【鈴木宏子】岩肌が露出した筑波山南麓の採石跡地に植樹し、安全で親しめる山として次世代に残していこうと、地域住民と行政、採石事業者による植樹祭が16日、土浦市小高、塚田陶管(本社同市藤沢)柳沢工場の採石場で実施された。
近隣のつくば市大形地区や土浦市小高地区住民のほか、つくば市立秀峰筑波義務教育学校5、6年生らが参加し、約5000平方メートルにアカマツやヤシャブシなど計420本を植樹した。
宝きょう山ふるさとの山づくり事業で、2011年から2年に1度、地元住民らが参加して植樹祭を実施している。今年で5回目で、今回を含め計約8800平方メートルに植樹した。
同校の子どもたちは、標高約210メートルの採石場にバスで登り、採石事業者が用意した苗木を、地面に掘られた20センチほどの穴に1本1本丁寧に植え付け、水と肥料をあげていった。いずれも同校5年の碓井帆乃花さん(10)は「(苗木に)いっぱい水をあげたので、大きくなってほしい」と話し、平山智也さん(11)は「(苗木が)でっかくなる姿を見たい。30年後ぐらいにまた来たい」と話していた。五十嵐立青市長も参加し、子どもたちとヤマザクラを記念植樹した。

同採石場は水郷筑波国定公園内にある国有地約100ヘクタール。1958年ごろから民間事業者による採石が始まった。切り出した石は道路舗装やコンクリートなどに使われ筑波研究学園都市の建設にも利用されてきたという。採石後、跡地の岩肌が露出したままになっていたことから、地元住民が約1万2000人の署名を集めて県などに要望書を出したことがきっかけで、ふるさとの山づくり事業がスタートした。
住民の要望を受けて2004年から県が緑化の計画などを策定し、全国で初めて、住民の要望を取り入れて、斜面の勾配や植樹する樹木の種類、防災機能の強化策、緑化後の景観や生態系の回復策などを検討してきた。09年から緑化のための工事が始まり、23年まで15年計画で事業が実施されている。
署名集め当初から取り組んできた大形地区区長の宮川茂さん(65)は「景気が落ち込んでいるので計画通り進むか心配はあるが、近くの人が登れる昔のような山に戻ってくれれば」と話している。
塚田陶管の塚田陽威社長(75)は「じょうずに掘りながら、地域と連携して跡地の活用も考えていきたい」などと語っていた。
