金曜日, 11月 7, 2025
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世界が壊れた日 その1《看取り医者は見た!》42

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写真は筆者

【コラム・平野国美】私たちの社会には、「普通」という暗黙のルールがあります。「空気」を読み、周りに合わせることが求められ、そこから外れる人は「変わっている」「融通が利かない」と見なされがちです。しかし、もし社会の「普通」という前提自体が崩れ落ちてしまったら、一体何が起きるでしょうか。

2011年3月11日に起きた東日本大震災。被災地の町の図書館も例外ではなく、すさまじい揺れで本棚は倒れ、蔵書が床一面に散乱する光景が広がりました。翌朝、出勤したスタッフは言葉を失い、立ち尽くすばかりでした。「どこから手を付ければ…」。誰もが絶望と無力感にさいなまれ、思考を停止していたのです。

その時が止まったような空間に、カツ、カツと規則正しい足音が響きます。定刻通りに出勤してきたKさんです。彼は普段、「仕事は正確だが冗談が通じない」「空気が読めず人を戸惑わせる」と評される、少し不思議な存在でした。

この日も、Kさんはいつもと寸分違わぬ「いつも通り」でした。茫然(ぼうぜん)自失の同僚たちを一瞥(いちべつ)しただけで、散乱した本の山にまっすぐ向かいます。そして静かに一冊の本を拾うと、汚れを払い、記憶の中にある完璧な配置図通り、本来あるべき棚にそっと差し込みました。一冊、また一冊…。

Kさんは、目の前の惨状など存在しないかのように、淡々と本を元の場所に戻し続けます。周りの混乱した空気とは完全に異質なその姿。「空気を読まない」と評された彼の特性が、この極限状況において、誰にも真似できない「不動の精神」として静かな光を放ち始めた瞬間でした。その規則正しい作業は、まるで正確に時を刻む振り子のようでした。

不思議なことに、その姿を見ているうちに、パニックに陥っていたスタッフたちの心は少しずつ凪いでいきます。「…そうだ、こうしていても始まらない」。誰かがつぶやくと、1人、また1人と魔法が解けたように動き出し、Kさんの隣で本を拾い始めたのです。

Kさんの「いつも通り」が、崩壊した世界の中で、秩序を取り戻すための最初の歯車となりました。作業は1日中続きました。しかし夕方5時に終業チャイムが鳴ると、Kさんはぴたりと手を止めます。そして、まだ山のように残る本には目もくれず、「お先に失礼いたします」と一礼し、いつも通りの定時に帰って行ったのです。

輝いた「異質な人間の存在」

一見、奇妙に見える彼の行動。しかし、この一連の出来事は、私たちが当たり前だと思う「普通」や「協調性」という物差しを、根底から揺さぶるものでした。彼の行動の裏には、一体何があったのでしょうか。

この話の中にダイバーシティの概念があります。人間の集団の中には、気質や行動パターンに多様性が存在します。町の図書館の中にも異質な人間が存在したのです。同じタイプの人間ばかりでは、同じストレスがかけられた場合、その集団が全滅する可能性があります。Kさんの性格・特性は「いつも通り」でない世界で輝いたのです。(訪問診療医師)

東田旺洋、兵藤秋穂 両選手にエール 関彰商事 4日から日本陸上選手権

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ガッツポーズをとる(左から)やり投げの兵藤秋穂選手と、短距離の東田旺洋選手=つくば市二の宮、関彰商事つくばオフィス

第109回日本陸上競技選手権が4日開幕するのを前に、関彰商事(本社筑西市・つくば市、関正樹社長) 所属でいずれも筑波大出身の東田旺洋選手(29)と兵藤秋穂選手(26)の壮行会が3日、同社つくばオフィスで催され、社員約100人がエールを送った。

東田選手は男子100メートルに、兵藤選手はやり投げに出場する。同選手権は6日まで国立競技場で開催され、9月に東京で開かれる2025世界陸上につながる重要な大会となる。

一生懸命走ることだけ 東田選手

東田選手は昨年開かれたパリ五輪に出場、今年4月にはアジア陸上競技選手権に出場した。昨年の日本選手権では2位になっている。奈良県出身、筑波大学卒、同大学院を修了し、関彰商事ではヒューマンケア部に所属する。自己ベストは100メートル10秒10。

「この1年で若い選手が台頭し、現在年間ランキングは国内10位なので、ともかく決勝に残ることが重要。準決勝に焦点を当てている。出来ることは一生懸命走ることだけ」と意気込みを話す。

自己新記録目指す 兵藤選手

兵藤選手は2023年、日本インカレ優勝。持ち味は、力強い振り切りと、そこから放たれる鋭く勢いのあるやりの飛行だ。宮城県出身、筑波大学卒、同大学院修了、関彰商事ではライフサイエンス事業企画室に所属する。やり投げの自己ベストは56メートル16。

「やり投げは北口榛花選手がオリンピックで金メダルをとったので、注目を集める種目となっている。昨年は12位に終わってしまって残念だった。今年は十分練習を積むことができたので、入賞と自己新記録を目指して頑張りたい」とコメントした。

壮行会で関社長は「社員一同が応援している。2人にはぜひ頑張って、9月に東京で開催される世界陸上に選ばれてほしい」と激励した。さらに同社所属の高橋理恵子選手がスウェーデン・マルモで開催されたゴールボールの大会で銀メダルをとったこと、同社野球部が天皇杯茨城県大会で決勝に進んだことなどの報告もあった。(榎田智司)

◆日本陸上競技選手権大会スケジュール▽男子100メートル予選は4日午後3時35分~、準決勝は同午後8時25分~、決勝は5日午後6時30分~▽やり投げ決勝は4日午後5時35分~。

応援されるチーム、人の心動かす野球目指して 土浦日大 小菅監督【高校野球展望’25】㊥

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小菅勲監督

第107回⾼校野球選⼿権茨城⼤会開幕まであと2日。大会を前に、強豪校の名監督インタビュー2回目は、土浦日大の小菅勲監督にお聞きした。

団子状態

ーチームの状況を教えてください。

小菅 正直に言えば、今の時点で完成度は高くありません。欠けている部分も多く、まだまだ課題の多いチームです。

ただ、高校野球は「発展途上人」の集まりです。大会に入ってから成長してくれればという期待がありますし、「これでいけるぞ」という手応えも少しずつ感じています。優勝には足りないピースもありますが、それを大会中に埋めていきたいと思っています。

──茨城全体のレベルについて、今年は突出したチームがいないと思いますが。

小菅 その通りで、まさに「団子状態」です。だからこそどのチームにもチャンスがあるとも言えます。

完璧に抑えられた

ー春に準々決勝で常総学院に3対7で敗れました。反省点や手応え、対策など教えてください。

小菅 まず良かった点は、前半が競り合いになったことです。打撃では事前に分析したデータに基づいて狙い打ちができていました。

一方で、守備は機動力を使われた際に対応できなかったことが反省点です。データに出ないような「余白の部分」への対応力も足りませんでした。ここをどうアプローチしていくかが課題ですね。

ー相手ピッチャーの小澤頼人投手は、対戦してみてどうでしたか?

小菅 手強いピッチャーでした。ゾーンにしっかり投げ込む力があり、変化球でもカウントが取れるタイプです。うちの打線も前半はよく対応していましたが、7回以降は完璧に抑えられてしまいました。そこをどう攻略するかが、今後の課題だと感じています。

戦況を見つめる小菅監督(右端)

素材的に差はない

─打撃陣の調子はいかがでしょうか。甲子園4強入りした2年前の世代と比べてどうでしょう。

小菅 素材的にそれほど差はありません。ただ2年前の世代は課題に向き合う姿勢や思考、行動が非常に優れていました。今年の選手たちはその点でややアプローチ不足があると感じています。

理想は「波状攻撃」ができる打線です。1、2番がダメでも3、4番が、そこがダメでも5、6番がカバーする。春の時点ではそこまでできていませんでしたが、今は徐々にその形に近づいてきています。

─投手について教えてください。

小菅 エースは右腕の永井です。際立ったボールを投げるタイプではありませんが、「打たせて取る」ことを理解し、自分の投球スタイルを確立しつつあります。守備との信頼関係も生まれ、テンポ良く投げられるようになってきました。非常に頼もしい存在になりましたね。

エース右腕の永井柊帆

徐々に自覚芽生え

─1年生は甲子園4強を見て進路を決めた世代ですね。入部希望者は増えましたか?

小菅 ありがたいことに問い合わせは例年の2倍ほどありました。やはり甲子園効果は大きいです。

─甲子園4強世代はダブルキャプテン制でしたが、今年は?

小菅 今年は梶野悠仁がキャプテンです。新チーム発足時は別の選手に任せていたのですが、徐々に梶野の自覚が芽生えて言動がリーダーらしくなり、キャプテンを交代しました。年によって適した体制を選ぶようにしています。

キャプテンで中軸を務める梶野悠仁

負ける要因つぶすこと再認識

─春の敗戦から、チームはどう変わりましたか?

小菅 春は「取れるアウトをしっかり取る」という基本が徹底できていませんでした。今はまずそれを完璧にしようと取り組んでいます。負けない野球をするには、まず「負ける要因」をつぶすことが大事だと再認識できました。守備への意識が大きく変わったと思います。また、常総に負けたことで「夏こそは」という雰囲気がより一層強くなりました。

OBの自己分析を共有

──大学野球でOBが活躍していますね。

小菅 亜細亜大の芹澤優仁(4年)は東都大学リーグで首位打者とベストナイン。國學院大の藤本士生(2年)は防御率4位。法政大の小森勇凛(2年)は慶応大から初勝利。

そのほか、明治学院大の太刀川幸輝(2年)、常磐大の川井康晟(3年)もそれぞれのリーグで結果を残してくれています。芹澤と太刀川には、なぜ活躍できたか自己分析を5つずつ出してもらい、チームと共有しました。選手たちにも好評でした。

脚本家のように

─夏の大会の土浦日大の組み合わせゾーンは「死のゾーン」とも言われています。

小菅 まさに「一戦必勝」。厳しいゾーンですが、戦いながらチームは強くなっていくもの。決勝戦の頃にはまったく別のチームになっているはずです。

本番までに「負けにくい材料」をさらに整備し、仕上げていく。そして大会中も進化していく選手を見守っていく。監督として脚本家のように準備を進めていきます。

心ひきつける存在に

─最後に、応援してくれるファンや地域の方々、OBの皆さんにメッセージをお願いします。

小菅 選手たちには常に「人気のある選手であれ」と伝えています。ここで言う「人気」とは、人の心をひきつける存在であること。

ガッツあるプレー、笑顔、明るさ─選手それぞれの「自分らしさ」が人の気を引き寄せるのだと思います。感謝の念を持ちつつ、自分を押し殺さず、のびのびと自然体でプレーしてほしい。その姿が、きっと見る人の心を動かすはずです。

全力プレーで心を動かす試合を届けられるよう、「応援されるチーム」を目指していきます。高校野球ファンの皆さま、ぜひ球場に足を運んでいただき、熱い声援をよろしくお願いいたします。

【取材後記】春の敗戦を経て、どこか張りつめたような、それでいて希望に満ちた空気がチーム全体に漂っていたのが印象的だった。小菅監督の言葉は一つひとつに実感がこもっており、単なる反省ではなく、「何を得て、どう変わるか」にフォーカスが当たっていたことが、特に心に残った。「取れるアウトを確実に取る」─言葉にすれば当たり前のようだが、春にできなかったことを素直に認め、そこから逃げずに積み上げ直していく姿勢に、このチームの芯の強さを感じた。夏は“いける”、そう語る監督の眼差しはどこまでも冷静で、それでいてどこか楽しそうでもあった。

そして、今年のチームを語る上で欠かせないのが、キャプテン・梶野の存在だ。新チーム発足当初は目立たなかったという彼が、今では自然と声を上げ、チームを導く姿に変わったというエピソードは、まさに今のチームの成長そのものだろう。与えられた立場ではなく、自らの意思でリーダーシップを育ててきたその過程に、大きな可能性を感じた。

取材を終えて強く思ったのは、「このチームはまだ完成していない」ことこそが、最大の魅力なのだということ。大会を通してどのように進化していくのか──まさに“成長の物語”が始まろうとしている。その主役たちがどんな姿を見せてくれるのか、夏の開幕が今から楽しみでならない。(伊達康)

お好み焼きとジャガイモ、それからビール③《ことばのおはなし》83

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写真は筆者

【コラム・山口絹記】河岸を変えようと移動した店で、彼女からかわいらしい包みを渡された。共通の台湾の旧友(本コラムに登場)の結婚式のお祝いをわざわざ届けてくれたのだ。

どうやらぎりぎりまで私を招待しようかどうか迷ってくれていたらしい。呼んでくれれば駆けつけたのに、と思ったものの、結婚式の招待というのはいろいろと気をつかうものだ。海外となればなおさらだ。実際に足を運んだわけでもないのに参列者のお祝いの品を届けてくれたことに感謝しなければなるまい。

これはめでたいと再度乾杯をする。それにしても、当時は中学生だった20年来の友人たちが皆それぞれの環境で家庭を持つに至ったのはなんとも感慨深いものがある。

本コラムの上に載っているのがその時頂いた品の一つで、「囍」という喜が二つ並んだ漢字の書かれたコースターである。二重の喜び(ダブルハピネス)を意味する漢字で、結婚式にはぴったりのシンボルである。手書きのメッセージカードを読みながら、しばし思い出にひたった。

乾杯! 乾杯!

めでたいことと言えば、と私が我が家にもう一人家族が増えることを報告すると、「これは喜が二つじゃ足りないね」ともう一度乾杯になった。「実はまだ名前が決まってなくて」と手元の紙にいくつか候補の名前を書いて見せる。こういう時に日本語の旧漢字に近い文字を使用する台湾の友人は心強いのだ。

この漢字は台湾なら画数増えるね、意味としてはこうで名前にするなら…と丁寧に説明してもらう。産まれてきた我が子が大きくなったら、おまえさんの名前はいろんな人の気持ちがこもっているんだよ、と教えてあげねばならない。

いつか私のこどもたちが大きくなったらドイツに留学させるとよいよ、と2人は言った。冗談かと思ったら本気らしい。ご縁というのは本当に不思議なものだ。私たちのかけがえのない友情とこどもたちの未来に、もう一度乾杯した(言語研究者)

武蔵美卒業生23人 個性あふれる98点一堂に 県つくば美術館

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武蔵美校友会茨城⽀部展の様子=県つくば美術館

校友会茨城⽀部展

武蔵野美術大学(東京都小平市)を卒業した県在住者及び出身者で構成する同大校友会第22回茨城支部展が6日まで、つくば市吾妻、県つくば美術館で開かれ、会員23人が制作した油彩、日本画、水彩、工芸など98点の個性あふれる作品が展示されている。

同大を卒業した県在住者及び県出身者は約1000人おり、そのうち約30人が会員となっている。支部展は毎年開催されている。

黒川達也さんと出展作品の「ジュンヌフィーユ」

黒川達也(65)さんは油絵「ジュンヌフィーユ」を出展した。「物語の1ページとして描いた作品。作品は決して完成するものでなく絶えず追及している。また絵を描くのは枠にとららわれない思考が必要で、技術だけで描くものではない」と話す。

黒川さんは、美人画で知られる洋画家の宮永岳彦(1919-1987)最後の弟子で、2016年と18年にしんわ美術展奨励賞を受賞したなどの実績がある。地域の絵画サークルの講師などもしている。「絵描きは目が大事、ある時は科学者、医者であるという観察眼が必要で、絵は装飾品になってはじめて生かされる」と語る。

今年はシーソーをかたどった大谷統一さんの木材作品「繋ぐ」が初展示となった。NEWSつくばコラムニストの川浪せつ子さんは昨年に引き続き、NEWSつくばに連載した「おいしい時間(ご飯は世界を救う)」「洞峰公園Ⅰ、Ⅱ」の水彩画の原画などを出展している。

大谷統一さんの「繋ぐ」

会期中のイベントとして▽5日(土)午後1~3時=「モノづくりワークショップー万華鏡や缶バッジつくり」(参加費500円)▽6日(日)午後1時~2時30分=ギャラリートーク(作家による作品解説)を開催する。(榎田智司)

◆武蔵野美術大学校友会第22回茨城支部展は1日(火)~6日(日)、つくば市吾妻2-8、県つくば美術館で開催。開館時間は午前9時30分~午後5時(最終日は午後3時まで)。入場無料。問い合わせは電話090-6923-7747(冨澤さん)へ。

昨夏の主力残るもチームを再編 霞ケ浦 高橋祐二監督【高校野球展望’25】㊤

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高橋祐二監督

第107回高校野球選手権茨城大会が5日開幕する。今年も、強豪の霞ケ浦、土浦日大、常総学院の名監督3人にインタビューした。第一弾は昨夏の茨城大会を制し、甲子園で念願の初勝利を挙げた霞ケ浦高校の高橋祐二監督。注目の指揮官に、新チームの仕上がりや今シーズンへの手応えを語ってもらった。

OBが活躍

ー昨年甲子園で初めて1勝を挙げました。それも相手は名門の智辯和歌山です。この結果、チームや学校、周辺の地域にどのような変化がありましたか。

高橋 中学チームから今までにない数の問い合わせがあります。智辯和歌山に勝つってことはそれだけすごいことなんだと、それくらいのインパクトだったのだろうと思います。

ープロ野球でOBが目覚ましく活躍しています。

高橋 千葉ロッテマリーンズの木村優人が5月にプロ初勝利を挙げ、先日は阪神との交流戦で高校時代にたどり着けなかった甲子園球場で先発を任されました。また、広島東洋カープの遠藤敦志は球速が最速151キロまで上がったそうです。つい先日1軍に呼ばれたものの雨で流れました。また近いうちにチャンスがあるのではないかと思っています。先輩の活躍が後輩たちの刺激になっています。

戦況を見つめる髙橋監督

無駄失点が多い

ー今年のチームの強みをお願いします。

高橋 去年の甲子園メンバーが、ピッチャー、キャッチャー、ショート、センター、レフトと、5人残っています。秋は準優勝になって関東大会に進出しました。一冬越えてその他の選手の成長もあり、ポジションをチェンジするなどチームをつくってきました。

しかしまだ私が求めるレベルまで達していません。特にディフェンス面は正直いって不安な部分が大きいです。無駄な点数を与えない守りの野球がうちの信条なのですが、今年は無駄失点が多い。作戦面でも、勝てるチームの時は監督の意図を選手がよく理解してくれているのですが、今年のチームはちぐはぐなことがあります。大会までには私の考えを浸透させたいと思います。

ー打撃陣の鍵を握る選手は?

高橋 荒木洸史朗と大石健斗を上位に据えていて、この2人が得点に絡んでいけたらと思っていますが、チーム全体として調子が上向きとは言えません。昨年もこの時期に調子が上がってきませんでしたが、かなり練習で追い込んで大会を迎え、勝ち上がるたびに奮発して頑張ってくれて甲子園の切符を手にすることができました。今年も同じように、大会を通して調子が上がってきてくれたらと思います。

打の中心、大石健斗

2番手に伸びてもらうこと必須条件

ーエース左腕の市村才樹選手はどうですか?

高橋 市村は体重が増えてスピードもアップしましたが、スピードを追い求めて全体のバランスを崩して思うようにいかない時がありました。まさに春の県大会で明秀学園日立に痛打されました。

その後、やはりスピードではなく、本来の持ち味であるボールのキレを意識するようになり、崩していたバランスが整ってきました。最近では県外の強豪校とオープン戦をやってもまとまった投球ができています。

エース左腕の市村才樹

ー2番手投手に名前が挙がるのは?

高橋 右腕の稲山幸汰です。昨年うちが甲子園に行けたのは、調子が悪いときも2番手として使い続けていた眞仲が、県大会から甲子園にかけて覚醒して救世主になったことが大きな理由の一つです。今年うちが勝ち上がるためには、稲山にもっともっと伸びてもらうことが必須条件です。眞仲のような覚醒を期待して送り出したいと思います。

新キャプテン誕生

ー秋と春の戦いから、夏に向けて何か変えたことなどありましたら教えてください。

高橋 春を終え合宿を行う中でスタッフと相談し、夏には新しいキャプテンで臨むことになり、昨年の甲子園を経験した鹿又嵩翔をキャプテンに指名しました。まだキャプテン就任から2~3週間しか経っていないのですが、彼の持ち味を発揮してチームをうまく回してくれていると感じます。

ー近年、東北地方出身の選手が多いですが、理由は?

高橋 コーチでOBの白川拓海先生が仙台大学出身で、東北地方の野球指導者とつながりがあって、ありがたいことにうちを薦めてくれることがあります。最近では秋田県や山形県出身の選手がうちの門を叩いてくれています。

一つも気が抜けない

ー今年の茨城の勢力図はどのように見ていますか?

高橋 春に優勝した常総学院が頭一つ抜けた存在だと思います。

ー組み合わせの所感をお聞かせください。

高橋 Aシードのつくば秀英はもちろん、Cシードの土浦日大にDシードの守谷に加え、ノーシードの鹿島学園や日立一、下妻一、水戸商など、上位常連校がひしめく、一つも気が抜けない厳しいゾーンです。投手陣には頑張ってもらって、打線の奮起を期待するしかありません。

甲子園で二度、三度と

ー最後に、応援してくれるファンや地元の方々へメッセージをお願いします。

高橋 皆様に支えていただき、去年甲子園で初めて校歌を歌うことができました。日本全国の霞ケ浦高校の卒業生2万9000人に、少しでも勇気と元気を与えられたことと、やっぱり応援してくれている地域の方や、霞ケ浦高校のファンの方に、少しでも恩返しができたかなと思っています。

今年も甲子園で一度と言わず、二度、三度と勝って、全国に霞ケ浦高校の校歌を届けたいと思っています。まずは茨城大会で優勝できるよう精一杯戦います。

【取材後記】昨年は良い意味で開き直って大会を迎えた霞ケ浦高校が見事に茨城大会を制し、甲子園で歴史的な1勝を挙げた。一方で、今年は指揮官の言葉からもわかるように、ディフェンス面や戦術の浸透といった点で、チームづくりに難しさを抱えている様子がうかがえる。しかし、昨年もこの時期にはチームの調子が万全とは言えなかった。そこから大会を通して一体感を深め、結果として覚醒した姿は記憶に新しい。今年も夏本番でどのような進化を遂げるのか、引き続き注目していきたい。(伊達康)

愚痴が問題解決を遠ざける《続・気軽にSOS》162

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【コラム・浅井和幸】私が代表理事をしている一般社団法人「LANS」という居住支援組織があります。住宅確保要配慮者=ざっくり表現するとアパートを借りづらい人=を支援する法人です。暴力から避難してきた人、障害者、高齢者、生活困窮者、仕事が続けられず社員寮を出なければならない人、車上生活を止め部屋を探している人などをサポートします。

6月現在、茨城県内では11カ所の法人が県から指定されています。全国では800カ所を超えていると思います。LANSは県第1号指定法人で、7月から8期目を迎えます。自治体や福祉事業者、病院や警察、不動産屋などから依頼を受けたりして、居住支援をしています。現在では10名ほどの要員が支援に当たっています。

支援には必要な知識もあり、勉強しながら進めなければなりません。分からないことがあって当たり前ですし、その時にならないと分からないこともあります。その場合、何らかの支障が出て支援できなくなるので、そこでやっと知らないことを知ります。例えば、インターネットを使った住まいの検索方法、生活保護や障害福祉の手続きなどです。

支援に行き詰まれば(できればその前の行き詰まりそうと感じたとき)、浅井に報告や相談をしてほしいと伝えています。それでも、なかなか相談に来ることが少ないので、こちらから聞いてみて支障が見つかることも多々あります。支援員の皆さんは素直で、ちょっとしたことでも相談したいと考えてはいるようですが、なかなか相談に来ません。浅井が忙しいと思い遠慮しているのでしょうか?

皆で愚痴に共感し慰める

どこで相談が止まっているのか、気づいた点がありました。それは、支援に何かしらの支障が出てきたとき、支援員同士で支援について愚痴を言い、それを共感の気持ちで受け止め、慰めることで話が止まっていることでした。例えば、法律的な問題とか、福祉のシステム的な問題とか、就労するための年齢的な問題とか、〇〇市には部屋の空きがないという不動産屋の話を鵜呑みにして…。

そこで気持ちがすっきりして、解決方法を考えることなく、支援に当たる。気持ちが楽になっているから支障への感受性が鈍くなる。今起きていることは仕方がないと思い、相談から遠ざかるという悪循環が起きていました。

LANSでは月1回、全体会議を開きます。そのとき、支援員に上記のことを挙げ、「愚痴を言って気持ちが楽になっているのではないか。愚痴が出たタイミングが、浅井やこの会議で報告するタイミングだ」と伝えました。一般の生活では愚痴を言うことも大切です。しかし、それで問題解決から遠ざかっているかも知れない―と考えてみるとよいですよ。(精神保健福祉士)

原因は下水道管の老朽化と硫化水素 土浦 道路陥没事故

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下水道管の損傷の様子。損傷が大きかった左側は下水道管を交換し、右側は損傷箇所を修復した=土浦市提供

土浦市西真鍋町で6月12日発生した道路陥没事故(6月14日付17日付)で、同市は7月1日、陥没の原因は、埋設されていた下水道管の老朽化と、下水から発生した硫化水素の影響だと断定し発表した。硫化水素の影響で鉄筋コンクリート製の下水道管の腐食が早まって損傷し、管の上の部分の土砂が損傷箇所の下水道管に流入し、地中に空洞が生まれたためという。

市下水道課によると、損傷した下水管は6月28日に補修工事が完了した。一方、道路の通行止め解除がいつになるかは現時点で未定という。

硫化水素が発生し下水道管が損傷したことが原因の道路陥没事故は、今年1月、埼玉県八潮市でも発生し、トラックを運転していた74歳の男性が死亡している。

損傷した土浦市の下水道管は、44年前の1981年に敷設された。老朽化に加え、現場から約1.6キロ離れた塚田ポンプ場から圧力をかけて送水し、水がはきだされる下流だったことから硫化水素が発生しやすかったとみられている。

下水道管は直径60センチで、地面から4.4メートル下に埋設されている。道路は長さ3.9メートル、幅3.4メートル、深さ2.5メートルにわたって陥没し、約33立方メートルの土砂が流出した。

道路陥没箇所の下水道管は2カ所に損傷があり、修復工事では、損傷が大きかったマンホールに近い西側について下水道管を長さ1.5メートルにわたって交換した。東側は幅約40センチの損傷部分を修復した。

現在、土を埋め戻す作業中で、今後、路面にアスファルトを敷設する。さらに陥没箇所の安全や周辺の安全を確認した上で、通行止めを解除する予定という。

今後の対策については、市が定期的に実施している道路管理パトロールの際に、古いマンホールについてはふたを開け、目視で土砂などがたまっていないかを点検するとしている。

軽井沢高原文庫館長の大藤敏行さん《ふるほんや見聞記》6

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軽井沢高原文庫

【コラム・岡田富朗】大藤敏行さん(62)は埼玉県の出身。筑波大学を卒業後、1985年、長野県軽井沢町に開館した軽井沢高原文庫の学芸員に着任しました。同文庫は、作家の中村真一郎さんを中心に、堀多恵子さん(堀辰雄夫人)、室生朝子さん(室生犀星長女)、『新潮』元編集長の谷田昌平さんらに力添えを得て、初代館長に大妻女子大学教授だった池内輝雄さんを迎え、スタートした施設です。

1992年に大藤さんは同館の副館長に、1996年には深沢紅子野の花美術館の館長に就任しました。そして2023年には、池内輝雄氏、中村真一郎氏、加賀乙彦氏らが歴任してきた軽井沢高原文庫の館長に就任されました。

大藤敏行さん 軽井沢高原文庫の庭にてⒸTAKAYUKI TOYAMA

大藤さんは30年ほど前から一般向けの文学散歩なども継続的に行っています。2023年には、軽井沢町制施行100年および堀辰雄来軽100年を記念して、堀辰雄文学記念館で「堀辰雄と歩く軽井沢」が開催されました。これに関連する緑陰講座では講師として招かれ、「堀辰雄と軽井沢」と題し、『不器用な天使』から『大和路・信濃路』までの数多くの作品の初版本を紹介するとともに、堀辰雄が所有していた蓄音機を使用して『ブランデンブルク協奏曲』を鑑賞するなど、貴重な体験ができる講座が開催されました。

2024年には、田端文士村記念館で、「室生犀星・芥川龍之介・堀辰雄の交友と文学~軽井沢を中心に~」と題した講演会の講師も務めました。この講演では、田端で親交を深めた室生犀星、芥川龍之介、堀辰雄の3人が、1925ごろ軽井沢で共に過ごし、交友を深めた話や、彼らの友情と創作について講演されました。

生誕100 辻邦生展-軽井沢と物語の美-

軽井沢高原文庫では今年、「生誕100年 辻邦生展―軽井沢と物語の美―」が開催されます。人間精神の高貴さを物語性の中で追求した作家・辻邦生(1925~1999)は、今年生誕100年を迎えます。『安土往還記』『嵯峨野明月記』『背教者ユリアヌス』『春の戴冠』『西行花伝』などの歴史小説は今も多くの読者に愛されています。山荘のあった軽井沢の地で、自筆原稿、創作メモ、スケッチ、書簡、蔵書、遺愛の品などの多彩な資料約250点を通して、辻邦生の生涯と仕事を知ることができます。

今回の展示で特別協力してくださる学習院大学史料館(霞会館記念学習院ミュージアム)では、辻邦生より寄贈された自筆原稿、創作ノート、書簡など、多数の資料が収蔵されています。学習院大学史料館の協力により、辻邦生ゆかりの地で生誕100年を記念した展示が行われます。各館それぞれのテーマに合わせて、学習院大学史料館の資料が出品される予定です。(ブックセンター・キャンパス店主)

軽井沢高原文庫「生誕100 辻邦生展軽井沢と物語の美-」展:7月19日(土)~10月13日(月・祝)

マダニにかまれない対策を 自分やペットをどう守る?

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SFTSを媒介するフタトゲチマダニ。吸血前の体長は3ミリ程度=平健介教授提供

人獣共通の寄生虫を媒介

茨城県内で飼われていた猫が今年5月、マダニにかまれ、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)に感染して死んだ。6月には県内の40代男性が、渡航先の欧州でマダニにかまれライム病を発症した。いずれもマダニが媒介する人獣共通のウイルスが原因だ。自身がマダニにかまれないようにするにはどうすればいいのか、ペットの犬や猫をどう守るのか。寄生虫学が専門で、マダニが媒介する寄生虫など人獣共通寄生虫病の予防に取り組む麻布大学(神奈川県相模原市)獣医学部寄生虫学研究室の平健介教授に聞いた。

関東で初

平健介教授

―5月にマダニにかまれて死んだ猫は、マダニが媒介するウイルスによりSFTSに感染しました。SFTSは主に関西での感染例が多かったのですが、ペットの猫が感染し死んだのは関東で初めてです。STFSとはどういった感染症ですか。

 SFTSウイルスによって引き起こされるウイルス感染症であり、このウイルスを持つマダニの吸血時に人や動物が感染します。

―マダニにかまれると人も動物も感染するのですか。

 マダニに吸血された人が誰でも発症するわけではなく、発症や重症化リスクは年齢によって異なります。特に高齢者や持病がある人は注意が必要です。

―感染した場合、人、動物それぞれ、どのような症状が出ますか。致死率は。

 人が感染した場合の症状は、マダニにかまれてから1〜2週間後に、主に発熱,倦怠感,頭痛がみられます。その後,嘔吐,下痢,食欲不振などの消化器症状が現れます。人の致死率は10〜30%程度とされます。70歳以上の高齢者では死亡リスクが高く,若年層では軽症または無症状であることが多いです。

一方、野生動物は発症することが少ないですが、猫や犬は発症しやすい。猫の致死率は60〜70%以上,犬では10〜30%程度と報告されています。

全国的に分布広がる

―今回、関東で初めて飼いネコが発症したことについてどう思われますか?

 関東以北でもSFTSウイルスを持つマダニが増えつつあり,人や動物への感染において警戒が一層重要になります。

北海道でも感染マダニが確認されており,全国的に分布が広がっています。まずは(人もペットも)マダニにかまれないように対策を徹底することが,効果的な予防になります。

―人とペットそれぞれの具体的な予防方法や対策は?

 マダニは草むらや雑木林などの野外環境に広く生息し、野生動物の通り道に多くみられます。そのため人は、草むらや林に入る際は,長袖・長ズボン,足首を覆う靴下や帽子を着用し、虫よけスプレーを使用することを勧めます。帰宅後に衣類や体にマダニが付着していないか確認することを習慣づけることも重要です。

ペットにはマダニ予防薬を定期的に投与し、散歩後はブラッシングや体表のチェックを習慣的に行うことがマダニ対策として有効です。

野外で具合の悪そうな野良ネコや野生動物を見掛けても、絶対に素手で触らないことも重要。市町村の環境課や保健所など公的機関に連絡してください。

口を皮膚の中に深く差し込んでイノシシを吸血するフタトゲチマダニ。吸血すると体長は10ミリ程度になる=平健介教授提供

―万が一、マダニにかまれたらどうすればいいですか?

 もしかまれたら、人もペットも医療機関や動物病院を受診したほうがいいです。人もペットも、マダニは皮膚に口を深く差し込んで固着しており,自分で無理に引き抜くと口が皮膚に残ることが多々あります。

やむを得ず自分で除去する場合は,マダニ専用ピンセット等を用いて,マダニの体部に圧をかけないようにして,口の根元をつまんで慎重に引き抜きぬく。マダニの口の部分が皮膚に残らないように気を付ける必要があります。除去したマダニは密閉して保管し診察時に持参すると診断の参考になります。

事前に動物病院に連絡を

―もしペットにSFTSの疑いがあって動物病院に行く場合の注意点はありますか。

 SFTSを疑って動物病院に行く場合は、感染動物から飼い主や他の動物,獣医師への感染リスクがあるため、受診前に必ず動物病院に連絡し,感染対策の準備を依頼してください。

SFTSウイルスは,感染した動物の血液やだ液,体液を介して人にも感染することもあるため、飼い主も手袋・長袖・マスクなどで防護し,ペットとの接触は最小限にとどめるべきです。ペットの運搬には密閉できるケージを使用したほうが良いです。

筆者の飼い猫。マダニにかまれないよう守りたい

県、市町村が注意呼び掛け

県生活衛生課によると、5月に死んだのは1歳のメスネコ。室内飼育だったが、4月下旬屋外に出てしまった時に、マダニに刺されたとみられるという。動物病院でダニを除去したが、5月9日に高熱、嘔吐、食欲低下が見られたため再度動物病院を受診。治療したものの12日に死んだ。動物病院がSTFS を疑い12日に県に連絡、検体の血液を検査したところ、15日にSTFSウイルス陽性とわかった。

県では、関西だけでなく北陸地方や東海地方でも近年、SFTSが発生していることから関東にもいると想定。ウイルスがどの程度広がっているかを動物から把握するため、今年3月から県獣医師会に所属している動物病院を対象に、疑わしい症例があった場合は検査を依頼していた矢先だった。

一方、6月にライム病を発症した男性は、5月下旬に滞在していた欧州でマダニにかまれたと推定されている。6月9日に倦怠感、10日に紅斑が出て医療機関を受診した。現在は快方に向かっているという。県内でライム病が発生したのは2017年9月以来、8年ぶり。

県生活衛生課は、県内44市町村に対して5月に猫が死んだ事案を知らせ、注意喚起を促している。ダニが媒介する人獣共通の寄生虫はSFTSやライム病のほか、日本紅斑(こうはん)熱などもあるため、人もペットも注意してほしいとSNSなどで警戒を呼び掛ける。つくば市や土浦市でも市の公式サイトなどで注意を呼び掛けている。(伊藤悦子)

歯科口腔外科の仕事とは?《メディカル知恵袋》11

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筑波メディカルセンター病院

【コラム 寺田和浩】歯科口腔外科という名称はあまりなじみがないかもしれませんが、口腔、顎、顔面、これらの周囲の疾患に対する治療を行う診療科です。埋伏歯(親知らず)、過剰歯などの抜歯、顎の骨折や歯の脱臼などの外傷による口腔外科疾患に対する治療を中心に、全身疾患を有する方の歯科治療も行っています。

また近年では、がん治療中や周術期(手術前後)の口腔内トラブルの治療や予防を行い、安心・安全に治療が継続できるよう病院内での口腔ケアを担当しています。

私たちの対象疾患

より具体的には、以下のような治療を担当しています。

・親知らずなどの抜歯
・外傷(顎の骨折、歯の脱臼など)
・炎症(顎骨炎、歯性感染症など)
・口腔粘膜疾患(口内炎、白板症、扁平苔癬=へんぺいたいせん=など)
・顎関節疾患(顎関節症、顎関節脱臼)
・唾液(だえき)腺疾患(唾石症、顎下腺・舌下腺・小唾液腺にできる疾患)
・のう胞(顎骨内や口腔内にできるのう胞)
・口腔腫瘍(口腔領域に発生する良性・悪性腫瘍)
・周術期口腔機能管理(周術期の口腔内トラブルの治療や予防)

周術期口腔機能管理

周術期における口腔の状況・環境により引き起こされる合併症やトラブルを予防し、がんなどの治療を滞りなく進めていくことを目的とし、かかりつけ歯科医院と連携しながら口腔機能管理を行います。

周術期の口腔機能管理の意義(図1)として、口腔内の細菌数減少による誤嚥性肺炎予防や薬剤性口腔粘膜炎の症状緩和、むし歯や歯周炎などの口腔内感染源除去による歯性感染および血行性感染の減少、自然脱落の可能性がある動揺歯を一時的に固定することによる誤飲の予防などがあります。

大事な口腔ケア

口の中には400~700種類の細菌が住んでいます。普段はあまり悪いことをしませんが、食後などは細菌がねばねばした物質を作り出し歯の表面にくっつきます。これを歯垢(プラーク)と言います。歯垢1ミリグラムの中に約10億個の細菌が住み着いていると言われていて、歯周病やむし歯の原因になると言われています。

また、口腔は「ごはんを食べる」だけではなく、喋るなど大切な役割を持っています。近年、誤嚥性肺炎(図2)の発症と口腔衛生状態との関連が示唆されるようになってから注目されるようになり、現在では肺炎の予防、ADL(日常生活動作)、QOL(生活の質)の向上に重要であると認識されています。

口腔ケアの具体例としては、検診、口腔清掃、義歯の手入れ、咀嚼・摂食・嚥下のリハビリ、歯肉や頬のマッサージ、口臭の改善、口腔乾燥症予防などがあり、セルフケアと専門的な口腔ケアで成り立っています。

口腔ケアは日常自分で行うセルフケアが非常に重要になります。しかし、セルフケアでは落ちきらない汚れもあるので、定期的に歯科医院で専門的な口腔ケアを行ってもらうのがお勧めです。

口の中に違和感があったら相談を

口の中を清潔に保つことは、いろいろなメリットがあります。かかりつけ歯科をつくって定期的に受診するようにしましょう。

筑波メディカルセンター病院の歯科口腔外科では、入院中や通院中の患者さんに対して周術期口腔機能管理、口腔ケア、応急的な歯科治療を実施しています。特に、当院は地域におけるがん診療の拠点病院であり、がん化学療法や放射線治療に伴う口内炎などの口腔トラブルに対応しています。口の中に不安や違和感がありましたらお気軽にご相談ください。(筑波メディカルセンター病院 歯科口腔外科)

200種のハス 開花始まる 土浦 霞ケ浦総合公園

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ハスが咲き始めた霞ケ浦総合公園の花蓮園=土浦市大岩田

霞ケ浦湖岸の土浦市大岩田、霞ケ浦総合公園の花蓮(はなはす)園で、白やピンク、淡い黄色などたくさんの品種のハスが開き始めた。約200品種のハスが栽培されている。見頃は7月中旬ごろという。

花蓮園の広さは約1000平方メートル。コンクリートで仕切られた池が80区画、たる容器が240個設置されている。

6月中旬から咲き始めた。花は早朝に開き、昼前には閉じてしまう。一つの花の開花期間も約4日と短い。開き始めたハスを見ようと、28日も朝早くからカメラを手にした人や家族連れが訪れていた。

土浦市内で育種された天慈(てんじ)=28日早朝撮影

花蓮園が開園したのは2001年。近くのオランダ風車で霞ケ浦の水をろ過し、花蓮の栽培に利用している。土浦市内で育種された品種など、花蓮園でしか見られないハスもある。

日立市から訪れた60代の女性は「ハスが咲いている時期に初めて来た。冬に来たときは何もなくて、本当にここに花が咲くのかなと思っていた。小さくてかわいいハスや立派なハスも咲いていて本当にきれい」と話していた。

隣接のネイチャーセンターのスタッフは「ハスの花が咲き始めている。満開になるのは7月中旬。お昼には花が閉じてしまうので、午前中にぜひ見にいらしてください」と来場を呼び掛けている。(伊藤悦子)

夏の汗には木綿の下着《くずかごの唄》150

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イラストは筆者

【コラム・奥井登美子】急に暑くなる日が多い。汗をかくと、後で、背中が異常なほどかゆくなる。そのかゆさたるや、表現できない。我慢の限界を超えたかゆさなのだ。

若いころ、「顔はまずいけれどオッパイの形だけはいいね」と亭主に褒められて、好い気になり、ブラジャーの形、色、飾りに凝って、たくさんのブラと付き合ってきた。しかし、老人になったら、いつの間にか自慢の乳房が垂れ下がってきた。今度はひもの太いブラを探して、垂れ下がったオッパイを肩に食い込ませて引き揚げなければならない。

急に暑くなって汗をかくと、そのブラが身体に食い込んでかゆい。いろいろ試しにやってみたあげく、かゆくなるのはブラの飾りひもの合成繊維が原因だと、気が付いた。木綿だけで作ったブラジャーを探したが、見つけられなかった。東京に住んでいる次女に話をしたら、どこかで見つけて買ってきてくれた。しばらく、夏の間だけ娘のくれた木綿のブラを愛用していた。

しかし、ここ2~3年、天気予報で熱中症の注意などがある日、急に暑くなると、背中が異様にヒリヒリしてかゆくなる。もうブラどころではない。私は垂れ下がったオッパイの、3人の子供を育てた長い歴史をしのびながら、ブラジャーを卒業することにした。

生活の中の年齢改革

こういう時、皮膚科の医者を受診すると、飲み薬の抗アレルギー薬と、ステロイドの入った軟膏(なんこう)を処方箋に書いて出してくれるに違いない。私も薬剤師だから薬に頼ってみるのもいいかもしれないが、しかし、薬で一時的に治ったとしても、皮膚炎はまた起こる可能性が大きい。

若いころ、「ツラの皮の厚さ」を誇っていたのに、老人になってみたらツラノカワまでが薄くなってしまって、ファンデーションがうまく乗ってくれない。年齢になってみないとわからない、皮膚のトラブルとの付き合い方を生活の中で身につけるよりほかない。

私はブラをやめて、木綿のシャツを一番下に着てみた。汗をたちどころに吸ってくれるような気がする。半日着て、シャツの襟をなめてみたら、飛び上がるほどショッパイ。それだけ沢山の汗を吸い取ってくれていたのだ。シャツを取り替えるだけで、皮膚はかゆくならない、ヒリヒリ痛くもならない。

1日2回取り替える木綿のシャツ。汗取りだけが目的の下着なのだから、装飾のない白の半袖で充分だ。衣料品店を探してみると、男性用木綿シャツはたくさん売っているのに、女性用は少ししかない。仕方がない。私は男性用の白い木綿シャツを何枚も買ってきて使っている。

生活の中の年齢改革。なるべく薬に頼らないで、根気よく工夫していくしかない。(随筆家、薬剤師)

ジェンダーバランス改善目指す 女性限定、教員20人募集 筑波大

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筑波大学正門

筑波大学(つくば市天王台)の永田恭介学長は26日の定例会見で、女性に限定し20人の教員を募集すると発表した。同大の女性教員の割合は現在20.7%。女性の割合が少ない状況の改善を目指し、男女雇用機会均等法に基づく「ポジティブ‧アクション」(積極的是正措置)として取り組む。

永田学長は「(女性教員が)まだ少ない。50対50にするには時間がかかるが、思い切って女性の雇用を増やそうと考えた。筑波大として女性に限らず、多様な人材が活躍することが大学のさらなる発展になる」と話した。

20人のうち14人は准教授と助教で、学内全ての研究分野を対象に一括で募集を行う。大学のホームページで11日に公表しており、7月31日まで募集を受け付ける。ほかの6人は生存ダイナミクス研究センター、生命環境系ですでに募集が始まっている。人文社会系、数理物質系、システム情報系、体育系はそれぞれ準備が整い次第、募集を始める。

これまでに出産や育児、介護、病気などを理由に研究活動が中断されたり、遅延した期間がある場合には、選考の際。考慮するとしている。

同大では女性教員の仕事との両立支援として、年間最大15万円の研究費助成、学内保育所「ゆりのき保育所」の利用、ベビーシッター利用料補助、学内の育児・休憩スペースの設置、家族の看護や介護などに対する特別休暇制度を用意している。同大の全教員数は現在1777人、そのうち女性教員は368人。(柴田大輔)

「図説日本の里山」が刊行されました《宍塚の里山》125

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上空から見た宍塚の里山(宍塚の自然と歴史の会の依頼で及川昭文さんが撮影)

【コラム・森本信生】朝倉書店から「図説日本の里山ー73の里山のくらしと生物多様性」が6月に刊行されました。宍塚の里山も、茨城県では唯一の里山として取り上げられています。宍塚エリアが日本を代表する里山の一つとして取り上げられたことをうれしく思っています。

「図説日本の里山」の表紙

里山とは「人間が多様な生態系サービスを得るために自然(主に陸域)に人為を加えたもの」であり、「人の手が加えられることによって生物生産性と生物多様性が高くなった二次的自然」と定義されています。

里山は生活の糧でした。田畑での食料の生産はもちろん、樹木は薪(まき)や炭などの燃料として、あるいは建築資材として使われてきました。そして、山菜やキノコは自然の恵みとして貴重でした。畜産がそれほど発達しなかった日本では、雑木林で供給される肥料は重要でした。

自給自足社会において里山は生活の糧だったのです。生活の糧を得るために農業を淡々と営むことによって生物多様性が維持され、美しい景観が守られてきました。別の角度でとらえれば、地域文化の基盤となり、神の依代(よりしろ)ともなり、人々の心の糧ともなってきました。

「図説日本の里山」では、現代に残されている価値ある全国73の里山の「概要と景観」「生業と利用」「特徴づける生物相」「現在の利用状況と管理」が、豊富な写真をとともに紹介されています。生物だけでなく、人々の暮らし、現在の利用状況、保全活動が、偏りなく紹介されています。

もう一つの特徴は、日本全国の里山を網羅していることです。これまで里山といえば、関東や近畿地方にある雑木林に関心が向けられる傾向があったのですが、この本では北海道から沖縄・西表島まで、全国の里山が紹介されています。

それぞれの地域において特徴と魅力を兼ね備え、固有の歴史や文化、そして思いが込められたかけがえのない場であることを、改めてうかがい知ることができます。さらに、巻頭の総説(18ページ)は、里山を知るための出色の解説になっています。

私たちの生活を取り巻く最も身近な存在は里山です。その価値を知り、未来を語ることは、とても重要だと思います。その手助けとして、この本は、いまなら書店の店頭にあるでしょうし、つくば市や土浦市の図書館にも所蔵されています。手に取ってみてはいかがでしょうか。

そして、宍塚の里山においでください。毎月第1日曜日(原則)には、専門家によるテーマ別観察会を行っています。お子さん向けには子ども探偵団(毎週第4土曜日)、季節の移ろいを実感できる土曜観察会(毎週土曜日午前)も実施しています。

環境省のモニタリング1000の調査は毎月ありますし、保全活動で汗を流したければ、さわやか隊の活動など、メニューはいろいろです。もちろん、お一人での散策もお勧めします。身近な、そして豊かな里山が、あなたをお待ちしています。(宍塚の自然と歴史の会 理事)

竹園高の学級増求める意見書、つくば市議会が全会一致で可決

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壇上で意見書を提案する小村政文市議(中央)=つくば市役所内、市議会議場

人口増加が続くつくば市に県立高校が少ない問題で、つくば市議会は6月定例会議最終日の27日、県立竹園高校(つくば市竹園)の募集定員を8学級から10学級に増やすことを知事に求める意見書を全体一致で可決した。近く大井川和彦知事宛て提出する。小村政文市議ら5人が提案した。

意見書は、つくば市を含むTX沿線エリアは県内で唯一、2030年度まで生徒数が増加することが示されており、高校進学の受け皿確保は喫緊の課題であるとし、受験生への公平な進学機会の確保や隣接エリアへの影響を回避するために、つくばTX沿線エリア内で着実かつ戦略的な定数増が不可欠であるとしている。

さらに、これまで市内や近隣の県立高では、つくばサイエンス高の2学級増と普通科への再編、牛久栄進高の1学級増、筑波高校への進学コース設置など改革が図られてきたことから、続く竹園高の定員増は、地域の中学生の進学先として高い需要があり、定員増により近隣エリアでも公平な進学機会を確保できるなど波及効果も見込まれるなどとしている。

つくば市の県立高校不足問題に取り組んでいる市民団体「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」の片岡英明代表は「意見書可決は、県立高校が不足しているため進路選択に困難を感じている生徒や保護者の大きな励ましになる。県には今年の受験生のために竹園高校の募集定員増を行うことを求めたい」としている。

来春の2026年度入試は、県立高校の適正規模や適正配置などの方向性を示した県策定の県立高校改革プラン(2020-26年度)の最終年に当たる。片岡代表は「改革プランで県は、つくばエリアの県立高校の学級数を57学級から2学級増やすとしているが、現在は58学級しかない。増えた1学級も付属中学から進学する枠の1学級増で、中学から受験する高校入試の枠は53学級と増加していない。26年度入試でつくばエリアを2学級増加することは県の計画からも必要」だとしている。

竹園高の学級増について五十嵐立青市長は昨年10月の市長選で、増設分の校舎の建築費は市が負担するなどと表明している。(鈴木宏子)

塚本一也氏が立候補表明 県議補選つくば市区

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記者会見し立候補を表明する塚本一也氏=つくば市竹園、筑波研究学園都市記者会

知事選と同日、9月7日投開票

知事選と同日の9月7日投開票で行われる県議補選つくば市区(欠員1、告示は8月29日)に、元県議でタクシー会社社長の塚本一也氏(60)が27日、記者会見を開き、自民党公認で立候補すると表明した。同補選に立候補を表明したのは塚本氏が初めて。

塚本氏は「県とつくばの橋渡しの役目を担う」と立候補への思いを語り、国や県との連携を重視する中で、つくばの産業育成を掲げる。

つくば市の課題としては「(市内にある研究施設による)研究成果が産業に結びついていない」ことを挙げ、「つくばに生産拠点がほしい。それに付随して産業がつくばに集まってくるし、お金を(地域に)落とす仕組みができるはず」だとし、「県が主導し仲介することで、国や世界的な企業を誘致できる」と語った。また、教育環境の改善については、「学校の統廃合により通学距離が長くなり通えない子どもたちがいる。(通学手段を確保するためにも)県立高校のスクールバスに県がもっと関わった方がいい」と話す。

塚本氏はつくば市出身。県立土浦一高、東北大学工学部建築学科を卒業後、筑波大学大学院環境科学研究科修了。1991年にJR東日本に入社し、2006年には大曽根タクシー社長に就任。18年から県議一期を務めた。現在は同社社長のほか、茨城県ハイヤー・タクシー協会会長などを務める。(柴田大輔)

筑波大も受け入れ表明 米ハーバード大の留学生資格取り消し受け

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定例会見で話す永田学長

米トランプ政権がハーバード大の留学生受け入れ資格認定を取り消したことを受けて、筑波大学(つくば市天王台)の永田恭介学長は26日、ハーバード大を含む米国の大学で学業を続けられなくなった留学生らを受け入れると表明した。同日の定例会見で永田学長は「(学生にとって)研究ができなくなることは極めて大きな問題。米国留学を予定している日本人とその他の国の人に、アカデミアの仲間として学べる環境を提供したいと考えた」と述べた。

受け入れの対象となるのは、米国の大学に正規生として在籍している学生、または入学許可書がある入学予定者。日本のビザ申請の手続きを必要としない学生に対しては、9月、10月入学に間に合うよう、希望者と日程調整をした上で書類選考、面接等で選抜を行い、受け入れを始めていくとしている。筆記試験は行わない。学位取得を希望する正規生のほか、学位取得を希望しない科目履修生や研究生も受け入れる。入学に際しては入学金、授業料は必要になるが、試験を受けるための検定料は徴収しない方針だ。希望者は宿舎の入居も可能。

文科省は5月27日、日本国内全ての大学に対してハーバート大の留学生受け入れなど支援策を検討するよう求める事務連絡を出した。日本学生支援機構によると6月26日現在、国公立大76校を含む121の大学が学生受け入れを表明している。

米トランプ政権は今年に入り、学生の取り締まり強化などをハーバード大に要求、これを拒否した大学側に対して助成金の一部凍結を決定した。5月22日にはハーバード大に対して留学生の受け入れ資格認定の取り消しを通告すると、ハーバード大は政権を提訴し、連邦地裁が認定取り消しに対する差し止め命令を出していた。6月4日にはトランプ大統領が、ハーバード大の留学生ビザ発行を禁止する大統領令に署名したことを受け、大学側は違憲だとして提訴し、連邦地裁は23日、この大統領令に対して差し止め命令を出している。(柴田大輔)

運転手不足の減便影響 つくバス利用者減少 つくば市

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つくばセンターバスターミナルを発着するつくバス(中央)=つくば市吾妻

バス運転手不足や運転手の時間外労働規制などにより2024年4月から実施されたバス減便の影響で(23年11月8日付24年1月19日付)、つくば市のコミュニティバス「つくバス」の24年度1年間の利用者数が前年度と比べて減少した。一方減便は平均で平日が13.6%減、休日は32.8%だったのに対し、利用者数は全体で1%の減少にとどまった。

つくバスの利用者数は年々増加傾向にあったが、コロナ禍の20年度に前年度比35%減と大きく落ち込んだ。その後は徐々に回復し、23年度はコロナ前を上回り過去最高の113万2827人になった。しかし減便があった24年度は前年度より約7006人(1%)減り112万5821人になった。一方、路線によっては減便により混雑した。1便当たりの利用者数は23年度が平均9.5人だったのに対し、24年度は11.8人になった。

10路線(24年10月からは11路線)のうち24年度の利用者が減ったのは、つくば駅前から大穂地区などを通って筑波山方面に向かう「北部シャトル」(前年度比0.26%、年1041人減)、つくば駅前からテクノパーク桜などを通って小田方面に向かう「小田シャトル」(25%、1万7851人減)、つくば駅前から研究学園駅前、豊里地区などを通って上郷方面に向かう「上郷シャトル」(10%、8559人減)の3路線。他の7路線は前年度比1~13%(483~4798人)増加したが、小田と上郷の減少が大きく全体として減少した。

北部シャトルは年間利用客数が39万4089人と最も利用が多い。減少が0.26%にとどまったのは、通勤通学時間帯の便数を極力確保したため利用客の減少を抑えられたとしている。同路線は減便により混雑し乗車できない利用客がいたことから、今年4月から夕方4時台に1往復(上り下り各1便)増便した。

小田シャトルが25%減と大幅な減少となったのは、減便数が平日27%減、休日47%減と大きかったためとしている。

一方減便により、つくバスの運行経費は23年度の約5億3890万円から24年度は4億7640万円に約6260円減少した。運賃収入は2億2290万円から2億2230万円に約55万円減少し、運行経費における運賃収入の割合を示す収支率は41.4%から46.7%に上昇した。

つくばね号、目標達成

筑波地区を運行する支線バス「つくばね号」の24年度の利用者数は前年度比17%増の年7171人となった。1便当たりの利用者は1.2人となり、目標の1.0人以上を上回った。

乗り合いタクシー「つくタク」の24年度の利用者数は4万8019人で前年度と比べ0.1%減少した。つくタクの予約は今年4月から、電話とインターネットの両方で予約できるようになり、さらにAI(人工知能)で運行を最適化するAIオンデマンドシステムが導入された。システム導入後の今年4月と5月の利用者は前年同期と比べ5.4%増えた。運行の最適化により乗り合い率が高まる一方、遠回りしたり、遅延が発生しているため、市は今後、乗り合いと遠回りの度合いの計算方法などについてさらに検討するとしている。

筑波山の公共ライドシェア、振るわず

今年1月27日、つくば、土浦、下妻、牛久4市の交通空白地区4エリアでスタートした、一般ドライバーが自家用車を使って有償で乗客を送迎する公共ライドシェア(24年10月1日付25年1月26日付)について、5月末まで約4カ月間の利用実績は、つくば市桜ニュータウンと隣接の土浦市天川団地周辺の「つくば・土浦エリア」の運行回数は104回、利用人数は116人だった。下妻市の国道125号から南側の「下妻エリア」が148回、182人、市街化調整区域住民が市全域で利用できる「牛久エリア」は36回、42人だった。つくば・土浦エリアの利用者については30~50代が最も多く、主に通勤で利用されているとみられるという。

これに対し、筑波山中腹のつつじケ丘や筑波山神社からふもとの筑波山口まで、観光客を含めだれでも、午後5~8時に利用できる「筑波山エリア」の運行回数は約4カ月間で5回、利用人数は6人にとどまった。4月下旬から5月上旬はゴールデンウイークの利用を見込みSNSに広告を出すなど周知活動をしたが、振るわなかった。運行は事業期間の2027年3月末まで続ける。今後は秋の行楽シーズンに向け、新たな周知活動に取り組むとしている。(鈴木宏子)

コメの需給と値段は安定させられるか?《文京町便り》41

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土浦藩校・郁文館の門=同市文京町

【コラム・原田博夫】2024年秋からコメの値段が上昇し始めた。最初、新米(2024年産米)が出回ればそのうち値段は下がる、と江藤拓農水相(当時)は説明していた。ところが、2025年になっても下がるどころか値上がり傾向が顕著になり、備蓄の古米(2023年産米)を競争入札で放出した。

しかし、消費者の支払う値段は下がらないどころか、値上がりする一方だった。そのうち、備蓄倉庫から小売店に並んで消費者の手元に届くには数カ月かかる、という説明も追加されるに至った。事ここに至って、石破茂首相は農水相を小泉進次郎氏に交代させた。本人もコメ担当相を自認して、備蓄米を随意契約で放出すると明言した。小泉農相の登場以来、コメをめぐる政策・値段・在庫状況は日々変動している。

農産物・畜産品の需給・価格に関しては、経済学に有名な理論がある。定期的に(2年サイクルで)上下変動する豚肉価格と産出量の関係から抽出されたホッグ・サイクル(豚の循環)だ。年次ごとの需給量と価格の変動状況をトレースしたグラフがクモの巣状のことから、「クモの巣理論」とも言われている。

要するに、農産物・畜産品の産出・供給は、前期の価格に反応して増産するけれども、今期はその結果、(相対的に)過剰供給になり、価格は下がる。しかし次期は、再び供給が抑制され、(相対的に)供給不足になり、価格が上昇する-というサイクルである。

この仮説には前提が少なくとも2つある。⑴価格変動に対応して供給量を調整するには少なくとも2期程度の準備期間が必要である、⑵この農産物は備蓄・保存が難しく収穫・出荷から販売まで時間差を置けない-という想定である。

安定的価格の実現を阻む要因

しかし、「令和のコメ騒動」で判明したことは、コメには、新米だけでなく、古米(2023年産)、古古米(2022年産)、古古古米(2021年産)、古古古古米(2020年産)…がある。要するに、保存・備蓄が制度的に認められていて、それを可能にしているのは近年の長期保管・冷蔵の技術でもある。したがって、在庫・備蓄はある。しかし、供給を安定的に維持するには難点が目白押しである。

難点1:保管米を消費者に渡すには、実は、数段階を経なくてはならない。収穫米あるいは備蓄米は、そもそも玄米(籾殻付き)である。それを消費者が食するには、精米が必要だが、これを集中的・大規模に行える精米・保管業者は実は限られている。急な需給調整には対応が難しい。

難点2:コメの生産者から消費者に渡るまでには、集荷業者(大手は当然JA)もいるが、従来は数次の卸業者がスポット取引で(入札制下では)需給調整を行い、流通ルートを確立していた。随意契約はこうした取引実態を超越している。

難点3:コメは、国民が主食として消費しているだけではなく、飼料用米や酒米もある。

難点4:日本のコメの産出量は、(事実上の)減反政策や転作奨励策のゆえに、最大可能量以下に抑えられている。

難点5:農業人口は減退傾向で、60歳以上のコメ農家が9割を占めている。

要するに、コメの生産・販売・流通を取り巻く現行制度は、安定的なコメ価格の実現を阻む要因で満ちあふれているのである。くれぐれも小泉農相には、短期的な事態鎮静化ではなく、農政と国民生活の中長期的な安定化のための対策に取り組んでもらいたい。(専修大学名誉教授)