【相沢冬樹】つくば牡丹園(つくば市若栗、関浩一園長)が作出し、「令和」と命名したシャクヤクが13日朝、開花した。白にピンクの混じる花びらはこの先、次第に先端をとがらせた優雅な形状になって、見ごろが5日間ほど続く。同園で先月から始まったボタンまつりは今月からシャクヤクまつりに切り替わっており、約4万株が咲きそろう。「令和」の開花でクライマックスを迎えようとしている。

新品種は交配と実生(みしょう)によって作出された。特徴的な花びらをつけるシャクヤクを選んでメシベだけを残し、他の花と受粉させる。花期の後、採集した実を育成して翌年咲かせ、出来のいいものを選択して、繰り返し栽培する。前年つけた花が翌年も同じに咲くとは限らず、条件を見極める必要がある。
「令和」の原型は2013年ごろに生まれたが、植え替えるだけで花の姿が変わってしまう不安定さがあり、安定まで数年を要した。ここ3年ほど安定したため、新品種とすることを決め、新元号にあやかることにした。品種登録は農水省へ出願するのが基本だが、元号名義では登録できないため、業界紙を通じて命名をアピールするスタイルをとった。「実生だと1株1株違う品種の花ができてしまうため、現実的なやり方だ」(関園長)という。
6万平方メートルを超す敷地にボタン、シャクヤク合わせ800種、6万株を栽培する。1989年に開園し、当初は施設運営会社の一社員に過ぎなかった関園長(58)が土作りから栽培法を学び、一貫した取り組みで世界最大級の牡丹園に育て上げた。紋羽病という土壌障害で大量の株を枯死させたり、リーマンショック後の経営危機なども経験した。
牡丹園経営のかたわら、東京農工大大学院に社会人入学し、3年前から博士課程に進んでいる。専攻は農業環境工学。「開園当初はゴールデンウイークに見ごろを迎えるボタンを主役に据えたが、温暖化のせいでどんどん開花が早まってしまう」のが悩みだった。このため花期の遅いシャクヤクに力を入れるようになったそうで、これまでに約80種のシャクヤクを独自に作出している。
同園のシャクヤクまつりは26日まで。今シーズンから設けたシャクヤク園はようやく満開を迎え、多くの入場者でにぎわっている。まだつぼみの花も多く、「会期末までぴったり楽しめそうだ」と顔をほころばせた。