日曜日, 1月 18, 2026
ホーム ブログ ページ 30

市制移行で大忙しの千葉繁 阿見町長【キーパーソン】

23
阿見町長の千葉さん

土浦市に隣接する阿見町の人口が2023年秋に5万人を超え、町から市になる要件の一つを満たした。2年半先の市制移行を目指す千葉繁 阿見町長に、その段取りと県内では珍しく人口が増えている要因などについて聞いた。霞ケ浦湖畔を活用するまちづくりの話は面白い。

国勢調査で5万人要件クリアへ

千葉さんによると、2月上旬に有識者会議から、①名称は漢字の阿見市とする②27年11月に市制に移行する―など「市制移行が望ましい」との答申をもらったので、3月の庁議で決定することになる。ただ、これは町としての方針を決めるだけで、5万人要件をクリアするためには国勢調査(25年10月実施、26年5月公表予定)の数字を待たなければならない。

そのあと、町議会議決→県知事承認→総務大臣承認→県議会議決→県知事決定のプロセスを経て、2年半先の市制施行が実現する運びとなる。「こんなに大変な仕事になるとは夢にも思っていなかったが、町の将来を考えて取り組まなければならない」

町民アンケート調査では、回答の85%が市制に賛成だった。「残り15%の人がどんなことを語っているのか調べ、きちんと回答するよう担当課に言っている」

子育て世代をターゲットに施策

「町長に就任した7年前、人口は4万7300人だった。そのとき目標5万人と掲げたら、できるわけがないと言われた。就任後(JR荒川沖駅に近い)本郷地区を区画整理して住宅地にまとめたことも大きかった」。2月上旬の5万300人が今秋までに5万人割れすることはないかと意地悪な質問をすると「『あみプレミアム・アウトレット』近くに県が開発した計画人口2600人の住宅地がある。入居者はまだ半分の1300人。まだまだ増える」

7年で人口が3000人増えた理由を聞くと、「若い世代に移り住んでもらおうと子育て世代をターゲットにした施策を繰り出した」。具体的には、①18歳まで(非高校生も含む)の医療費無料化②ランドセルを小学生に無料配布③共稼ぎ家庭向けの病児保育の設置(東京医科大学茨城医療センター内)―などを挙げた。

意外だったのは、「移って来る方は、東京圏からよりも、土浦、つくば、牛久など近隣からが多い」との説明。もちろん「今販売中の住宅地『セントラルアベニュー荒川本郷』(175区画)のモデルハウスをのぞいたら、東京から来たという30代の夫婦が6000~7000万円の物件を熱心に見ていた」そうだ。

霞ケ浦の水をきれいにして観光地化

阿見町には、東京医科大学茨城医療センター、茨城大学農学部、県立医療大学といった医療・教育施設があるが、他の自慢スポットを聞いたところ、三菱地所グループが経営するアウトレットのほか、旧海軍航空隊の記録を展示する予科練平和記念館、元横綱稀勢ノ里が親方の二所ノ関部屋、町の北東に広がる霞ケ浦などを挙げた。このうち、霞ケ浦の話を語り出すと止まらなくなった。

「小学2年まで霞ケ浦で泳いでいた。政治家になった理由の一つは、水をきれいにして泳げる湖に戻すこと。やっと実現できそうになってきた」。那珂川と霞ケ浦を地下トンネルで結ぶ導水が計画通り2030年に完成すれば、河川の水が霞ケ浦に入って浄化され、「昔のように豊富な魚種もとれる」と、霞ケ浦による観光地化を展望した。

農業・工業用水に塩分が入ることを嫌って設置された常陸川逆水門(霞ケ浦と利根川の合流点を仕切る水門)についても、「(上げ潮時に水門を柔軟運用するなど)開ければ本当の意味で霞ケ浦を浄化できる。同世代の湖岸の市長たちもそれがよいと言っている」

【ちば・しげる】竜ケ崎一高(野球部に所属)、青山学院大卒後、父が経営する昭和運送に入社(現在は役員)。阿見町議(2000年4月~09年12月)を経て、町長(18年3月~)。62歳、阿見町在住。

【インタビュー後記】阿見町にはJRの駅がない。市制移行を記念して「土浦市から荒川沖駅の周辺を譲ってもらい『阿見駅』にしたらどうか」と質問してみた。「確かに阿見のステータスは上がるが、今は土浦の(駅舎・周辺整備)予算で町民が駅を使わせてもらっている。感謝しかない」。町→市は名をアップさせる施策だが、こちらは経営者町長らしく実を取る回答だった。(経済ジャーナリスト、坂本栄)

文豪風入院日記③無知の知《遊民通信》107

1

【コラム・田口哲郎】

前略

入院すれば退院がある。晴れて病院に寝泊まりすることから解放されるのである。でも、退院には医師の許可がいる。医者が出てもよいと言わなければ、出られないわけである。病気というものは十人十色で、肺炎は回復まで何日、腸炎は何日、胃潰瘍は何日と決まっているわけではないから、体調を見ながら、ということになる。

さて、私はというと、絶食も解かれて、ご飯も3食、普通食を食べられるようになったのもあり、自分の感覚としてはすっかり元気になったつもりであった。特に検査や手術をするでもないから、1日することがない。好きな時に本を読み、寝てよい。食事は据え膳上げ膳、至れり尽くせりの休養なのだ。

毎夕、医者がやってきて体調を尋ねてくれるが、とても良いです、と答える日が続いている。絶食の時にあれだけ食べたいと思っていた病院食も、段々飽きがくる。贅沢なものだ。もともと薄味派なので、毎食完食をしているが、さすがに娑婆(しゃば)の脂っこい料理を食べたくなる。

そんな不満を心でつぶやいていたら、食事は3分で終わってしまった。楽しいご飯が終わると、夕食まで退屈である。私は本を手に取ったが、文章が頭に入ってこない。本をまともに読めないなら、することもなく手持ち無沙汰である。仕方がないから、横になった。ふて寝が午睡(ごすい)になったのである。

食事はよく噛んでゆっくりと

小一時間して、目が覚めた。気分良くではなく、不快感でである。下腹部がむかついて、苦しい。入院した日の記憶がよみがえる。何度も何度も便所に飛び込んでは、吐き出すものもないくらいに吐くのである。私の額には脂汗がじわりとにじんだ。

そこに、ちょうど看護師がやってきて、氷枕は要るかと尋ねてくれた。私は腹部の違和感を訴えた。看護師は検温して、モバイル・バイタルを見て、聴診器を腹に当てた。吐き気はあるかと聞かれたので、落ち着いて体に聞くと、不快感はあるが吐き気までではないと思えたので、そう伝えた。

「そうですか。お腹もちゃんと動いていますし。先生に報告はしておきますけど、多分、お食事、早食いなんじゃないですか」と言われ、私はポカンとしていたら、看護師は笑顔で続けた。「よく噛んでゆっくり食べれば、胃腸への負担が減りますよ」。

果たして、私は夕食から一口一口をよく噛んで食べるようにした。食事に味わいがあることを初めて知ったような気がした。それから食後の腹部の不快感は起こらなくなった。元気なのにいつ退院させてくれるのだろうという、いら立ちもなくなった。よく手紙に「お体お自愛くださいませ」などと書くが、自分の体を労(いた)わることを学んだのである。

医者、看護師の言うことは聞いて、療養はゆっくりするものだと思った次第である。まさに無知の知である。ごきげんよう。

草々

(散歩好きの文明批評家)

手順誤り27人に再検査 3歳児健診の尿検査 つくば市

5
つくば市役所

つくば市は27日、市谷田部保健センターで20日午後1時30分ごろ実施した3歳児健診の尿検査で、検査機械による検査を実施した市の看護職員が、検査手順を誤り、判定結果に影響が出た可能性があるとして、27人の幼児に再検査を実施すると発表した。

尿検査は当日朝、それぞれ自宅で尿を採取し、所定の容器に移し替えて市保健センターに提出する。保健センターでは、市の看護職員がその日のうちに検査を実施、提出された尿に試験紙を浸し、検査機械に試験紙を入れて、血尿、たんぱく尿、尿糖などを検査する。

市こども未来センターによると、本来の検査手順は、尿に試験紙を浸してすぐに検査機械に入れなくてはならない。機械での検査は一人当たり1分程度かかるという。

この日は検査を担当した看護職員が、効率良く5人分をまとめてやろうとして、試験紙5枚を1枚ずつそれぞれ5人の尿に浸し、浸したままにして順番に検査機械に入れていった。最長で5分ほど試験紙を尿に浸したままにしたケースもあったという。

機械での検査中、エラー表示が多かったことから、看護職員は上司に相談、検査手順を確認したところ、試験紙の取り扱いが誤っていたことが分かった。機械の検査は一人で担当していたという。

20日は同センターで61人を対象に3歳児健診をし、そのうち55人について尿検査を実施。最初の10人は本来の手順通り、尿に試験紙を浸してすぐに検査機械に入れたが、11人目からは5人分にそれぞれ試験紙を浸したままにして、順番に機械に入れていったという。原因が分かった後は、本来の手順に戻した。

再検査が必要となる27人の保護者に対し市こども未来センターは、26日と27日、電話で謝罪し状況を説明した。28日に改めて通知を出し、3月4、5、6日の3日間、再検査を実施するとしている。保健センターに来られない保護者に対しては市職員が自宅を訪問するという。

再発防止策として、健診に従事する全職員に検査手順などを改めて確認させ、検査中も複数でチェックするなどして再発防止に努めるとしている。

3歳児健診は、3歳になった幼児を対象に、谷田部と桜の2カ所の保健センターで実施している。3歳児の尿検査は先天性尿路異常がないかなどを検査する。

ウイーンのピアニストが演奏会 つくばの音楽家が無料開催

0
ウィーンを代表するピアニストのピアノ演奏会を開催する「ウィーンつくば交流市民の会」代表でチェンバロ奏者の橋本麻智子さん=つくば市内

「家族連れで聴いてほしい」  

ウィーンを代表するピアニストの一人で、ウィーン国立音楽大学教授のクリストファー・ヒンターフーバーさんのピアノ演奏会が3月12日、つくば市竹園、つくばカピオホールで開かれる。子供たちを含め家族連れで聴いて感動を持ち帰ってほしいと、同大出身でつくば市在住のチェンバロ奏者、橋本麻智子さん(75)が代表を務める市民団体「ウィーンつくば市民交流の会」が入場無料で開催する。

ヒンターフーバーさんは同大ピアノ部門の部長を務め、CDがドイツで「最良で最も魅惑的なピアノ録音」の一つに選ばれるなど高く評価されている。世界各国で演奏活動を行い、日本にはウィーン・フィルの首席奏者とたびたび来日するなどファンも多い。

演奏会を主催する橋本さんは日本のチェンバロ奏者の草分けで、同大チェンバロ本科を卒業、世界各国の国際音楽祭やスイスや中国の招へいコンサートにも招待され、国内外で演奏活動を行ってきた。

1995年、研究者の夫と共につくばに転居。20年ほど前からはクラシック音楽の普及にも尽力し、カスミの社会貢献事業「『わたしの企画』応援します」に応募して、子供たち100人がベルリンフィルの演奏家と合奏するワークショップを開催したり、同市ふれあいプラザで幼児や未就学児を対象に毎月2回、子供たちがクラシック音楽に触れたり、絵を描いたりする「親子で遊ぼう『芸術ごっこ』」をボランティアで開催するなどしてきた。

国内外で共演してきたウィーンフィルやベルリンフィルの演奏家をつくばに招いて、同市北条にある江戸時代後期に建てられた蔵「宮清大蔵」で共演するなどしてきたほか、20世紀の最も偉大なフルート奏者、J.P.ランバル氏へのオマージュ(献辞)として開催した「つくばフルートコンクール」の実行委員長を務めるなどしてきた。親友でもあった国際的バイオリニスト、故若林暢さんの業績を顕彰しクラシック音楽の普及と振興に努める若林暢音楽財団の代表も務める。

「20年くらい前から、クラシック人口が減ってきて若い人がクラシックに興味をもっていないと感じられ、50代半ばぐらいから一般の人にもクラシック音楽に関わってもらえる活動をスタートさせた」と振り返る。

「コンサート会場で生まれる、皆で感動を分かち合う何ともいえない空気感が、演奏家の見事な演奏を生み出す場面を何度もみてきた。すばらしい聴衆との巡り合いがあって演奏家が育つ」と思いを話し、「家族そろって一緒の演奏を楽しんで、うちに帰って感動を分かち合ってくれれば」と語る。

3月12日のピアノ演奏会は、ヒンターフーバーさんのトークもあり、大学の教え子でピアニストの吉兼加奈子さんが分かりやすく解説する。注目の若手フルート奏者、瀧本実里さんの演奏もある。

会場には募金箱を設置し、全額を「日本ユニセフ協会」と、つくばの市民団体「アジア友情の会」「筑波メディカルセンター紡ぎの庭」の活動に寄付する。(鈴木宏子)

◆クリストファー・ヒンターフーバーさんのピアノ演奏会は3月12日(水)、つくば市竹園1-10-1 つくばカピオホールで開催。開場は午後6時30分、開演は7時。演奏曲目はバッハ/リストの前奏曲とフーガ BWV 547、ベートーヴェンのピアノソナタ8番 ハ短調 作品13「悲愴」など。チケットは事前予約が必要。定員は約300席で、満席になり次第締め切る。

進む脳卒中治療の現状《メディカル知恵袋》9

3
筑波メディカルセンター病院

【コラム・原拓真】最新のデータによれば、介護が必要になる主な原因の第2位は脳卒中で16.1%(第1位が認知症で16.6%)となっており、特に介護度が重い人の原因としては脳卒中が主原因になります。脳卒中は①脳梗塞②脳出血③くも膜下出血の3症状を合わせた呼び方です。

一番多いのは脳梗塞

その中で一番頻度が高いのが脳梗塞です。脳梗塞は、脳血管の閉塞により脳を構成する神経細胞が血流不足に陥り、最終的に死に至ってしまう疾患です。つまり脳組織に血流が供給されていない時間をいかに短縮するかが治療の最重要ポイントになります。

急性期脳梗塞に対する再灌流(さいかんりゅう)を目的とした治療として、2005年に血栓溶解療法(rt-PA静注)、2010年からカテーテルによる血栓回収療法が日本で認可され、現在までに10数年経過していますが、脳梗塞発症早期に病院にたどり着けないと、こうした最新の治療は受けられません。

今回は、最新のガイドラインを基に、適切な治療を受けるためのポイントを解説いたします。

血栓を溶解する療法

脳血管内で血管閉塞の原因になっている血栓を溶かす薬剤を点滴で投与する治療です(図1)。血栓溶解療法(rt-PA静注)は以下の条件で実施可能です。①発症から4.5時間以内、もしくは発症時刻が不明でもMRI画像所見で発症早期であると判断される場合、かつ②治療適応のチェックリストに禁忌項目がない場合。

ただし、症状が軽微な場合には投与に伴う脳出血リスク(約6%)と治療効果を天秤にかけて判断します。時間の制約がある治療ですので、いち早く病院に来院してもらうことが最も重要です。

血栓を回収する療法

血管が血栓などで閉塞している部位に、直接カテーテルの細い管を誘導し、様々な機器を使用して機械的に血栓を回収してくる治療です(図2)。こちらは、現在も最新のエビデンスが日々更新されている状況ですが、簡単にまとめると以下の条件で実施可能です。①発症から24時間以内の内頚動脈または中大脳動脈近位部閉塞、もしくは②その他の頭蓋内血管の閉塞の場合は画像・臨床初見に応じる。

こちらの治療も、血栓溶解療法同様に6%前後の脳出血リスクがあります。治療適応の時間的制約は血栓溶解療法と比して軽いものの、脳血流再開までの時間経過が機能予後に影響することは明らかです。

急性期治療の現状

脳梗塞急性期治療は進歩し、その効果も明白ですが、実際に急性期治療を受けられた患者さんが脳梗塞患者さん全体の10%を上回ることは、当院のデータ上も無く、早期に来院していれば急性期治療が可能だったと考えられ、悔やまれるケースは今も数多く存在します。それは、つくば市内のみならず茨城県、ひいては日本全体の問題です。

治療法の進歩は相当なレベルに達していますが、最大の問題は脳梗塞患者さんをどのように早期発見し搬送してもらうかです。ベストな治療をすべての患者さんが受けられるように、現在県内で始まっている取り組みがあります。

患者搬送ネットワーク

上記のような急性期治療を実施できる病院は県内でも限られてきます。救急受け入れ患者数も各病院で限界があり、急性期脳卒中治療の質向上には各地域でのネットワーク構築が欠かせません。当院や県内の脳梗塞急性期治療が可能な病院の多くでは、県の協力のもと数年前より医師間でのスマートフォンを用いた患者情報共有アプリを使用しています(図3)。

従来であれば患者さんの情報は電話でやり取りするしかなく、情報の精度は著しく低下していました。しかし、こうしたICTツールの使用で他院の患者さんの画像所見も瞬時に確認可能となり、脳梗塞急性期治療が可能かどうか、急いで搬送すべきかどうかの判断がしやすくなっています。

県内に多く存在する医師少数地域であっても、こうした遠隔連携アプリなどを使用することで、脳梗塞急性期治療へのより迅速なアクセスが可能になりつつあります。こうしたICTツールの導入は「医師の働き方改革」の問題の解決にも貢献しており、今後の医療には欠かせません。

早期発見と早い救急要請が大事

しかし、最終的に重要なのは「第一発見者が脳卒中と疑って119を押せるか?」です。脳卒中治療の質向上には早期発見が欠かせません。我々医療者は今後も様々なツール、機会を利用して一般の方々に向けて、脳卒中早期発見に必要な知識の情報発信を続けていくことが求められていると思います。

脳卒中患者さんを救うキーパーソンは我々ではなく、一番身近におられるご家族や友人など皆さん自身です。私たちみんなが脳卒中診療チームです。今後もより良い脳卒中診療を目指してご理解、ご協力をお願いします。(筑波メディカルセンター 脳神経外科診療科長)

二審も国の責任認める 鬼怒川水害訴訟 東京高裁で判決

0
「勝訴」の旗を出す原告共同代表の片倉一美さん=東京高裁

2015年9月の鬼怒川水害で、常総市の住民が甚大な被害に遭ったのは国交省の河川管理に落ち度があったためだなどとして、同市の住民ら20人が国に対して約2億2000万円の損害賠償を求める国家賠償訴訟の控訴審判決が26日、東京高裁で出された。中村也寸志裁判長は一審に続いて、国の河川管理の落ち度を一部認め、被害を受けた同市若宮戸地区の住民9人に対して約2850万円を賠償するよう命じた。

鬼怒川水害では豪雨により常総市内を流れる鬼怒川の堤防の決壊や越水があり、市内の約3分の1が浸水した。同市では災害関連死を含めて15人が亡くなり、住宅被害は全壊53軒、半壊5120軒、床上浸水193軒、床下浸水2508軒に及んだ。一審で水戸地裁は国に対し、原告住民32人のうち若宮戸地区の住民9人に約3900万円の損害賠償を支払うよう命じる判決を出した。原告住民と被告の国の双方が控訴していた。

判決後、記者会見する原告団ら。左から、只野靖弁護士、原告住民の片倉一美さん、高橋敏明さん、鈴木憲夫さん

二審では、国の責任が一審で認められた若宮戸地区について住民側は、自然堤防の役目を果たしていた砂丘林を民間事業者が太陽光パネル設置を目的に採掘したことにより堤防の機能が失われたとし、国が同地域を「河川区域」に指定し、開発を制限すべきだったと主張していた。住民側の弁護団によると、一審から賠償額が約1000万円減額になった理由は「被害に遭った家財の認定金額が低くなったことと、写真など『思い出』の品物への慰謝料が認められなかったため」という。

一方、同市上三坂地区で越水し堤防が決壊したことによる被害については、一審に続き二審でも住民側の主張が退けられた。住民側は、同地区は堤防の高さが低く、他の地域に優先して改修すべきだったのに、国が対応を怠ったことが水害につながったなどと主張していた。控訴審で中村裁判長は「国の改修計画は不合理とは言えない」とし、住民の訴えを退けた。

一石投じるも、救済遅すぎる

原告団共同代表の片岡一美さん(71)は「1人でも勝てば勝訴だと思い『勝訴』の旗を出したが、一審より悪い結果となった今回の判決は、実質、敗訴だと感じている。水害は天災だと思っていたが、その要因を知ると国交省の河川管理責任による人災だと考えが変わった。国交省の考えを司法が追認したのは遺憾」だとし、上告の意思を表した。

住民側の只野靖弁護士は「水害から9年経ってようやくここまできた。救済という意味では遅すぎるが、水害訴訟では住民の訴えが認められない『冬の時代』が続いていた中で、一部でも国の瑕疵(かし)の責任が認められたことは画期的。日本中で水害が起きる中で、地方公共団体の責任が問われるものもあり、一石を投じる判決」と語った。(柴田大輔)

ポッドキャスト始めました 立命館大と共同研究

3
NEWSつくばポッドキャストのホーム画面
立命館大学 小川明子教授

つくば・土浦地域のニュースサイト、NEWSつくばは、日本メディア学会企画委員を務める立命館大学映像学部の小川明子教授と共同で、ポッドキャスト配信を始めました。放送文化基金2023年度研究助成「地域メディアにおけるPodcastの活用をめぐる実践的研究」の一環です。毎週水曜日の午後8時ごろから、前週に掲載した一般記事を、記者の生の声を添えて、AI音声でお届けしていきます。

ポッドキャストは、インターネット上で音声を配信する仕組みです。自分の興味に合わせたコンテンツを選び、好きな時間にほかの作業をしながら聞くことができるため、近年はニュースの受信手段として国内でも注目を集めています。

小川教授は、病院内のラジオ放送に着目した「ケアする声のメディア:ホスピタルラジオという希望」(青弓社、2024年)などの著書があり、「声のメディア」に関する研究を続けてきました。近年は、NEWSつくばのように小規模で地域に深く密着する「ハイパーローカルメディア」の運営を、メディアとジャーナリズムの観点からどのように持続可能にしていくかの研究にも取り組んでいます。

これまで小川教授とNEWSつくばは、2023年11月の日本メディア学会ワークショップや、24年11月の市民メディア交流会(メディフェス)において共同で報告を行い、ハイパーローカルメディアの在り方について考えてきました。

今回のポッドキャスト配信を通じてNEWSつくばは、市民記者による生活者目線のテーマを「文章」だけでなく「音声」でも発信し、つくば・土浦地域のニュースに興味をもつ人をさらに広げていきたいと思います。

小川教授は「ニュースができあがる過程や背景も含めて音声で伝えていくことが大切だと思う。結論だけを聞かされるのではなく、どんな人物がどう動いていたのか、ストーリーとして共有しながら地域の方々と対話的なニュースの形を探ることで、持続可能なハイパーローカルメディアのあり方が見えてくるのではないかと思います」と話しています。(山口和紀)

◆NEWSつくばのポッドキャストは現在、以下の3つのチャンネルから無料で聞くことができます。登録をお願います。

YoutubeおよびYoutubeミュージック

Amazon Podcast(アマゾンポッドキャスト)

事業効果ある TX 土浦と東京延伸一体整備目指す 県が事業計画素案

28
つくばエクスプレス

つくばエクスプレス(TX)の県内延伸を検討している県は25日、土浦駅延伸の事業計画素案を発表した。土浦駅延伸のみを単独で整備する場合と、東京駅延伸と一体で整備する場合の両方を計算した。需要拡大や費用削減の観点から県独自の調査に基づく予測モデルでシミュレーションを行った結果、土浦延伸を単独で整備する場合、1以上であれば事業効果があるとされる費用便益比(B/C)は1.60と事業効果があり、黒字に転換するのは43年とした。東京駅延伸と一体で整備する場合は、費用便益比1.35、黒字になるのは27年と、黒字化が早まる見込みだとした。

今後についてはさらに関係者と調整を進め、必要な追加調査を実施し素案の磨き上げを進めるとし、次の国交省交通政策審議会答申で東京駅延伸と一体的に土浦駅延伸の位置づけを目指すとしている。

土浦駅延伸については、現在のJR土浦駅に隣接して新土浦駅を設け、TXつくば駅―新土浦駅間(約10キロ)の駅は1駅、可能な限り最短経路と仮定して計算した。開業目標は東京駅延伸と同じ20年後の2045年、つくば駅ー新土浦駅間の所要時間は約9分、運賃340円、JR土浦駅とTX新土浦駅間の乗り換え時間は約4分、つくば駅発着の全列車が新土浦駅に乗り入れると想定し、概算事業費は約1320億円、両駅間の輸送人数は1日当たり約2万2000人から2万5000万人とした。

事業費は既存の補助制度である国の都市鉄道利便増進事業費補助を活用し、事業スキームは営業主体と整備主体が異なる上下分離方式の導入を想定、整備費は国、地方、借入が3分の1ずつとし、開業後は営業主体か受益相当額である施設使用料の支払いを受けると想定した。

一方、東京駅延伸と一体で整備を進める場合は、TX秋葉原駅-新東京駅間(約2キロ)の所要時間約3分、運賃170円、TX新東京駅とJR東京駅間の乗り換え時間は約8分、秋葉原駅発着の全列車が新東京駅に乗り入れるとし、概算事業費はつくば駅ー新土浦駅間と秋葉原駅ー新東京駅間の2区間合わせて約3070億円、1日当たりの輸送人数は、つくば駅ー新土浦駅間が約2万人から2万6000人、秋葉原駅-新東京駅間が約13万3000人とした。

一体整備の需要予測については、TXつくば駅-新土浦駅間の中間駅周辺の開発を含めて検討し、開発面積約160ヘクタール、計画人口約5000人の開発を想定したとした。

県は2023年6月に、JR土浦駅に延伸する構想の具体化に向けた検討を進めることを検討し、2024年度中に採算性確保に向けた方策の調査・検討を実施するとしていた(23年6月24日付)。検討に先立って23年3月、県の第三者委員会(委員長・岡本直久筑波大教授)が提言を出し、その際の土浦方面の延伸の想定は、事業費約1400億円、つくば駅―土浦駅間の1日当たりの乗車人数は約8600人、建設コストを除き年間3億円の赤字が出ると予測し、1以上が望ましいとされる費用便益比は0.6で、1を上回るためには11万人規模の沿線開発が必要だとしていた(23年3月31日付)。

「一歩前進」土浦市長

県の事業計画素案について土浦市の安藤真理子市長は25日「つくばエクスプレスの土浦延伸は、長年にわたる私たちの悲願であり、市民の皆様の利便性が格段と向上することはもちろんのこと、県のみならず、首都圏全体に大きなメリットをもたらす。その中で今回、茨城県が発表した事業計画素案は、土浦延伸の実現に向けて一歩前進したことを意味しており、非常にうれしい。東京延伸と一体的に進めることで、地域経済の発展への起爆剤になるものと考えており、県との連携を密にし、2045年の開業に向けて、全力で取り組んでまいりたい」とするコメントを発表した。

冬のかくれんぼ《短いおはなし》36

1
イラストは筆者

【ノベル・伊東葎花】

冷たい木の幹に向かって目を閉じて、静かに手を合わせた。

「おじさん、何してるの?」

目を開けると、数人の子どもが私を囲んでいた。

「木にお礼を言っていたんだよ」

「どうして?」

子どもたちは、興味深く私を見ている。
私は、ぽつりぽつりと昔話を聞かせた。もう50年も前の話だ。

あれは…、こんなふうに寒い日だったな。
おじさんは、神社で友達とかくれんぼをしていたんだ。
おじさんはオニで、この木の陰で目をつぶって10まで数えた。
「もういいかい」と言っても返事がない。
「もういいかい」と再び言ったとき、強い木枯らしが吹いたんだ。

目も開けられないほどの強い風だ。
おじさんは思わず、この木につかまって風が過ぎるのを待ったんだ。

風がやんで、おじさんは友達を捜し始めた。
隠れている友達は3人。だけど、誰も見つからない。
日が暮れて、大声で叫んでも誰も出てこない。
きっと先に帰っちゃったんだと思った。
腹を立てながら帰ったさ。ひどい奴らだと思いながらね。
だけどね、友達は、家に帰っていなかった。
消えてしまったんだよ。
まるで神隠しだ。どこへ消えてしまったのか、今でも誰も分からない。
きっとあの木枯らしが、みんなをどこか別の世界に連れ去ったのだ。
うまく説明できないけど、どこかにある別の世界で、かくれんぼを続けているような気がする。今でもオニが探しに来るのを待っているような、そんな気がするんだよ。

友達がみんな消えてしまっても、おじさんだけ神隠しにあわなかった。
それは、この木につかまっていたからだ。木が守ってくれたんだよ。
だからね、お礼を言いに来たんだ。

「神隠しって何?」「都市伝説?」「作り話だろ」

子どもたちがげらげら笑った。そのとき、あの日と同じような木枯らしが吹いた。
立っていられないほどの強い風だ。
50年前とまるで同じだ。私は必死で木につかまった。
風がやんで振り返ると、子どもたちが消えていた。
神隠しだ。また木枯らしに連れて行かれた。そう思って肩を落とした私の耳に、元気な声が聞こえてきた。

「もういいよ」

「としく~ん、早く捜しに来てよ」

とし君…。私は子どもの頃、そう呼ばれていた。
おそるおそる声のする方へ行き、鳥居の裏側を覗いた。
子どもたちがいた。肩を寄せ合って笑っている。
それは、50年前に消えた友達だ。

「見~つけた」

そう言ったとき、私は50年前の“とし君”に戻った。
これは夢なのか? それとも、私が過ごした50年が夢なのか。
わからないまま、かくれんぼは続く。

「次はヒロ君がオニだね」

(作家)

関彰商事アスリート社員、視覚障害者向け歩行ナビを体験

1
靴に歩行ナビゲーション機器を装着し、千野社長(左から3人目)の説明を聞きながら、実際に歩道を歩くアスリート社員の山口凌河さん(同4人目)=つくば市二の宮、関彰商事つくばオフィス前

ホンダ 自動運転の技術者が開発

関彰商事つくばオフィス(つくば市二の宮)で働くアスリート社員で、視覚障害者の山口凌河さん(28)と高橋利恵子さん(26)の2人が25日、靴に装着して目的地を足の振動で案内する視覚障害者向け歩行ナビゲーションデバイス「あしらせ」を体験し、実際につくばオフィス周辺を歩いた。

本田技研で電気自動車や自動運転の開発に携わった技術者の千野歩さんが開発した。千野さんは同社の新事業創出プログラム第1号として、ホンダ発ベンチャー「Ashirase(あしらせ)」(東京都港区、千野社長)を2021年に創業し機器を販売している。位置情報の誤差の補正や、視覚障害者が歩きやすいルートの選定には車の自動運転技術を応用している。

「あしらせ」は、スマートフォンのアプリと、靴に装着する機器が連動して動く。スマホのアプリに目的地を伝えれば、靴の両足の甲部分に取り付けた機器から足に振動が伝わり、目的地まで案内する。次の角で右に曲がる場合は右側の足だけが振動し、曲がり角が近づくにつれて振動の間隔が短くなる。曲がり角では振動が大きくなって曲がることを知らせる。行き過ぎてしまった場合や、進む向きを間違った場合はかかと部分が振動して知らせる。

機器は長さ約23センチ、重さ約55グラム、防水性能があり、1回2時間ほどの充電で靴に装着したまま1週間ほど連続して利用できる。視覚障害者は耳や白杖で周囲の状況を確認していることから、耳と白杖に機器を取り付けるのを避けた。

靴に装着して使用する歩行ナビゲーションデバイス「あしらせ」(手前)

道案内の機能のほかに、日ごろ歩くルートを記録して自分だけのマイルートを作成し保存できる。目的地に到着しても入り口がどこにあるか分からない場合は、店の風景をスマホで写真に撮ると、入り口がどこにあるかや人や車がどのように行き来しているかを音声で教えてくれる。スマホのアプリに「近くのラーメン店に行きたい」と伝えると、店の情報を生成AIがインターネット上で集め、店の評判や混雑状況などを音声で教えてくれる機能もある。

千野社長によると開発のきっかけは、千野社長の妻の祖母が目が不自由で、川の横を歩いていた際、川に落ちて死亡した出来事からだという。

体験会で山口さんと高橋さんはそれぞれ機器を靴に装着し、白杖を付いて、つくばオフィスから近くのコンビニまで歩いた。山口さんは「便利。今まで一人で行ったことがないお店も一人で行けるようになると思う」と感想を話し、高橋さんは「今まで耳で入っていた情報が、足からも入ってくるようになる。使いやすかった」などと話していた。

靴に「あしらせ」を装着し、足の振動による案内でオフィス近くのコンビニに向かう高橋利恵子さん(右)

山口さんと高橋さんはいずれもパラリンピック競技のゴールボールの選手で、山口さんは東京パラリンピック、高橋さんは東京とパリパラリンピックに日本代表として出場した。高橋さんは東京パラリンピックで銅メダルを獲得した。「あしらせ」が新聞記事で紹介され社内で話題になったことから、今回、体験会を申し込み実現した。

千野社長(39)は「若くスポーツ選手だからか、2人とも操作方法も含めて理解が早い」と話し、「アスリートと連携することで、よりエネルギーを大きくしていけたら」と語った。今年秋にはイギリスとスペインでも販売予定という。

◆「あしらせ」の本体価格は5万4000円(消費税非課税)。市町村によって購入補助制度が活用できる。詳しくは同社ホームページへ。

支え合いの地域づくり《けんがくひろば》15

4
交流会の様子(写真は筆者)

【コラム・荻生奈苗】つくば市社会福祉協議会は2020年度より、生活支援体制整備事業を市から受託し、地域住民の皆さんと「支えあいの地域づくり」を進めています。市内7圏域に一人ずつ「生活支援コーディネーター」が配置され、「地域支えあい会議(第2層協議体)」の場などを活用しながら、それぞれの地域の状況に合った支え合いの仕組みづくりを行っています。

私は谷田部東圏域担当の生活支援コーディネーターとして、研究学園(けんがく)地区の皆さんと一緒に地域づくりを進めています。

地区の皆さんと関わるきっかけとなったのは、21年7月に発行された広報紙「ひろば」(現在は休刊中)の20回記念号でした。このとき、けんがく地区で活動している複数の団体の紹介がされていました。まだ地域としては歴史の浅い地区でしたが、「地域のことを考え、活動している方がこんなにたくさんいるなんて!」と感銘を受けたのを覚えています。

そして、この方たちがつながり、話をする機会をつくっていけたら素敵だなあと考え、「活動団体同士の交流会をやってみませんか?」と提案したのが始まりでした。

21年の12月、第1回目の交流会が行われました。その中では、各団体が共通して直面している課題が明らかになりました。活動費、活動場所、広報、後継者(担い手)の四つです。交流会の中で、課題を乗り越えるためにどうすればいいかについて意見を出し合うことで、問題の解決に向けて歩みを進めています。交流会も、これまでに9回開催されました(2025年2月現在)。

地域の課題解決に取り組む

また交流会では、課題だけではなく、地域をよくするためのアイデアもたくさん飛び交い、22年から「さくらまつり」「ハロウィン」などのイベントがスタートしました。これらの活動の理念に賛同する個人や団体の方が取り組みに参加・協力してくれるケースも徐々に増えてきており、地域づくりの輪が広がっていると感じています。

上記の取り組みに、生活支援コーディネーターである私も一緒に活動を進めてきました。地域のために力になれればと思っていた私でしたが、皆さんの地域に対する熱い思いに触れ、逆に元気をもらっています。

けんがく地区は、若い世代を中心に人口が増え続けています。その中で、様々な問題が生まれてくることも予想されますが、地域の未来を考え、取り組む方々が集まり、話し合い、一緒に考える場があることで、課題の解決にも前向きに取り組んでいけると思います。

今後も、地域の皆さんの「こんな地域になったらいいな」「こんなことを皆でできたらいいな」の声をサポートしていきたいと思います。(市社会福祉協議会 生活支援コーディネーター)

冤罪をなくそうと訴える袴田ひで子さん《邑から日本を見る》178

0
冤罪被害者を助けたいと訴える袴田ひで子さん(農業協同組合新聞提供)

【コラム・先﨑千尋】1966年に静岡県で起きた一家4人殺人事件。その犯人とされ、死刑判決を受けた袴田巌さんは、昨年9月の静岡地裁でのやり直し裁判で無罪を言い渡された。私は2月4日に東京で開かれた農協協会主催の新春特別講演会で、巌さんの姉のひで子さんの話を聞くことができた。この席で、ひで子さんは冤罪(えんざい)を晴らすための苦難の道を振り返り、冤罪をなくすためにこれからも努力していくと語った。

ひで子さんが講演

今回は「農業協同組合新聞」の講演記録を参考にしながら、ひで子さんの講演の要旨をお伝えしたい。

弟が58年闘ってやっと再審開始になり、無罪をいただいた。拘置所に入っていた弟は88歳、私は92歳。弟が勤めていたみそ工場で殺人事件が起きたのは私が33歳の時だった。警察は弟を逮捕し、早く犯人を挙げなければと弟を自供に追い込んだ。「4人も殺した人が事件後普通に暮らせるわけがない。弟は事件とは関係ない」と思っていた。

母は無実を訴え、裁判所に通ったが、一審は死刑判決だった。気に病んだ母は68歳で亡くなり、半年後に父も亡くなった。身内が警察の厄介になると、兄弟でも親子でも、諦めたり見捨てたりすることがある。うちは6人兄弟だったが、喧嘩(けんか)ひとつしたことがないほど仲が良く、無実を信じてきた。再審決定が出る前の3年半は面会を拒否されていたが、私は小菅の東京拘置所に通い続けた。家族は見捨てないと伝えるためだった。

2014年3月に再審決定が出た。本人が歩いて出てきて、私と弁護士が待っていた部屋の長いすにポンと座り、「釈放された」と。私たちは本当に喜んで、何もかも吹っ飛んだ。釈放後、巌は精神科の病院に入院したが、本人は出たくて仕方がなかった。静岡県清水市で開かれた集会に出たのを機に私の家で暮らすようになった。最初は、一日中家の中を歩いていた。買い物に連れ出すと、ある日「一人で行く。お化けの世界に行くから」と言うので、「行ってきな」と送り出した。

巌には拘禁症の気がある。48年もあんなところに入れられて、「まともでいろ」と言う方が無理だと思う。元に戻せとは言わない。再審法を改正してほしい。巌だけが助かればいいんじゃない。冤罪被害者はたくさんいる。再審がなかなか通らないのは法が不備だからだ。再審法の改正へ代議士や弁護士が頑張ってくれている。応援してほしい。私もまだ元気なので、一生懸命闘っていく。

再審制度の見直しが必要

新聞報道では、確定した刑事裁判を最高裁がやり直すかを決める再審手続きをめぐり、審理の課題について議論を始めるようだ。また、鈴木馨祐法相も、再審制度の見直しについて法相の諮問機関である法制審議会に諮問すると表明している。超党派の国会議員連盟も今国会で議員立法による法改正を目指す方針。袴田さんのケースのような審理の長期化が背景にある。私は、袴田さんたちの願いが一日も早く実を結ぶことを期待する。(元瓜連町長)

SVリーグがつくばで初の公式戦 リヴァーレ茨城は連敗

1
第4セット、スパイクを放つリヴァーレ茨城の長内美和子(赤のユニフォーム)

筑波大出身選手が活躍

バレーボールの日本最高峰リーグ、SVリーグ女子の公式戦が22、23日の2日間、つくば市竹園、つくばカピオで初めて開催された。ひたちなか市を本拠地とし筑波大出身選手2人を擁するAstemo(アステモ)リヴァーレ茨城がヴィクトリーナ姫路と対戦、リヴァーレは2連敗した。ヴィクトリーナは、筑波大出身で日本代表の井上愛里沙が攻守にわたり活躍した。

大同生命SVリーグ2024-25女子第3節 2025年2月23日@つくばカピオ
Astemoリヴァーレ茨城 1-3 ヴィクトリーナ姫路
18ー25
18ー25
25ー23
24ー26

第1セット、多彩なトスをあげる筑波大出身の倉田朱里

SVリーグ女子は全14チームが各44試合をホームアンドアウェー方式で対戦する。上位8チームがチャンピオンシップに進出し、2戦先勝のトーナメントで頂点を狙う。22日はリヴァーレがセットカウント1-3でヴィクトリーナに敗れた。

続く23日の試合、リヴァーレは第1セットをヴィクトリーナに先取され、第2セットもヴィクトリーナにリードを許す苦しい展開。リヴァーレは、マッケンジーメイ、長内美和子を中心に果敢に攻め逆転するも、ヴィクトリーナの攻撃を止めることが出来ず、続けてセットを失う。

第1セット、スパイクを放つ佐藤黎香

このままでは終われないリヴァーレは、第3セットに一進一退の攻防から何とか意地を見せ、オクム大庭冬美ハウィのサービスエースに佐藤黎香のアタックで流れをつかむと、最後は長内が決めて1セットを取り返した。

第4セットは筑波大出身の高間来瞳がサービスエースを決め、ジュースに持ち込み、粘りを魅せると、会場に詰めかけた751人の観客を大いに盛り上げたが、ヴィクトリーナの攻撃を止めることが出来ず、セットカウント1-3で敗れ、連敗となった。

第2セット、得点を決め喜ぶリヴァーレの選手たち

試合後、リヴァーレの長内美和子は「昨日の敗戦から具体的にチームの攻撃をどうするか、コミニケーションをとり、変化をつけられたことは良かったが、それが勝ちにつながらなかったのが悔しい。残りのレギュラーラウンドを一戦一戦しっかり戦い抜きたい。変化をつけてプラスに向いた部分はあったので、試合を通じてチームとして成長していきたいし、個人としても課題としっかり向き合うことが必要」とチャンピオンシップ進出を目指し、力を込めた。

中谷宏大監督は「ホームで2連敗して悔しい。いろいろな面で力が足りなかったと思う。1、2セット目の状況から、選手は解決策を自分たちで生み出そうとして少しずつに前に進めた。今日のゲームの中で成長できたと思う。今後のプレーオフ進出を目指しての戦いでは、8位以内に入ることを最低限果たさなければならない。あと12試合を一戦一戦、どう試合に挑むか、目の前の試合に集中したい」と語った。

試合前、コートに整列するリヴァーレ茨城の選手たち

お世話になった多くの人が応援

大学時代をつくばで過ごしたリヴァーレ茨城の高間来瞳は「大学の時に見慣れた景色を見て大学時代を思い出し、気が引き締まる思いだった」と語り、1学年後輩の倉田朱里も「駅、街の雰囲気、景色を見て、久しぶりに帰ってきて良い意味で気が引き締まった。大学時代にけがで附属病院でお世話になった先生方、ママさんバレーの皆さんが見に来てくれていたので、コートの中でプレーする姿を見せることが出来て良かった」と話した。

筑波大出身で2022年に日本代表に選出され、昨年、ヴィクトリーナ姫路をVリーグ2部で優勝、昨年12月の皇后杯を優勝に導いた井上愛里沙は「大学時代を過ごし懐かしい。多くの方が応援に来てくれて大学時代に学んだつくばで筑波大出身の(高間来瞳と倉田朱里の)後輩と対戦できてうれしい」と語った。

第3セット、スパイクを打つヴィクトリーナの井上愛里沙(黒のユニフォーム)

リヴァーレ茨城の通算成績は17勝15敗で順位は8位。レギュラーラウンドは4月13日まで続く。(高橋浩一)

絶滅危惧種のカヤネズミの巣 つくばの市街地近くで発見

0
つくば市の市街地近郊で石田さんが発見したカヤネズミの巣(中央の球状の塊)

個体数の減少から、絶滅が危惧されるカヤネズミの巣が、つくば市の市街地から程近い場所で確認された。かつて人の暮らしのすぐ隣にいたはずの動物が、気がつくとめったに目にすることができなくなるほど数を減らしている現状で、人と野生動物が共存するためには何が必要なのか。

セイタカアワダチソウの茎に

この奥です−。 

つくば市の自営業、石田佳織さん(46)が指差した方に目を向けると、茂みの中に細かくちぎった枯れ草を寄せ集めたような塊が見えた。大きさは、手のひらで包み込めるくらい。丸く、ふんわりしていて、茶色く乾いたセイタカアワダチソウの茎にしっかりついている。

石田さんがこの巣を見つけたのは昨年11月。夫の孝英さん(49)と、市内に借りている畑の草刈りをしている時だった。場所は、市内を流れる川沿いで、市街地から徒歩で10分程度の場所にある。週末には子どもたちと一緒に取れたての野菜を畑で調理し食べるなど、家族で自然に触れ合う憩いの場になっているという。

市民活動を通じてカヤネズミの知識があった石田さんは、自身の暮らしのすぐ隣に絶滅危惧種に指定されるカヤネズミがいることを知り、「まさか、ここにいるとは思ってもみなかったので、思わず『すごい!』と、離れたところにいた夫に呼び掛けた」と振り返る。

カヤネズミ=染谷保さん撮影(茨城県生物多様性センター提供)。つくば市の市街地近郊で見つかった巣とは別のもの

暮らしが変化し激減

かやぶき屋根に使われるカヤが茂る場所を好んだことから名付けられたカヤネズミは、本州以南の41都道府県で生息が確認されている国内最小のげっ歯類。体長は5~7センチほど、重さは500円玉と同程度の10gほどだとされる。前足と歯を使って植物の葉をちぎり、編んで直径10cmくらいの球形の巣を作るのが特徴だ。巣は、地面から1メートルほどの高さに、周囲に茂る植物の葉を利用し固定する。かつては、家屋の屋根に用いられたススキやヨシが生い茂る「かや場」や田んぼなど、イネ科の植物がある場所に多く生息していた。近年は、都市開発や農村の変化などにより個体数が減少し、茨城県を含む33都府県で、絶滅が危惧される生物種としてレッドデータブックに掲載されている。

1990年代からカヤネズミの実態調査を続ける、土浦市の認定NPO法人「宍塚の自然と歴史の会」の阿部きよ子さんは「よく見られたのは、河川敷や川の土手、田んぼの中や縁など。かつてはコメを食べてしまうと考えられ、見つけると巣ごと踏みつぶされていた」と話す。だが周辺地域を含めて「近年は激減した。以前は一つの株に複数の巣があるのを見ることもあった。今は巣自体を探すのに苦労する」と言う。

長年、カヤネズミの調査を続ける阿部きよ子さん

激減した背景に、人の暮らしの変化を指摘する。「カヤネズミが巣を作っていた田んぼで、季節に合わせた稲作をしなくなった」とし、「かつて稲刈りが終わるのは11月。彼らが越冬する直前の、秋の終わりまで田んぼに稲があった。いまは刈り取られてしまい、まだ巣が必要な時期に稲がなくなった。カヤ場もなくなった」。

阿部さんが長年調査してきた場所も年々変化している。かつて田んぼだった場所が宅地として開発されるところも少なくない。「今は、少ないながらも生き延びられるところを見つけて、生きている」状態だとする。また近年は、特定外来生物に指定されるアライグマの被害もあると考える。「カヤネズミは寿命が1年から2年と短い。増えるときは増えるが、(繁殖が追いつかずに)減る時には一気に減ってしまう」。

阿部さんの調査で見つかった、生い茂るススキに作られたカヤネズミの巣。つくば市の市街地近郊で見つかった巣とは別のもの

見つけたら、どうする?

減っていると感じる動物は他にもいると阿部さんはいう。「ヒミズモグラもノウサギも激減した。しっかりとした調査が行われていないから、それらの生き物がどの程度いたかという証拠がない」と指摘する。

「全ての生き物は、自然界のバランスの中でコンロトールされてきた。バランスが崩れることで、自然の中にある食物連鎖が壊れてしまう。結果的に人間もそのつながりから切り落とされる。大事なのは人間もこの輪の中にいる。一つの生き物がいなくなるということは、全体のバランスが崩れているということ。人間だけが独立して生きているわけではないので、いつかその影響は人に降りかかってくる。だから自然環境を守ることは大切になる」

阿部さんはこう指摘した上で、カヤネズミなどの希少種に出会った時にどうすればいいのかについて「放置する。触らない、近寄らない、それが一番。人があまり関わらない方がいい。私たちが暮らすつくば市、土浦市にも、そういう生き物がいるということのが大事」だと話す。(柴田大輔)

4年目を迎える「里山体験プログラム」《宍塚の里山》121

0
宍塚プログラムの湿地保全(写真は筆者提供)

【コラム・田上公恵】持続可能な里山保全を目指して2022年度より開始した宍塚での「里山体験プログラム」は、4周年を迎えます。プログラムではその道の専門家による丁寧な指導、自然が大好きなスタッフと共に多種多様な保全活動の体験、子どもたちを対象とした環境教育、四季折々の自然の移り変わりや動植物との出合いなど、どれも充実した学びとなっております。

期間は4月から翌年3月の1年間。履修単位は20単位(必修10単位、選択10単位、上限無し)で、1単位は3時間の活動(午前または午後)となっています。必修科目は、自然農田んぼ塾、里山さわやか隊、田んぼさわやか隊、湿地保全、歴史探訪など。選択科目は、土曜観察会、月例観察会、子ども探偵団、田んぼの学校、土曜談話会、運営会議などです。

自分の仕事や学業の都合に合わせて毎月計画を立案するといった、受講者の自主性を最大限尊重しています。このように、しっかりとしたカリキュラムに基づいて実施していうため、筑波大学大学院のインターンシップ単位として認定されるという評価につながっています。

素敵な方々にも出会えます

もうすぐ今年度のプログラムを修了する参加者から感想を頂きましたのでご紹介します。

★里山体験プログラムは、宍塚で行われている様々な活動に参加することができます。里山の保全・活用、調査、教育への活用などを通して、宍塚の魅力をたくさん体験できるだけでなく、とても素敵な方々にも出会えます。非常に貴重な宍塚の春夏秋冬を楽しんでいただければと思います。(Ti)

★SDGs、自然保護、里山、農業、生物多様性、ビオトープ。これらのことに少しでも関心のある方にとっては、絶好の学びの場となります。参加者も大学院生や学生、社会人とさまざまです。自然の中で活動することは、清々しくて、心地よいものだ、ということを体感できます。(Ks)

★環境に関わる仕事がしたく、きっかけとしてプログラムに参加しました。環境保全のためにはボランティアの力がかなり大切です。宍塚の皆様は豊富な知識をお持ちです。収穫祭が楽しかったです。クリスマスリースやしめ縄作りが最高でした。ZOOM会議は勉強になります。是非たくさんの出会いと会話を楽しんでください。(Yo)

★季節ごとに変わる宍塚の自然の中で、この里山を守るための活動や、多くの人とのつながりを近くで知ることができる時間は貴重なものです。冬の里山こども探偵団では木登りに挑戦できます。ドキドキしながら高いところに登り、見渡す宍塚の景色はとても魅力的です!(Yt)

★里山こども探偵団など、子どもたちと交流できるプログラムが楽しいです。(Fm)

ご参加をお待ちしています

里山での豊かな学びの扉を開きませんか? ご参加をお待ちしております。(宍塚の自然と歴史の会 理事)

▼受講申し込み先こちら

石破首相、言葉遣いがずれていませんか?《文京町便り》37

8
土浦藩校・郁文館の門=同市文京町

【コラム・原田博夫】昨年10月から政権の座にある石破首相は、今年元日、年頭所感を初めて発出した。そこには、複数の歴代首相の名前と主要な政策テーマが言及されていた。石橋湛山の施政方針演説、田中角栄の「日本列島改造論」、大平正芳の「田園都市構想」、竹下登の「ふるさと創生」などである。要するに、こうした歴代政権の施策の方向性を引き継ぐ、という意図の表明である。

もちろん、それ以外にも、資源エネルギー問題、AI(人工知能)、DX(デジタル・トランスフォーメーション)、GX(グリーン・トランスフォーメーション)や、災害対策のレベルアップ、地域のバランス・オブ・パワーを踏まえた安全保障政策のブラッシュアップなどにも、記者との質疑応答などの場で言及している。

こうした政策体系をより明確に表明しているのが、施政方針演説(1月24日)である。石破首相は「国づくりの基本軸」の箇所で、近代以降の日本が目指してきた課題を、明治時代は「強い日本」、戦後は「豊かな日本」と総括し、これからは「楽しい日本」を目指す、と言明した。しかもこの発想とワーデフィング(言葉遣い)は、故・堺屋太一氏の最後の著書『三度目の日本:幕末、敗戦、平成を超えて』(祥伝社新書、2019年4月刊)に由来することも、明らかにしている。

「楽しい日本」?

しかし、この「楽しい日本」を目指すという施政方針には、私だけでなく大方の国民は、相当な違和感を持ったのではないか。現代日本の社会の停滞、経済の不振、政治の混迷に困惑している大方の国民は、とても同調できないのではないか。石破首相の意図と政策の方向性を最大限に忖度(そんたく)しても、このワーディング(言葉遣い)はいただけない。せめて、「日本のウェルビーイングを引き上げる」とでも表明してほしかった。

コラム34(2014年11月24日掲載)で紹介した拙編著「Social Well-Being, Development, and Multiple Modernities in Asia 」(Springer Nature Singapore社、2024年10月刊)を出したことでもあり、ウェルビーイングという用語を活用してほしかった。衆院予算委員会(委員長は立憲民主党の安住淳氏)での質疑応答では、丁寧な石破構文で煙に巻きながら進行している感のある石破首相だが、事前にワーディングに関して相談でもあればアドバイスもできたのに、と思うばかりである。(専修大学名誉教授)

つくば市消防士を逮捕 同僚女性に不同意わいせつ容疑

14
つくば市役所

警察は20日、つくば市消防本部 消防副士長の中谷天志容疑者(25)を不同意わいせつの疑いで逮捕した。

逮捕容疑は、昨年10月24日午前2時ごろ、つくば市内の消防施設で、20代の女性消防職員にわいせつな行為をした疑い。昨年10月下旬ごろ、被害女性から被害届が出され捜査していた。つくば署によると中谷容疑者は容疑を否認しているという。

同市消防本部によると、女性が被害に遭ったのは当直勤務中だった。女性は同日夕方、直属の上司に被害を相談。市消防本部はただちに加害者の中谷容疑者を配置換えし、両者から聞き取りをするなど調査している最中だったという。

青木孝徳市消防長は「このたび職員が不同意わいせつ行為により逮捕される事案が発生し、被害女性に対して心からお詫びを申し上げると共に、公務員として信用失墜となる行為を発生させてしまったことに深く反省しています。これまで捜査機関に全面的に協力してきましたが引き続き協力していきます。今後は職員の綱紀粛正を図り、再発防止に努め、厳正に対処します」などとするコメントを発表した。

アニメやデザイン作品並ぶ 日本国際学園大 卒業制作展 

0
故郷の内モンゴル自治区をPRする観光パンフレットとキャップのロゴを作成したチョウ・イクさん

つくば市民ギャラリー

日本国際学園大学(つくば市吾妻、橋本綱夫学長)で情報・メディアデザインを学ぶ学生による卒業制作展が19日から、つくば駅近くの中央公園内にあるつくば市民ギャラリーで始まった。3DCG(3次元コンピュータグラフィックス)によるVR(バーチャルリアリティ)やアニメーションによる映像作品、地域の特色を多面的にPRするパンフレットやグッズ類など、25人の学生による作品約30点が並ぶ。

会場では同時に、在校生5人の作品も展示されている。会期は25日まで。旧筑波学院大学から大学名を変更して昨年4月開学した日本国際学園大学としては初の卒業制作展となる。

中国出身のチョウ・イクさん(25)は、故郷の内モンゴル自治区をPRする観光パンフレットを作成。帰省した際に、アピールポイントとなる草原や砂漠、歴史博物館を取材し集めた素材をもとにした。「内モンゴルには日本にはない風景や歴史がある。日本の人たちにも実際に足を運んで欲しいという思いで作った」と話す。「内モンゴルの観光シーズンは夏。日差しが強くなる」と、オリジナルのロゴをあしらったキャップも制作。「この帽子をかぶって色々なところを巡って欲しい」と顔をほころばせる。「将来は、在学中に学んだ技術を活かして中国でデザイン関連の仕事に就きたい」と目標を話す。

展示会場の風景

3DCGによるVR作品を作った大嶋隼人さん(22)は「授業では、性格や背景などのストーリーを設定した上でキャラクターを作るよう教えられた。自分とは異なるキャラクターになりきり、もう一つの現実の中に身を置けるのがVRの魅力。将来は3DCGを制作する仕事に就きたい」と目標を語る。

細野大地さん(22)と宮本浩平さん(22)は、それぞれが製作したオリジナルのキャラクターを用いた3DCGによるアニメーション映像を展示する。

中国・北京出身のチョウ・ランさん(25)は、動物をあしらったアニメ映像作品を展示する。「アニメーションを学びたくて入学した。出展したのはセリフのないアニメ作品。どうすれば楽しみながら内容を理解してもらえるか考え、変化する表情を工夫した。将来は中国でアニメーターになるのが夢」と話す。

同大広報課の原紗織さんは「学生たちが、学生生活の中で好きなことに向き合い、研究を重ねてきたことが作品になっている。在学中から自分の『好き』を仕事に繋げてきた学生もいる。4年間の学生の成果を、是非、見てらえたら」と来場を呼び掛ける。(柴田大輔)

マッチ好きの少女《続・平熱日記》176

1
絵は筆者

【コラム・斉藤裕之】昨日1箱のマッチを使い切った。だから、今朝ストーブに火を入れるために新しいマッチの箱を開けた。ぎっしりと詰まった頭の赤い真新しいマッチ。随分前に買っておいたものだ。いつだったかははっきり覚えていないが、パイプの絵が描いてあってそれが気に入って買ったと思う。このマッチ箱には約800本のマッチが入っているらしいので、使い切るのに3回は冬を迎えなければいけない計算だ。

30年前のパリ。学生会館の同じフロアーにいたチュニジアの女学生の紹介で、フランス人の女学生と日本語とフランス語の交換学習をすることになった。小柄なバニーナという女の子はフレンドリーなパリジェンヌ。どちらかというと、ラテン系の顔立ち(後にご先祖様はスペインから来たということを聞く)。当時私は子供もいたので彼女からしてみれば、うだつの上がらないおじさんのジャポネだったと思う。

大抵は私の部屋で、ある時は彼女の自宅に招かれて、しどろもどろで自分の絵について説明したり、また日本語を教えること、日本語の難しさに戸惑ったのを思い出す。それから、彼女は日本の古い映画が大好きで、溝口健二だか小津安二郎だかの映画を一緒に見に行ったことがあった(多分これが映画館で観た最後の映画)。

ある時、バニーナがタバコを吸う時にマッチを擦りながら、「私、マッチ大好き!」(もちろんフランス語で)と、しみじみと言ったのを今でも印象的に覚えている。

グランメール…グランペール

かつて、どの飲食店にも電話番号の入ったオリジナルのマッチがあって(銀行でもマッチを配っていたなあ)、それはデザインとしても面白かったし、軸や頭の色、大きさなどマテリアルとしても工夫がされていて、お気に入りのものもあった。記憶に残っているのは、マッチでできていている繁華街の地図。地図にお店のマッチが貼ってあって、飲食店の入る雑居ビルなんかはそれぞれの店のマッチが重ねて積み重なっていて面白かった。

ある日のこと、「じゃあ次はグランメールを…」という言葉がバニーナの口から聞き取れたので、「これはマズイぞ! 次はおばあさん(グランメール)を連れてくるのか?」と焦っていたら、彼女はひとりで現れて胸をなでおろしたことがあった。「グランメール」ではなく「グラメール」つまり「文法」をやろうと彼女は言いたかったのだ。今では私もすっかりおじいさん(グランペール)になってしまったけど。

今度どこかの街に行ったら、スーパーかホームセンターで新しいマッチを買おう。しゃれたデザインのパッケージで、頭が茶色とかのマッチに出会えるといいんだけど。(画家)

災害時は被災者や応援者受け入れ コンテナホテル、谷田部IC近くにオープン

4
26日、谷田部IC近くのつくば市台町にオープンするコンテナホテル

東日本大震災きっかけ

常磐道谷田部インターチェンジ近くのつくば市台町にコンテナ型のビジネスホテル「HOTEL R9 The Yard(アールナイン・ザ・ヤード)つくば」が26日オープンする。開業を前につくば市は1日、同ホテルを運営するデベロップ(本社・千葉県市川市、岡村健史社長)と、災害時に同コンテナを市の災害対応に利用する協定を締結した。

災害時は市の要請に基づき、市が被災者や外部の応援人員の受け入れなどに利用する。市によると、県内で同社と災害協定を締結したのはつくば市が13市町村目になるという。

コンテナホテルは2011年の東日本大震災をきっかけに誕生した。コンテナメーカーでもある同社は震災後間もなく被災地に入り、コンテナ型備蓄倉庫を寄贈したり、復興作業をする従業員向けの仮設宿泊施設を建設した。岡村社長は、被災者が多くの避難所で生活に大きな負担を強いられている状況を見たとし「宮城県南三陸町に支援に行き、避難所で子供がじっとしていられなくて家族が外で車中泊している姿を見た。石巻市から作業員の宿泊施設として建設してほしいと要請を受け、長期間、快適に過ごせることが分かり、これだったら成り立つと思った」と振り返る。

石巻市で利用されたコンテナの宿泊施設を2017年、栃木県佐野市に移設してコンテナホテルとしてオープンしたのが始まりで、現在はつくば市も含め全国98カ所に3611室が展開されている。これまで、新型コロナ感染拡大時にトレーラーやトラックで移動させ、都内の病院でPCR検査施設として利用されたり栃木県では臨時の医療施設として利用されるなどした。

コンテナホテルの室内

施設は一つのコンテナ内が一つの客室になっていて、各部屋にベッド、ユニットバス、冷凍冷蔵庫、電子レンジなどが備えられている。つくばは敷地面積約3000平方メートル。客室はツインが7室とダブルが49室の計56室ある。駐車場は56台分を備える。各部屋の広さはいずれも13平方メートルで定員は各2人。平日は周辺の工業団地などのビジネス客、土日は観光客やレジャー客などの利用を想定している。

備蓄を推進

防災や減災への新たな取り組みなどを掲げる一般社団「地方創生戦略研究所」(代表・井手義弘元県議)の紹介で災害協定締結に至った。同研究所は、災害時に仮設住宅としていち早く利用できる移動可能なモバイル型仮設住宅の備蓄を進めたいと、自治体との防災協定締結を推進している。

災害協定を示す(左から)デベロップの岡村健史社長とつくば市の五十嵐立青市長

19日は現地見学会が開かれ、五十嵐立青つくば市長らがコンテナホテルを見学した。五十嵐市長は「全国でこれだけ災害が頻発している中で、全国各地に応援職員を派遣することも多い。コンテナホテルは平時はホテルとして運用し、有事は被災者も活用できる。全国に安心安全と経済活性化を広げてほしい」とし、岡村社長は「レスキューホテルとしてこれまでに7度、要請を受けて出動した。有事には動かして、被災した場所に行く存在であることを知ってもらい、お役に立ちたい」などと話した。

災害時に利用する場合、費用は市が市が負担する。利用料は1室1日7000円で、移動して利用する場合はトラックやトレーラーでの運搬費用がかかる。市危機管理課は「災害時に指定避難所の利用が難しい被災者や、応援に来る職員の受け入れなどでの利用を想定している」としている。

同社のコンテナは、タイヤが付いて災害時にトレーラーで移設する車両型と、釣り上げてトラックの荷台に乗せて移設する建築型がある。つくばの56室はいずれも建築型になる。災害時に移設先で仮設住宅などとして利用する場合は、電線や上下水道につなぐことが必要になる。(鈴木宏子)

◆「HOTEL R9 The Yardつくば」の宿泊料金はダブルルームが1人1泊6200円、2人8700円、ツインルームが1人6200円、2人9700円。詳しくは同ホームページへ。