金曜日, 12月 26, 2025
ホームつくば本社機能移転事業2年目 順調な進捗 県内で10社が採択

本社機能移転事業2年目 順調な進捗 県内で10社が採択

【山崎実】茨城県は、若者の雇用創出と地元定着対策の一環として、昨年度、本社機能などを移転する企業に最大50億円という、全国トップクラスの補助を行う企業誘致活動強化事業をスタートさせた。これまで既に10社の計画が認定(採択)され、順調な進捗(しんちょく)をみせている。2年目の今年度も引き続き事業を継続中で、県産業立地課は「緩めることなく、首都圏をターゲットに誘致活動を進めていく」と話している。

同課によると、従来、製造業などが企業誘致の中心だったが、ICT(情報通信技術)時代に対応するため、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)など、新たな成長分野の研究施設・本社機能の誘致を図る。

施策事業の中心である本社機能移転強化促進補助金の計画が認定された企業は8社=下表。ほかに本社機能移転促進補助金の対象企業としてシンワ機械が本社、及び工場を埼玉県から五霞町(圏央道五霞IC周辺)に移転。IT関連企業など、オフィス賃料補助金対象では、アプリシエイト(ソフトウエア会社)が東京の本社機能を水戸市に移転して「ITソリューション統括センター」を新設するなど、全体で10社の計画認定(採択)が決まった。

今年度も前年度の予算額を確保、維持しつつ、約56億円の枠で事業を推進するが、同課のほか土地販売推進課、産業基盤課など庁内関係各課の職員で派遣交渉班を構成。首都圏の企業約1万2000社以上にダイレクトメールを、また、本社や県内事業所、出張所、TX沿線などの200社以上の企業訪問を行い、誘致活動を展開している。

オフィス整備補助を拡充

事業の主な具体的な内容(カッコ内は補助額)は以下の通り。

▽本社機能移転強化促進補助(50億円)=AI、IoT、ロボット、次世代自動車など、新たな成長分野の研究所・本社機能などの県内移転が対象。補助要件は移転人数5人(研究所の場合は10人)以上で、補助額は投資額、移転人数などで算出。県内全域を対象に、50億円が上限
▽本社機能移転促進補助(2億円)=全業種(研究所・研修所を除く)が対象で、補助要件は移転人数10人以上。補助額は上限1億円。既存の本社機能移転促進補助金の対象エリアを県内全域に拡大した
▽IT関連企業等賃料補助(2400万円)=新たな成長分野の企業が、県内に移転した場合のオフィス賃料が補助対象で、補助率は2分の1(上限は240万円、3年間)。県内全域が対象
▽サテライトオフィスなど、モデル施設整備費補助(5000万円)=サテライトオフィス、小規模オフィスの整備費(整備面積50坪以上)に対する支援で、補助率は2分の1(上限は2500万円)。対象地域はJR常磐線、つくばエクスプレス(TX)沿線各駅の徒歩圏内エリアーなど。

さらに今年度はこれらの施策に加え▽オフィスビル整備促進補助(3億円)を、前年度の5000万円から拡充した。賃貸用オフィスビルの整備費用を本社機能などの入居実績に応じて支援するもので、補助率は15%(上限は3億円)。県内全域を対象に、新規施策として打ち出している。

経産省がまとめた昨年の通年工場立地動向調査によると、本県は工場立地面積(147ヘクタール)、及び県外企業立地件数(34件)で全国第1位、工場立地件数(68件)でも同3位だったが、全体的な傾向として圏央道沿線地域での企業立地が多く、68件のうち65%にあたる44件が県南、県西地域への立地だった。

➡NEWSつくばが取材活動を継続するためには皆様のご支援が必要です。NEWSつくばの賛助会員になって活動を支援してください。詳しくはこちら

スポンサー
一誠商事
tlc
sekisho




spot_img

最近のコメント

最新記事

30年度1学級増、33年度2学級減 つくばエリアの県立高 県高校審議会答申資料で推計値

2027年度以降の県立高校教育改革の方向性を検討する県高校審議会(委員長・笹島律夫常陽銀行会長)が25日、県庁で開かれ、答申をまとめた。 人口が増加している「つくばエリア」(つくば市など4市)の今後の募集学級数と募集定員について、答申の参考資料の中で推計値が示された。同エリアの全日制県立高の2025年度の入学者数は2203人なのに対し、30年度は31人増え2234人となる一方、33年度の入学者数は63人減り(25年度比は32人減)2171人になるとして、25年度の同エリアの学級数が58学級(募集定員2320人)なのに対し、30年度は1学級(40人)増えて59学級(2360人)、33年度は2学級減り(25年度比は1学級減)57学級(2280人)になるとする見通しが示された。 推計値について県高校教育改革推進室は「入学者数や募集学級数はあくまで現時点の推計値であり、(実際には)県教育委員会が志願の状況や欠員の状況などを踏まえて策定する」としている。 市民団体「実態に合わない」 一方、つくば市やTX沿線に県立高校の学級増や新設を要望してきた市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」の片岡英明代表は「つくばエリアの子供たちが増えていることが反映されていない。県の推計値は入学率をもとに入学者数を推計している。もともと県立高校が少ないつくば市は、市内の県立高校に入学する生徒が少なく実態に合わない」と話している。 片岡代表は2033年度のつくばエリアの中学卒業見込者数が25年度の4393人より226人増えて4619人になり、日立エリア(日立市など3市)と水戸エリア(水戸市など4市)を合わせた4425人を上回ると推計され、さらに38年度にはつくば市1市だけで中学卒業見込者が3392人と見込まれ、日立エリアと水戸エリアを合わせた3429人に匹敵する推計値が出されていることから、「つくばエリアは県立高校の緊急な定員拡大と本格的な対応が必要」だなどと指摘している(12月21日付)。 人口増 答申で具体的言及なし つくばエリアで子供の数が増えている問題については、答申に具体的言及は無く、県全体の県立高校の適正規模について「今後、地域ごとの中学卒業者数の差はますます鮮明になっていくと予想されるため、引き続き、県内全ての地域に一律で適用する適正規模の基準は設けないことが望ましい」などとするにとどまった。 ただし同審議会の専門部会(部会長・中村麻子茨城大副学長)では、つくばエリアについて「教育を目当てに移住する人もいるので、学級数の増を考えてもいいのではないか」とする意見が出た一方、「今、人口が増えているつくば市もいずれ減っていくので、新校設置はあまり現実的ではない」「最終的に生徒が減っていく中、学級数の増をすると、近隣の学校に様々な影響が出る。学級数増については慎重に検討していく必要がある」などの意見が出たことが紹介された。 答申もとに基本プラン策定へ 25日まとまった答申は、来年1月下旬に県教育委員会の柳橋常喜委員長に手渡される。答申を踏まえ来年度の早い時期に、県の全体計画である「県立高校改革プラン基本プラン」が策定され、パブリックコメントなどが実施される予定。 答申の主な内容は、県内の中学卒業者数は1989年の4万9441人をピークに年々減少し、2025年には2万5192人となり、35年には約1万9500人まで減少すると予測されているなどから、中学校卒業者数の変動に対する対応として、生徒数が減少傾向にあるエリアでは、高校規模の縮小が一層進むと予想されるためICTを活用した同時双方型の遠隔授業を推進していくことが求められる。規模が縮小した学校の活力向上を図るため学校連携型キャンパス制のような高校同士が連携する学びの仕組みを一層推進することが重要―などとしている。 学級編成については、小中学校の1学級40人学級から35人学級への引き下げを受けて、特に生徒数の減少が大きいエリアでは、高校の特色の一つとして少人数学級編成を行うことも考えられる。農業、工業、商業学科など学科の在り方については、各エリアの生徒数によっては、複数の学科を総合学科に改編することも考えられるーなど、県全体の生徒数減少に対する対応について方向性を示している。 ほかに、今回の答申では新たに「選ばれる県立高校であるための魅力訴求」についての項目が設けられ、情報化社会の広報について、学校説明会への参加意欲を促すため、学校・学科の魅力や生徒の日常の様子、様々な取り組みなどをウェブサイトを活用して日頃から情報発信することが望ましい。AIなど先端技術については、さまざまなリスクが含まれることも想定され、これまで以上に倫理観や情報リテラシーの育成が求められるーなどが盛り込まれた。 参考資料で示された県全体の今後の募集学級数と定員の推計値は、25年度の全日制県立高の入学者数が1万6098人なのに対し、30年度は1111人減って1万4987人となり、33年度はさらに1438人減って(25年度比は2549減)1万3549人になることが推計されることから、募集学級数は25年度が442学級(募集定員は1万7630人)なのに対し、30年度は30学級減り412学級(1万6430人)、33年度はさらに40学級減り(25年比70学級減)、372学級(1万4830人)となる推計値が示された。(鈴木宏子)

「たくさんの応援で結果出せた」筑波技術大 星野選手ら デフリンピック

石原学長に活躍を報告 聴覚障害者の国際スポーツ大会「東京2025デフリンピック」に出場した筑波技術大学(つくば市天久保)の学生アスリート4人が24日、同大の石原保志学長に活躍を報告した。テコンドーで銅メダルを獲った阿見町出身の4年 星野萌選手(21)は「たくさんの皆さんの応援をいただいたお陰で舞台に立つことができ、結果を残すことが出来た」と話し、大会を機に「茨城県内でスポーツの面白さを伝えていきたい」などと話した。 4人は星野選手のほか▽男子バレーボールで6位に入賞した4年 大坪周平選手(22)▽男子ハンドボールで7位に入賞した4年 林遼哉選手(21)▽陸上1500メートルと800メートルに出場した2年 中村大地選手(19)。日本代表の鮮やかなオレンジ色のジャージを着用し、星野選手は銅メダルを手にとって石原学長に見せるなどした。 バレーボールの大坪選手は「自分にとって初めての大きな大会で、結果は6位だったが、たくさんのお客さんに来ていただき本当に感謝している。最高のチームだった」と振り返った。 ハンドボールの林選手は「8カ国中7位だったが、初出場で1勝することができた。海外のレベルを知ることができ、とてもいい経験になった。2年後のハンドボール世界選手権、4年後のギリシャ・デフリンピックに向けてハンドボールを続けたい」と話した。 陸上の中村選手は「結果的に負けてしまい悔しさがあるが、この気持ちをこれからの大きな大会につなげていきたい」と語った。 石原学長は「皆さんは一生に一度あるかないかのチャンスをものにした。改めてお祝いします」と選手をねぎらい「この経験は自分の人生の経験になり、これから仕事の面でも、生活の面でも、家族をもつことになっても、つながってくると思う。頑張ってくれて大変うれしい」と語り掛けた。 同大にとっての大会の意義について石原学長は「大学からはアスリートだけでなくたくさんの学生がボランティアとして参加した。学生たちはグローバルな体験をする中で、障害を一つの個性として自覚し、共生社会の実現に向け活躍してくれると思う」などと話した。 同大からは学生6人と卒業生11人の計17人が選手として大会に出場した。星野選手のほか、夫婦で出場した大学院生の沼倉昌明、千紘選手がバドミントン混合団体で金メダルを獲った。卒業生では、女子バスケットボールの橋本樹里選手が金メダル、女子サッカーの岩渕亜依選手と男子サッカーの杉本大地選手がいずれも銀メダル、男子柔道73キロ級の蒲生和麻選手が銅メダルに輝いた。 ほかに、学生(現在は卒業生)の多田伊吹さんが大会エンブレムをデザインしたほか、開閉会式には3年の伊東咲良さんと2年の瀧澤優さんの2人がパフォーマーとして出演。同大の学生約100人がボランティアスタッフとして大会運営を担った。(鈴木宏子)

つくば駅前に大型ディスプレイ登場 イルミネーションと共ににぎわいを

オフィスビル「T.S BUIL」 つくば駅前のオフィスビル「T.S BUIL」(同市吾妻)のペデストリアンデッキに面した2階部分の壁面に21日、縦2.5メートル×横4.4メートル、200インチの大型ディスプレイがお目見えし、クリスマス関連の映像が放映されている。 22日夜からは同ビル恒例のクリスマスイルミネーションも加わり、道行く人たちの目を楽しませている。駅前をもっとにぎやかにしたいと、同ビルを所有する不動産業の都市開発(塚田純夫社長)が新たに大型ディスプレイを設置した。 ディスプレイの設置工事は14日から始まり、1週間の工事期間を経て21日から放映が始まった。毎日正午から夜9時まで映像が流れる。クリスマスの現在は、クリスマスにちなんだクイズやイルミネーション点灯のお知らせなどが流れ、26日以降は年越しに関する映像に変わる。 今後は市の情報や警察関連情報、防災情報なども放映していく予定だ。「屋外広告物」という扱いのため、大きな音を出し大勢の人が集まるコンサートやパブリックビューイングを行うためには今後、市と相談しながらになるという。 イルミネーションは来年1月12日まで点灯する。3年前に始まり、昨年同様、同ビルのペデストリアンデッキに面する2階エントランスのガラス張り壁面全体がLEDで装飾され、ショーケースの中にはサンタクロースや雪だるま、トナカイ、クリスマスツリーなどが飾り付けられている。 ディスプレイに見入っていた市内に住む60代女性は「大型のディスプレイにびっくりした。世の中に季節感がなくなってきた時代なので、こんな感じでクリスマスなど季節を知らせてくれるのはありがたい。ディスプレイの前のペデストリアンデッキは広くなっているのでコンサートでもやってくれたら」と話す。近くの職場に通う50代の男性会社員は「ずっと殺風景だったので、とても良いと思う。どんどんにぎやかにすることをやってほしい」と話していた。 都市開発の霞学部長は「つくば駅前にあるつくばセンター広場のにぎわいづくりに協力出来たらということでやっている。防災も重要なので、行政の防災の取り組みに協力し、防災に関することも放映していきたい」と語る。また「今年、1階にスタジオを移転したラヂオつくばの中継も可能なので、ディスプレイで何が放映できるか考えていきたい」と述べる。 現在放映している映像の制作は20代の同社若手社員が担当した。管理部の藤沢花恋さんは「グラフィックデザインのソフトを使って動画を作ったが、初めてだったので大変だった。デザインなどは不慣れだが担当させてもらい、いい経験になった。今後の展開も考えたい」と話した。設置業者とのやりとりや申請業務など担当した営業部の高橋開人さんは「人が集まる場所が出来ればとてもうれしい」と述べた。(榎田智司)

サンタクロース《短いおはなし》46

【ノベル・伊東葎花】 今日、学校で男子とケンカした。だって、サンタクロースはいないって言うんだもん。私は絶対いると思ってる。プレゼントだって、毎年くれるもん。家に帰ってママに聞いた。 「ママ、サンタクロースはいるよね」 「そんなことより、今夜は冷えるから温かくして寝るのよ」 …そんなことって言われちゃった。 今、世界中が燃料不足で大変なのは知ってる。イブなのに、イルミネーションも暖房も自粛なの。お店は早く閉まっちゃうし、地球全体がどんより暗い。テレビも毎日「新しい燃料が見つからないと人類滅亡」とか言ってる。でもね、私はそんなことよりサンタクロース。今日は寝ないで、サンタクロースの写真を撮るの。私をバカにした男子を見返してやるんだから。 私は、ベッドにもぐりながら、その時を待った。すると、午前0時を過ぎた頃、窓の外が一瞬明るくなった。街中が真っ暗だから、すぐにわかった。サンタクロースが来たのかも。 耳を澄ますと、ピコピコと電子音のような音が聞こえた。サンタクロースは鈴の音と共に来ると思っていたけど、今どきは違うんだ写真を撮ろうと窓を開けると、緑色の少し小さめの人が飛び込んできた。あれ、サンタクロースは赤い服を着たおじいさんだと思っていたけど違う。緑色だ。 「いやあ助かった。船が故障しちゃってさ。地球って寒いね」 サンタクロースが言った。サンタクロースは、そりに乗って来ると思っていたけど、船で来るんだ。 「あ、仲間が助けに来てくれた」 サンタクロースが指さす先に、角が生えた黄色い生き物がいた。これがトナカイ? 本物のトナカイを見たことはないけど、角があるし、きっとそうだ。 「お邪魔しました。ありがとう地球人」 サンタクロースがトナカイと一緒に帰ろうとしたので、私は慌てて呼び止めた。 「あの、ちょっと待って…、プレゼントは?」 「ああ、親切にしてくれたお礼ね。地球人、意外としっかりしてるね」 サンタクロースは、持っていた袋から赤い石を取り出してポイと投げた。「石かよ!」と思ったけれど、世界中が不景気なので文句は言えない。「じゃあね」とサンタクロースは、あっという間に出て行った。きっとたくさんの家を回るから急いでいるんだ。 「あ、写真!」 慌ててシャッターを押したけど、UFOのような白い光が写っただけだった。ああ、失敗。 写真は撮れなかったけど、サンタクロースに会えた興奮でなかなか眠れない。それに、どういうわけか部屋の中が夏みたいに暑くて、毛布を全部蹴飛ばした。サンタクロースからもらった赤い石は、暗い部屋で不思議な光を放っている。なんだろう、これ。 この石が、燃料不足の地球を救うエネルギー源になる物体だと知るのは、少し後の話。地球を救ってくれたのはサンタクロースだって、私は信じてる。 (作家)