金曜日, 1月 28, 2022

瀧田薫

オリンピックと衆院選挙 《雑記録》26

【コラム・瀧田薫】古代オリンピックは、紀元前776年から紀元393年まで、1200年近くにわたって、ギリシアのオリンピアの地で行われた。この古代オリンピックと近代オリンピックとの違いは、古代オリンピックがゼウス神にささげる宗教的祭典だったことである。大会開催中、参加国は聖なる休戦(エケケイリア)を守り、オリンピアへの往還と神域における武力行使を堅く戒めた。 その結果、1200年間、戦争が原因で大会が中止されたことは一度もないという。一方、近代オリンピック120年の歴史には、2度の大戦による大会中止をはじめ、テロによる選手殺害事件(1972年)や、大国によるボイコットの応酬(1980年、1984年)があった。 西洋史学者の橋場弦(はしば・ゆずる)氏は「商業主義とグローバル資本の論理に翻弄される現代のオリンピックは、どこに向かうのか。金銭を超えた聖なる価値を、オリンピックが見失うことのないよう祈りたい」(UTokyo FOCUS 2020年4月)と述べている。 争点は財政政策(増税か減税)か? さて、衆議院議員選挙の日程だが、コロナの感染爆発中にオリンピック開催を強行した菅首相だけに、オリ・パラ会期中の選挙はないだろう。永田町では、パラリンピック後の9月6日に臨時国会を召集し、補正予算を通して、28日公示、10月10日投開票というスケジュールが有力視されている。ただし、これも「ワクチン接種」の進み具合で延期される可能性がある。

ロシアは中国に押しつぶされるのか 《雑記録》25

【コラム・瀧田薫】ソ連邦が崩壊(1991年)してから、今年で約30年が経過した。この間、ロシアは、自国の求心力を保とうと必死の努力を傾け、衰退と分裂の時代をなんとか乗り切ってきた。しかし成長と発展のトレンドはまだ見えてこない。「ロシアの現状は、外交面と軍事面では超大国であり続けているが、それ以外の領域では低開発国でしかない」というのが研究者大方のロシア評である。 ソ連崩壊前の1988年、ソ連経済は中国経済の約3倍の規模であった。しかし今日(2020年)のGDPは中国のそれの約10分の1でしかない。 6月11日、英国・コーンウォールで開かれた「2021年G7サミット」は、西側諸国が現在の中国とロシアをどう評価し、どう扱おうとしているか、検証する絶好の機会となった。今回会議の最重要テーマが「中国の覇権主義にどう対応するか」にあったことは明らかだ。ロシアについては、欧州諸国がその軍事的脅威に言及し、バイデン米大統領に認識を共有するよう要請したが、主要議題になることはなかった。 バイデン氏は、G7閉会後の6月16日、スイス・ジュネーブに立ち寄り、ロシアのプーチン大統領と首脳会談をもった。この会談はバイデン氏の方から持ち掛け、プーチン氏がその誘いに応じたものである。この流れからすれば、バイデン氏がロシアを重視しているかに見える。しかし、会談後の記者会見でバイデン氏が明らかにしたのは、「中国との覇権争いに勝つための一つの条件として、ロシアを重視する」との見解であった。 米ロ首脳ジュネーブ会談の読み方 バイデン氏は、対ロ関係において目指すのは対立の解消ではなく、対立を管理することだと言い、米国の優先事項と価値観の明確な説明ができれば、会談は成功だとも述べた。その上で「ロシアは中国に押しつぶされそうになっている」とのコメントで記者会見を締めくくった。明らかに、中露の連携にくさびを打ち込むための言葉である。

書評:ジョセフ・S・ナイ著『国家にモラルはあるか?』 《雑記録》24

【コラム・瀧田薫】この著作の原題は「DO MORALS MATTER ?」、直訳すれば「道徳も大切では?」です。書名の邦訳が本書の内容とはいささか「不適合」の印象です。「政治にモラルはあるか?」の方が、売れる本になるかどうかは別にして、タイトルとしてふさわしいでしょう。 さて、本の中身ですが、「アメリカの外交を通貫してきたモラリズム」について論じ、その上で「道義的な外交政策とは何か」を問います。本書の面白いところは、歴代米大統領(F.D.ルーズベルトからD.J.トランプまで)の外交について、「意図と動機」「手段」「結果」に分けて独自の方法で採点し成績評価したところです。 邦訳の監修をされた駒村圭吾慶大教授による、明晰(めいせき)にして含蓄に富む解説を引けば、「ナイの採点表の特徴は一刀両断の裁定ではなく、複合的視点を通じての総合評価」をしている点にあります。ただし、「試験の答案の体をなしていないものや、解答する気のないようなものについては容赦しない」ともあります。 確かに、まだご存命の前そして元大統領(どなたかは読んでいただきたい)が本書を読んでいるとすれば、さぞかしご立腹でしょう。 「グローバルコモンズ」を志向

100日目の米バイデン政権 《雑記録》23

【コラム・瀧田薫】バイデン米大統領は、就任99日目の4月28日、上下両院合同会議で就任後初の議会演説に臨んだ。これは異例の遅さである。しかし、演説は、この短期間内に上げた成果を自画自賛し、さらなる目標の迅速な達成を予告する、自信にあふれたものであった。 バイデン氏が大統領選に勝利した直後、新政権の先行きを危ぶむ声が専門家の間で大勢を占めていた。しかし、100日目現在、新政権への評価は総じて高い。バイデン政権4月時点の支持率は59%(ピュー・リサーチ・センター)と、歴代大統領と比較すると高い方には入らない。しかし、トランプ氏の39%を大きく上回った。トランプ政権末期にあらわになった米社会の分断、分裂現象が依然として吹き荒れている中にしては上出来と言えよう。 さて、演説について筆者が注目するのは、バイデン氏が「世界に背を向けた前政権の姿勢とは決別し、同盟国との国際協調路線をとる」とし、同時に、「国外でのあらゆる活動は、米国の労働者(中間層)を念頭に置いて行う。外交と国内政策の間に、もはや鮮明な線引きはない」と宣言した部分である。 実は、この宣言は、数年前に発表された「報告書」が下敷きになっている。ヒラリー・クリントン氏が2016年の大統領選でトランプ氏に敗北した後、バイデン氏が主導して敗因を分析し、「中間層のための外交政策の見直し」と題する報告書を発表。それには、「外交エリートが支配する外交政策を国民の利益の観点から見直し、衰退する中間層に対する配慮を盛り込む」ことが強調されていた。 中間層のための外交政策の見直し つまり、バイデン氏は、中間層支援策(国内政策)と外交政策を一つに組み込んだ政策パッケージを早くから用意し、大統領就任と同時に満を持して打ち出したのである。

書評「人新世の資本論」《雑記録》22

【コラム・瀧田薫】斎藤幸平氏著の本書の核心は、旧来のマルクス理解を根底から覆し、エコロジーの視点からマルクスを解釈し直し、そこからさらに進めて、「人新世」(人類の経済活動が地球を破壊する環境危機の時代)を克服する方途、さらには豊かな未来社会に至るための実践論(「脱成長コミュニズム論」)を引き出したことにある。 読後感を一言でいえば、「宮沢賢治にこそ読んでもらいたかった1冊」であるということだ。宮沢と斎藤には時空を超えて共通する一つの思いがある。 すなわち、資本主義が追求する効率、利潤、経済成長を、環境破壊、労働疎外(個人は経済活動を担う歯車と化す)そしてコモン(共同体や共有財)解体の原因であると断じ、格差や生きづらさを生む資本主義社会から脱して、豊かな人間らしい生活と環境を求めようとする、その一点において両者は同じプラットフォーム上にある。 もちろん本書の狙いは、都市の生活や最新テクノロジーを捨てて農耕共同体社会に戻ることではない。21世紀の現実と向き合い、環境危機を克服し、「持続可能で公正な社会」を実現するための唯一の選択肢として、「脱成長コミュニズム」が提唱されているのである。そのことを確認した上で、宮沢の思想を本書読解のための補助線とする方法、その有効性を指摘したいと思う。 「人間と環境」に関する新しい知見 本書に対する批判の代表的な例は、「脱成長を標榜(ひょうぼう)する文明に繁栄などあり得ない」とする主張であろう。それに対する斎藤の反論については、本書を読んでいただくとして、それとの関連で、宮沢における「定常状態」(経済成長のない均衡状態)理解について簡単に触れておきたい。

《雑記録》21 水素カーが走る近未来社会

【コラム・瀧田薫】クルマの点検でディーラーに出向くと、トヨタの水素カー(MIRAI)が展示されていた。お値段を尋ねると、「ハイエンド車で800万超です。茨城県には2台しかありません」とのこと。豪華なパンフには「酸素と水素の化学反応によって電気をつくり、きれいな空気と水だけを排出するこの究極のエコカーとも呼べるモビリティは、環境性能の高さに加え、より多くの人々に愛される、魅力的な一台を目指して開発されました」と書いてあった。しばし、水素カーが走り回る近未来の社会に思いをはせた。 現在、日本国内で二つの水素エネルギー開発プロジェクトが動きだしている。一つは、川崎重工業を中心とする企業グループで、豪州政府より補助を受け、豪州産の褐炭(かったん)から水素を製造して日本に運搬する実証実験を進めている。もう一つは、千代田化工建設が中心のグループで、ブルネイで産出される天然ガスから水素を製造し、これを液化して日本へ輸送する。つまり、どちらもそれぞれの当該国と日本との間に水素エネルギーのサプライチェーンを構築する狙いであることは共通している。 水素エネルギーの商用化を目指す上で、最大のネックはコストの問題だ。国際金融情報センター理事長・玉木林太郎氏は「投資家や企業にとって、気候変動は倫理や責任の問題ではない。損か得かの問題だ。長期の戦略を立てて脱炭素に対応していかなければ生き残れない」(日経、2020年12月14日付)と言い、さらに「脱炭素のビジネスがペイするかどうか見定めるには、CO2排出をコストとして扱う「カーボン・プライシングが不可欠だ」と指摘している。 中東石油シーライン→日豪水素供給チェーン? つまり、政府が炭素税を導入し、あらかじめ年次を定めていくら増税していくか決めておく方式である。そうなれば、水素ビジネスの側で、水素がいつごろ化石燃料に対して比較優位に立ち利益を出せるか予想ができるし、開発上の不確定要素を減らすことができる。しかし、そうは言えても、水素ビジネス同士の競争が熾烈(しれつ)なものとなることに変わりはないし、競争に敗者はつきものだ。 「脱炭素」と一口にいうが、国家も、政府も、企業も、労働者もそれぞれの立場でこの大変革の時代を迎えようとしている。地球温暖化のもたらす惨害(さんがい)を思えば、脱炭素化を避けては通れない。しかし、脱炭素で職と所得を失う人たちも出てくるだろう。その人たちの生活をどう保障するか、その一事だけに限っても、社会そして政治に課せられるコストの重さは想像を超える。

《雑記録》20 米中新冷戦か?

【コラム・瀧田薫】「米中新冷戦」という言葉がある。最近の米中関係を旧冷戦(米ソ)になぞらえているのだが、この言葉の発信源はトランプ政権で働いていた外交・軍事専門家である。 1990年代、旧冷戦がソ連の崩壊という形で終焉(しゅうえん)したとき、この人たちの先輩たちと軍需企業の関係者が「目標」を失い、ポストを失うのではないかと恐れた。そこで「テロとの闘い」という新看板を掲げてみたが、地政学的な政策目標としてはスケール不足で、軍事・外交関連予算の前年度実績を確保できそうにない。つまり、彼らはソ連という仮想敵国を失うことで、自らの存在の意義が揺らぐ、そんな事態に直面したのである。 しかし、ちょうどそのころから中国が台頭してくる。彼らからすると、それこそ「好機到来」であったに違いない。その後、トランプ氏がこの状況を大統領選挙の争点づくりに利用する。「強いアメリカ」と「強敵中国」を対峙(たいじ)させ、選挙民の危機感と対抗心をあおり、それを自らへの支持につなげてみせたのである。 筆者は、自由主義諸国(米国、EU、日本)にとって「中国は脅威ではない」などと言いたいのではない。米国であれ、中国であれ、国家というものには、仮想敵国の存在を前提として国家戦略を策定する専門機関が存在する。そして、歴史上、こうした機関が自らの存在を自己目的化し、仮想敵を求めて策動したケースが少なくない。 最近目にする「新冷戦」という言葉も、それが誰によって、また何を目的として発せられているか、よくよく吟味しなければならぬゆえんである。 バイデン政権の「戦略的忍耐」とは?

《雑記録》19 日米とも「賢い政府」出でよ!

【コラム・瀧田薫】19世紀初頭、フランスのジョゼフ・ド・メーストル伯爵は「いかなる民も、その器量にふさわしい指導者しか持てない」という言葉を残し、思想史上の人物となった。新しい1年、コロナ禍との闘いが続くなかで、政治に期待する以外に個々人にできることがあるとすれば、手洗いとマスクぐらいだろうか。しかし、メーストルの言葉をかみしめれば、問題の解決を政治家任せにはできない。せめて、あるべき政治を考え続ける1年にしたいと思う。 最近、アメリカの政治学者の間で「必要なのは大きな政府や小さな政府ではなく、賢い政府だ」と言われるようになった。その含意は、「大きな政府と小さな政府を時宜に照らして使い別ける智恵」がほしいということのようだ。 こうした見解が出てくる背景に、アメリカ民主主義の制度疲労があることは言をまたない。「アメリカ国民を真二つにした政治的分断と分裂」。これは一義的にはトランプ大統領のもたらしたものだが、共和党の少なからぬ下院議員が同大統領の「不正選挙をやり直せ」という主張に同調している事実が示すように、政治家個々の資質の劣化も深刻なレベルにある。 トランプは嫌だからバイデンに? さて、バイデン次期大統領だが、賢い政府を目指していることは見て取れる。しかし、政治的環境、経済状況、国際関係(対中国、対ロシア、対中東、その他)など重要課題が山積し、しかもそれらが絡まり合って解決の糸口を見つけることすら難しい状況にある。 彼の支持票の多くは、「トランプは嫌だからバイデンに」という、いわば消去法によるものとの見方が強い。新政権の常道として、成果がすぐ出そうな課題から取り組みたいところだが、今回ばかりはコロナ対策を最優先しなければならず、しかも短期間のうちに成果を上げねばならない。それができないと、バイデン支持者の期待は一転して失望に変わり、トランプ大統領支持者の新政権攻撃は激化する。

《雑記録》18 バイデン次期大統領 前途に嵐の予感

【コラム・瀧田薫】アメリカ市場で「ダウ平均株価」が初めて3万ドル台に乗った。トランプ大統領による「バイデンが勝利すれば株価は暴落する」とのご託宣は大外れで、自称・ビジネスの天才としては赤っ恥もいいところだ。 しかし、この未曾有(みぞう)の株高はバイデン氏の勝利に直接結びつくものではない。コロナウィルスの恐怖に凍りついた経済を支えるため、アメリカをはじめとする主要国が総額10兆ドル(1000兆円 未曾有の規模 日経・11月25日付)を超える財政支出に動いたこと、それが株高をもたらした最大の要因だろう。 ワクチン開発への期待も多少は後押ししたかもしれないが、ウィルスの跳梁(ちょうりょう)が続く限り、財政拡大や金融緩和政策が続くはずだという期待(人命にかかわる政策には誰も反対できない)の方が大きいだろう。また、コロナ禍が勝ち組企業と負け組企業を鮮明に色分けした結果、「買いと売り」の判断に迷いがなくなったことも株高につながっただろう。 しかし、この株高は一時のにぎわいでしかない。膨張する国家債務、実態経済というアンカーを持たない緩和マネーが暴走し始めたら、そのとんでもないツケが回っていく先は、富裕層ではなく、株を買いたくても買えない大方の国民の方である。 コロナ禍は、勝ち組企業と負け組企業を分けただけではない。キャピタルゲインを積み上げる富裕層とひたすら真面目に働くしかない人々との間に、巨大な「格差と分断」をもたらしつつある。 民主党 上院で過半数失う可能性も

《雑記録》17 3匹の子豚の物語 理想の戸建ては? 

【コラム・瀧田薫】長男ブーは藁(わら)の家、次男のフーは木の家、末っ子のウーは煉瓦(れんが)の家をそれぞれ建てたそうだ。ある日、オオカミがやってきて、3匹は家に逃げ込んだが、頑丈な家に隠れたウーだけが助かった。 このお話、原作はイギリスの民間伝承らしいが、いろいろ変更が加えられ世界中に広まったようだ。賢いウーだけが助かる結末はどこでも同じだが、家の材料は国によって違う。まあ、そうでしょうね。地震の多い所で煉瓦の家がベストとも思えませんからね。 ところで、もし今の日本にウーがいたとしたら、どんな家を建てるでしょうか。賢いウーですから、地震や台風に備えて、基礎や構造のしっかりした家にするはずです。でも、お金持ちではないし、子どもの教育費も考えて、新築は諦めるかもしれません。 日本には空き屋が846万戸(2018年総務省統計)もあります。「質の良い中古の木造住宅」を探し出すことは可能でしょう。ウーであれば、それを上手にリフォームして、新築よりはるかに安いコストで、楽しく、豊かな暮らしを手に入れるのではないでしょうか。 住宅投資累計を下回る住宅資産 ところで、2013(平成25)年、国土交通省の肝いりで、「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」が立ち上げられ、同年、研究会提言が発表されました。提言の中身は現状認識と対策の二つに分かれています。

《雑記録》16 トランプ夫妻コロナ感染 米大統領選挙情勢

【コラム・瀧田薫】10月2日、アメリカ大統領トランプ氏夫妻が新型コロナウィルスに感染したとの速報が世界中を駆け巡った。11月3日の投票日まで約1カ月となったこの時点で、米国内外で懸念されていたことが実際に起きてしまった。とにかく、前代未聞の事態である。 これに、アメリカの政府、政界、経済界、マスコミはどう対応するか、アメリカ社会全体にどのような影響が及ぶか、さらに諸外国や国際機関がどう反応するか―しばらく様子を見てみないと、なんとも言えない。しかし、どのみち大混乱は必至だ。 4年前、2016年の大統領選挙にロシアがサイバー攻撃を仕掛けて不法介入したことについては周知の事実だが、今回はロシアだけでなく中国も選挙介入の絶好の機会と考えているだろう。 ワシントン発ロイター(8月7日)によれば、米国家防諜安全保障センターのW・エバニナ長官は、ロシア、中国、イランがそれぞれオンライン上での偽情報拡散などを通じて投票行動に影響を与え、民主的プロセスに対する信頼を失墜させたり、選挙データの改ざんなどによって、米選挙制度をかく乱する恐れがあると警告している。 なお、ロシアは、前回選挙と同様、トランプ大統領を支援し、バイデン候補の評判を落とす動きをしているといい、中国はトランプの再選を望んでおらず、米政策に影響を与えることを狙いとしているという。 「分断」された現在のアメリカ社会

《雑記録》15 安倍長期政権 ついに限界辞任

【コラム・瀧田薫】8月28日、安倍晋三首相が辞任の意向を表明した。第2次内閣発足(2012年12月26日)以降、首相在任日数は2800日を超えており、難病を抱えながら激務をこなしてきた首相の自己管理能力には敬服するが、それも限界にきたということだろう。自民党総裁の任期はまだ残り1年あるが、政治空白をつくるわけにはいかない。後任選びを急がねばなるまい。 辞任表明を受け、「突然のことで驚いている」とコメントする有力議員がほとんどだが、後釜首相候補者は活発に動きだしているし、新聞紙上でも「安倍長期政権の総括」が始まっている。 たとえば、政治学者・細谷雄一氏(8月25日付朝日新聞)は、「安倍首相の思想信条(戦後レジーム=戦後体制からの脱却)は、多くの国民の意識とはかけ離れていた。それが、第1次政権が短命に終った理由だ」とし、さらに「第2次安倍政権は先の失敗を教訓として、アベノミクス(実利の経済政策)を前面に押し出すと同時に集団的自衛権行使の一部容認に代表される保守重視のイメージ戦略を組み合わせた、この絶妙なバランス感覚が安倍長期政権を支えた」と指摘している。 安倍首相からすれば、レームダック(政治的影響力を失い、政権末期を指摘される首相や大統領)扱いをされることは不愉快なことだろう。しかし、もっと不愉快なのは「戦後体制からの脱却」が事実上失敗に終わったと指摘されたことだろう。 教育基本法の改正や集団的自衛権行使の一部容認など、一定の成果はあったとする与党内の見方もあるが、「この国を安倍首相の考える本道に戻す」という究極の目標からすれば、満足できる成果ではない。結局、安倍首相は、志半ばにして、失意のうちに第一線を退くこととなった。 トランプ依存外交は幕引き

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高田保の「ブラリひょうたん」 《ひょうたんの眼》44

【コラム・高橋恵一】高田保は、土浦出身の劇作家、映画監督、舞台演出家、随筆家である。旧土浦町の旧家に生まれ、子供のころから気遣いができて話も面白く、同級の者以外とも交流するなど、人望が厚かったそうだ。 旧制土浦中学(現在の土浦一高)を経て早稲田大学の英文科に進み、頻繁に銀座に現れるなど生活を謳歌(おうか)したという。中学の入学試験はトップだったが、2位には阿見町出身の下村千秋がおり、その後、2人とも文筆の道に進んだ。 保は、大学在学中から新劇運動に参加。戯曲に取り組んだり、劇団の脚色、演出、小説の執筆など、幅広い分野で活動。人柄もあって幅広い付き合いがあった。 東京日日新聞(現・毎日新聞)の学芸部長だった阿部真之助から、菊池寛を顧問とした学芸部社友に、大宅壮一、横光利一,吉屋信子らとともに招かれ、活躍。彼らの文章を評して、「マクラの阿部真之助、サワリの大宅壮一、オチの高田保」と言われたこともあるという。 戦時中から体調を壊し、大磯(神奈川)に住まいを移し、晩年は、同じ大磯の志賀直哉の旧居に住んだ。 戦後、1951年の12月から、東京日日に、1日1文「あとさき雑話」を書き始め、新年からは表題を「ブラリひょうたん」に改めた。なぜ、ブラリなのか? なぜ、ひょうたんなのか?...

内臓脂肪に機能性成分 農研機構開発ミールセット、3月発売へ

超高齢社会に向け、健康維持に配慮した食事を摂ってもらいたいと農研機構(NARO、つくば市)の設計したミールセットが近く、売り出される。26日、お披露目されたのは「NARO Style PLUS(ナロスタイルプラス)」。特に内臓脂肪の低減が期待される献立になっている。 ミールセットは50%もち麦ごはん、おかず4種類、緑茶粉末から構成される。β-グルカンを含むもち麦「キラリモチ」、カテキン豊富なお茶「べにふうき」など機能性成分を盛り込んで10メニューを用意した。 機能性表示食品制度の始まった2015年から、農研機構はその科学的根拠を確認する研究を推進してきた。陣頭指揮に当たったのが食品研究部門の山本万里エグゼクティブリサーチャーで、機能性成分を多く含む農産物を使用した弁当メニューの「NARO Style」を設計。18年からは肥満傾向にある被験者を対象にヒト介入試験を行い、平日の日中1食を一定期間継続して食べることで、内臓脂肪面積の減少が認められたと報告した。特に女性がもち⻨ごはんを摂取すると、他の機能性農産物より顕著に内臓脂肪が低下した結果が得られたという。 ヒト介入試験(2017)の結果 試験開始内臓脂肪面積が100〜127㎠の被験者や女性被験者が50%もち麦ごはんを摂取すると、他の機能性農産物群より顕著に内臓脂肪面積が低下した=農研機構提供 今回の「- PLUS」は製造、販売にフローウィング(本社・兵庫県姫路市)の参画を得て、量産体制を整えた。献立は、おかずを弁当の3種類から4種類に増やした。酢鶏などをメーンに豆類を素材とした副菜を追加している。管理栄養士によれば、10メニュー平均で1食当たり584キロカロリー、たんぱく質28グラム、脂質17グラムと栄養バランスを整えた。食塩相当量は1.35グラム、通常販売されているお弁当の約2.5グラムと比べ大幅な低塩分を実現した。

関東にも降灰の影響 巨大噴火火砕流の分布図公開 産総研

南太平洋の島国、トンガで起きた海底火山の噴火で津波が日本まで押し寄せ、大規模噴火の影響が広範囲に及ぶことを示した。日本には過去10万年でトンガの噴火の100~10000倍もの爆発を起こした火山が数多く存在する。それらの巨大噴火により火砕流がどれくらい広がったのかを示す図が「大規模火砕流分布図」として産総研活断層・火山研究部門(つくば市東)からシリーズで刊行されることになり、第1号として約3万年前の姶良(あいら)カルデラ(鹿児島)の巨大噴火により噴出した入戸(いと)火砕流の分布図が25日に公開された。 姶良カルデラの巨大噴火は火山爆発指数7で、トンガの噴火の約100倍(体積比)も大きかった(上図)。シリーズ刊行に当たり新たなボーリング試料や海底での火砕流分布のシミュレーション結果も検討した結果、入戸火砕流と火山灰の総噴出量800〜900立方キロメートルであることが明らかとなった。これは従来の推定値より約1.5倍大きい。図幅では火砕流に伴う降灰分布も示しており、関東地方では10センチ程度積もったと推定されている。 関東地方では姶良カルデラ以外にも、巨大噴火による火山灰が積もっている(下図)。 関東地方に降灰をもたらした噴火と推定降下範囲。ピンク色が入戸火砕流にともなう姶良Tn火山灰、緑色が阿蘇4火砕流に伴う火山灰、青色が鬼界カルデラ起源の幸屋火砕流にともなうアカホヤ火山灰、オレンジ色が阿多火砕流に伴う火山灰の分布=同 姶良カルデラは約3万年前の噴火しか確認されていないが、鬼界カルデラ(鹿児島)は約7000年前と約9万5000年前の2回、阿多カルデラ(鹿児島)は約10万年前と約24万年前の2回、阿蘇カルデラ(熊本)は約27万年前、約14万年前、約13万年前、約9万年前の4回の巨大噴火が確認されており、いずれも火山爆発指数は7、約9万年前の阿蘇カルデラの噴火の火山爆発指数は8と推定されている。これらの火山についても順次、大規模火砕流分布図が公開される予定で、関東地方に具体的にどれくらい降灰があったかについても最新の知見が公開される。 下司信夫研究グループ長は「降下火山灰の対策については難しいところがあるが、どうやって除去するかが大きな課題になる」としている。(如月啓)

洞峰公園の薔薇とイギリス文化の香り《遊民通信》33

【コラム・田口哲郎】前略 初夏のころ、つくば市にある洞峰公園のプール棟前には薔薇(バラ)の花が溢(あふ)れます。ローズガーデンさながらの種類と本数です。この薔薇園を特に入場料を払わずに鑑賞できるのは、とてもありがたいと思います。色とりどり、鮮やかさなど、さまざま楽しめるのはもちろん、香りがとてもよいのです。あまり強くなく、かすかですが、ふわっと心地よく、非日常に連れていってくれるような匂い。デパートに売っている高級な香水を思わせます。 さて、私は夢中で写真を撮ったのですが、ある写真を見返して思わずつぶやきました。「こりゃ、イングリッシュだな」と。マリーナという品種が、プール棟のレンガ風外壁とガラス屋根を背景に濃いオレンジ色に咲きほこっています。 西洋の伝統を感じさせるレンガと近代を物語るガラスに薔薇とくれば、水戸偕楽園の好文亭に梅林といったおもむき。イングリッシュの本体もそばにありました。クィーン・エリザベス。「われらが女王陛下のために」と、どこかで聞いたことがある言葉が思い浮かぶほど、その薔薇は我こそ薔薇なりと言わんばかりに堂々と咲いていました。 クィーン・エリザベスで思い浮かんだ言葉は、シャーロック・ホームズのセリフだった気がします。19世紀、大英帝国華やかなりし時代の物語です。シャーロックは犯罪者を推理のすえ、いよいよ追いつめようと、相棒のワトスン君とベーカー街の部屋を飛び出すときにそう言います。そういえば、NHK BSでイギリスのグラナダテレビジョン制作の「シャーロック・ホームズの冒険」が絶賛再放送中です。