服を着て出かけよう」という、明日へのワクワクする予測と行動が自動的に組み込まれました。この見返りを求めない純粋なトキメキが、枯渇しかけていた脳内ドーパミンを劇的に呼び覚ましたのです。 リハビリもすっかりやる気になり、いつかファンの交流会に出かけたいのだと、うれしそうに目標を語ってくださいました。(訪問診療医師)

中軸不在、伝統の小技と走塁極める 常総学院・島田監督【高校野球展望’26】㊤

第108回全国高校野球選手権茨城大会が7月4日開幕する。今年も、強豪の常総学院と土浦日大の名監督にインタビューした。先頭を飾るのは、茨城県の名門・常総学院高校野球部。長年、県下をけん引してきた同校において、今、指揮官の島田直也監督は「未知の可能性」を秘めたチームと向き合っている。春の県大会では、強豪・土浦日大の前に屈したものの、監督の眼差しは悲観的ではない。中軸不在という課題を抱えながらも、なぜチームは強くなれるのか。投手陣の育成から、現代野球の是非を問うDH(指名打者)制、7回制の議論まで、島田監督の率直な言葉から「常総野球」の現在地をひも解く。 チャレンジャーとして挑む ―まず、春の大会を終え、チームの仕上がりをどう見ていますか。 島田 正直に言えば、過去2年と比べると戦力は劣ります。だからこそ、常に「チャレンジャー」の意識で戦う必要がある。春の反省点は、勝負どころでの得点力不足です。実戦になると練習通りのプレーができないもろさがある。特に投手陣は、「抑えなければならない」という重圧にさいなまれ、ストライク先行の投球ができていない。守備陣が間延びしてしまう悪循環をいかに断ち切るかが、夏の最大のテーマです。 ―過去2年間とは異なる戦い方が求められそうですね。 島田 そうですね。チームに絶対的な中軸打者がいない。だからこそ、本校の伝統である小技と走塁を極めるしかないんです。これに尽きます。ただ、それが完遂できる時とできない時の波が激しい。夏に向けて、これら基本動作の徹底が勝敗を分けるでしょう。 「常総のエース」という重圧に負けてる ―投手陣の課題や、個々の選手の見立てはいかがでしょうか。 島田 自分自身が投手出身なので、投手には人一倍の思いがあります。しかし今の投手たちは「常総学院のエース」というプレッシャーに負けている印象です。「俺が抑えてやる」という強気な姿勢よりも、「抑えなければならない」という受け身の心理が働き、リズムを崩してしまっている。橋元大雅のような高いポテンシャルを持つ選手もいますが、実戦で投げてみないと分からないもろさがあり、現時点では軸として任せきれないのが実情です。 ―チーム全体をまとめる存在として、誰に期待していますか? 島田 現時点では、キャプテンの水口煌太朗を筆頭にチームを鼓舞しようとする姿勢は見られます。ただ、チームがまとまっているのか、それともギクシャクしているのか、実は私にもまだ分からないんです。特徴がないと言えばそれまでですが、裏を返せば、一人ひとりが役割を理解して一つにまとまった時、去年、一昨年のポテンシャル重視のチーム以上の力を発揮できるのではないか、という期待も抱いています。 究極の決断―メンバー選考の苦悩 ―ベンチ入りメンバーを決める際、何を最も重視されていますか。 島田 そこが毎年一番悩むところです。練習内容を日々注視し、「今のチーム状況なら、この場面でこの選手が必要だ」というピースを埋めていく作業です。守備固めや大事な局面でのバント、走塁など、特化した能力を持つ選手であれば当然ベンチに入る可能性があります。 打つだけであれば、仮に4打席4本塁打打てば別ですが、それ以外は確実性が全てです。打てなかったら終わり、という選手をベンチにはおけません。打撃一辺倒ではなく、チームの勝利にどう貢献できるかという役割を全うできるかを見ています。二番手以降の選手がレギュラーを脅かす競争を生み出せるか。そこがこの夏に、チームの真価を問う鍵になるはずです。 君たちが歴史をつくればいい ―常総は夏の甲子園出場から10年遠ざかっています。監督就任から5年、夏の甲子園への思いを聞かせてください。 島田 本校が夏の甲子園に出場することに対して、周囲の期待の大きさを常に感じています。私自身、就任してから春の選抜には二度出場させてもらっていますが、「常総が甲子園に行っている印象がない」と言われてしまいます。それだけ、夏の甲子園が特別だということですよね。 でも何年遠ざかっているかは今の選手には関係のないことであり、選手には「君たちがまた歴史をつくればいい」と常に伝えています。過去の伝統に縛られる必要はない。プレッシャーはすべて監督である私が背負う。選手には、自分たちが新しい歴史をつくるという責任を、前向きな自信に変えて欲しいと思っています。最後は笑って終われる夏にするために、その準備をするのが私の使命だと感じています。 コロナ禍で「一人で完結」に偏ったか ―近年、集まってくる選手たちの傾向に変化はありますか。 島田 以前に比べ、打撃には自信があるものの、守備や走塁をおろそかにする選手が増えてきたと感じます。コロナ禍で満足に集団練習ができない期間が長く、打撃練習のような「自分一人で完結できる練習」に偏ってしまった影響かもしれません。野球は9人でやるものです。守備やキャッチボールのように相手との対話が必要な技術を磨かなければ、本当の意味でのチームにはなれない。今の選手には、打つこと以外でも貢献できる技術を身につける重要性を繰り返し伝えています。 7回制移行には明確に反対 ―春から導入されたDH制や、7回制への移行議論についてどう見ていますか 島田 DH制についてはメリット・デメリットの両面があります。打撃特化型の選手にチャンスが広がる点は良いですが、一方で代走や守備固めといった戦術的な手駒がより多く必要になります。 また、7回制移行には明確に反対です。9イニングという長い物語の中で起こるドラマこそが高校野球の魅力。現場の指導者や選手たちの声を無視して決めるべきではないと感じています。 選手たちへ「強さ」から「チームの力」へ ―夏の大会に向けた展望と、選手への思いを教えてください。 島田 組み合わせ云々よりも、とにかく、目の前の試合を一つずつ集中してやり切ること。それだけです。常総学院という過去の歴史が、選手たちに過度なプレッシャーをかけている側面もあるかもしれません。しかし私が選手に求めるのは、今この瞬間のプレーに魂を込めることです。 練習で培った小技や走塁は、決して裏切りません。個々の能力が未完成でも、チームとしての決まり事を徹底し、全員が同じ方向を向いた時、このチームは大きな化学反応を起こすと信じています。どんな苦しい展開になろうとも、選手一人ひとりが自分の役割を全うし、グラウンドで躍動する姿を期待しています。この夏、彼らが自分たちの力で新しい常総学院の野球を証明してくれることを願っています。 まずは自分たちの野球をやり切ることです。常総学院という看板がある以上、周囲からの期待もプレッシャーも大きい。しかし、過去の伝統をなぞる必要はない。選手には、ただ目の前のプレーに没頭し、最後は笑って終われる夏にしてほしいですね。 力発揮できるよう熱い応援を ―最後に、応援してくださっている皆様へ一言お願いします。 島田 常総学院という看板がある以上、大会では常に注目を集める存在です。多くの方々が期待を寄せ、時には厳しい視線を送ってくださることも承知しています。その期待に応えることこそが、私の使命だと思っています。 選手たちは、OBや地域の皆様の温かい応援を背に受けて戦っています。どうか、彼らが持てる力を発揮できるよう、変わらぬ熱い応援をお願いします。 【取材後記】インタビューを通じて感じたのは、島田監督の「厳しさと慈愛」のバランスだ。中軸不在と評し、選手の個々の未熟さを指摘する言葉の裏には、夏までに何とかして一つにまとめ上げたいという熱い指揮官としての思いがあった。打撃を「水物」と割り切り、小技と守備という「野球の根幹」を強調するスタイルは、伝統ある常総学院が再び甲子園の頂点を目指すための最短ルートなのかもしれない。10年ぶりの選手権大会出場へ。選手たちが監督の信頼に応え、勝利の扉を力強くこじ開けてくれることを期待したい。(伊達康)

バイシクル・ダイアリーズ ⑶《ことばのおはなし》94

【コラム・山口絹記】前回記事では、譲り受けたロードバイクで筑波山に登ってみることを思いついたところまで書いた。そして、この記事を書いている今、私はひとり佐賀県のホテルに輪行袋に入ったロードバイクと共に宿泊している。執筆ペースが現実に追いついていないので意味がわからないと思うが、私自身もどうしてこうなったのかよくわかっていない。このおはなしはまたいつかということで、話を戻そう。 筑波山をロードバイクで登ってみようと思いついたのはよいものの、いきなり山道をロードバイクで駆け上がる自分の姿は全くイメージできない。なんなら家の近くの洞峰公園を走るだけでも腕が疲労でしびれてしまう(ロードバイクはコツをつかむまで脚以外にもさまざまな部位に負担がかかるのだ)始末である。 そこで、以前より計画していた那須への家族旅行にロードバイクを連れていくことにした。ロードバイクは比較的簡単にタイヤを外して小さくできるはずなのだが、そのときの私にはタイヤを外すような技術はなかったので、車の後ろの座席を倒してそのままつっこみ出発した。 那須に到着した次の日。ショルダーバッグにカメラを詰め込み、朝からさっそく宿泊地の近所で爽やかなサイクリングを楽しんでいたのだが、地図を見ていると以前家族で行ったことのある那須どうぶつ王国まで20キロの距離であることに気が付いた。往復40キロならちょうどよいトレーニングではなかろうか? 出発前日に買ったばかりのサイコン(GPSで走行した道や速度、標高などを記録しておける機器)の電源を入れて私は走り出した。 全然、前に進まない… ロードバイクという乗り物は始めたばかりの初心者でも、時速20キロくらいは楽に出せる乗り物だ。これなら2時間程度で戻ってこられるかもしれない。天気は快晴で涼しさが心地よい。最高の気分で10キロほど走ったあたりで、私は異変に気が付いた。全然前に進まないのである。タイヤのパンクか?と降りて確かめるも、どこにも異常はない。 もう一度バイクにまたがってペダルを踏みこんでみるが、やはりペダルが重い。そしてようやく異変の原因に気が付いた。道がわずかに傾斜しているのだ。 徒歩や車では気にならない程度の坂道が、バイクでは明らかな負荷となるらしい。もしかして、ここから10キロずっと登坂? 以前、どうぶつ王国に行ったときは車だったので、どんな道だったのか全く記憶がない。いやしかし、行きが登りなら帰りは下りだ。頑張ればなんとかなるだろう、と軽い気持ちで再び走り出した私はその後、人生初のヒルクライムに挑戦することになる。(言語研究者)