日曜日, 9月 19, 2021

瀧田薫

書評「人新世の資本論」《雑記録》22

【コラム・瀧田薫】斎藤幸平氏著の本書の核心は、旧来のマルクス理解を根底から覆し、エコロジーの視点からマルクスを解釈し直し、そこからさらに進めて、「人新世」(人類の経済活動が地球を破壊する環境危機の時代)を克服する方途、さらには豊かな未来社会に至るための実践論(「脱成長コミュニズム論」)を引き出したことにある。 読後感を一言でいえば、「宮沢賢治にこそ読んでもらいたかった1冊」であるということだ。宮沢と斎藤には時空を超えて共通する一つの思いがある。 すなわち、資本主義が追求する効率、利潤、経済成長を、環境破壊、労働疎外(個人は経済活動を担う歯車と化す)そしてコモン(共同体や共有財)解体の原因であると断じ、格差や生きづらさを生む資本主義社会から脱して、豊かな人間らしい生活と環境を求めようとする、その一点において両者は同じプラットフォーム上にある。 もちろん本書の狙いは、都市の生活や最新テクノロジーを捨てて農耕共同体社会に戻ることではない。21世紀の現実と向き合い、環境危機を克服し、「持続可能で公正な社会」を実現するための唯一の選択肢として、「脱成長コミュニズム」が提唱されているのである。そのことを確認した上で、宮沢の思想を本書読解のための補助線とする方法、その有効性を指摘したいと思う。 「人間と環境」に関する新しい知見 本書に対する批判の代表的な例は、「脱成長を標榜(ひょうぼう)する文明に繁栄などあり得ない」とする主張であろう。それに対する斎藤の反論については、本書を読んでいただくとして、それとの関連で、宮沢における「定常状態」(経済成長のない均衡状態)理解について簡単に触れておきたい。

《雑記録》21 水素カーが走る近未来社会

【コラム・瀧田薫】クルマの点検でディーラーに出向くと、トヨタの水素カー(MIRAI)が展示されていた。お値段を尋ねると、「ハイエンド車で800万超です。茨城県には2台しかありません」とのこと。豪華なパンフには「酸素と水素の化学反応によって電気をつくり、きれいな空気と水だけを排出するこの究極のエコカーとも呼べるモビリティは、環境性能の高さに加え、より多くの人々に愛される、魅力的な一台を目指して開発されました」と書いてあった。しばし、水素カーが走り回る近未来の社会に思いをはせた。 現在、日本国内で二つの水素エネルギー開発プロジェクトが動きだしている。一つは、川崎重工業を中心とする企業グループで、豪州政府より補助を受け、豪州産の褐炭(かったん)から水素を製造して日本に運搬する実証実験を進めている。もう一つは、千代田化工建設が中心のグループで、ブルネイで産出される天然ガスから水素を製造し、これを液化して日本へ輸送する。つまり、どちらもそれぞれの当該国と日本との間に水素エネルギーのサプライチェーンを構築する狙いであることは共通している。 水素エネルギーの商用化を目指す上で、最大のネックはコストの問題だ。国際金融情報センター理事長・玉木林太郎氏は「投資家や企業にとって、気候変動は倫理や責任の問題ではない。損か得かの問題だ。長期の戦略を立てて脱炭素に対応していかなければ生き残れない」(日経、2020年12月14日付)と言い、さらに「脱炭素のビジネスがペイするかどうか見定めるには、CO2排出をコストとして扱う「カーボン・プライシングが不可欠だ」と指摘している。 中東石油シーライン→日豪水素供給チェーン? つまり、政府が炭素税を導入し、あらかじめ年次を定めていくら増税していくか決めておく方式である。そうなれば、水素ビジネスの側で、水素がいつごろ化石燃料に対して比較優位に立ち利益を出せるか予想ができるし、開発上の不確定要素を減らすことができる。しかし、そうは言えても、水素ビジネス同士の競争が熾烈(しれつ)なものとなることに変わりはないし、競争に敗者はつきものだ。 「脱炭素」と一口にいうが、国家も、政府も、企業も、労働者もそれぞれの立場でこの大変革の時代を迎えようとしている。地球温暖化のもたらす惨害(さんがい)を思えば、脱炭素化を避けては通れない。しかし、脱炭素で職と所得を失う人たちも出てくるだろう。その人たちの生活をどう保障するか、その一事だけに限っても、社会そして政治に課せられるコストの重さは想像を超える。

《雑記録》20 米中新冷戦か?

【コラム・瀧田薫】「米中新冷戦」という言葉がある。最近の米中関係を旧冷戦(米ソ)になぞらえているのだが、この言葉の発信源はトランプ政権で働いていた外交・軍事専門家である。 1990年代、旧冷戦がソ連の崩壊という形で終焉(しゅうえん)したとき、この人たちの先輩たちと軍需企業の関係者が「目標」を失い、ポストを失うのではないかと恐れた。そこで「テロとの闘い」という新看板を掲げてみたが、地政学的な政策目標としてはスケール不足で、軍事・外交関連予算の前年度実績を確保できそうにない。つまり、彼らはソ連という仮想敵国を失うことで、自らの存在の意義が揺らぐ、そんな事態に直面したのである。 しかし、ちょうどそのころから中国が台頭してくる。彼らからすると、それこそ「好機到来」であったに違いない。その後、トランプ氏がこの状況を大統領選挙の争点づくりに利用する。「強いアメリカ」と「強敵中国」を対峙(たいじ)させ、選挙民の危機感と対抗心をあおり、それを自らへの支持につなげてみせたのである。 筆者は、自由主義諸国(米国、EU、日本)にとって「中国は脅威ではない」などと言いたいのではない。米国であれ、中国であれ、国家というものには、仮想敵国の存在を前提として国家戦略を策定する専門機関が存在する。そして、歴史上、こうした機関が自らの存在を自己目的化し、仮想敵を求めて策動したケースが少なくない。 最近目にする「新冷戦」という言葉も、それが誰によって、また何を目的として発せられているか、よくよく吟味しなければならぬゆえんである。 バイデン政権の「戦略的忍耐」とは?

《雑記録》19 日米とも「賢い政府」出でよ!

【コラム・瀧田薫】19世紀初頭、フランスのジョゼフ・ド・メーストル伯爵は「いかなる民も、その器量にふさわしい指導者しか持てない」という言葉を残し、思想史上の人物となった。新しい1年、コロナ禍との闘いが続くなかで、政治に期待する以外に個々人にできることがあるとすれば、手洗いとマスクぐらいだろうか。しかし、メーストルの言葉をかみしめれば、問題の解決を政治家任せにはできない。せめて、あるべき政治を考え続ける1年にしたいと思う。 最近、アメリカの政治学者の間で「必要なのは大きな政府や小さな政府ではなく、賢い政府だ」と言われるようになった。その含意は、「大きな政府と小さな政府を時宜に照らして使い別ける智恵」がほしいということのようだ。 こうした見解が出てくる背景に、アメリカ民主主義の制度疲労があることは言をまたない。「アメリカ国民を真二つにした政治的分断と分裂」。これは一義的にはトランプ大統領のもたらしたものだが、共和党の少なからぬ下院議員が同大統領の「不正選挙をやり直せ」という主張に同調している事実が示すように、政治家個々の資質の劣化も深刻なレベルにある。 トランプは嫌だからバイデンに? さて、バイデン次期大統領だが、賢い政府を目指していることは見て取れる。しかし、政治的環境、経済状況、国際関係(対中国、対ロシア、対中東、その他)など重要課題が山積し、しかもそれらが絡まり合って解決の糸口を見つけることすら難しい状況にある。 彼の支持票の多くは、「トランプは嫌だからバイデンに」という、いわば消去法によるものとの見方が強い。新政権の常道として、成果がすぐ出そうな課題から取り組みたいところだが、今回ばかりはコロナ対策を最優先しなければならず、しかも短期間のうちに成果を上げねばならない。それができないと、バイデン支持者の期待は一転して失望に変わり、トランプ大統領支持者の新政権攻撃は激化する。

《雑記録》18 バイデン次期大統領 前途に嵐の予感

【コラム・瀧田薫】アメリカ市場で「ダウ平均株価」が初めて3万ドル台に乗った。トランプ大統領による「バイデンが勝利すれば株価は暴落する」とのご託宣は大外れで、自称・ビジネスの天才としては赤っ恥もいいところだ。 しかし、この未曾有(みぞう)の株高はバイデン氏の勝利に直接結びつくものではない。コロナウィルスの恐怖に凍りついた経済を支えるため、アメリカをはじめとする主要国が総額10兆ドル(1000兆円 未曾有の規模 日経・11月25日付)を超える財政支出に動いたこと、それが株高をもたらした最大の要因だろう。 ワクチン開発への期待も多少は後押ししたかもしれないが、ウィルスの跳梁(ちょうりょう)が続く限り、財政拡大や金融緩和政策が続くはずだという期待(人命にかかわる政策には誰も反対できない)の方が大きいだろう。また、コロナ禍が勝ち組企業と負け組企業を鮮明に色分けした結果、「買いと売り」の判断に迷いがなくなったことも株高につながっただろう。 しかし、この株高は一時のにぎわいでしかない。膨張する国家債務、実態経済というアンカーを持たない緩和マネーが暴走し始めたら、そのとんでもないツケが回っていく先は、富裕層ではなく、株を買いたくても買えない大方の国民の方である。 コロナ禍は、勝ち組企業と負け組企業を分けただけではない。キャピタルゲインを積み上げる富裕層とひたすら真面目に働くしかない人々との間に、巨大な「格差と分断」をもたらしつつある。 民主党 上院で過半数失う可能性も

《雑記録》17 3匹の子豚の物語 理想の戸建ては? 

【コラム・瀧田薫】長男ブーは藁(わら)の家、次男のフーは木の家、末っ子のウーは煉瓦(れんが)の家をそれぞれ建てたそうだ。ある日、オオカミがやってきて、3匹は家に逃げ込んだが、頑丈な家に隠れたウーだけが助かった。 このお話、原作はイギリスの民間伝承らしいが、いろいろ変更が加えられ世界中に広まったようだ。賢いウーだけが助かる結末はどこでも同じだが、家の材料は国によって違う。まあ、そうでしょうね。地震の多い所で煉瓦の家がベストとも思えませんからね。 ところで、もし今の日本にウーがいたとしたら、どんな家を建てるでしょうか。賢いウーですから、地震や台風に備えて、基礎や構造のしっかりした家にするはずです。でも、お金持ちではないし、子どもの教育費も考えて、新築は諦めるかもしれません。 日本には空き屋が846万戸(2018年総務省統計)もあります。「質の良い中古の木造住宅」を探し出すことは可能でしょう。ウーであれば、それを上手にリフォームして、新築よりはるかに安いコストで、楽しく、豊かな暮らしを手に入れるのではないでしょうか。 住宅投資累計を下回る住宅資産 ところで、2013(平成25)年、国土交通省の肝いりで、「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」が立ち上げられ、同年、研究会提言が発表されました。提言の中身は現状認識と対策の二つに分かれています。

《雑記録》16 トランプ夫妻コロナ感染 米大統領選挙情勢

【コラム・瀧田薫】10月2日、アメリカ大統領トランプ氏夫妻が新型コロナウィルスに感染したとの速報が世界中を駆け巡った。11月3日の投票日まで約1カ月となったこの時点で、米国内外で懸念されていたことが実際に起きてしまった。とにかく、前代未聞の事態である。 これに、アメリカの政府、政界、経済界、マスコミはどう対応するか、アメリカ社会全体にどのような影響が及ぶか、さらに諸外国や国際機関がどう反応するか―しばらく様子を見てみないと、なんとも言えない。しかし、どのみち大混乱は必至だ。 4年前、2016年の大統領選挙にロシアがサイバー攻撃を仕掛けて不法介入したことについては周知の事実だが、今回はロシアだけでなく中国も選挙介入の絶好の機会と考えているだろう。 ワシントン発ロイター(8月7日)によれば、米国家防諜安全保障センターのW・エバニナ長官は、ロシア、中国、イランがそれぞれオンライン上での偽情報拡散などを通じて投票行動に影響を与え、民主的プロセスに対する信頼を失墜させたり、選挙データの改ざんなどによって、米選挙制度をかく乱する恐れがあると警告している。 なお、ロシアは、前回選挙と同様、トランプ大統領を支援し、バイデン候補の評判を落とす動きをしているといい、中国はトランプの再選を望んでおらず、米政策に影響を与えることを狙いとしているという。 「分断」された現在のアメリカ社会

《雑記録》15 安倍長期政権 ついに限界辞任

【コラム・瀧田薫】8月28日、安倍晋三首相が辞任の意向を表明した。第2次内閣発足(2012年12月26日)以降、首相在任日数は2800日を超えており、難病を抱えながら激務をこなしてきた首相の自己管理能力には敬服するが、それも限界にきたということだろう。自民党総裁の任期はまだ残り1年あるが、政治空白をつくるわけにはいかない。後任選びを急がねばなるまい。 辞任表明を受け、「突然のことで驚いている」とコメントする有力議員がほとんどだが、後釜首相候補者は活発に動きだしているし、新聞紙上でも「安倍長期政権の総括」が始まっている。 たとえば、政治学者・細谷雄一氏(8月25日付朝日新聞)は、「安倍首相の思想信条(戦後レジーム=戦後体制からの脱却)は、多くの国民の意識とはかけ離れていた。それが、第1次政権が短命に終った理由だ」とし、さらに「第2次安倍政権は先の失敗を教訓として、アベノミクス(実利の経済政策)を前面に押し出すと同時に集団的自衛権行使の一部容認に代表される保守重視のイメージ戦略を組み合わせた、この絶妙なバランス感覚が安倍長期政権を支えた」と指摘している。 安倍首相からすれば、レームダック(政治的影響力を失い、政権末期を指摘される首相や大統領)扱いをされることは不愉快なことだろう。しかし、もっと不愉快なのは「戦後体制からの脱却」が事実上失敗に終わったと指摘されたことだろう。 教育基本法の改正や集団的自衛権行使の一部容認など、一定の成果はあったとする与党内の見方もあるが、「この国を安倍首相の考える本道に戻す」という究極の目標からすれば、満足できる成果ではない。結局、安倍首相は、志半ばにして、失意のうちに第一線を退くこととなった。 トランプ依存外交は幕引き

《雑記録》14 「イージス・アショア」中止と新安保戦略

【コラム・瀧田薫】2020年6月15日、河野太郎防衛相はイージス・アショアの配備計画停止を発表し、安倍首相もこれを追認した。2017年に導入が閣議決定され、配置候補地(秋田県と山口県)の了承を求めて交渉中だったものが突然の中止である。与党内では、事前の通告がなかったことへの不満もあって、異論・反論が噴出した。安倍首相もこれを無視出来ず、「この夏、国家安全保障会議(NSC)で議論し、日本の安全保障戦略の新しい方向を打ち出す」との考えを表明した。これを受け、現在、与党内でにわかに防衛論議が盛り上がっている。 7月末、首相の肝いりで新設された検討チームが、ミサイル防衛に関する政府への提言案をまとめたが、最終的な結論の中身について確たる見通しはない。ただ、今後の議論をリードする4人のキーパースンを示すことはできる。すなわち、安倍首相、河野防衛相、岩屋毅前防衛相、そして小野寺五典前々防衛相(新設された検討会議・座長に就任)の4者である。 安倍首相は、イージス・アショアを北朝鮮ミサイルへの備えとして国民に説明し、同時にトランプ米大統領からの圧力(バイ・アメリカン)に応える一石二鳥の良策と考えていた。しかし、この計画には大きな欠陥があった。候補地の指定を受けた自治体から、ロケットのブースターが居住区に落下する可能性を指摘されたのに対し、防衛省はコンピューターで操作するので安全だと説明していた。 ところが、5月下旬、アメリカの製造元から、ブースターの落下位置を制御するため大規模改修が必要との情報が防衛省に伝えられた。この情報を聞いた河野防衛相は、以前からイージス・アショアの兵器としての性能やコストに疑念を抱いていたこともあって、即座に計画の中止を決断、安倍首相の説得に向かった。 転んでもただでは起きない安倍首相 首相は当然難色を示したが、政治的環境が悪過ぎた。相次ぐ不手際で秋田への配備を断念したばかりであり、党内の複数の不祥事、コロナウイルス、大雨被害、経済の落ち込みまであるなかで、地元選挙区民の安全を無視することはさすがにできなかったようだ。しかし、転んでもただでは起きない。計画中止の見返りとして、安全保障戦略の新方向を探る検討チームを立ち上げた。

《雑記録》13 アメリカ大統領選挙・雑感

【コラム・瀧田薫】2013年1月、再選されたオバマ大統領は2度目の就任式に臨み、リンカーン大統領と公民権運動の指導者キング牧師が愛用した聖書に手を置いて就任の宣誓をした。このパフォーマンスにこめられた政治的意図は、アメリカ建国以来の宿痾(しゅくあ)である人種差別を解消し、分断された社会に調和と協調をもたらすことにあった。しかし、不幸なことに、アメリカ初の黒人大統領の願いは実らず、トランプ大統領の登場以降、アメリカ社会の分断はむしろ拡大の一途を辿(たど)っている。 今年11月、トランプ大統領は再選をめざして民主党候補バイデン氏とたたかう。現時点(7月2日)で、大方の専門家の予想はバイデン氏有利としているが、前回選挙同様、予断を許さない。それはさておき、ここまでの選挙運動を通じて目立った動きは、オバマ氏が前職大統領としては異例なほどにバイデン氏に肩入れし、支援する姿勢を見せていることだ。トランプ氏が再選されれば、アメリカ建国以来の理想(自由、民主主義、人権など)の崩壊につながるとの危機感が彼の背中を押しているに違いない。 2020年5月25日、米中西部ミネソタ州ミネアポリスで、白人警官が黒人男性の首を膝で押さえ続けて死亡させる事件が起きた。この映像がネットを通じて拡散されると、全米各地で人種差別に抗議するデモが発生し、時間の経過とともに、デモは人種差別に対する抗議の域を超えて、米国社会に残る「構造的な差別」の根絶を訴える運動へと展開しつつある。黒人奴隷制度と先住民からの収奪のうえに繁栄を遂げた米国の歴史そのものを見つめ直す議論も始まっている。 南北戦争のトラウマが大統領選に影響 一例をあげれば、南部ミシシッピ州議会(上下院ともに共和党が多数を占める)は、南北戦争(1861年)で南軍が使用した旗をあしらった州旗を廃止する法案を圧倒的な多数で可決した。アメリカの全州の旗から南軍旗のデザインは消え去ることになる。アメリカで、何かが動き始めたようだ。 筆者は、過去何回かの米国大統領選挙について、毎回同じ仮説上に立って分析を試みてきた。すなわち、「南北戦争」(同じ国民同士が殺し合った記憶)のトラウマが大統領選挙の結果に影響を及ぼすのだが、その影響の出方(強弱)は選挙ごとに異なるという仮説である。例えば、オバマ氏の選挙の時よりもトランプ氏の選挙の時に「分断国家」のトラウマはより強く出た。分析の手法としては実に単純で、南軍に参加した州と北軍に参加した州それぞれにおける投票行動(誰に投票したか)を比較する。

《雑記録》12 「壺から金平糖」 日本経済はどうなる?

【コラム・瀧田薫】壺から金平糖(こんぺいとう)を取り出そうとして、手が抜けなくなって困った話。最近、この話をよく思い出す。 筆者の記憶では、主人公は名代の因業爺(いんごうじじい)。村の寄り合いで壺に入った金平糖を振る舞われ、壺に手を入れると、どうしたものか手が抜けない。引っ張りだそうと血管が膨れあがるほど頑張ってみるが、抜けない。最初は大笑いしていた周囲の衆も、だんだん心配になり、壺を押したり引いたり、ああしろ、こうしろと指図もしてみるが、壺はびくともしない。とうとう、爺様は泣き出す始末。 見かねた家の主、大事な壺だが爺様の手にはかえられぬと、煙管(きせる)で壺を叩き割ると、金平糖をぎっちり握りしめた爺様の大きな拳が出てきた。話はそこまでで、この話をどう解釈するかは、それぞれに任されているようだ。 さて、昨夜(5月26日)のことだが、偶然、NHKスペシャル「苦境の世界経済・日本再建の道は」(再)を視聴した。番組に招かれたゲストは、経済再生担当大臣・西村康稔氏、コロンビア大学教授・伊藤隆敏氏、そして三菱経済研究センター長・武田洋子氏のお三方であった。 正直、三者の話は噛み合わず、特に西村氏は浮いていたが、筆者なりに番組の内容をまとめると、今後生き残る企業の条件として、①変化への対応力②AIの活用力③長期的ビジョンを備え、持続可能な企業たることに重きを置く経営方針が必要ということだった。 いわゆる新自由主義の影響で、企業経営が「株主の利益と短期利益の優先」に流れていたとの批判は目新しいものではないが、新型コロナウィルスの影響でこうした企業経営の見直し論が力を増してくることは十分考えられる。

《雑記録》11 「反グローバリズム」と「新グローバリズム」

【コラム・瀧田薫】「グローバリズム(経済や文化の国境越えや相互依存)」。この考え方を、河川にたとえて、「本流(立論前提)」と呼ぼう。この本流、少し前まで、流域の人々に豊かな恵みを与える大河として受け入れられていた。ところが、コロナウイルスの出現によって、大河は一転、暴れ川となり、その流域に甚大な被害をもたらした。 それ以前から、この大河には何本もの支流が存在していたのだが、ウイルスの出現を境に、本流は二股に分かれ、二つの巨大支流となって、それぞれ逆方向に流れ始めた。一方の支流の名を「反グローバリズム」、もう一方を「新グローバリズム」と呼ぶことにしよう。 「反グローバリズム」の例として、英国の「ブレグジット」をあげよう。英国内で沸騰したナショナリズムとポピュリズムの勢いも、ウイルスの攻撃で一時の勢いを失っている。もともと、EU(欧州連合)からの離脱による経済の落ち込みは避けられないと見られていたが、そこにウイルスという想定外の事態である。 しかし、いまさら後戻りは出来ない。他方、アメリカでは、トランプ大統領の再選に黄信号が灯った。ウイルスを軽視したことが彼の致命傷かも知れない。戦時の大統領を気取り、岩盤といわれる支持基盤をなんとかつなぎ止めようとしているが、アメリカ経済の落ち込みをどこまで回復させられるか、その勝負だろう。 コロナは将来の政治選択も迫る 他方、「新グローバリズム」の旗手一番手の中国は、ウイルスに対して情報管制を武器に闘おうとして手ひどい目に遭った。それに懲りて、権威主義を見直すかと思えば、むしろ独裁体制をさらに強化している。また、国内の生産体制に打撃を受けながら、途上国を対象とした大々的な人道支援に乗り出している。この外交姿勢が貫かれれば、中国の支援に期待している国々にとっては、好印象であろう。

Most Read

黄色のリュック型も選択可能に 土浦市 新1年生にランドセル贈呈

土浦市では、市立小学校や義務教育学校に入学する子どもたちのために、1976年から毎年、入学祝品としてランドセルを贈呈している。来年度から、従来の赤と黒のランドセルに、黄色のリュックサックタイプが加わり、3種類の中から選べるようになった。 従来の赤と黒のランドセルは人工皮革で、重さ約1キロであるのに対し、黄色のリュックサックタイプは850グラム。軽量化のニーズに応え、選択肢を増やした。 同市教育委員会学務課の担当者は「実際に背負い比べた子どもたちは軽いと言う。子どもにとって150グラムの差は大きいのではないか」と話す。 ファスナーを開いた状態のリュックサック=同 黄色のリュックサックタイプは、ポリエステル製。出し入れしやすいようにファスナーが大きく開き、教科書やノート類は、中のベルトで固定できる。 背中は汗をかいてもべたつきにくいメッシュ仕様。背負いひもにはランドセルと同様にフック(ナスカン)があり、防犯ブザーを付けることができる。

プライドと劣等感 《続・気軽にSOS》93

【コラム・浅井和幸】①周りを低く見る言動をする。②自分は素晴らしいという評価を周りに押し付ける。ちょっとでも悪く言うと怒りだして、①や②の言動で周りを攻撃してくる。程度の差はあれ、誰にでもある性質です。ささいなことならば、子どもっぽくてかわいいで済みますが、程度がひどく、繰り返す場合は、厄介な人で、できれば関わりたくない人ですね。 関わらずに済むのなら簡単な話ですが、それが家庭、教室、職場でいつも顔を合わす人だと大変。気を使いすぎて、抑うつ状態になって、相談室を訪れる人もいるぐらいです。 DV、児童虐待、いじめ、パワハラなど、「自分のことをきちんと評価してほしい」という願望の持ち主(加害者)によって、弱者が苦しめられるという構図がしばしばあります。 「自分のことをきちんと評価してほしい」という願望は、「周りの評価が気になる」という性質と、「自分は正当な評価を受けていない」という気持ちが強ければ強いほど、大きくなります。これらの性質は、つまりは劣等感だと言うことです。 パワハラ上司と付き合う方法 自分とパワハラ上司という関係で考えてみてください。「自信満々で、自分のことを責めてくる上司が、劣等感を持っているなんて信じられない。大きな声で怒鳴られて、縮こまって苦しんでいる自分の方が劣等感の塊だ」と考えますよね。

オンラインお見合い開始 いばらき出会いサポートセンター

少子化対策のカギは若者の未婚化・晩婚化対策にあるといわれる中、いばらき出会いサポートセンターは9月から、コロナ禍でもスマートフォンやパソコンでお見合いができる「オンラインお見合い」サービルを開始した。県外からも幅広く入会できるよう入会条件を緩和し会員の出会い強化に乗り出した。 同センターでは、すでに4月から新AIマッチングシステム(スマートフォン対応・AI診断機能搭載)の運用を開始し、男女の出会いと結婚を支援している。その結果、新規入会者数やお見合いの実施組数等が大幅に増加しているという。 AIマッチングシステムの特徴は、会員個人のスマートフォンやパソコンからお相手を検索したり、お見合いの申し込みが出来、価値観診断テストの結果からAIが相性の良い相手を紹介する。加えて9月からは、対面によるお見合いのほか、オンライン上でのお見合いが選択できるようになった。 入会の条件は、結婚を希望する人で、インターネットが利用できる人。 入会登録料(2年間有効)は県内在住か在勤、親が県内に在住か、あるいは県内への移住に関心がある人は1万1000円(消費税込み)。 9月からはこれらの条件以外の希望者も入会できるようになった。入会登録料は2万2000円(税込)。

コロナ禍での認知症 《くずかごの唄》94

【コラム・奥井登美子】 「コロナが心配で、心配で、朝まで眠れないんだ。睡眠薬5ミリではだめなので、今度10ミリにしてもらった」 近所に住むAさんが処方箋を持ってやってきた。ゾルビデム5ミリグラムが10ミリグラムなっている。この薬は向精神(こうせいしん)薬で、認知症を促進するデータがあるといわれている薬である。Aさんと高校時代からの同級生で仲良しのBさんに聞いてみた。 「このごろ、2人で散歩していないわね。けんかでもしたの?」 「けんかなんかしていないよ。けれど、A君このごろ、ちと、おかしい。いつもと同じ道を歩いているのに、違う道だ、なんて言うんだ」 「困るわね」