【田中めぐみ】開店直後の朝9時、この日はあいにくの冷たい雨で品出しが遅れているとのこと。にもかかわらず、来店者は途切れることがない。今回はJAつくば市桜農産物直売所を訪れた。産直課の小岩勇太さんによると、今年で開店25周年を迎えるという。直売所ブームが起こる前から地域に親しまれてきた店舗だそうだ。つくばセンターから車で10分弱という立地もあり、研究学園地区からの来店者も多いという。
店内に入り真っ先に目につくのがみずみずしい葉物野菜。11月から暖かい日が続いたため生長がよく、値段も安くなった。生産者の市村典子さんがちょうど品出ししていたのはサラダほうれん草にレッドマスタード、サラダからし菜、ルッコラ、ワサビ菜の5種類が入ったサラダセットだ。葉の種類は手書きで丁寧に書かれている。ベビーリーフのセットはよくスーパーで見かけるが、このように大きく生育し茎まで付いたセットは珍しい。そう思って市村さんに聞くと「ベビーリーフだとひとつひとつの香り、味わいが少ないので、もっとしっかり野菜を味わってほしいと思いこのセットを作ったんです」と話してくれた。野菜ソムリエの資格を持っているという。
店内を回り、さらに市村さんが薦めてくれたのは、葉付きの立派な大根。この日はなんと1本50円から100円だった。繊維の多い皮はきんぴらにするとおいしく、中はおでんや煮物に、葉は下ゆでして冷凍し汁物の具や炒め物にと余すところなく味わえるとのこと。色とりどりのパプリカも肉厚で甘くお薦めという。緑のパプリカを追熟させたものが赤や黄色のパプリカなのだそうだ。
サツマイモの人気品種の「紅はるか」は水分が多く糖度が高いので干し芋や焼き芋に向いているという。もし、てんぷらにしたいのなら「紅はるか」ではなくほっこりとした「紅あずま」を薦めるという市村さん。とにかくその知識の豊富さに舌を巻く。品出しの時、運よく市村さんに会うことができたなら、ぜひ相談してみてほしい。その日の献立にぴったりの品種を教えてくれるそうだ。
「どうも」と笑顔で挨拶しながら入店してきたのは、常連客の吉田和夫さん(71)。「ここは自分の家みたいなもの。自分の好みのものを好きに買って顔見知りにあいさつをする、それが元気の秘訣かな」と話す。吉田さんのお気に入りはつくば美豚の切り落としや豚白もつ。「もつはネギとショウガ、ニンニクを入れて漬け込み、日本酒を入れて炒めるのが最高だよ」と教えてくれた。寒い朝だったが、市村さんの野菜への熱い思いに丁寧なアドバイス、吉田さんの明るい笑顔に心がほっこりとあたたまる、そんな直売所巡りだった。
JAつくば市 桜農産物直売所
住所▽つくば市古来1608-1
電話▽029-867-8290
営業時間▽午前9時~午後6時
定休日▽水曜日・お盆・年末年始