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教師に必要な「臨床知」《竹林亭日乗》40

【コラム・片岡英明】教師の基礎力とは何だろうか。日常的な現場から自分の頭で考え、指導を組み立てる力量である。教育は教師が授業やHR(ホームルーム)で指導方針を持つことから始まる。 すると、職員室では二つの流れが生まれる。一つは、教師が方針を持った指導の中で生まれる思いがけない事態にも、「そうきたか」と柔軟に対応できる教師。もう一つは指導方針を持ったため、かえって予想外の事態が見え、計画通りに進めようとイライラする教師である。 指導方針を持つ教師のこの違いはどこから生まれるのか、長い間の疑問であったが、その違いがいわゆる教師の「臨床知」への姿勢に由来すると分かった。 授業の指導方針が立てられず、ヒット1本を求めて暗中模索の段階の実践をステップ1、方針を持った実践をステップ2、授業の方針を持った教師が出会う予想外の困難な場面の指導をステップ3―とする。 今までは、ステップ3の実践は臨機応変で柔軟な指導力の問題だと一般化して考えてきたが、最近その指導の構えのヒントとなる本に出会った。今回はその内容を紹介し、教師の応援のためステップ3の指導について考えたい。 臨床思考の問題解決 「東京大学で考える臨床思考の問題解決」(須藤修監修、ダイヤモンド社、2026年2月発行)を読んで、指導方針を持った教員の現場で出会う課題は、この本で取り上げた臨床知が必要な場面であると感じた。 本書は、最近のマルチモーダル(多様な情報を処理できる)AIが、人間の創造性にからむレベルに達しているという、最先端の研究者の危機感から生まれた。AIに覆われている現在の人間に必要な第2の知性を、個性的な講演者の創造性から学び取るという発想で、各分野の最先端の11人の講演と討論の報告書である。 姜尚中氏の「臨床の知の可能性と向き合うべき課題」や、盲ろうの大学教授福島智氏の「格差・教養・多様性をめぐるアンコンシャス・バイアスを考える」など、いくつかの分野を極めている方が、その先端部分を語り、現代に必要な臨床知を検討した。 その講演と討論内容は驚くことに、AIの広がりで生まれた人間社会の危機感を、AIについては何も語らず、第一線の学者・芸術家・宗教家などの、極めて人間臭い一人ひとりの体験から臨床知を探った。この点で一読の価値がある。 勘と経験知では限界 授業で指導案を持った教師が出会う予想外の事態への対応力は、今までは臨機応変で柔軟な指導力という一般的な経験知の問題とされてきた。しかし、経験知では現在の多発している教師が抱える予想外の事態には対応できない。 これは勘と経験だけでなく、研究的な場面である。まず、直面した困難な事態が臨床知を深める場面であるとテーマ化し、ステップ3の実践を記録してほしい。そこから教師が臨床知を学び取ってほしい。この臨床知を教師の学びのテーマに設定すれば、教師は自分の出会う授業やHRだけでなく、学年や魅力ある学校づくりにも、この視点を生かすことができると考える。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

今年の県立中・高入試問題を分析《竹林亭日乗》39

【コラム・片岡英明】桜の花のもとで入学式を迎えた小中学生のために、今年の県立中学・高校の入試問題分析で学びを応援したい。 県立中の入試問題 中学入試は、まず正確で早い計算力や文章の読解力を見ると言われているが、今年の問題では小学生の知識を持っていても取り組めない問題があることに気づいた。その典型が試験中に訂正があった適性検査Ⅰの算数2の問題である。これは6年生までの小学生の知識に加えて、与えられた条件を順序よく考え、それを重ね合わせる思考力をみている。 この思考力は、〇☓や読んですぐ正解を見つける学習では身につかない。あせらず、じっくり時間をかけて、試行錯誤を繰り返しながら思考を重ねる必要がある。つまり、練習はゆっくり、試験では素早くの構えが必要である。この種の問題で、逆に練習時に素早さを求めると消化不良を起こし、学習嫌いが発生する。 理科にも特徴がある。実験の結果を予想し対話するスタイルは、板倉聖宣氏が提唱した仮説実験授業を想起させる。また、国語と社会は読解というより、資料の「情報読み」中心である。国語で最も大事な主人公の心情を読み取り自分を耕す—そんな文学の授業は想定していないのか。 最大の特徴は問題文が対話調である点で、そのため、問題文から答えを導く論理を引き出しにくいものになっている。重ねる思考力を求めているのだから、大学受験参考書の「実況中継」シリーズでは論理力が身につかないという指摘を思い出してほしい。 以上をヒントに、小学生には、焦らずじっくり考える学習スタイルを期待したい。 高校の入試問題 最近の高校入試の特徴は国語と英語の問題文が長いことだ。国語の問題は2段組みで15ページ。英語もリスニング3ページ、筆記が7ページと、たっぷりある。短時間で、この長い問題文にどう取り組むかが高校受験の肝である。 試験問題を解くとは、問題文を読解して、問題作成者の意図を読み取り、自分の回答を採点者に分かりやすく書くという行為である。長い文を正確に早く読むには、まず英文や国語の段落や接続詞や強調構文に注目し、著者の主張を捉え、文章の型を押さえ、展開を予想することだ。 この文章の型について、渡邉雅子氏が「論理的思考とは何か」(岩波新書、2024年)で、日本、アメリカ、フランス、イランの4カ国の文章の型を分析した。この本は作文指導の参考になると、現在好評を博している。これが今年の国語の問題三で出題された。良問とは設問を読みながら知の世界が広がるもので、これは解く価値のある問題である。 英語の問題4の長文は茨城の伝統的な問題で、毎年ある体験をした主人公の変化を述べる典型的な感想文型である。英語の読解にも、渡邉氏の日本独特の感想文型の説明が参考になる。一読をお勧めしたい。 中学生には、今回の分析を参考に英語・国語の読解力をつけ、学校での学習を通して自分が豊かになる大河の学びを体験してほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

私学の授業料無償化の波紋《竹林亭日乗》38

【片岡英明】2026年度から、私立高校生に年間45万8200円の就学支援金が支給される。これに伴い、授業料は月約3万8000円軽減される。入学金や施設費などの支出もまだあり、無償には遠く、今後の課題もあるが、私学への入学者が増えると予想される。しかし実際のところ、私学では入学者確保に危機感が高まっている。そこで今回は、授業料軽減が入試に与える波紋について考えたい。 中学卒業者600人減、県立志願者1300人減 今年の県内中学卒業者が昨年比637人減の2万4555人になった中、全日制県立高の志願数は昨年より1344人減った。なぜ、卒業生減を超える受験者減が生まれたのか? 私学の推薦枠が24校で3300人と昨年より500人増えたので、県立減少分の多くが私学推薦に移ったともいえる。一方で、私学一般入試は1000人減となった。 このほか私学一般入試での単願入学や、併願合格から単願への切り替えも、私学入学者増に寄与しているようだ。ここまでは、就学支援初年度の動きとして想像できる。 では、今年の県立高入試はどうか。県立高84校1分校の志願状況を見て、多くの人が驚いた。定員を超えたのは進学校を中心に37校(昨年は50校)で、多くが定員割れだった。それに伴い、不合格者数は1016人(昨年比715人減)で、合格発表後の私学への入学手続数減が予想され、私学関係者の間に激震が走っている。 私学入試での推薦500人増と一般1000人減から、受験者や保護者が早めに安心できる高校の合格を確保したいとの希望も見える。就学支援金の初年度に、私学の推薦増と県立高の志願者減、それに伴う県立発表後の私学への手続き減という、3つの波が生まれた。 そのため、県にとって県立高の「魅力アップ」が重要課題になり、一方で私学は授業料が安くなった初年度の推薦増がこれからも続く学校にしなければならないと、公立も私立も魅力向上の必要性を感じる事態となった。 県立高の定員割れをどう見るか? 毎年、いくつかの県立高を訪問し、その高校の魅力と伸びる可能性を感じてきたので、今年の定員割れは残念である。私学への就学支援金初年度の定員割れは、受験生たちの「もっと学校の魅力を教えて」という叫びと考えたい。 公私の授業料格差が小さくなった今、進学実績やスポーツだけでない、生徒の日常の学び・青春・進路などの魅力を、地域と連携しながら伝える公私の学校づくりが必要になった。教職員一人ひとりが、我がこととして学校の魅力を語る時代になった。魅力ある学校づくりのために、学校改革に精を出していたころの読書ノートからの抜き書きを下に紹介し、現場教師を励ましたい。 「良い物はその良さが知られなければならない。知られてこそ良い物が良いものとして生きる」(「男たちの経営」城山三郎著、角川文庫)、「新しくできた競合店にお客を取られるということは、競合店ができる前からそういうところがあったからに他ならない」(「商売の原点」鈴木敏文著、講談社)。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

今年の県立中入試は救済が必要では《竹林亭日乗》37

【コラム・片岡英明】2026年度の県立中入試が1月10日に行われたが、今年の入試で追加合格者が入学できない事態に心を痛めている。今回はこの問題を受験生の立場から考えたい。 今回から「中学35人学級」が始まり、募集定員は13校23学級で805人と、昨年より115人減少した。そのためか、応募者も2272人と昨年より143人減少した。県は進学高校に付属中を設置し、中学受験を全県で展開しているが、1学級35人では学びの魅力が薄いのだろうか? 試験開始後に問題訂正 今回試験では、1時間目の適性検査Ⅰ(算数・理科)開始21分後、問題を訂正する連絡が入った。各校はその内容を黒板に掲示したほか、後方の生徒には訂正文を見せて周知したものの、その内容を試験が終了する5分前に知った生徒もいた。 訂正があった大問2は、バーコードの下にある数字の最後の数字についてで、バーコードが正しく読み取れているかをみる、チェックデジット(検査数字)という数字に関する問題である。これは高校の情報で学ぶ内容だが、順序立てて考えれば小学生にも取り組める。出題者は、条件を押さえ論理的に考える力を測りたいと考えたようだ。 訂正では、試験問題で示したチェックデジット計算手順1~4の4の後に、「ただし、手順3で求めた数の一の位の数が0のとき、チェックデジットは『0』とする」との文言が加えられた。受験生はかなり動揺したと思う。 私にも、試験終了間際に訂正を知らされたという受験者と保護者から連絡があった。5分前に問題訂正を知らせるのは大問題なので、「この問題は受験者全員正解の扱いになる」と思うと答えた。しかし県は21日、訂正は「解答を引き出すことに影響はない」「採点上の措置は行わない」とし、22日に合格者を発表した。 私もやってみた。確かに訂正部分にからむことはなかったが、チェックデジットの説明で必ずある「ただし書き」が抜けていたのは問題である。それを試験中に追加するというのは、平穏な試験に大きな影響を与えたのではないか。 ところが、合格発表翌日の23日、県教育委員会は「不合格者の該当問題部分を満点の14点としたうえで、総合得点の合格者最低点以上の受験者を追加合格とする」と発表した。本来なら、受験者全員を正解として並べ替え、合格最低点を超えたものを追加合格とすべきだったのではないか。 さらに県教委は、この追加合格者を1学級当たり5名までと入学者を絞ったため、追加合格した生徒でも入学できない事例が生まれた。 公平性と信頼性の確保を 県教委は23日、再発防止のために有識者で検証するとしたが、その前に、最初の追加合格生徒を、例えば43人学級などにして入学させるといった工夫をしたらどうか。多くの生徒がこの日のために長年勉強し、試験日を迎えている。その努力に誠実に向き合ってほしい。まだ間に合うので、入学試験の公平性と信頼を高めるためにも追加合格させて救済を求めたい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

「ロビンソン酒場漂流記」で考える学校の魅力《竹林亭日乗》36

【コラム・片岡英明】茨城県教育委員会は2025年7月、高校審議会に対し、中学卒業者数減が大きな課題として、27年以降の「人口減少をはじめとする様々な社会変化に対応した活力と魅力のある学校・学科の在り方について」を諮問した。この内容は18年の高校審と同じで、県が生徒減に伴う県立高の魅力を継続的なテーマにしていることが分かる。今回、私もこの課題を耕してみたい。 この諮問に対する答申案は25年12月の総会で了承されたが、残念ながら、構えは広いが議論が狭く、つくばエリアなど生徒が増えているエリアには目が向けられていない。答申では「活力と魅力ある学校・学科」という大項目に全16ページの3分の2が充てられ、それを3項目構成で記述している。 1項目「高等学校の適正配置・適正規模」、2項目「魅力ある学校・学科の在り方」は前回と同じ構成だったが、前回は「その他」だった3番目を「選ばれる県立高校であるための魅力訴求」とし、「県立高の広報充実と校名・学科名変更の検討」を提案した。 実際の高校受験はどうなのか? 県全体では定員と受験者数はほぼ見合う中、通学上の問題もあり、受験者の偏在と地元からの入学減によってかなりの高校で定員割れが起きている。これに対し、2つの対策で十分だろうか? 確かに、広報や校名の視点も必要だが、その前に大切な点があると思う。 「高校の魅力」を知らせる前に ルポ「ロビンソン酒場漂流記」(加藤ジャンプ著、新潮新書、2025年7月刊)で著者は、駅からも繁華街からも遠く、おおよそ商売向きとは思えない場所で、料理のうまさと大将のもてなしでしたたかに生き延びる酒場をロビンソン酒場と称し、訪ねている。この本を読みながら、県立高定員割れ解決のヒントになると感じた。 そこで、料理(教育)と大将(教師)のよさが光るロビンソン酒場を参考に、定員割れ高校が「ロビンソン高」になる魅力について考える。 では、魅力を広報する前に高校が行うべきことは何だろう。まず、自分たちの学校のよさを確認することだ。受験者減を地元の受験生の「もっと私たちが行きたい学校にして!」の声と捉え、そして各高校に「魅力ある〇〇高校委員会」を作り、皆が知恵を出し合い、学校のビジョンを明確にする。 そのビジョンを地域と共に生きる学校として発信する。具体的には、「学び・青春・進路」での充実した教育、教職員の個性豊かな指導をアピールする。ビジョンを定め、生徒と教師の手作りの学校説明会を行うと、ビジョンに共感する生徒が必ず入学する。そして、これらの生徒を大切にしてロビンソン高校をめざす。 地元生徒も入学するプラチナ高 入学した「こだわり派」の生徒・保護者は、必ず地域で自分の学校のよさを宣伝する。この最初のヒットが次の波を起こし、学校・教師の自信が深まる。魅力が地元に広がるにつれ、学校のイメージが改善、高校の魅力を求め入学する生徒が増える。すると、こだわり派を集めることから始めた遠くにあるロビンソン高校は、地元の生徒も多く入学する近くのプラチナ高校になる。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表) ➡県高校審議会の過去記事はこちら(2025年8月27日付、12月21日付、12月25日付)

サイエンス高校と筑波高校の魅力《竹林亭日乗》35

【コラム・片岡英明】文科省は11月、今年度補正予算に公立高校の魅力向上のために約3000億円の基金を設置すると発表した。この予算が成立すれば、学費無償化を含め、公立学校の魅力アップ策も導入されることが期待できる。こうした動きも念頭に置き、今回は県立のつくばサイエンス高校と筑波高校の学校づくりについて考えたい。 サイエンス高:探求重視の進学校 2022年まで4学級だったつくば工科高は、23年から科学技術科6学級で構成されるサイエンス高校となった。しかし、初年度の入学者は88人(つくば市内からは53人)、24年は77人(同53人)であった。そこで県は、「普通科を!」の声を受けとめ、学級編成を変更し、25年から6学級中3学級を普通科にした。すると、市内からの入学者は111人に激増し、全体の入学者も178人(つくば工科時代の22年は134人)に増えた。 24年→25年の中学別入学者数を見ると、並木中:1人→10人、谷田部中:5人→25人、谷田部東中:8人→21人、みどりの中:8人→12人など、地元の入学者が増え、県立高改革が軌道に乗り始めた。 その理由としては、ノーベル賞受賞の小林誠さんが名誉校長であること、4名の外国語指導助手(ALT)などスタッフや設備が充実していることが挙げられるが、私が注目しているのは教育課程である。どの教科を、いつ、どれだけ学ぶかは学校教育の要だからだ。 進学校には、2年生から文・理を分ける受験重視の土浦二高・牛久栄進高型と、1・2年は基本共通科目とし教養を重視する土浦一高・水戸一高型がある。サイエンス高は最初から文・理融合をモットーに教養重視型で、この大きな「構え」に設立当初のスタッフの深い理念が感じられる。 リニューアル開学3年目に学校見学させてもらったところ、学校も一新され、生徒が楽しく学んでいた。職員室前には、山形大工学部をはじめ10数人の大学合格者が掲示されていた。話を聞きながら、今後、京都市の堀川高校や千葉県の市川学園が参考になるのではないかと思った。 筑波高:地域と連携した多面校 小規模校の魅力アップは茨城県の重要な課題である。その点、地域との連携に踏み出した筑波高の学校づくりは注目に値する。改革2年目の進学コースの様子に関心を持ってお話を聞いたところ、少人数での学習だけでなく、進学コースのまとまりや意識も高まってきたという。今後が楽しみである。 先日、筑波高も参加している地元北条の「祭り」を見学した折、生徒の「学校が楽しい」との言葉を聞いた。小田城址で開かれたジャズフェスでのスタッフ活動や、老人ホーム訪問後、「次はあの老人をどうすれば笑顔にできるか」と工夫する取組みなど、フィールドを持つ学びの可能性を感じた。話を聞きながら、校内の川の清掃やヤギを飼うなど、幅広い学びのある武蔵高校・中学が参考になるかなと思った。 茨城の学校づくりのモデルに 筑波高は、保護者も卒業生という生徒が多く、地元とのつながりが深い。また、歴史あるサイエンス高は、地元中学の期待が大きい。地域の応援を受け、この2高が茨城の学校づくりのモデルになるよう期待している。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

来年も土浦一高と竹園高の定員増無し《竹林亭日乗》34

【コラム・片岡英明】10月30日、2026年の県立高校の募集定員が発表された。しかし、土浦とつくばエリアの生徒と保護者が期待していた土浦一高と竹園高の定員増はなかった。今回は、受験生を応援する立場から、この「定員増無し」を考えてみたい。 地元生徒に土浦一高「受験控え」 24年入試から土浦一高が4学級募集となり、土浦市内からの入学者が激減している。人数を示すと、23年=38名→24年=18名に減り、これが底だと思っていたら、25年は1人減の17人になった。 一番注目したのが、土浦一高の地元にある土浦二中からの入学数だ。8学級募集から6学級となった22年は9名、23年は6名だったが、4学級募集になった24年は5名となり、今年25年はわずか1名だった。私は、土浦二中からは毎年10~20名は入学するイメージを持っていたが、今年の1名は驚きだった。この数字からどんなメッセージを読み取ればよいのか。 4学級移行の最初の年(24年)、土浦二中からは10名受験→5名合格という厳しい結果になった。これは制度の変動期に伴う「揺れ」であり、いずれ落ち着くという見方もある。しかし、土浦市内の入学激減を見ると、中高一貫移行前の8学級から4学級への定員削減は極端すぎたように思う。土浦一高受験控え=市内の受験生の悩みを受けとめ、6学級に戻すことが必要ではないか。 なぜ竹園高の学級増がないのか? TX沿線の子ども増を受けて小中学校が建てられており、受験生を含む多くの市民は次のステップの県立高の定員増や新設を期待している。これに対し、県は2018年の高校審議会の答申を受け、19年の高校改革プランで「卒業生の変動に対して、エリア区分ごとに~募集学級の調整により対応する」と基本姿勢を示している。 同時に、つくばエリアの中卒生が2018~26年に440名増加すると推計、これに合わせ県立高定員を26年までに2学級増すると発表した。しかし、この基本姿勢がなぜかぶれた。今回発表された「竹園学級増なし」で、つくばエリアの入学定員は18年水準に比べ増えないことになった。 7月、つくば市選出の4県会議員にも参加してもらい、つくば市議会議長は県に竹園高の学級を増やすよう意見書を提出した。私たちの会も竹園高2学級増を要望した。この場にはつくば市副市長も参加、県議・市・議会・会が一体となって竹園高の定員増を求め、県と率直な意見交換を行った。 こういった活動が県の担当者の心に届き、受験生に希望を与える発表があると期待していたが、県自らが策定した改革プランも実行されず、竹園高の学級増は発表されなかった。 県と現場の誠実な対話が必要! 現在進行中の高校審議会で、土浦一高と竹園高の学級増を含む今後の方向性が議論されることを期待している。 さて、「土浦一高の地元中学生の受験控え」「竹園高の学級増なし」の2つの事実を貫く真実は何だろう。今、県や教育関係者はこれらの事実を受けとめ、つくば・土浦の現場と誠実に対話し、生徒の心に学びの火をともす教育政策の立案とその実行が求められている。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

35人学級移行と高校審議会《竹林亭日乗》33

【コラム・片岡英明】7月から「2027年~33年の高校のあり方」を議論する県の高校審議会が始まった。私たちは同審議会に要望を提出しているが、狭い既定路線を進むのでなく、充実した議論と子どもたちに希望を与える答申が出ることを期待している。 今期の高校審の主要な論点は3つあると考える。これらについて、県の大方針である「県民が日本一幸せな県」の実現に向けて深めてほしい。 ⑴ 前回答申を基に作成された高校改革プランの実施状況の点検と評価 ⑵ 生徒減に合わせた県立高の魅力アップと地域に必要な学校づくりの提起 ⑶ 生徒が増えているつくばエリアの高校不足への事実に基づいた議論と対策 26年から中学は35人学級に もうひとつ、議論を期待するテーマがある。それは27年~33年で必ず課題となる高校35人学級である。 5月に県は26年度から中学1年にも35人学級を実施し、順次広げると発表した。これにより、教室にゆとりが生まれ、教職員の多忙化が少し軽減される。すでに、秋田県では2001年から30人学級が始まり、山梨県でも21年から25人学級が始まっている。生徒の個性を伸ばす少人数学級への期待は大きい。 一方、市立中学と同時に、県内13校の県立中学も今までの男女別募集枠が廃止された上、35人学級となる。つくば市内の並木中等は4学級160人募集が140人に20人減。つくばエリアの水海道一高付属中も40人→35人。土浦一高付属中は2学級80人→70人、下妻一高付属中も40人→35人などとなる。 県立高不足のつくばでは、県立中学進学は高校受験のバイパスの側面があるので、ここが絞られると一段と進路選択が厳しくなる。県には泣き面に蜂のような定員削減ばかりでなく、竹園高校の学級増や県立高新設などの抜本的定員増を求めたい。 29年から県立高も35人学級? 26年入学の県立中1年生が高校に進む29年には、県立高の35人学級が当然テーマになる。国が方針を決めていないので県は先走りしないと言うかもしれないが、審議会ではぜひ議論してほしい。 25年の県立高募集枠は432学級である。40人学級が35人学級になると、ここで生徒減の2160人を吸収することになり、審議会の生徒減対策の基本に関わってくる。 それに伴って、県立高不足に悩むつくばエリアではもっと深刻な問題が発生する。現在、つくばエリアの県立高は58学級。これが35人学級となると、さらに290人の募集定員減となる。これは35人学級の8学級分であり、高校1校分の定員削減になる。 昨年、県は定員見込み試算を発表した。私たちの会が同一資料で計算すると、つくばエリアは14学級不足だった。これに加えて、審議会資料では24年~33年のエリア生徒数は382人増。それに見合う必要学級数は7学級になる。さらに35人学級を実施すれば、新たな学級不足が8学級上乗せとなるのである。 高校審議会は、以上のような点を視野に入れて十分な議論を行ってほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

つくばエリアを広げても県立高は不足《竹林亭日乗》32

【コラム・片岡英明】つくばの高校問題は先の茨城県知事選挙でも争点になった。受験生・保護者にとって、つくば市の県立高不足は明白なのだが、県教育委員会は独自の考え方で対応しているため、議論はかみ合わず、私たちの声が届いていない。 県は2024年10月、「県立高等学校の今後の募集学級数・募集定員の見込みを試算」で2つの試算を発表。試算2で「中学校卒業者の増加がみられるつくばエリアの状況」として、つくばエリアの生徒増を取り上げた。今回はこのエリアの県立高は「足りているか否か」について対話を深めるため、県の試算2について考えてみたい。 過不足を論じる3つのアプローチ つくばの県立高の過不足を論じる3つの方法としては、以下の3つのアプローチがある。 ①収容率法(私たちの方法):県立高の県平均収容率68.2%を目標に、2024年の不足学級数と2030年までの不足学級数を算出。 ②入学見込み法(県の2019年改革プランや2024年試算の方法):2024年時点での不足は考えず、今後の生徒増減に注目し、これに各高校の市町村からの入学率を掛け、2024~2030年の入学見込み数を算出。当然、県立高が少ないつくばエリア地元高校への入学率は低くなる。 ③エリア拡大法(試算2の方法):2024年時点での不足は考えず、つくばエリアに土浦・牛久・下妻の3市を加え、拡大つくばエリアを設定。その入学見込みを算出して、高校定員の過不足を論じる。 これらで計算すると、①現在14学級不足+2030年までに7学級不足⇒計21学級不足、②現在は検討せず+2030年までに3学級不足⇒計3学級不足、③現在は検討せず+拡大エリア定員内に収まる⇒定員増必要なし-となる。 これらの方法による結論は大きく異なる。特に、③はつくばエリアの現在の14学級不足を考慮しないだけでなく、生徒が減少する土浦・牛久・下妻を拡大つくばエリアに加えて生徒増を圧縮。これに低い入学率を掛け、強引に定員増必要なしの結論に導いている。 「拡大つくば」でも14学級不足 そこで議論がかみ合うよう、試算2の拡大つくばエリアを①の収容率法で分析した。2024年のつくばエリアの収容率は県平均の68.2%に対し54.7%と低いが、土浦・牛久・下妻を加えた拡大つくばエリアでは60.0%に向上する。しかし、68.2%の県平均以下で学級不足であり、不足数は2024年つくばエリアと同じ14学級になる。 これは土浦・牛久・下妻3市の合計平均の収容率が68.5%と県平均に近いためで、つくばエリアと拡大つくばエリアの県平均への必要学級数は変わらない。さらに、定員の多い土浦を除いた第7エリアでも新たに2~3学級の学級不足が発生する。 ③の発想は、エリアを基本に募集定員を考えてきた改革プランのバランスを崩したようだ。県は、「エリアを基本に生徒数に応じた定員」を原則にして、つくばエリアの現状に向き合い、受験生・保護者の要望に応えてほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

竹園高学級増で県の高校審に期待《竹林亭日乗》31

【コラム・片岡英明】7月28日の県教育長の定例会見で竹園高校学級増に注目していたが、発表はなかった。残念である。10月末の県立高校入試の実施細則発表時に期待したい。 このままつくばエリアでの定員増がないと、2018年の高校審議会を受け2019年の高校改革プランで決めた流れに滞りが生じる。つまり、改革プランで2019年~26年につくばエリアの中卒生が440人増に、本来なら県立高平均収容率68%に合わせて7学級増とするところを、県は控えめに2学級増としたが、その学級増の課題を積み残すことになる。 竹園高の学級増に触れない会見が信じられず、翌29日に県に出向き、会見資料を確認すると、県立高定員の項目はなかった。ならば、私たちの学級増要望(7月5日付記事)に対する「検討する」との言葉はどうなったのかと、高校改革推進室を訪問した。係の方と話をすると、意見書・要望書などは多くの方に共有されていた。しかし、まだ改善を決断するに至らず、このままではつくばエリアの改革プランの積み残しが生まれることが分かった。 受験生・保護者の声を聞いて! この状況の中で同日、2027年~33年の県立高配置などを検討する新たな高校審議会が開かれた。早速、この高校審議会第1回総会を傍聴した。 審議会の参考資料のエリア別中学校卒業見込に注目した。全県的な人口減のなかで、つくばエリアは人口・生徒増という事態が起きている。資料から、県立高には生徒減・魅力アップ対策と共に、つくばエリアの子ども増を受けとめ、県の発展にどう生かすかというテーマが存在することが分かった。 前回の審議会スタート時の2018年と今回の検討期間の最終年2033年の中卒生を比較すると、全県では5895人(2万7455人→2万1560人)減少するが、つくばエリアは650人(3969人→4619人)増加する。これに県立高収容率の68%を掛けると、つくばエリアは442人の定員増(40人学級として11学級増)が必要となる。 しかし、つくばエリアの現実はどうか? 改革プラン実施後の市立中学生の高校入学枠は増加せずに53学級のままで、つくば市の市内県立高入学は6人に1人である。受験生や保護者は高校受験や入学後の通学に悩んでいる。 現高校改革プランは未完成 難しい面があることも分かるが、公教育としてつくばの生徒にも基本的に県平均水準の教育条件となるよう、県には努力をお願いしたい。今回の審議会では、生徒減・県立高魅力アップ対策とともに、前回の審議会答申に基づく高校改革プランの積み残しがあることを認識され、その解消と共に生徒・保護者に希望を与える答申をお願いしたい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

竹園高の学級増に向け県と対話《竹林亭日乗》30

【片岡英明】7月は受験生が高校入試を考える時期だ。夏休みの高校説明会では、3校は見学するよう中学校の指導がある。今回、私たちはその説明会に間に合うよう県立竹園高校(つくば市)の学級増を求めた。構造的な県立高不足のつくば市内で、「勉強をもっと頑張れ」ではなく、県立高の受験枠を広げよと活動している大人がいる―これが受験生への励ましである。 その意味で、つくば市議会による竹園高学級増の意見書採択(6月)は受験生への激励になった。今回は、竹園高学級増を求めた教育委員会との懇談(7月4日)でのやり取りを報告したい(7月5日付記事参照)。 私たち「つくば市の小中学生の高校進学を考える会」は、市議会の「竹園高校2学級増」の意見書提出に際して、つくば市選出の県議4名とつくば市副市長などと一緒に、同趣旨の要望書を県教育委員会に提出した。庄司学校教育部長が受け取り「要望をしっかり検討します」と言って、退席した後は、県の行政的で乾いた言葉が続いた。 県関係者との懇談では、県議からは「改善に向けて工夫して欲しい」「具体的で絞った要望に前向きな回答を…」「機械的な応答でなく要望を受けとめた話を…」といった発言があった。 県担当者の「竹園高校の学級増の必要性が分からない。皆さんの説明をお聞きしたい」との問いに、県議からは市議会の意見書に対応するよう求める発言があり、市議会議長は地域住民から県立高不足の多くの声が届いていると指摘した。さらに、つくば市副市長が市も県に竹園高の学級増を求めていると述べた後、私たちの「高校進学を考える集い」(5月)での熱気を説明した。 皆さんの熱い思いはよく分かった 私たちは、県が2019年改革プランで2026年までにつくばエリアで2学級増やすと発表したのに、まだ未達成であり、生徒は増えているのにもかかわらず高校入学枠は増えていないと指摘。県の計画を達成するためにも、今年の高校説明会の前に竹園高2学級増を発表するよう要望した。さらに、つくば市の県立高通学支援策などを紹介すると、「県も報告を受けている」などと、うれしい応答もあった。 また、つくば市のPTA役員が、土浦一高の4学級化で発生した「受験生の津波」によって、高校受験を最後まで悩んだ息子のことを語るなど、参加者はつくば市内の県立高不足を解消するよう本音で訴えた。 最後に発言を求められた県の担当者は「皆さんの熱い思いはよく分かりました」と、教育の現場を知る「教師の笑顔」で語った。この温かい言葉に、参加者は「竹園高学級増の声が県の方々の心に届き、今回の意見書と要望書の提出で、改善に向けての対話が成立した」と感じた。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

つくば市内県立高の説明会で生まれた希望《竹林亭日乗》29

【コラム・片岡英明】5月18日、つくば市役所コミュニテイー棟で行われた「第6回高校進学を考える市民の集い」(つくば市の小中学生の高校進学を考える会主催、つくば市・市教育委員会後援)には会場いっぱいの120人が参加した。第1部のつくば市内4つの県立高校の校長先生による自校の魅力紹介が圧巻だった。その説明を聞きながら、生徒や保護者に高校説明会の開催に強い希望があると感じた。 この集いでは、初めに篠塚英司つくば市副市長があいさつし、五十嵐立青市長のビデオメッセージがあった。続いて、4人の校長先生がそれぞれの学校の魅力を力強く語った。 今年着任した竹園高校の桜井良種校長は進路状況を説明した後、自分が撮った生徒の主体的な学びの様子を映しながら、学園風景を新鮮に語った。 筑波高校の鈴木恒一校長は映像を用いて、3学級の高校での細やかな指導と地元とつながる「つくばね学」を通した生徒の伸びる可能性を丁寧に語った。 つくばサイエンス高校の石塚照美校長は、科学技術科と普通科の2学科制の可能性、設備が充実した教育環境、生徒の活躍の姿を豊かに語った。 茎崎高校は担当教諭が3部制フレックス高校の7つの特徴を説明の後、𠮷田真弘校長が手厚い教育的取り組みと地域に開かれた高校の魅力を熱く語った。 校長先生の説明はライブ感いっぱいで、多くの参加者の学校理解が進み、感動していた。そして学校説明会で地元高校を知ることは、高校が地域に根づく懸け橋にもなった。 以前は、中学校ごとに生徒と保護者向けに、卒業生の進学者が多い県立・私立高校を呼んで高校説明会が行われていた。受験する可能性のある高校の話を幅広く聞き、比較対照しながら、生徒は自分の受験校を絞った。 最近、その高校説明会はなくなり、各自が夏休みに高校の説明会に参加する形になった。そのため、受験校の全体をとらえずに個別学校の説明会に参加している。夏休み前に受験校がある程度絞られていない生徒にとっては、不安が高まる高校研究の流れである。 高校が一堂に会する「場」に期待 確かに、つくば国際会議場などでも、いくつかの団体などが企画する高校説明会はある。しかし、これらは個別対応で、人気校には長い行列ができ説明が聞けない状況だ。生徒が各校の個別研究に入る一歩前の全体の学校説明の段階が必要である。 今回の説明会は、生徒と保護者が必要な基本的情報を直接入手し、受験生の学習スタートにもなると分かった。 中学3年の6月には部活動がほぼ終わり、保護者や教員は生徒が受験モードに入ることを期待するが、実際は切り替えできない生徒が多い。そのような生徒のためにも、高校説明会という「場」が必要である。 受験生を励まし、学びのスタートを切るためにも、今回の集いで行った県立高校の試験問題の解説や学習法と組み合わせた高校説明会を、ぜひ中学や地域などで夏休み前に開いてほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

土浦一高附属中受験 地元生徒数が減少《竹林亭日乗》28

【コラム・片岡英明】2024年から土浦一高の募集学級が4クラスになり、昨年の土浦市内8中学からの入学者が18人に減少したのには驚いた。土浦一高には附属中(2021年設置、定員80人)から内進生も入るので、今年の市内小学校から附属中に合格する人数に注目していた。 今年の市内小学生の土浦一高附属中への受験者は初年の21年(71人)と比べ3割減の48人、合格者は初年(25人)比5割減の12人となった。市内16小学校で12人だから、1校1人以下である。これは土浦市と土浦一高にとって大きな問題と言える。 地元の受験者減は地域にとって同高が遠い存在となり、学習目標から外れたことになる。それは、土浦一高側にとって新たな魅力発信が必要になったことを意味する。 中高一貫は教師づくりが鍵 茨城県は21年から地域の伝統高校10校に付属中を設置。一方、並木中等、古河中等に加え、勝田高を中高一貫に移行させた。その結果、県内には県立中が13校もある「中高日本一」の県となった。それに見合う教員と施設は十分だろうか。 中高一貫で成果を上げている私立校は、まず教師の個性を認め、個性豊かな教師たちがチームを組み、6年間を見通して指導を行う。卒業生を出すと担任を1年間外れ、次に新しい学年のチームをつくるサイクルがある。だから、自然に20年以上、3サイクルを体験した教師が学年の中核として育つ。 つまり、中高一貫は教師づくりが鍵だ。中高一貫を成功させるには、中心的な教師集団を育て、20年以上同一校に勤務する人事制度が必要である。学校側の安定した指導が地域に見えれば、地元との距離は近くなる。 中学校舎と体育館は必須 付属中が学年1・2学級でも、中学時代は中学の仲間と共に育つ場所が必要だ。同じフロアーに中高同居は安上がりだが、中学用の校舎と体育館は必須である。県内の市立中学では、学年が1・2学級規模でも体育館をはじめ多くの教育施設がある。 付属中を設置しても教室は増やさず、その分の高校定員を削減して調整するという構えでは、受験者減と受験生の苦労につながる。 高校を4学級から6学級に 付属中設置から5年が経ち、土浦一高・附属中の課題が少し見えてきた。「教育は百年の計」であり、始めたものを止めるわけにはいかない。ならば、受験者減の意味を受けとめ、教師の力量を高め、施設の充実をお願いしたい。 すると、県立中の環境改善は少数生徒への配慮であり、公教育としてはどうかという疑問が発生する。そこで、多くの地元の生徒のために、土浦一高の定員を4学級から6学級に戻してはどうか。 定員を増やし、教育環境を改善すれば、地域での魅力は高まる。そうすれば、多くの地元生徒が土浦一高を目標校に定めると考える。(元高校教員、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

残念だった県教育長の3月議会答弁《竹林亭日乗》27

【コラム・片岡英明】3月18日、茨城県議会の予算特別委員会で、山本美和議員(つくば市区)の県立高校定員に関する質問の様子を中継で見た(現在も視聴可)。 2022年11月議会で、当時の森作教育長が「進路選択に影響が出ないように県立高の募集定員の計画を示す」と答弁。その後、牛久栄進高の学級増、筑波高の進学クラス設置、つくばサイエンス高の普通科設置などの改善があったので、3月議会での県側答弁に期待していた。 つくば市の高校の特殊性 柳橋教育長はこの中で、①2019年改革プラン策定以降、県内各エリアの生徒数に応じて県立高募集定員の調整を行う方針である、②つくばエリアでは生徒数が増加する-この基本点を説明した。 また、つくば市からの入学者が多い土浦・牛久・下妻を加えた「拡大つくばエリア」で考えた場合、定員増は必要ないとも答弁した。つくばエリアは生徒増が見込まれるのに、エリアでの定員増は必要ないとの言葉は残念であった。山本県議の質問の背景には子どもたちの願いがある。その声に耳を傾けてほしかった。 なぜ、つくば市の多くの生徒がエリア外の隣接3市に通学するのか? つくば市内に県立高が少ないからである。今でも8学級募集の並木高(今は中高一貫)があれば、これほどの問題にはなっていない。TX開通によって生徒が増えたことで問題が顕在化した。 「拡大つくばエリア」という飛躍 柳橋教育長による説明の組み立ても気になった。まず、つくばエリアの生徒増を語り、次に「つくば市」のつくばエリア外への通学状況を説明し、そこから「拡大つくばエリア」の設定へと飛躍した。 「つくば市」を語るのであれば、構造的に県立高が不足しているつくば市の必要学級数(県平均水準)を計算してほしい。県立高を2校新設する必要性が判明する。 さらに、「拡大つくばエリア」を設定するのであれば、県全体の12エリアについても再試算する必要がある。私たちの会の試算では「土浦を除いた元の土浦エリア」で、新たに定員不足が発生する。 生徒が増えているつくばエリアに、生徒が減っている隣接3市を加え、「学級増必要なし」との試算には疑問がある。私たちは計算ではなく、現実から出発している。これからも、つくばエリアの受験生の願いを教育長に届けたい。 地域にとって魅力ある県立高を 生徒が増えるつくばエリアに学級増は必要ないと、ブランコで言えば「いったん限界まで振り切った」答弁は我々を驚かせたが、これはつくばエリアの定員を考える契機にもなった。 現状は、TX沿線に県立高新設が必要なのは明らかである。受験生の小さな声に耳を傾けると、振り切ったブランコはしかるべきところに落ち着くような気がする。 多くの生徒の関心は、募集定員だけではなく、各県立高の魅力や通学方法にも広がっている。県教育庁は、つくばの定員問題を早期に解決して、地域にとっての魅力ある県立高づくりに力を注いでほしい。(元高校教員、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

牛久栄進高の志願増と竹園高の学級増《竹林亭日乗》26

【コラム・片岡英明】つくば市内の県立高校不足に土浦一高の定員削減が重なり、つくばの受験生と保護者の不安が高まっている。つくば市からの進学者が多い土浦一高、竹園高、土浦二高、牛久栄進高への志願数を調べた。 牛久栄進の志願者が激増 今年は土浦一高4学級化の2年目。高校入試で何が起きているかを、2024年と25年の志願先変更前の志願者数で調べてみる。 削減1年目の昨年、土浦一高への志願者は222人(定員160)となり、志願先変更で208人(前年比75人減)となった。この土浦一高の定員削減のあおりを受け、土浦二高志願者が430人(定員320)、竹園高435人(定員320人)と、両校に100人以上オーバーの波がきた。 2年目の今年はどうか。土浦二高と竹園高は昨年の100人以上オーバーで難校化、今年の受験生は牛久栄進高に497人(定員360)の波となって現れた。志願先変更で466人となったが、106人の定員オーバーである。 31人という志願先変更の多さには心が痛む。多くの方に、これら生徒、保護者、教師の苦労を感じてほしい。 心配なのは、削減1年目に土浦二高と竹園高、2年目に牛久栄進高に向かった受験生の波が、3年目はどこに向かうのかだ。その受け皿として、改革が始まったつくばサイエンス高校と筑波高校に期待している。つくば市内の両高の魅力アップは地域の発展にも重要で、私たちも応援したい。 しかし、中卒生が激増し、6人に1人しか市内の県立高校に入学していないつくば市で、それだけでは不十分である。 24年からの受験生の大波は、つくばエリアの県立高校不足と土浦一高の定員削減によって生まれた波と考えている。その波の性格に注目し、大人は受験生が安心して学べる入試環境を用意する必要がある。 竹園高に2学級増を TX沿線開発で人口と子どもが増えているつくばエリアに、県立高校新設が必要なのは明らかである。県も牛久栄進高1学級増や市内3校のうち2校で対応(サイエンス高の普通科設置、筑波高の進学クラス設置)しているが、生徒増に追いつかない。そのため、生徒と保護者の期待は竹園高に向かっている。 県は2019年の高校改革プランで、当時のつくばエリアの57学級(中等4学級を含む)を、26年までに59学級にすると発表した。 25年入試では58学級だが、その1学級増は水海道一高付属中からの内進枠である。一般の高校受験枠は改革プラン実施後も53学級のままで、増加していない。この点でも学級増の必要性は高い。県はTX沿線への高校新設を検討しつつ、26年から竹園高に2学級増やし、昨年から起きた受験生の波を受けとめてほしい。 つくば市も、竹園高学級増のために校舎建設の協力を表明している。1月の県教育委員会との懇談では、県も独自の調査で校舎増設が可能であると述べた。条件は整ったと思う。今年の受験生の波を受け止め、竹園高の学級増で小中学生と保護者の希望に応えてほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

高校受験~学校選びから学校参加へ《竹林亭日乗》25

【コラム・片岡英明】2月6日から県立高校の出願が始まる。中学生には悩みから決断のときだ。学校での面談が済み、願書提出後も悩み続ける生徒もいる。悩む時間は人生の中で貴重な体験であり無駄ではない。 学校選びで悩むのは当然である。それが止むのは、生徒自身が学校選びから学校参加に舵(かじ)を切れたときだ。高校受験は貴重な学びのチャンスで、その山や谷の中で人間が一周り大きくなる。 霞ケ浦高校に勤めていたとき、大学受験用模試の学校別成績分布の山を時々生徒に紹介した。すると多くの生徒が驚く。分布の形は各学校によって違いはあるが、トップ高も含めて多くの学校の山が重なり合っているのだ。 偏差値によって輪切りにされ、成績は重ならないと思い込んでいたが、実際は相当重なっている。「やればできるかも」と、そんな気になる。高校入試で学力など判定できない。学びは高校入学がスタートで偏差値は参考資料だ。 入学後、自分流の学習スイッチが入れば、中学の学習内容は3カ月ほどで回復できる。それまでの学習や、どの高校かなどはほとんど関係ない。入学後の学習で、各高校の成績分布も大いに変化し重なり合うのだ。 どの高校を選んでも、いや、どの高校に参加しようと決めても、学校には学ぼうとする生徒を支え応援する先生が必ずいる。安心して、高校選びから高校参加への道を進んでほしい。 筑波高・サイエンス高を支援 受験生を地元や行政も支援している。昨年12月、つくば市長との懇談の場で、市も地元高校への応援姿勢を示してほしいと、筑波高校とつくばサイエンス高校への通学支援を要請した。市長をはじめ市の職員の方々も熱心に受けとめてくれた。 市長との懇談の際、事前に高校にも話を聞き、利用者の多い「つくバス」の運行改善を要望した。つくバスや道路整備の担当課とも話し合いを持つことができた。筑波高・サイエンス高の校長先生も、独自につくバスの運行改善を市に要望した。 サイエンス高への通学路改善では、現地の聞き取り調査も行った。市長との懇談では、道路整備は地元区会の要望書も必要と指摘があった。すぐに谷田部地区の区長会の会長と懇談し、地元区会に要請した。その中で、地元区会のサイエンス高への応援の姿勢を感じた。 サイエンス高校は今年から普通科3学級が併設され、新しい「学び」を提案している。生徒の進学希望にも応えるこの学びに地元も期待している。また、筑波高では地域とつながり、地区のお祭りにも参加している。筑波高は北条地区の街づくりの核で、地域の支援や期待も高い。 高校受験生への応援活動 1月29日、私たちの会は、県に土浦一高の高入6学級体制と竹園高2学級増などを求め、教育委員会の担当者と懇談した。加えて、私たちは、つくばエリアの県立高定員枠改善のため、筑波高4学級、サイエンス高普通科5学級も視野に入れ、受験生を応援している。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

つくばエリアの県立高、本来8学級増《竹林亭日乗》24

【コラム・片岡英明】茨城県教育委員会は昨年10月、2030年までの「県立高校の今後の募集学級数・募集定員の見込みを試算」を発表した。その試算1によると、30年の県全体の中学卒業生は24年に比べ2141人減少する。この中卒者減に対応して、県立高の定員を1480人(37学級分)減らすとしている。 今回の試算では、中卒者減に対する県立高の定員削減率は69.1%。減少する中卒者の7割に相当する県立高定員を減らすことになる。 県の試算は3学級増 県教育庁は県内を12エリアに分け、エリアごとの学級増減も示している。これによると、県全体では県立高定員が削減されるが、つくばエリアの中卒者は逆に477人増えることから、現在58の学級数を61にする。 つくばエリアの中卒者増に対する定員増加率は25.2%となっているが、県全体の中卒者減に対する定員削減率が69.1%であるならば、つくばエリアの県立高定員増加率も同様にすべきではないか。 つくばエリアの中卒者が477人増える(24年~30年)と推計すると、その中卒者増に見合う定員増は330人(中卒者増の69.1%)になる。ということは、本来8学級増を示すべきではないか。 本来8学級増なのに、なぜ3学級増なのか? 生徒が急増しているつくば市内には県立高が少なく、3学級しか増やせないと判断したのであろう。 竹園高には2学級増を 県教育庁が2019年に発表した「改革プラン」では、つくばエリアの中卒生は440人増加する(18年~26年)と推計していた。今回試算と同様に考えると、440人増には7学級増が必要だが、当時の学級数に2学級プラスした59学級に抑えられていた。 18年~30年、つくばエリアの中卒者は747人増える。この生徒増に合わせるには12学級増が必要となる。ところがその後、つくばエリアの学級は1学級しか増えていない(57学級→58学級)。改革プランと今回試算を合わせても、4学級増(57学級→61学級)に抑えられている。このことが、多くの小中学生の高校進学の悩みの元になっている。 この2年間、牛久栄進高の1学級増、筑波高の進学コース設置、サイエンス高の普通科設置など、県立高の定員問題は改善されている。しかし、中卒者増に学級増が追いついていない。つくばエリアの中卒生増に対応するために、2026年度には県立竹園高の学級を2つ増やしてほしい。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表) ➡「県立高校の今後の募集学級数・募集定員の見込みを試算」はこちら

2025入試と筑波高の可能性《竹林亭日乗》23

【コラム・片岡英明】12月になり、受験生も学習に熱が入ってきたころだが、今回は今年度に進学コースを設置した筑波高校を中心に、来年度の県立高校入試について考えたい。 受験生の中間層が私学に流れ、県立高校の2極化現象が起きていたが、県は県立高の魅力アップを図っている。それが、つくばサイエンス高校普通科と筑波高に進学コースを設置する動きである。筑波高の魅力アップは県の県立高づくりの新しい流れといえる。 物価高と私学の高学費のために県立志向が強まり、地元の県立高がそれにどう応えるかが問われている。私学に勤めていた私は、私学助成の増額で保護者負担を軽減し、公私が学費でなく教育内容で選ばれる時代の到来を期待している。 来春、下妻一高の募集定員は1学級減の5学級となる。削られた学級分の生徒はどこへ行くのだろうか? 下妻二高への流れ起き、それに明野高の募集停止が加わり、受験生の間に大きな波が広がるのではないか? その受け皿に、進学コースを設置した筑波高がなるのか? この点がつくばの25年入試のひとつのポイントだ。 この高校の新しい芽 11月28日、筑波高を訪問して校長・教頭先生と懇談し、主に学び・青春・進路の3つの点でお話を伺った。 (1)学校の現状:ここ3年間で在校生が201→212→231と増加。今年は1年生が89人で、進学コースは11人だが、ビジネスコースの志願者が募集定員を越えた。昨年は入学4人以上の中学は5校だったが、今年は秀峰筑波18人、大穂18人、桜8人、下妻東部8人、新治6人、豊里5人、谷田部東4人、竹園東4人―と、8校に増加。125号線沿線を中心に入学地域が広がった。 (2)学習の工夫:ビジネスコースは週30時間、進学コースは火曜・木曜7時間の32時間授業。注目したのは、ビジネスコースも小規模校の特徴を生かして国数英で分割授業やTT(ティーム・ティーチング、複数教員による協力的指導)を行っている点だ。また、全教員が関わる学び直しの時間(TSI)が1年~3年に設定され、ていねいな個別指導を通して学習スイッチが入り、生徒から分かった・楽しいという声が聞かれるという。  (3)盛んな課外活動:ホームページにたくさんの楽しい写真が載っているが、文化祭や他の行事、そして「つくばね学」で地域に出て、地域の方との交流する姿に笑顔があふれている。北条の祭りへの参加やガマ口上などもユニークな体験である。来年は入学者が増え、部活や行事も豊富になると思った。 (4)進路の可能性:少人数と個別指導の充実で成績も伸びているが、つくばね学の探求が筑波高生の進路を切り開いている。最近、大学も総合型選抜が増えている。これは「自己推薦書に何を書くか」が重要で、失敗も含めて豊かな自分づくりや学びの体験があるかが問われる。地域とつながる体験は、そこでの問いを深めることを通して進路を開く可能性を持っている。 北条の街との絆 筑波高に行くと、いつも北条の街づくりとの絆を感じる。筑波高が地域にとって必要な学校となり、幅広く生徒を受け入れ、現在の定員3学級が4学級になる日は近いと感じた。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

来年の高校受験 100点アップのこつ《竹林亭日乗》22

【コラム・片岡英明】現在、中学校では志望県立高について三者面談が行われている。しかし、志望校を決めても学習はなかなか進まないものだ。そこで今回は、今年の入試問題を解説して受験生の勉強を応援したい。 2024年県立入試 24年は、受験者1万6395人、平均287.52点。科目平均は、国語66.71点、社会57.55点、数学57.57点、理科55.61点、英語50.08点。最後に発表のあった20年の標準偏差99.0を参考に標準偏差を100とする。受験偏差値は平均を50とし、偏差値1は標準偏差の1/10なので、10点である。 500点満点で、偏差値50が287点、偏差値60が387点、偏差値40が187点となる。一般的に40~60が中間層と言われ、全体の2/3を占める。偏差値には±5の誤差があるから、偏差値1点に悩む必要はない。280点の生徒はすでに330点を取る可能性があるのだ。 入試問題の特徴 茨城県は18年から、新指導要領を先取りし記述を増やした。すると、21年に「採点ミス」が発生し、県は教員1000人以上を処分した。そこで、22年から採点ミス防止のため一転して記号問題になり、24年は3年目。 大学共通テストも長文化しているが、茨城の高校入試は長文化と記号化の2つの特徴がある。最近の入試問題は長文化だけでなく図表やグラフも多い。保護者の時代と違って意地悪をしているようにも見えるが、そうではない。問題文の読みを、従来の読解から情報読みへ切り替えるよう求めている。 つまり、なぜ著者がこう書いたかという「読解」よりも、設問に関係する部分を、本文や図表からすばやく探す=「情報読み」で答えるのだ。問題を解くとは問題作成者の意図を読み取ることなので、問いの言葉が重要である。選択肢を読むとなぜか混乱するという人は、選択肢を分析し、問題作成者の工夫を見てほしい。 問題のポイント 例えば、国語で選択肢を4つ作るには、本文にA、B、2つの要素を持つ部分を探し、次のように選択肢を作る。①A〇B〇、②A〇B✕、③A✕ B〇、④A✕ B✕。受験者側はこの選択肢を2つの要素に分離し、本文に沿って正誤を判断する。その判断は自分の思いでなく、あくまでも本文による点が鍵だ。 英語は記号化した22年から難化し、24年の平均は50点台と、英語が一番低い。これは問題6の生徒を悩ませる不要語入りの並べ替え問題のためで、ここは改善が必要だ。 さて、英語は長文が山なので、長文問題の5を例に説明する。毎年、この本文の展開は同じ形で、「以前の状況-出来事-自分の変化」という感想文の形。まず、この展開を押さえる。 設問に関係する部分の探し方は、①段落に番号をつける、②固有名詞と数字をマークしながらあっさり読む、③設問に関係する部分を、マークを目印に見つける―ことが大事だ。 頑張れ!受験生 情報読みだけでは疲れてしまい、学習は深まらない。授業や自主学習では「なぜ、著者はこう書いたか」と時々立ち止まり、いわゆる「著者との対話」の時間を持ってほしい。 普段は著者の意図を深める読解を行い、試験では長文化と記号化の特徴をふまえ、今回のコラムのヒントを参考に情報読みを行えば、3カ月で100点アップは可能である。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

レスリングの大沢友博さんを悼む《竹林亭日乗》21

【コラム・片岡英明】9月12日、霞ケ浦高校でレスリング部の監督をしていた大沢友博さんが69歳で亡くなった。日本レスリング協会はすぐに「高校レスリング界に不滅の金字塔~大沢友博氏が死去」とHPに掲載。告別式には教え子の樋口黎さん(2014年卒)のパリでの金メダルを胸にかけた写真が飾られた。大沢さんの努力がパリまで届いたなと感じた。 世間では「高校レスリング界の名匠」(レスリング協会のHP)と称されていたが、今回コラムでは大沢友博さんを悼むとともに、彼のレスリング部での出発点を紹介し、若手教師を励ましたい。 体育館の片隅のマット2枚から 大沢さんは1977年、霞ケ浦高校の教諭となった。私も同期で、共に定年まで勤めた。1980年の最初の卒業生は、彼が3組、私は4組の担任。テストの採点をしながら、遅くまで職員室で語り合った。 最初は柔道部顧問だったが、彼はすぐにレスリング部づくりを始めた。八丈島出身で、東京の正則高校から日本体育大学に進んだ彼は、八丈島のレスリング道場で体験した厳しさの中にある楽しさを、部活を通して生徒に伝えようとしていた。 最初の年の夏前には、体育館の隅に体操用マット2枚を広げ、担任に「この生徒を私が面倒みます」と、3人ほど集めて練習を開始。すると部員たちが大きく成長し、大沢さんの指導力を皆が認めた。 部活の伝統校などでは、すでに道があるところを歩む教師が多い。また、部活の顧問から練習条件が悪いと「これでは練習できない」との愚痴も聞く。しかし、彼は部活がないところで、体育館のマット2枚からレスリング部を始め、部員も一人ひとりに声をかけ、自分で集めた。 「やってみなはれ!」の精神 現在、文科省は探求心や創造性を生徒・教師に求めている。創造性を求めるとは「やってみなはれ!」の精神で教師のチャレンジを学校が受けとめるということだ。それならば、愚痴のひとつも言いたい学校の中でも、今こそ教師自身の創造性を発揮するときではないか。 多忙な毎日と管理疲れを癒すには、問いかけに始まる対話を通して生徒の願いをつかむことにある。大沢さんのように、どこか一点からでもチャレンジし、目の前の授業や部活で個性的な実践に取り組んでほしい。生徒・保護者はそれを待っている。「やってみなはれ!」 2年目には、シューズやウエアも整え、レスリングのマットシートも用意された。その後、武道館ができて旧柔道場がレスリング道場となった。その古い木造の道場から大沢レスリング部は10年目の1986年インターハイで優勝した。 悪条件の中でも、いつも生徒と汗を流し、応援する教職員を増やした。そうして、レスリングの自分の原点を次の世代につなげようと、体育館の片隅のマット2枚からパリの金メダルまで突き抜けたのだ。 葬儀で息子さんが「レスリングの生徒はどこかいいところがあるんだよ」との言葉を紹介した。その言葉には、生徒へのぬくもりや可能性への深い信頼が現れているような気がした。大沢友博さん、ありがとう。(元高校教師、つくば市の小中学生の高校進学を考える会代表)

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